Side:なのは


取り敢えず、保護したフェレット君は、外傷こそあれ命に別状はないって言う事だから、何て言うかホッとしたよ……あそこで死なられたりしたら、其れこそ後味が悪過
ぎる何て言うもんじゃないからね……良いタイミングで見つける事が出来て良かったの。



「まぁ、確かにそうとも言えるが……アレは如何見ても普通のフェレットじゃねぇだろ?
 俺達やなのはには、救いを求める声が聞こえたみたいだが、それ以外の連中に同じ内容のSOSが届いていたとは考え辛いからな……まぁ、成るように成るだろ。」

「意外とアバウトですね、志緒さん?」

其れもまた、志緒さんだから絵になるんだけどね♪
でも、あの声の主が、あのフェレット君だったら、如何にかしてもう一度連絡を取りたい所だね……何て言うか、とても嫌な予感がするから、あくまでも保険としてね。

って、そうなると、あのフェレット君は家で引き取る事になるだろうから、その間の餌の事も考えないとだよね。


まぁ、それらも、お父さん達に了承して貰ってからって言う、超高難易度のミッションが待ち構えてる訳なんだけどね。
保護した暁には、フェレット君は、家で預かるのが良いと思うから…・・・何とかして、了承を取り付けないとだから、此処は気合を入れて行かないとなの!!



「良い感じに燃えて来たじゃねぇか?
 其処まで心が燃えてるなら、どんな事も障害にはなり得ねぇさ……そして、己の思いをぶつければ、其れはきっと相手に伝わる筈だからな……諦めるなよ!!」

「はい!!!」

正直な事を言うと、あのフェレット君を保護するのが良いのか、其れとも放置していくのが正しいのかは分からないけど、私は私の思ったように動くだけなの!!
だから、あの子の事は、何が何でも保護しないとだよね?

尤も先ずは、お父さんの了承を取り付けてからになるんだけどさ……













リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE7
『日常の終焉と非日常の開幕』











Side:志緒


そんな訳で、高町家のリビングルームでは、緊急の家族会議が開かれる事になっちまった――議題は言うまでも無く、俺達が保護して動物病院に預けた、不思議な
フェレットの事だが……如何やらなのはは、一度フェレットを飼ってみたかったって言う望みがあったらしく、如何にかして、アイツを家で預かる事は出来ないかどうか
士郎さんに聞いてたんだが――



「成程ね、なのはの言い分は分かったよ。
 其れに、如何やら其れほど大変と言う訳でもなさそうだから、明日の学校帰りにでも、動物病院に寄ってその子を連れておいで。
 ただ、今更ながらかもしれないけれど、フェレットって言うのは一体どんな動物なんだい?」

「此処まで来て、許可してから其れかよ士郎さん!!」

「いや、ある意味でフェレットが何かも分からないにも関わらず、此処まで議題を引っ張った、士郎さんが凄いんじゃないの!?」

「その可能性は否定できないわ、璃音さん………」



まさか、フェレットが何であるかを説明するところからとはな………マッタク持って予想だにしてなかったぜ。
だが、そのお蔭で、なのはとX.R.Cのメンバーが、フェレットとはどんな生き物であるのかと言う事を、サイフォンやら何やらを使って説明してるから、程なく士郎さんにも
フェレットがどんな動物なのかって言う事は、理解して貰える筈だぜ。

その上で、士郎さんも桃子さんも、そして恭也さんに美由希も、なのはの意思にノーを突きつける事はねぇだろうさ。
勿論何から何まで、手放しで了承って事じゃねぇだろうが、今回の事に関しては、なのはの意志を尊重した方がいい結果を生み出しそうだからな。



「成程、愛玩用に改良されたイタチの一種と言うところなんだね。
 ……家は喫茶店を経営してるから、動き回る小動物は、一般的な観点からするとNGなんだけど、小動物には癒しの効果もあるから経営者としては歓迎するさ。
 其れに、そのフェレット君の事は、なのはが責任を持って世話をするんだろう?」

「うん!!」

「俺達も、手伝わせて貰う予定だがな。」


「志緒君もか……なら、僕から言う事はもう何もない。――但し、小動物とは言え肉食らしいから、噛まれて怪我をしないようにだけは注意してくれるかい?」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」


