Side:志緒


取り敢えず、最大の山場は終わったか。
事が終わった際に、はやては気を失っちまったが、其れも魔導書に囚われてた事と、目覚めたばかりの馬鹿デカい力を行き成り使った事が原
因で、身体其の物の異常じゃねぇから一安心だぜ。



「此処に居たのか高幡。」

「シグナムか。……はやてと一緒じゃなくていいのか?」

「主はやては、今は眠っておられるからな。
 其れよりも、此度の事、心から礼を言わせてくれ。お前達がいなかったら、私達は『また』繰り返す羽目になって居ただろう。忘れていたと言う
 のは言い訳にもならないが、あのまま蒐集を行っていたら、私達は主はやてを死なせてしまっていたからな。」



まぁ、忘れてたんじゃしょうがねぇだろ?
やっちゃいけない事でも、其れがダメだって事を忘れてたんじゃしょうがねぇ――何にしても、こうして何とか無事に終わったんだから、それで良
しとしておこうぜ?



「そうだな。
 其れとは別に高幡、今更虫が良いかもしれないが、私と友となってはくれないだろうか?
 お前との戦いは、義務や責任を放り出してでも戦いたいと思う物があった、とても楽しかったのだ……今度は敵としてではなく、友としてお前と
 戦いたい……ダメだろうか?」

「何を言ってやがる、俺達はとっくにダチだろうが。
 テメェの本気を出してタイマン張ったらダチ公だぜ?少なくとも、俺はそう思ってる。
 それ以上に、強敵相手に一緒に戦ったんだ。そんな奴をダチと言わずに何と言うってな――もう、俺達はダチだぜシグナム?」

「はは……はははははは!そうか、そう来たか!!
 そんな事、考えた事もなかった――では、此れから宜しく頼むぞ高幡。」

「あぁ、こっちこそな。」

仲間ってのは、居て居すぎる事はねぇからな。










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE68
『祝福の風、旅路を微笑み行けるよう』










Side:明日香


それでクロノ執務官、今回の事件は最終的にどのようになったのかしら?
あの途轍もない力を持った、闇の書グリードは消滅させる事に成功したけれど、だからと言って蒐集活動を行ってた騎士達を無罪放免と言う訳
にも行かないんじゃないかしら?



「確かに無罪放免とは言えないが、今回の事に関しては汲むべき事情もあるから、何とか保護監察で済むようにしてみるよ。
 尤も、その為にはリンディ提督とレティ提督の力添えに加えて、グレアム提督の力も借りる事に成ってしまうだろうけどね……ま、漸く闇の書と
 の因縁が終わりになるんだから此れ位は当然さ。」

「そうですか。……ですが、夜天の魔導書そのものはどうなるのでしょう?
 如何にバグを取り除いたとはいえ、アレは稀代のロストロギアですから、はやてちゃんの手の下に置いておきたくはないのでは?」



鋭いわね美月さん――でも、確かに其の通りよクロノ執務官。
その辺はどうなっているの?



「……確かに置いておきたくはないが、其れについての解決策はもうできている。
 と言うよりも、出来てしまったと言う方が正しいか――確かに、今回の事で魔導書の防衛プログラムは砕かれたが、長い年月一緒に居た事で
 書の管制人格その物に、防衛プログラムのデータが残ってしまったんだ。
 このまま放置すれば、何れ第2、第3のナハトが現れるだろう……だから、そうなる前に夜天の魔導書そのものを破壊する。」

「「!!!!」」


そんな、本気なの!
彼女は、永いこと苦しんで、そして漸く安息の地を見つけたと言うのに、其れなのに其れを終わらせてしまうと言うの!!



「彼女の、頼みなんだ!
 自分が生きていたら、何れまたナハトが現れてしまうから、そうならない様に自分を消してくれって……全ては、はやてが無事に生きられる様
 にって……!!」

「そんな……」

「自己犠牲…ですか。」

「あぁ、言ってしまうとその通りだ。
 だが、書を終わらせる為には儀式を執り行う必要があるらしいんだ――儀式の事で、彼女から君達2人に直々の願いを頼まれている。」

「お願い、ですか?」

「私と美月さんに?」

一体、どんなお願いがあるって言うのかしら?








