Side:志雄


闇の欠片以上の存在がいるとは予想していたが、まさかこんな奴が現れるとは思っていなかったぜ。
顔立ちやバリアジャケットのデザインから、なのはの姿を模してるんだろうが、コイツは闇の欠片とは一線を画す存在だ……自らをマテリアル
と名乗ったコイツは、一体何モンなんだ?



「闇の書の構成素体?……そんな物が如何して?
 闇の書は浄化されて、夜天の魔導書に戻ったんだよ?其れなのに闇の書の構成素体が現れるって、幾ら何でも意味が分からないの!!」

「でしょうね。
 確かに闇の書は浄化され本来の姿に戻りましたが、その構成素体は浄化されずに闇の書の内部に潜んでいました。
 故に、管制人格の消滅と共に、私達も消えゆく運命だったのですが、消滅した筈の管制人格が復活した事で、私達は再び活動出来るように
 なったのですよ。
 ……本人の許可を得ずに、貴女の容姿を真似た事については謝罪しますが。」

「あ、其れは別に良いよ。
 闇の欠片とは違い、貴女は自分の意志を持っている様だし、私を真似たって言っても、バリアジャケットの色は正反対だし、髪型だって違うん
 だから、私とは別の存在だよ貴女は。」

「成程、そう言う考え方もアリですか。
 ですが、私は容姿をコピーしただけでなく、貴女の能力を100%コピーする事に成功しました――故に、負ける気がしません。」



マテリアルと名乗る、なのはの容姿を模した存在か。
コイツは確かに闇の欠片とは格が違う……一筋縄で行く相手じゃなさそうだな?なら、一丁気合い入れて行くぜなのは!!










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE79
『対決:理のマテリアル!!』









「では、お手合わせ願いましょう。
 彼方達の力が如何程の物か、其れを見極めさせていただきますよ。」

「見極める、か――やれるもんならやってみな!
 なのはの力を100%コピーしたとか抜かしてやがったが、だからと言って俺達に勝てると思ったら大間違いだぜ?コピーは所詮コピーに過ぎ
 ねぇ……本物を超える事は出来ねぇってな!」

折角やる気で出てきてくれたんだ、たっぷりと応えてやんぜ!!




「あの、ちょっと待ってください志雄さん。其れからマテリアルの子も!」



っと、此れからおっぱじめようって言う時に如何したなのは?
まさか怖気づいたってことはねぇと思うが、試合開始直前に『待った』をかけるってのは、少しお前らしくねぇんじゃねぇのか?



「高幡志雄に同感です、高町なのは。
 私が得た貴女のデータによれば、貴女は好戦的……とは行かなくとも、いざ戦いとなったら一切の容赦をせずに相手を叩き潰すモノだと理解
 していますが?」

「……戦いは常に全力全壊、話が通じなければ拳で語り合えって志雄さんに教わりましたから。って、其れは如何でも良いの今は!
 貴女は話が通じそうだから、戦う前にお話ししてからでも遅くないと思ったの。」



話が通じそうなら、先ずは話してからか。
相手がやる気だったから、俺もその気になっちまったが『話し合いで解決できるならそっちの方が良い』ってのは其の通りだからな?……お前
は、戦いってモンをよ~く分かってるみてぇだななのは。

んで?何を話すってんだ?



「ちょっと気になる事があったんです。
 マテリアルちゃんに聞きたいんだけど、貴女はさっきリインフォースさん――夜天の魔導書の管制人格が復活したから自分達も復活したって
 そう言ったよね?」

「はい、言いましたが、其れがなにか?」

「貴女達が現れた理由は其れで一応納得は出来るんだけど、貴女達は『何の為に』現れたの?
 夜天の魔導書がナハトヴァールと切り離された上で復活したから私達も復活しましたって言うだけなら、闇の欠片とかが現れるのはオカシイ
 と思うんだ?
 只復活しただけなら、リインフォースさんの妹みたいな存在なんだから、はやてちゃん達と一緒に暮らせば良い訳だしね。」



……言われてみりゃ、確かに其の通りだな?
コイツが現れたカラクリは兎も角として、何を目的に現れたのかは全く持って分かってねぇ……目的次第じゃ戦わずに済むかもしれねぇ訳か。
ったく、戦闘能力だけじゃなく、頭も中々回るじゃねぇかなのは?俺は、そう言うのはあんまり得意じゃねぇから、素直にスゲェって思うぜ。

で、何が目的なんだテメェは?