取り敢えず、フェレット保護の了承を取り付ける事は出来たか……なら次だ。
柊、今朝の件について――8人もの人間が、同じ夢を見るって言う現象について、異界関連で何か分かった事はあるか?どんな些細な事でも構わねぇんだが……



「サイフォンに登録してある、過去の異界関連の事件の中に、何件か『複数の適格者が、此れから起きるであろう異界関連の事件を事前に夢と言う形で共有してい
 た。』と言う物を見つける事が出来ました。
 けれど、今回の件は此れで説明する事は難しいかと思います……なのはちゃんもまた、私達と同じ夢を見ていたと言う事で。」

「なのはは適格者じゃねぇから、その理屈じゃ説明できねぇって事だな?」

「で、でも本当に、私もその夢を見たんです!黒いお化けと、男の子が戦ってる夢を!!」



安心しななのは、誰も疑っちゃいねぇよ。勿論柊だってな。
ただ、アイツは純粋な『事実』を言ってるだけで、他意はねぇ……とは言っても、そうなると一体如何言う事なのかってのが、益々分からなくなって来るって所だぜ。



「あのさ~、なのはちゃんが適格者だって言う可能性はない訳?」

「玖我山?如何言うこった?」

「確か志緒先輩って、適格者として覚醒する前だったにもかかわらず、明日香の催眠と記憶操作の術が効かなかったんだよね?
 アタシは、覚醒前にバッチリ記憶操作受け付けちゃったから個人差があるのかも知れないけど、其れを考えると、なのはちゃんが『未覚醒の適格者』って言う可能性
 は、無きにしも非ずなんじゃないの?
 適格者としての能力を有していたから、アタシ達と同じ夢を共有した……此れなら、そんなに無理もなく今回の事を説明できると思うんだけど如何よ?」

「其れは、確かにそうであるなら説明はつくけれど……」



プロとしては、そう簡単に結論は出せねぇって所か……なら、最有力な『可能性』として考えておけや。その可能性が、実は正解だったって事は少なくねぇからな。


それにしてもだ、仮になのはが適格者だとしたら、一体どんなソウルデヴァイスが顕現するんだろうな?……少し、見てみたい気もするぜ。
ま、最大限ありそうな可能性が出たって事で、コイツは手打にするのが一番だろう。そろそろ良い時間だから、晩飯の準備もしねぇといけねぇだろうからな。



「あら、もうそんな時間?直ぐに準備しないとね♪」

「手伝うぜ、桃子さん。」

「私も手伝うよ、お母さん♪」

「じゃあ私も!」

「美由希は「お姉ちゃんは「お前は、手伝わなくて良い。」」」



寧ろこっちの仕事が増えるから、お前は皿とか箸とかを用意しとけ。まかり間違っても調理に手を出すなよ?
その内、教えてやるが、今のお前の料理の腕で手伝ったら、桃子さんの思考の逸品が、河豚毒をも凌駕する凶悪なる一品に突然変異を起こしちまうからな。



「其れは幾ら何でも酷くない志緒君!?」

「4年前に、俺を3日間寝込ませたのは、何処の誰だったか、忘れたとは言わせねぇぞ?」

「……正直にごめんなさい!」



「志緒先輩が3日間も寝込むとは…!!」

「一体何を作ってしまったの美由希さんは?」

「名状しがたい何かじゃ、済まない物を作ったのは間違いなさそうだね……尤も、其れを食して3日間寝込んだだけで済んだ志緒先輩の頑丈さは流石だけどさ。」

「志緒先輩じゃなかったら死んでるんじゃないの!?」

「妹が此処まで言われてる現状は、本来怒るとこなのかも知れないが、美由希の料理の腕を考えると、怒る事が出来んと言うのが正直な所だな……」



加えて美由希の料理は、見てくれだけはちゃんとしてるから性質が悪い事この上ねぇんだ……完全に見た目にしてやられたってやつだなアレは。
果たして、アレを桃子さんと俺で矯正する事が出来るかどうかは微妙な所だが、やるだけやってみるしかねぇだろう――主に美由希の将来の為にも、な。



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そんなこんなで、晩飯も終わって、今は片付けの真っ最中だ。
今日の晩飯は、白飯と味噌汁、マグロの腹身の塩焼き、漬物と肉じゃがって言う和風のメニューだったが、滅茶苦茶美味かったな。あんなに美味い肉じゃがは食った
記憶が無かったぜ。



