Side:志雄


「馬鹿な、私の一撃を防ぎ切るとは!?」

「ハッ!何を驚いていやがる?
 こちとら、テメェが力を与えた人間が2人もいる上に、テメェの予想を超えた戦力が揃ってるんだぜ?
 確かにシャマルと北都とフェイトを失ったのは痛いが、だがおかけで俺達は生き残る事が出来たんだ……試練を越える為にまだ行くぜ!」

「楽観視できる状況ではないですけど、だからと言って諦める事は出来ません!
 何よりも、リインフォースさんを取り戻す事が出来るかも知れないんですから、退くなんて言う選択肢は、最初から存在してません!!」

「せやな……あの子は取り戻さなあかん。
 あの子と取り戻す事が出来んで、何が夜天の主や――あの子は返してもらうで神様?幾ら神が相手でも、リインフォースの魂は渡さへん!
 リインフォースの魂は私と一心同体や!絶対に渡さへん!アンタを倒して、リインフォースを取り戻す!其れだけや!!」



ふん……よく吠えたぜはやて。それでこそ夜天の主ってもんだ!!
可成りのダメージを受けたが、こっちにはまだ戦える奴が残ってるんだから、諦める理由は何処にもねぇんだからな――とことんまでやらせて
貰うぜ?……テメェもその心算だったんだろ?



「良いだろう……此処からが本番の様だ、お前等の力の底の深さ、見せて貰うとしよう……!」

「見せてやるぜ、俺達の力をな――だが、驚いて腰抜かすんじゃねぇぞ!!」

シャマルと北都とフェイトが戦闘不能になったのは痛いが、俺達には其れを補って有り余る力があるんでな――其れを全開にして行くぜ!!



「其れは、期待させて貰うぞ?」



ハッ!期待に応えるどころか、期待をぶっ壊した成果を見せてやんぜ!!――返してもらうぜ、俺達の最後の仲間って奴をな!!










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE74
『祝福の風、再び吹き流れる』










No Side


シャマルと美月とフェイトを失った一行だが、しかし総合的な戦力は全く落ちていないと言って良いだろう。
フェイトのパワーは志雄が受け継ぎ、シャマルと美月のサポート能力は、なのはとはやてと凛音が巧い具合に受け継いで戦局を整えていた
のだ。
更に、サポートを行いながら、戦闘行為を行っているなのはとはやてと凛音の能力は半端な物ではないだろう。


バスター!!

クラウソラス!!

ブリリアントレイ!

「ぐぬぅ!?」


現実に、なのはとはやてと凛音の魔法は、聖域の守護者である白き龍には僅かとは言え、確実にダメージを与えているのだから。
龍の力を受け継いだなのはと、熾天使の力を受け継いだ凛音、そして夜天の主のはやて魔法ならば、この白き龍にもある程度の効果はあ
るらしい。


「何処を見て居やがる……イグニスブレイク!!

「オラァ!打っ飛べぇ!!」

「切り伏せる!!」


更に志雄とヴィータとシグナムが其処に追撃!!
物理最強スキルであるイグニスブレイクとラケーテンハンマーをフルパワー手加減なしでブチかまし、更にシグナムの斬撃が炸裂したとなれ
ば如何に神格の存在が相手であっても、それなりの手傷を負わす事は難しい物ではないだろう。


「ぐ……私を含め、龍族の表皮は溶岩ですら耐えうると言うのに、其れに傷をつけるとは……本当に面白い連中だ。
 その武器が特殊なだけではない――その武器は、言うなればお前達の魂が形になった物であり、その強さは使用者の魂の強さ其の物。
 お前達の魂は、龍族の耐久力をも超えるか……ならば、私ももう少し力を出そう。」


実際に、攻撃を受けた白き龍の身体には決して深くないが、しかしハッキリと傷跡が残っているのだから。
しかしこの手強さを実感した白き龍は、此処に来て更に力を解放してその姿を変える。


「まだ余力を残してたってのかよ……今までだって充分強かったのに、其処から更に強くなるとか、流石は神様ってところだぜ……」

「ハッ、上等じゃねぇか。
 更に強くなったって事は、今までの姿じゃ俺達の試練には温いって考えたって事だろうからな。」


三つ首の白龍と言う姿は其のままだが、その身体は白銀の鎧の様な鱗に覆われ、全体的な印象もやや機械っぽくなった感じだ。


「今度は此方の番だ。
 先程は何とか防げたが、果たして今度は防ぐ事が出来るかな?受けてみろ、聖光のアルティメット・ストリーム!!」


そして力を増した状態から放たれたブレス攻撃は、先程の物よりも遥かに強力だ。
3つの首からエネルギーを集約して1つのエネルギー波として放った先程とは違い、今度は3つの首夫々が別々に攻撃を放ったのだが、其の
攻撃1つ1つが、なのはのバスターと同等なのだから凄まじい破壊力と言える。