――――――








Side:リインフォース


将、お前とは随分永く一緒に居たが、こうして話をするなど一体どれ程ぶりなのだろうな……最後に話したのは何時だったが、もう思い出す事
も出来ない位の時が経ってしまったのだろうね。



「そうだな……其れ程の時が経ってしまったのだろうな。
 ………その……スマン、何を言っていいのか分からない。」

「変わらないな将は。
 時に、将が戦っていたあの大剣の大男は、今如何して居るんだ?」

「高幡の事か?……今は、主はやてや高町達、他の仲間達と共に寝ているんじゃないか?
 アレだけの相手を相手に大立ち回りをしたんだ、事が済めば疲労が一気に襲って来たとて何もおかしい事は無い……寧ろ、最悪の場合にな
 った際に動けるように、余力を残しながら戦っていた柊と北都の方がこの場合は少数派だろう。」

「其れは、確かにその通りかもしれないな。」

そんな彼女達だからこそ、大事な役目をお願いする事が出来たのだから。



「リインフォースさん……」

「……来てくれたか。待っていたよ。」

「いえ、そんな。
 ですが、貴女は本当に此れでいいのですか?防衛プログラムの再構築は、何とかする術が存在して居るかも知れません……其れが見つか
 るまでは、存在していても良いのではないでしょうか?
 自己消滅は、本当に最後の手段として残しておいても……」



確かに、その方法もアリかも知れないが、防衛プログラムがドレだけの速さで再構築されるかは私にも分からないんだ。
其れこそ明日かも知れないし、100年先の事かもしれない……再構築の時期が遅れるのならば問題は無いが、早まった場合には再び今回の
ような、未曾有の脅威が訪れるだろう。
その危険性を回避する為にも、終わるべきなんだ私は……



「其れでも……いえ、それが貴女の覚悟であると言うのなら。
 でも、貴女を送るのが私達で良かったのかしら?」

「こう言っては何だが、我が主やお前の仲間達は『必要だから』で納得できる者達ではないだろう?
 お前達を冷徹だと言っている訳じゃないが、如何足掻いても10を助ける為に1を斬り捨てる必要がある場合、其れを行うことが出来る。
 それでいながら、斬り捨てた者の事を忘れないことが出来る……だから、お前達にお願いしたいんだ。」

其れに、騎士達とお前達以外の全員が寝ている今なら好都合だ。
今の内に私が消えてしまえば、『夜天の魔導書は、損傷が激しくて一晩の間に崩壊してしまった』と言う事が出来るからね……我が主も、其れ
ならば諦めもつく筈だ。



「ですが……矢張り悲しいですね。」

「そう思うなら、私の事を忘れないでくれれば其れで良い。
 誰かが忘れないでいてくれれば、この身は消えても私と言う存在が消える事は無い……誰かの記憶の中で生き続ける事が出来るからな。」

さて、お喋りはここまでにしておこう。
星が瞬き、月が照らす今宵は、旅立つには最高の夜だ――夜天の魔導書の、終焉だな。








――――――








Side:志緒


「「「「「「「「!?」」」」」」」」


何だ、今の感覚は?
事が終わって、病院に戻ってきたら、流石の激戦の疲れが一気に出てきてそのまま眠っちまったんだが、妙な感覚がして目が覚めちまったみ
たいだな、俺達全員。



「そうみたいっすね……だけど今のは一体?」

「おっきなまりょくがはつどーした感じだったけど?」

「でも、一体誰が?」

「其れが分かれば苦労はしねぇんだが……ん?如何したはやて?」

「リインフォース……今の魔力はリインフォースや!!
 アカン、あの子何かとんでもない事しようとしてる気がする!!急いで、あの子の所に行かんと!!」



何だと!?
何をするかは知らねぇが、トンでもねぇ事ってのは見過ごせねぇな?――はやて、アイツが今何処にいるか、其れはお前なら大体分かるか?



「分かるで志緒さん!!」

「其れなら善は急げだ、外に停めといた特殊装甲車使って行くぞ!
 郁島ははやてを背負って、時坂は車椅子折りたたんで持って来い!残りの連中は兎に角車に乗り込めや!!!」

「はい!失礼しますね、はやてちゃん!」

「此れ位、ビールケース2箱に比べたら軽いぜ!!」

「最終エンディングイベントを見逃す事は出来ないよね?」

「カーテンコールは皆でね!!」

「行きましょう志緒さん!」

「よっしゃー!れっつご~~~!!」



よし、全員乗り込んだな?其れじゃあ行くぜ!!!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



んで、車かっ飛ばす事5分、目的地に到着したぜ。(スピード違反?見つからなきゃ問題ねぇだろ。)
だが、到着した場所では何やら行われてるみてぇだな?……てか北都に柊、お前等まで何してやがるんだ一体?如何考えても、此れは穏や
かなモンじゃねぇだろ!!



「リインフォース!!」

「我が主……来てしまわれたのですね?」

「当たり前や!!
 何しようとしてんのやアンタ!!此れは……この儀式は夜天の魔導書の管制人格を消し去る為のモンやないか!なんで、如何してこんな!」



何だと!?
一体如何言う心算だテメェ……漸く、悠久の呪いから解放されたってのに、自分から消えようとするってのは如何言う了見だ?事と次第によっ
ちゃ、北都と柊の意識を刈り取ってでも儀式を止めるぞ!!