「悪いわね志緒君に洸君、後片付けまで手伝って貰っちゃって。」

「大した事ないっすよ桃子さん。
 それに、世話になってるんだから、此れ位はやって当然つーか……俺も志緒先輩も、そう言う風には考えてるんで。」

「世話になってる以上、せめてもの義理は果たさねぇとだからな。」

「そんなに気にしなくてもいいんだけれど……だけど、手伝ってくれるのは助かるわ♪
 明日香ちゃんと璃音ちゃんと空ちゃん、其れと美月ちゃんはなのはと一緒にお風呂入ってくれたりして、色々と助かってるのは事実よ。」



アイツ等の場合、単純に妹が出来たってノリなのは否めねぇんだがな。



うし、洗い物もこれで終わりだな。



「ありがとう2人とも、助かったわ。」



ま、多少なりとも貢献できたんなら、俺達としてもやって良かったって所だな。
他にする事も特にねぇし、そろそろ俺等も風呂にするか――



聞こえますか?僕の声が聞こえますか?



「「!!?」」



なんだ今のは!?……聞こえたか、時坂?



「あぁ、聞こえたぜ志緒先輩。耳にって言うよりは、頭の中に直接響く感じだったけどな!」



聞こえて居たら、誰でも良いので助けて下さい……此れは、僕だけじゃどうしようもない――!



続けざまにまたか。
しかもこの声は、夕方に聞いたあの声と同じモンだ――此れは、無視する事は出来ねぇだろ!恐らくは、柊達と、引いてはなのはだってコイツを聞いた筈だからな!

「桃子さん、少し出て来ます。
 恐らくはなのは達と一緒になると思うが、そんなに時間をかけずに戻ってくるんで……」

「何か特別な事が起きたのね?……なら、行ってらっしゃい。
 だけど、必ず戻って来ることを約束して――志緒君は、いいえ、X.R.Cの皆は、もう私達の家族なんだから。」



ウッス、了解っす!誰一人欠ける事なく戻ってくるぜ桃子さん。――準備は良いか、時坂!



「応!!行こうぜ、志緒先輩!!」



其のまま、玄関を飛び出したら、既に柊達も待っていたみてぇだな?勿論なのはも。
お前達も聞いたんだな、助けを求めるあの声を?



「はい、バッチリ聞きました!
 そして、あのSOSを出したのが、あのフェレット君だとしたら、場所は槙原動物病院とみて間違いないと思います!!」

「流石に、聞こえた以上、無視するってのは後味が悪いからね……今回の件を、本格的に攻略開始だね。」



如何やら、気合は十分みてぇだな?
だったら、何も言う事はねぇ……槇原動物病院に乗り込んで、SOSを出した奴を助けつつ、面倒な相手が居たら、其れをブッ飛ばす。やる事は、シンプル極まりねぇ!



「ですよね…!!」

「なんか、燃えて来たわね!!



良いノリだぜなのは、玖我山。――さぁ、行くぜ!!








――――――








Side:なのは


と言う訳で、槇原動物病院に到着したんだけど……此れは一体何なの!?
動物病院の壁は吹き飛び、空のケージが彼方此方に散乱してるって言う、この光景は、まるで今此処で巨大災害が起きたんじゃないのかと思う位のレベルなの!



「コイツは……流石に無視できるレベルじゃねぇな…!」

「まさか、此処まで破壊するなんて……幾らなんでも信じられません!!」



志緒さんと空さんの言う事は尤もだよ。――だからこそ、早急に何とかしないとならない!!



「だが、此の異常な状況のお蔭で、ソウルデヴァイスを使う事が出来そうだぜ……吠えろ『ヴォーパルウェポン』!!!」



――バキィィィィィン!!



って、其れは何ですか志緒さん!?
いや、剣だって言う事は分かるんですけど、その大きさは軽く志緒さんの身長を超えてますよね!?其れが、志緒さんの武器なんですか!?その超大型の剣が!!



「その通り、コイツが俺の武器だ。
 適格者として覚醒して手に入れたもんだが、まるで昔から使ってたみたいに手に馴染んでやがるからな……コイツで叩き潰せねぇ物は存在しないぜ!!」

「そ、其れは凄いと思うの……」

「ソウルデヴァイスってのは、使用者の魂に呼応して尤も適した形状の武器で顕現するらしいからな――此れが俺の魂の形って事だ!!どぉぉぉらぁ!!」



――ズバァァァァァァァァァァァァァ!!!