「まぁ、知られて困る事でもありませんのでお教えしましょう。
 私の目的は闇の書を完全に復活させ、闇の書の中に眠っている『砕け得ぬ闇』を手にする事――其れを手に入れる事で、私の存在は完全
 なモノとなる事が出来る。
 そして、デストラクターとして、我等の王の脅威となる者達を排除する、其れだけです。」

「王、だと?」

「はい、王です。我等マテリアルは3体存在しますので。
 『理』を司る私、『力』を司る者、そしてそれらを束ねる『闇の王』――この3体を持ってしてマテリアルは成り立っていますので。
 王を絶対の存在とし、そして世界を闇で覆いつくして闇の世界を創るのが我等の目的……であったような気がします。永く眠っていたせいで
 我等の目的が少々曖昧になっているのは否めませんね。」



……メモリーカードのデータの劣化みてぇだなオイ。
だが、お前さんの目的ってのを聞く限り、やっぱりここで倒す以外の選択肢はねぇみてぇだな?……ドンだけ控えめに考えても、闇の世界なん
てのは碌でもないって相場が決まってるんでな!



「ですね。
 貴女がリインフォースさんみたいに平和に暮らすって言うのなら兎も角、そんな物騒な事を考えてるって言うなら見過ごす事は出来ないよ!
 だから、貴女はここで止めさせて貰うからねマテリアルちゃん!!」

「出来る物ならばどうぞ。
 彼方達には、砕け得ぬ闇を手にする為の糧となって貰います。」



俺となのはを糧にするだと?……随分と面白れぇこと抜かしてくれるじゃねぇか?
だがな、テメェは喧嘩を売る相手を間違えたぜマテリアル?

クロノに言わせると、俺となのはは『バカ腕力とバカ魔力』ってモンらしくて、俺達が組んだ際の前衛後衛コンビってのは、最強レベルのコンビ
なんだとさ。
そんな俺達に、模倣品であるテメェが勝てる道理は何処にもねぇ!――大人しく消えて貰うぜ!!








――――――








No Side


2vs1と言う状況ではあるが、戦いは志雄となのはが優勢であった。
なのはの能力を100%コピーしたと言うだけって、理のマテリアルの攻撃はなのはの攻撃にそっくりで、特に直射砲撃魔法の性能に関しては
なのはの『ディバインバスター』と遜色ないレベルだと言えるだろう。(尚、なのはのデータの他に志雄のデータも取り込んでいるらしく、攻撃は
全て焔属性が付与されている。)

更に近接格闘に関しても、デバイスを棍の様に操る事である程度対処する事で志雄の攻撃にも対応出来ていた。

理のマテリアルを名乗った少女は、距離を選ばないオールラウンダーであったのだろうが、其れが今回に限っては裏目に出たと言えるだろう。
オールラウンダーは相手を選ばない代わりに、特化型と対峙した時には脆いと言う弱点がある。
全能力が80点のオールラウンダーでは、一点特化300点のに勝つ事は難しいのである。

そして、悪い事に、今戦っている相手は物理&近距離戦闘特化型の志雄と、魔力&ロング~アウトレンジ特化のなのはだ。
典型的な前衛後衛コンビだが、此処までそれぞれの役割に特化したコンビと言うのも中々無いだろう――一撃で高層ビルを粉砕するであろう
志雄の剛撃と、やろうと思えば星を砕く事の出来るなのはの魔法の組み合わせは相性抜群と言う事なのだ。


「オォォラァァァァァ!!!!」

「く……何という馬鹿力――此れは、力のマテリアルを凌駕している……?」


戦いが始まってすぐは拮抗していたが、志雄となのはがマテリアルのステータスを読み切ってからは、攻め込む志雄となのは、守るマテリアル
と言う構図になっていた。

誤解無き様に言っておくと、理のマテリアルが弱い訳ではない。
なのはをコピーしたと言うだけあって、並の管理局の魔導師では、例え一個小隊が束になった所で敵わない存在なのだが、志雄となのはは、
其れを余裕で上回る位に強過ぎた。

と言うか、メーター振り切れの特化型だけに、オールラウンド型の理のマテリアルでは対処しきれなかったと言うのが正確な言い方であろう。
RPGゲーム的なステータス表記をするのならば…


高幡志雄
HP5000000
物理攻撃:999
物理防御:999
魔法攻撃:400
魔法防御:850
素早さ:650


高町なのは
HP:120000
物理攻撃:300
物理防御:999
魔法攻撃:999
魔法防御:999
素早さ:700


と言う、トンでもない強さなのだ。
対して理のマテリアルは…


理のマテリアル
HP200000
物理攻撃:600
物理防御:700
魔法攻撃:850
魔法防御:700
素早さ:700



バランスのいい能力分配であり、特化型にはどうあっても得意分野では勝つ事が出来ないのである。
更に悪いには、理のマテリアルの魔力では、志雄となのはの魔法防御を超える事は出来ないと言う事だ……尤も得意とする魔法攻撃が決定
打にならないのならば、勝機など、最初からないに等しいのだ。


「よもやこれ程とは……私の予想を上回る強さであると認めましょう。
 ですが、私とて退く事は出来ません――なので、この一撃で彼方達を仕留めます。」


其れでも諦めずに戦うのはなのはをベースにしたからだろうか?
理のマテリアルは無数の誘導弾を放ってなのはと志雄を牽制すると、距離を取って魔力の集束を開始――なのはの最大奥義である集束砲を
も、マテリアルはコピーしているようだ。



「集束砲だと?……良い根性してるじゃねぇか!
 此れは応えねぇとだよな、なのは!!」

「はい!
 集束砲を放つって言うのなら、私も其れを使うまでですから!!――レイジングハート!!」

『Starlight Breaker.』

「全力全壊!!」



其れを見た志雄は、誘導弾をイグニスブレイクで叩き落すと同時に、なのはに集束砲を指示。
指示されたなのはもまた、即時に集束を開始し、桜色の巨大な魔力球体が生成されて行く――尤も理のマテリアルも、巨大な赤の魔力球を
生成しているのだが。



「受けてみてマテリアルちゃん!此れが私の全力全壊!スターライトォォ……ブレイカーァァァァァァァァァァ!!