「……確かに、皆のおかげで私は救われました。
 ですが、ナハトは私を大きく浸食し、本隊が消え去った後でも私の中にはナハトの欠片が残ってしまっている……故に、私の持つ無限再生プ
 ログラムがナハトを再生しないとも限らない。
 だから、そうなる前に、私共々ナハトの欠片を消してしまうのが最上策なのです、主はやて。」

「そんなん嫌や!認めへん!!
 やっと、やっと解放されたんやで?すべてはこれからやのに、何でアンタが消えなあかんねん!!今すぐ儀式を止めて!
 此れは命令や!!主の命令が聞けんのかーーーー!!!!」

「ならば、私はその命令を拒否します……如何か聞き分けを、我が主。世界の為にも、これが最もベストな手段なのです。分かって下さい。」



其れは……確かにこの世界の為にはそうかも知れねぇが……!!



「……ふざけんな。」

「時坂?」

「コウ?」

「「洸さん?」」

「「洸先輩?」」

「時坂君?」

「洸君?」

「アンタの言い分は良く分かったし、この世界の事を考えたらアンタの選択ってのが一番いいんだろうさ。
 だけど、残されたはやてちゃんはどうなる?お前が世界の為にって自分を犠牲にして消えるのは勝手だが、お前が消えた事ではやてちゃん
 の心にはドレだけのショックが残るか分かるのかよ!!
 お前が、自分を犠牲にして世界を護っても、残された者にはずっと『失った悲しみ』と『なくした事による空虚な思い』が残るんだぞ!!
 はやてちゃんに、其れを背負わせる心算なのかお前は!!!」



時坂……お前が言うと、説得力があるぜ。
お前も、倉敷を失ってから暫くは抜け殻みたいだったからな……奇跡が起きて倉敷は復活したが、もしそれが無かったら時坂は潰れてたかも
知れないわけだしよ。



「其れでも、私はナハトが再び復活して破壊の限りを尽くす事の方が怖い。
 単純な計算だよ……この星の100億を超える人間の命と、私1人ならば、何方を選ぶのが正解かは火を見るよりも明らかだ……私は、二度
 と世界を壊したくはない……だから、此れで良いんだ。」

「嫌や!逝ったらアカン!!」

「……如何か聞き分けを我が主。駄々っ子は、友人に嫌われます。
 其れに、私はこの世界で貴女から沢山の物を貰いました……優しい心、諦めない強さ、そして私の新たな名……感謝してもしきれません。」

「テメェは、本当に其れで良いのかよ?」

「私の望みは、主はやての幸福だ。
 この場は哀しみを与えてしまう事に成るが、その先には必ずや代えがたい幸福が待っているさ。
 ……我が主、一つだけお願いがあります。
 私は消え、無力な小さな欠片となるでしょう……ですが、如何か私の後継機となる存在を作り、祝福の風の名を其の子に継がせてあげてくだ
 さい……其れが、私の願いです。」

「待って!待って、リインフォース!!」



此れは……オイ北都、柊!儀式を止めろ!止めねぇか!!!



「其れは出来ません高幡君……」

「此れが、彼女の覚悟……其れを無碍にする事は出来ないんです……!!それが、例えはやてちゃんを哀しませる事に成っても!!
 はやてちゃんの為に、自らを差し出す事を選んだその覚悟は……無視できない!!」



テメェ……止めろって、言ってんだろうが!!



――バァァァン!!

――ガキィィィン!!




馬鹿な!俺のヴォーパルウェポンでも砕けねぇ結界だと!?……誰にも、儀式は邪魔させねぇって事か!!



「此れで良い、此れで良いんだ。
 ありがとう、騎士達、強き勇者達、そして我が主……お前達が居たからこそ私は逝ける。
 我は夜天の魔導書の管制人格リインフォース。祝福の風、旅路を微笑み行けるよ……私は、世界で一番幸せな魔導書だ。」

「おい、待ちやがれ!!」

「それではな……」



――シュゥゥゥン……カラン……



消えちまった……残ったのは、空から落ちて来た剣十字のネックレスか……



「リインフォース……リインフォースーーーーーー!!!!」

「はやて……」

「はやてちゃん……」

「御免なさいね、はやてちゃん……」

「私と美月さんの事、恨んでくれて構わないわ……」



北都と柊は、汚れ役を買って出たって言う所か。
だが、此れで終わりなのか?確かに、もう闇の書が復活する事は無いだろうが、その対価がはやての哀しみとアイツの存在ってのは余りにも
デカすぎんだろ?

本当にこれで終わりなのか?……居るなら教えてくれよ、神様――少なくとも、俺はこんな結末なんて、絶対に認めねぇからな!!












 To Be Continued…