凄い!一撃で、黒い化け物を切り裂いた!!!志緒さんの強さは、やっぱり半端な物じゃないよ!!
うぅん、志緒さんだけじゃなく洸さんも、明日香さんも、璃音さんも、美月さんも、空さんも、祐騎さん、夫々が的確に自分の役目を熟して、黒い化け物を追い詰めてる。



「な、何て人達だ……ジュエルシードの暴走体に対してあそこま戦う事が出来るなんて、驚く限りだよ……」

「フェレット君!」

目が覚めたの!?って言うか、無事だったんだ……良かった~~~!!



「な、何とかね……でも、助けに来てくれたんだ……ダメもとで、無差別に念話を飛ばした甲斐が有ったって言うところかな?
 最悪の場合は、自分で何とかする心算だったんだけど、此処までの戦力が来てくれるとは、流石に予想すらしてなかった言うところだね……」



「おぉらぁあ!!イグニス……ブレイク!!!

「せいや!アンカースライド!!



現に、志緒さんと洸さんは、破竹の勢いで、黒い化け物を撃滅居てるからね……本気で志緒さんに勝てる人がいるのか如何か怪しくなってきた感じなの。



「凄いけど、凄いけど幾ら外を攻撃したって無駄だ。
 今のままじゃ、ダメだ……アレは封印しないと、駄目なんだ!!」

「なら、如何すりゃいいんだ、フェレット?」



うわぁ!?し、志緒さん!?



「驚かせちまったか?……だが、俺達の攻撃で倒せないとすれば、如何すりゃいんだフェレット?
 あんな化け物に後れを取る俺等じゃねぇが、だからと言って無限に戦う事が出来るかと問われたらソイツは否だ…幾ら俺でも、体力の限界ってモノはあるからな。」

「確かに志緒さんでも、何時かは体力の限界は来るからね……具体的に如何すればいいの?」

「此れを!」



此れは?この赤い宝石みたいのは……



「貴女には素質があります……アレを、ジュエルシードの暴走体を封印できる素質が!!だから、力を貸してください!!」

「……勿論だよフェレット君!
 困ってる人を見たら、手を差し伸べろ、自分に出来る事が有るなら迷わずにやれ……少し違うかもしれないけど、此れが私のBLAZE魂なの!!」

「は、言うじゃねぇかなのは?迷いもなくそんな事を言うとは、本気でお前は、立派なBLAZEの一員だぜ!
 何をするかは知らねぇが、とっとと準備を済ませちまいな――準備が終わるまでの露払いは、俺達X.R.Cが務めてやるからなぁ!!フレアスラッシュ!!!



――ドゴォォォォォン!!



志緒さん……お願いします!!
それで、如何すればいいのフェレット君?



「其れを手に取って、そして僕の詠唱に続いてください!!」

「此れを手に取って……うん、分かったよ!!」

「其れじゃあ行くよ?……『我、使命を受けし者なり』。」



我、使命を受けし者なり。



「『契約のもと、その力を解き放て。』」



契約のもと、その力を解き放て……



「『風は空に、星は天に。』」



風は空に……星は天に!



「『そして不屈の心はこの胸に、この手に魔法を。』」



そして不屈の心はこの胸に……!!この手に魔法を――レイジングハート、セットアップ!!!


『All right.Standby ready Setup.』



――ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!



身体の底から感じるよ、大きな力と、其れが目を覚ましたんだって言う事が!!



「如何やらやったみてぇだな?……大したモンだぜ。」

「なのはちゃん………まさか、本当に適格者だったなんて!!
 しかもこの魔力は、私の魔力を遥かに上回ってる――其れこそ、璃音さんにも匹敵するほどの巨大な魔力を秘めているわ、なのはちゃんは!!!」

「おぉ~~、凄いねなのはちゃん♪」



如何やら上手く行ったみたいなの。――だったら、此処からが本番!
折角『力』を手に入れたんだから、その力は、正しい事の為に使ってこそ!!先ずは、この状況を何とかするのが最優先だからね……全力で、やってやるの!!!


高町なのは9歳、本日より『魔法少女』を始めます!!













 To Be Continued…