そんな攻撃を真面に喰らったら一堪りもないだろう。
先程の攻撃ですら、シャマルのシールドを美月とフェイトの魔力で強化して防ぐ事が出来たのだ……この攻撃を完全に防ぐのは難しい筈だ。


「させん!!」

「やらせない……覇ぁ!!」

「防御なら、実は一番高いのは僕ってね!」


だが此処で、夫々の砲撃に対して、ザフィーラ、明日香、祐騎が躍り出て防御を敢行!
ザフィーラは持ち前の防御力で攻撃を受け止め、明日香は霊属性の力で作った氷のシールドで攻撃を逸らし、祐騎は鋼属性の力を駆使した
バリアでこれまた攻撃を逸らす。

此れだけの攻撃を防いだのは見事だが、勿論その代償は大きい。
攻撃を受けきったザフィーラは両手の手甲が吹っ飛び騎士服も彼方此方消し飛んだ上に自身も可成りのダメージを受け、意識はあるモノの、
事実上の戦闘不能。
攻撃を逸らした明日香と祐騎は、逸らしはしたモノの、攻撃の余りの強さに逸らした際の衝撃で吹き飛ばされ、更に思い切り地面に背中から
叩き付けられてKO!
気を失ってはいないが、背中からのダメージと言うのは可也きついので、戦線復帰は絶望的だろう。

残ったメンバーは、志雄となのはと凛音と洸と空、そしてはやてとシグナムとヴィータの7名……最初のメンバーの半数になってしまった。
尤も、だからと言って諦める連中ではなく、寧ろ上等だとばかりに、更に魔法と物理の連携攻撃で白き龍を攻め立てる!反撃はさせないとば
かりに、苛烈に、猛烈に攻め立てる。

洸とシグナムのチェーンエッジが煌めき、なのはとはやてと凛音の魔法攻撃が白き龍の鎧で覆われてない部分を攻撃し、空の鉄拳とヴィータ
の鉄槌が鎧に亀裂を入れ、志雄の力任せの斬撃が鎧を叩き割る!


「この姿の私について来るとは……だが、果たして超えられるかな?」


だが、相手は神格の存在。
翼を羽ばたかせて衝撃波を発生させ、志雄達の猛攻を強制的にストップさせると、三度口元にエネルギーを集束させる――防御要員を完全
に失った状態で、此れを放たれたら如何に志雄達でも堪った物ではないだろう。


「此れで……終い――」

「させるかぁ!くらえ、すーぱー稲妻きーーっく!!!」

「ぐは!?」


その攻撃が放たれようとした瞬間、何かが白き龍の頭の一つに横から飛び蹴りを炸裂!
その衝撃で横を向いた首は、あろう事か攻撃を隣の、中央の首に炸裂させてしまう。更に、其れに驚いた首が横を向き、今度は蹴りを喰らっ
た首に向かってブレス発射!
何とも、アレな状況だが、其れでも志雄達にとっては有り難い事であったのは間違いない。今の攻撃を喰らっていたら、確実にゲームオーバ
ーだったのだから。

だが、一体誰が蹴りを喰らわせたのか?


「いえーい!やっぱり僕、最強!!!」

「ふぇ、フェイトちゃん!!?」

「お前、やられた筈じゃ……」


その正体は何とフェイト。
シャマルのシールドの強化を手伝った事で、戦闘不能になった筈のフェイトが、見事に復活して白き龍の横っ面に一発お見舞いしてくれたの
である。


「確かにさっきのはいたかったし、僕もダメかとおもったけど、もしものときのひじょーしょくとしてばるでぃっしゅの中にいれてもってきた『やわ
 らかポークカレー』を食べたら元気出た!」


しかも其れは、あろう事かバルディッシュに収納していたカレーを食べて回復したのだと言うのだから驚くほかはないだろう。
だが、此のフェイトの復活は実にありがたい事だ。
防御力の上昇は望めないが、攻撃力は可成り高くなったし、白き龍も攻撃の自爆で可成りのダメージを負っているのだから、此れならば行け
るだろう。


「此れが好機だ……一気に決めんぞ!!行くぜぇ?」

「「「「「「「「クロスドライブ!!」」」」」」」」


そして、この最大の好機を逃さんとばかりにクロスドライブを発動!
影と霊以外の全ての属性が出揃っているこの布陣でのクロスドライブは強力無比!高められた力は、白き龍をも凌駕するほどだ。

ならば、一気呵成に攻める以外の選択肢はない!
白き龍の三つ首の内、2つは自身のブレスを喰らった事で攻撃する事は出来ない。1つ健在な首が残っているとは言え、戦力が1/3にガタ
落ちしたのでは、クロスドライブを発動した此のメンバーを止めるのは難しい。


「おぉぉぉぉ!エクステンドギア!!