「翔けよ明星、全てを燃やす炎となれ。ルシフェリオォォォォン……ブレイカーァァァァァァ!!!



そして放たれた桜色の集束砲と、真紅の集束砲。
其れは真っ向からぶつかり合い、互いに退かない押し合いが展開されて行く――その魔力の余波を受けて、なのはも理のマテリアルも、バリ
アジャケットが破損するが、そんな事はお構いなしとばかりに、互いに魔力を砲撃に注ぎ込んで行く。


「この世界を、闇に染めさせたりはしないの!!!」

「我等の悲願の為に……貴女を此処で倒します高町なのは!!」



――バガァァァァァァァン!!!!



限界を超えた力を注ぎ込まれた集束砲は、かち合った地点で大爆発!!
其れだけなのはと理のマテリアルの集束砲撃が凄かったと言う事なのだろう――2人の集束砲がかち合って大爆発を起こした地点の地面に
は、直径1kmはあるであろう巨大なクレーターが出来ていたのだから。

しかし、此れだけの物を作る攻防をしたなのはとシュテルには、もう碌な戦闘力は残っていない……故に、この戦いは引き分けにも見えるのだ
が、そうは問屋が卸さない!!


「ドラゴンインストール!!!」

「!!」


動けなくなった理のマテリアルに対して、志雄はドラゴンインストール・殺界を発動し、力任せの斬撃で理のマテリアルを攻め立て、トドメにヴォ
ーパルウェポンの腹の部分で殴って完全KO!!



「なのはとの戦いに夢中になって、俺の存在を忘れたのがテメェの敗因だ。
 勝負に熱くなるのは仕方ねぇが、其れで自分を見失っちゃ勝てるモンも勝てないってモンだ……お前がなのはだけを見たその時から、勝負
 の行方は決まってたのさ。」

「此れが二段構え……お見事です、そして完敗です。
 高町なのはは兎も角、貴方に関してはデータの修正が必要です高幡志雄……よもや此処までとは思いませんでした――『杜宮最強の不良
 』と呼ばれる所以、分かった気がします。
 貴方は、若しかしたら、人類史上最強の存在であるのかもしれません……それ程までに、貴方は強かったのですから。」



――シュゥゥゥ……



「簡単に負けてやる心算はねぇってな!!!――だがマテリアル、お前身体が……!!」

「此れは、消えかけてるの!?」


状況を分析した理のマテリアルは其の瞬間から、身体が量子化して消え始めていた。
闇の書の構成素体とは言え、圧倒的な力に圧倒的に負けたのでは、言い訳も聞かない故に其れを受け入れた所、マテリアルの身体が消え
始めたのである。


「如何やら此処までの様です……ふふ、模倣品に過ぎない私が、本物を超えるなど烏滸がましいにも程があると言う事ですか……
 ですが、私達が再び見えるその時まで、彼方達の道が光あふれるようになる事を願っていますよ――彼方達とは、何れまた戦いたいと、そ
 う思っていますので――暫しお別れです、高幡志雄、高町なのは。」

「何を言うかと思えば愚問だぜ?――まぁ、楽しめたのは事実だけどな。」

「私も楽しかったよマテリアルちゃん!!」


其れに対してのなのはの行動は正しかっただろう。
消えゆくマテリアルに近付くと、その手をぎゅっと握る――まるで、私は此処に居て貴方も此処に居ると言う事を確かめるように。



「本当に、消えちゃうんだね?」

「はい……此れは如何にもならない事なので――次に会う機会が有ったら、その時は私が勝ちますよ高幡志雄、高町なのは。」

「良い根性してるじゃねぇか……なら、精々あの世で修業を積んできな!!
 十二分に強くなって復活して――そんでまた俺達の前に現れたその時は、トコトン相手になってやらぁ……俺達の事を忘れんじゃねぇぞ?」

「無論……次に遭うその時まで、彼方達の道が勝利で彩られている事を約束して下さい。」

「うん、約束する!!」

「あぁ、約束すんぜ。――じゃあな……あばよ。」



――シュゥゥゥン



そして言うが早いか、理のマテリアルは消滅。
3体のマテリアルとの戦いの初戦は、志雄となのはのタッグが、理のマテリアルを略完封しての大勝利と言う結果に終わったのだった――











 To Be Continued…