Side:志雄


俺の前に現れたシグナムに似たシグナムじゃない何か……本物のシグナムには遠く及ばないとは言え、其れでも並の魔導師よりは遥かに強
い力を有してるか。
コイツは、姿形を似せた偽物だと思ってかかったら、こっちが痛い目を見るって所だろうな。

「だが、其れでもテメェは本物のシグナムの足元にも及ばねぇな。
 シグナムの中には、俺やなのはの中にある『BLAZE魂』に匹敵する熱いモンがあったんだが、テメェからは其れを感じねぇ……偽物は、地獄
 で大人しくしていやがれ!!」

「偽物だと?……意味は分からないが、貴様の力はとても強いのでな?……貰うぞ其の力!!」



ハッ、誰がやるかよ馬鹿野郎!!
はやての為に魔力を集めていた頃のお前ならいざ知らず、目的すら分かってねぇ偽物に俺の魔力をくれてやる心算は毛頭ねぇ!どうしても
欲しいってんなら、力づくで奪ってみやがれってなもんだぜ!!



「……ならばそうしよう。
 悪いが、殺さずに済ます自信がない――この身の未熟を如何か許してくれ。」



其れを聞くのは二度目だが、其れでも言わせて貰うぜ?――構うこたぁねぇ、全力で来いや!!
誰が相手であっても、俺は負けねえからよ!!テメェを打っ倒して、知ってる事を全部話して貰うぜシグナム(?)。テメェ等が一体何者で、何
の目的の為に現れたのかをな!!










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE77
『Ein Stuck der Dunkelheit』









「目的だと?……知れた事、我等の望みは闇の書の完成だ。
 書を完成するためには、多量の魔力が必要なのでな――特に高い魔力を持つ者のリンカーコアが必要でな……故に、彼方此方を旅してい
 ると言う訳だ――全ては、闇の書の復活の為に!!」



……やれやれ、此奴はどうしようもない奴みたいだな?
本物のシグナムは闇の書の支配から解放されて、保護監察下とは言え新たな道を歩もうとしているってのに、この偽物は未だ過去に縛られ
てるって事か。

なら、先ずはテメェをぶちのめすだけだ――それが、此処に来た俺の役目だからな!



「私に勝つ心算か?……愚かな。」

「そのセリフ、戦いが終わっても吐けるかどうか、楽しみだぜ。――テメェはここで、俺に倒される!!誰が何と言おうと絶対にな!!」

だから、覚悟して貰うぜ!!
俺の愛剣『ヴォーパルウェポン』も、戦いたくってしょうがねぇみたいだからな!!



「良いだろう。だが、大怪我を被っても文句を言うなよ?」

「誰が言うかよ。戦う以上は怪我なんぞ最初から覚悟の上だぜ?――さてと、お喋りは此処までにして始めようぜ!!かかって来な!!」

「推して参る!!」


――ガキィン!!


コイツ……偽物のクセに太刀筋は本物のシグナムと同じだと?
確かに、世の中には人の武ってのを見よう見まねで身に着けちまう奴が居るが、コイツのは只の真似じゃねぇ!剣の振り方、間合いの取り方
に挙句の果ては斬り込む際のクセまで完璧に同じじゃねぇか!
ドンだけ型を真似ても、クセまで完璧に真似る事なんざ出来る筈がねぇ――コイツの剣は、間違いなく多くの戦場を駆け抜けて来た騎士の剣
だぜ。
益々コイツの正体が気になる所だが……其れでも、戦い方は完璧にコピーしてても、地力の方はそうも行かねぇみてぇだな?

確かに、その鋭い太刀筋はシグナム其の物だが、シグナム本人の剣と比べたら、全く持って重みがねぇ!もっと言うなら、はやてを護るってっ
て言う覚悟と信念も感じねぇ!

「オラァ!打っ飛びな!!」

「な!そんな馬鹿デカい得物を軽々と!……其れに、私が押されているだと!?」

「テメェが本物のシグナムだったらこんな事にはならなかっただろうが、テメェの軽い剣じゃ俺には届かねぇ!
 シグナムの名を騙るなら、先ずはその如何ともし難い実力差ってモンを、限りなく0にしてからにしな!喰らえ、イグニスブレイク!!


――ゴバァァァァァァァァァァン!!


「ぐ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ハッ!出直して来な!!……ん?」


――シュゥゥゥゥ……


何だ?コイツ、身体が光の粒になって消えていく?
シグナムの名を騙った偽物なのは確実として、生身の人間ですらなかったってのかコイツは……一体どうなってやがるんだ?


「く……我等の悲願がこんな所で……無念だ。」



……完全に消えちまった。
だが、闇の書完成の為に魔力を蒐集しようとしてる態度は、演技にしちゃ少しおかしかったかも知れねぇな?――まるで、本当に闇の書の完
成を目指してるみたいだったからな。
何にしても情報が足りないか……そう言えば、なのはの方は大丈夫か?