「はぁぁぁぁぁ!風塵虎吼掌!

「せぇの!セラフィムハーツ!!!

「おぉぉりゃぁぁぁ!!!クリムゾンレイド!!

「轟天爆砕!ギガントシュラーク!!

翔けよ隼!!


此処で、志雄、洸、空、凛音、シグナム、ヴィータの必殺技が炸裂し、白き龍にダメージを与えて行く。
この猛攻には、自爆でダメージを受けた白き龍は、流石に身体がグラつく……が、其れでも倒れはしない。矢張り、簡単には倒せないのだ。
しかし、この必殺技の大盤振る舞いですら、勝利の為の布石でしかない。


「此処が好機だ!ブチかませ、なのは、フェイト、はやて!!」


『Starlight Breaker.』

「全力全壊!スターライトォ……」


『Plasma Zamber.』

「いっくぞー!パワー極限、プラズマザンバー……」


「リインフォースを返してもらうで!響け終焉の笛、ラグナロク……」



切り札は、なのは、フェイト、はやての3人による究極の魔法攻撃!
闇の書事件の際に、闇の書の闇を砕いて事件を集束させた無敵にして最強のトリプルブレイカー!


「「「ブレイカーーーーーーーーー!!!」」」


世界を滅ぼす存在を滅した無双にして究極の一撃が炸裂!!
白き龍も健在である首からブレス攻撃を放って応戦するが、三つ首全てで応戦したのならば兎も角、一本ではこの究極の攻撃を止める事は
出来ないだろう。


「この力……見事。」


トリプルブレイカーは、白き龍のブレス攻撃を飲み込み、其のまま本体に直撃!
其れだけの攻撃を喰らった白き龍は、龍の姿から、蒼眼の女性の姿に戻る――許容量を超えるダメージを受けた事で、本来の姿である龍の
姿を保つ事が出来なくなり、仮初の姿に戻ったのだ。


「まさか、最後は真っ向から力勝負とは思いませんでした。
 ですが、彼方達は力を示した……約束通り、彼女は彼方達に返しましょう――彼女も、其れを望んで居たのだから。」


――パチン


言うが早いか、指を鳴らすと、リインフォースを覆っていたカプセルが割れ、その身体がゆっくりと降りてきて、はやての前にやってくる。
流石に支える事は出来ないので、はやては地面に座り込むと、身体全体で支えるように、リインフォースの身体を抱きとめる。二度と離さない
かの如くに。


「リインフォース……」

「如何やら、取り戻せたみてぇだな。」


「見事だったぞ人間達よ。
 私は、また此処で人々を見守る日々を送るとしよう――人の営みと言うのは、見て居て意外と退屈しない物だからな。――ではな。」


――キュゥン


そして、その瞬間に光が溢れ出し、一行の視界を白く染め上げて行く。
異界化の終息と同じ現象が起き、一行は聖域から、現実世界へと帰還したのだった――最後の仲間を取り戻した上で。








――――――








Side:志雄


此処は……はやての家の前。戻ってきたみてぇだな。



「ん……此処は?……主?」

「リインフォース!目が覚めたんやな?」

「主……本当に、我が主なのですね?……私は……戻ってこれたのですか?」



目を覚ましたか――あぁ、お前は戻って来たんだ。お前が最も大切に思ってる奴の所にな。――ったく、勝手に消えやがって。おかげで少し
ばかり大変だったぜ。



「ですが、私は此処に居て良いのですか?存在していても良いのですか?」

「アホな事言わんといて!居て良いに決まっとるやろ!存在して良いに決まっとるやろ!!アンタは此処に居る!その事実を誰にだって否定
 はさせん!私がさせへん!
 やから、此れからは一緒に居てな、リインフォース?」

「はい……我が主!!」



此れならもう大丈夫だろうな。
在り来たりな事だが、やっぱり物語ってのはハッピーエンドが良いもんだ――其れに到達する事が出来たんなら、良かったぜ。正にこいつは
聖夜に起こった奇跡ってやつだろうさ。

最後の仲間を取り戻して、此れで本当に闇の書事件は終わりって奴だ。










と、そう思ってたんだが、闇の書事件はリインフォースを取り戻しても、本当の終わりを迎えた訳じゃなかった様だ――まさか、あんな奴等が
現れるとは、思っても居なかったからな。












 To Be Continued…