『志雄さん、聞こえますか?』

「なのはか、そっちは大丈夫か?」

『はい。ヴィータちゃんの偽物みたいのが現れましたけど、何とかやっつけました。――やっつけたら光の粒になって消えちゃいましたけど。』

「……お前の方はヴィータの偽物だったか……」

『ほえ?じゃあ志雄さんの所にも誰かの偽物が現れたんですか?』



あぁ、俺の方に現れたのはシグナムの偽物だった。
こっちも倒したら光の粒になって消えちまったんだが、如何せん現状では、コイツ等が何者なのか、如何して現れたのかって言った情報があ
まりにも少なすぎる。
コイツは、もう少し周囲をパトロールして、他にも同じような奴等が現れてないか確認しつつ、情報を集めた方が良いかも知れねぇな?



『確かに其の通りd『高幡、聞こえるか?』……って、シグナムさん?』



お前は……本物みたいだな?
如何したシグナム、烈火の将が血相を変えて?守護騎士の筆頭が、そんなに慌ててるってのは、相応の何かが起こったんだとは思うが……



『あぁ、起きた。
 妙な魔力反応を感じたので確かめに行ったら、お前が居たぞ高幡。――いや、正確に言うのならば、お前の姿をした『闇の欠片』がな。』


「『闇の欠片?」』


何だそりゃあ?名前からして真面なモンには聞こえねぇが……若しかして、俺やなのはの前に現れたのも、其の『闇の欠片』とやらなのか?


『お前達の所にも現れていたか……兎に角、良くない事態が起こって居るのは間違いない。
 詳しい事はリインフォースが知っているので、一度状況を整理しておきたい――此れから、我等の……もとい、主はやての家に来れるか?』




そいつは行くしかねぇだろ?
時坂達は仕事中で抜けられねぇから、後で俺から伝えとく事になるが、俺となのはは大丈夫だ。……そうだなのは、フェイトにも連絡を入れて
はやての所に来てもらえ。
如何考えても、最終的には俺達全員が係わる事になるだろうから、アイツにも情報を渡しておいた方が良いだろうからな。



『そうですね。フェイトちゃんにも連絡を入れておきます。』



そうしてくれ。
にしても、『闇の欠片』とはな……名前からして、この間の『闇の書事件』との関係を疑っちまうが、まさか関係ねぇよな?
闇の書は夜天の書に戻った上に、管制人格のリインフォースは、一度は消滅したが神格の存在によってナハトヴァールの呪いを完全に浄化
された上で復活したんだから、関係がある筈がねぇ。

だが、リインフォースが詳しい事を知ってるって事は、直接的に関係が無くても、過去に似たような事を経験していたのかもな。

ったく、闇の書事件が終わって、リインフォースが復活したばかりだってのに、また厄介事か?次から次へと良く起こるモンだ。
杜宮も短期間に随分と色んな事が起こってくれたが、海鳴も負けず劣らずだな此れは?……何にしても、先ずは『闇の欠片』の正体からか。



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んでもって、八神家のリビング。
一応俺達は来客って事で、茶と菓子が出されたんだが……フェイト、オメェ少しは遠慮ってモンをだな?



「も?」(ほっぺハムスター状態)

「あ~~……その、なんだ……美味いか?」

「(コクコク)」

「喜んでもらえて良かったわ~。
 シグナム達に好評やったから、羊羹を作ったんやけど、気合入れて作り過ぎてもうて、どうやって消費しようかと悩んどった所やから遠慮しな
 いで食べてや?
 何よりも、フェイトちゃん位美味しそうに食べてくれると、作った側としても嬉しいしな。」



此れはお前の手作りかはやて?……大したモンだぜ。
俺も水羊羹は得意だが、練り羊羹や蒸し羊羹は此処まで上手くはねぇからな。……齢9歳にしてこの腕前、やろうと思えば将来翠屋のパティ
シエールになる事が出来るかもな。



「いや~~、桃子さんの領域に達するにはまだまだやで?
 其れこそ、最低でも10年は桃子さんの下で修業せんと、桃子さんの味を再現する事は出来へん……桃子さんのシュークリームは、そんじょ
 そこらのシュークリームとは訳が違うからなぁ?
 桃子さんのシュークリームは、シュークリームと言う名の神域のスウィーツやでホンマに!!」

「その通りだよはやてちゃん!お母さんのシュークリームは世界最強!
 伊達に本場パリのパティシエールコンテストで二十歳の頃から13年間グランプリを護ってないの!其れに国内の菓子コンクールでも賞を総
 舐めにしてるから、お母さんはパティシエール・オブ・パティシエール!正に最強!!」



まぁ、其れについては否定しないぜ。
桃子さんの作る菓子はシュークリームだけじゃなくて、全部が絶品だから、ネット販売したら更に売り上げが伸びるかもだからな――海鳴商店
街に翠屋以外の洋菓子店がないのも頷けるぜ。

……じゃなくてだな、単刀直入に聞くが『闇の欠片』ってのは、一体何モンだ?
実力其の物は大した事なかったが、アイツはシグナムの剣を完璧に模していやがった。其れこそ攻撃の際の微妙なクセまで完璧にな――只
の偽物にあそこまでの模倣が出来るとは思えねぇ。
アレは、只の劣化コピーって訳じゃねぇんだろ?



「ただの劣化コピーだったらドレだけ良かったかな。
 アレは、闇の欠片は、私が復活した事で――もっと言うのならば夜天の魔導書が復活した事で現れた存在だ。……恐らくは『闇の書』を復活
 させる為にね。」

「なんだと?」

「其れって、如何言う事なんですかリインフォースさん!?」

「もももめもももまもももおままま!?」(難解過ぎて解読不能)



フェイト、オメェは取り敢えず口の中の物を飲んでから喋れ。何を言ってるのか全く分からねぇぞ。



「(ごっくん!)」

「ちゃんと噛めよ……」

まぁ、激うま羊羹に満足したみたいだから野暮な事は言わねぇが…お前が復活した事で現れた存在だってのはどう言うこったリインフォース。
お前は一度消え、そんでもってあの龍神にナハトヴァールを浄化された上で復活した筈だろ?なのに、何でお前の復活で、あんなモンが現れ
るってんだ?



「確かにあの龍神の力のよってナハトは浄化され、私が存在していても異常な防衛プログラムが再構成される事は二度とない。
 ――が、其れとは別に、夜天の魔導書の本来の力として、無限転生のシステムが存在している――主が死しても、魔導書は生き続ける為
 の機能なのだが、其れには管制人格である私ですらアクセスできないプロテクトが掛かっていたんだ。
 私の消滅と復活と言う、ある種の二律背反が成された事で、無限転生のプログラムに何らかの不具合が発生し、その影響で『人の記憶から
 過去の幻影を作り出す能力』が発言した可能性が否定できないんだ。」

「と言う事は、其の力で現れた幻影が『闇の欠片』って言う事ですか?」

「恐らくはそうなるだろう――過去の記憶の再現になるから、オリジナルには大きく劣るだろうが、其れでも並の魔導師では対処できないよ。
 特にこの街に現れる闇の欠片は、お前達や守護騎士を模しているのだろうからね……」



確かに、守護騎士やなのはを模した奴が相手じゃ、最低でもクロノレベルの魔導師じゃなきゃ瞬殺されて終わりだろうからな。
特に俺となのはとフェイトは、全く持って不本意だが、仲間内から『取り敢えず普通の人間じゃない』って言う評価を貰ってるから、そんな俺達
の『闇の欠片』が出て来たら、クロノ未満は瞬殺だぜマジで。

だが、コイツは無視できるモンじゃねぇよな?
コイツ等が暴れまくったら、夜天の魔導書がまた闇の書にされちまう可能性だってあるんだろ?……だったら、闇の欠片とやらを現れた端から
ぶっ倒して、その先に居るであろうラスボスもぶっ倒してやらねぇとな!!

お前を取り戻して、闇の書事件は終わったと思ってたが、やり残した事が有るってんなら、年が明ける前に全部清算してやんぜ!!
何よりも、折角復活したお前さんが、こんな下らない事で悩んでるなんて言うのは見過ごせねぇし、俺達の偽物を蔓延らせる事も出来ねぇから
な?纏めてぶっ倒してやんぜ!!
事と次第によっちゃ、自分と戦う事になるかも知れねぇが、其れが如何したってな!!



「見た目は同じでも偽物は偽物だから手加減なんて必要ありません!見つけたらやっつけます!!」

「さーち・あんど・ですとろーい!!よっしゃー、やってやるぞーーー!!
 僕のまえにあらわれたことをこーかいさせてやる!やみのかけらなんて、あらわれた奴からふんさい、ぎょくさい、だいかっさいだー!!!」



ハッ!なのはもフェイトも気合は充分みてぇだな?
此れなら、闇の欠片とやらも何とかなりそうだぜ――一度翠屋に戻って時坂達に事の次第を話せば絶対に力になってくれるだろうし、恐らくだ
が、アースラの方でも異常は感知してるだろうから、クロノも来るだろうからな。

逝き遅れた亡霊は、俺達が冥界に帰してやんぜ!!
現れた端から狩って行けば、何れは元凶に大当たりって事もあるしな!!








――――――








Side:???


ふむ……如何やら私は『彼女』のデータを基に構成されたようですね?……其れにしては、髪型があまりにも違うと思うのですが――まぁ、今
は其れは追及しない方向で行きましょう。

私の覚醒よりも早く『彼女』は目覚めたようですね?……残るは『彼女』だけですね。
我等3体のマテリアルが全て復活し、私達の容姿の元となったオリジナルを倒す事で、闇の書は復活し、無限連環の力を得る事が出来る。

さぁ、始めましょうか?闇の書事件の最終章と、闇の書復活の序章を。
その中でも最高の演目となるであろう、貴女との戦いを楽しみにしていますよ、高町なのは――私のオリジナル。












 To Be Continued…