Side:洸


『ぐ……ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』



なんだ?戦ってたグリードが、行き成り苦しみ出して、そんでもって消えちまった……此れは一体、何がどうなってるってんだ?俺と璃音の所だ
けじゃなくて、明日香や空の方でもグリードが消えちまったみてぇだし……



「洸君、アレ!志緒先輩とフェイトちゃんが戻って来てる!」

「マジか璃音!」

はは……はははは!吸収されてそれで終わりじゃねぇとは思ってたけど、本当に戻って来るとは、本気で凄すぎるぜ志緒先輩は!其れと同じ
位、フェイトちゃんも凄いけどな。

其れに、よく見るとなのはちゃんが戦ってた闇の書の意志ってのが見当たらない……此れは若しかして、戻って来た志緒先輩とフェイトちゃん、
そんで今まで頑張ってたなのはちゃんの合体攻撃でアイツを吹き飛ばしちまったか?



「かもね?アタシ等が戦ってたグリードが消えたのも、その影響かも。
 でも、まだ異界化は沈静してないから、これで終わりって訳じゃないんだと思う…最高のステージのクライマックスに向けて、頑張ろう洸君!」

「勿論だぜ璃音!」

志緒先輩達が戻って来たって言う事は、絶望を乗り越えたって事だからな!!クライマックスは此処からだぜ!!










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE67
『Sacred Force~闇を討つ力~』










Side:はやて


どうやら、巧く行ったみたいやな……あの真っ暗な空間が消し飛んで、今は真っ白な空間に居るからね。大成功やったやろ、リインフォース?



「祝福の風、リインフォース。この身に変えても、貴女をお守りします。
 ですが、ナハトの暴走は止まりません。切り離されたグリードの力を取り込んでその力を増し、其の力で全てを飲み込んでしまうでしょう……」

「ん~~……まぁ、何とかしよ。行こうか、リインフォース。」

「!!……はい、我が主!!」



夜天の魔導書の歴史が、呪われた歴史言うのなら、其れは今日でお終いや。
呪われた魔導書は、その呪いを超えて、呪いを討ち滅ぼして本来の姿を取り戻す――今日からが、夜天の魔導書の始まりの日になるんや!

「管理者権限発動。リンカーコア復帰、守護騎士破損回帰。」

やから、先ずは皆を取り戻さんとな……おいで、私の騎士達!!








――――――








Side:志緒


ユーノに言われたように、全力で黒い塊を吹き飛ばしてやった訳だが……さて、巧く行ったかどうか。取り敢えず、アイツを吹き飛ばす事は出来
たみたいだがな。


――ズドォォォォォォン!!


と、爆発点から4色の魔力の柱が海に突き刺さったか?……そんでもって、その柱の発生先にはベルカ式の魔法陣の上に立つ守護騎士!!
どうやら、巧く行ったみてぇだな?

という事は、はやてもきっと――!


――ピキ…パキ……バリィィィィィン!!


その中央に現れた白銀の球体の中から現れやがったか!!



「はやてーーー!」

「はやてちゃん!!」




「皆……ありがとう。
 夜天の空に祝福を!リインフォース、ユニゾン・イン!!」


――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


此れは、コイツは凄まじい力だな!?……これが、真の覚醒を果たした夜天の主の力って事か?魔力のデカさだけなら、なのはよりも上だぜ。
ったく、はやてもなのはやフェイト同様にトンでもねぇ奴だって事か。

其の力が治まった時には、はやての奴も防具服を身に纏って、背中に6枚の黒の翼を生やし、更には髪と目の色が変わってたからな。
取り敢えず、お前さんが無事でよかったぜ。――と、赤毛のチビ助が、感極まってはやてに抱き付いたか……まぁ、その気持ちは分かるがな。



「志緒先輩無事だったんすね!!」

「吸収されても戻って来るとは、流石は志緒先輩!フェイトちゃんもグレートだよ!」

「なのはちゃんも、よく頑張ったわ!」



時坂達か!
ワリィな、まさか取り込まれちまうとは思ってなかったもんでな……だが、俺とフェイトが戻って来るまでなのは共々、よく持ち堪えてくれたぜ。
だが、此れで全部が終わった訳じゃねぇ。海鳴の異界化は、まだ終息してねぇ訳だからな?……さて、此処からどうしたモンか?



「スマナイ、水を注してしまうんだが。」

「いや、逆に良いタイミングかも知れないぜクロノ?リンディさんに連絡入れようと思ってた所だからな?」

「それなら良いんだが。
 君達には名乗っておこう、時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンだ。あの黒い塊は、闇の書の防衛プログラムで、後数分で暴走する――間
 違いないか?」

「うん。自動防衛プログラム・ナハトヴァールと、異界の力の融合体。」

異界の力と融合したナハトは、周囲の物質を侵食して己の一部として行く。
 臨界点が訪れなければ、この星くらいは呑み込んでしまう可能性がある。



はやての肩に居るのは……闇の書の意志、なのか?
さっき戦ってた時の様な、禍々しい紋様もねぇし、目付きがまるで違うから別人に感じるが、あの特徴的な銀髪と紅目は間違いねぇよな?



「此の子は、此れからリインフォースって呼んだってや♪」

「リインフォースか……悪くねぇ、名前だな。
 しかしだ、一難去ってじゃねぇが、まだトンデモねぇ化け物が残ってやがるみたいじゃねぇか?一筋縄でいく相手じゃねぇだろうが、策はあるの
 かクロノ?」

「停止のプランは用意してある。後は此方に任せて――と言いたい所だが、戦力は多い方が良い。
 主と守護騎士の皆は、書の呪いを終わらせるため、志緒となのは達は、この世界を守るため、力を貸してほしい。お願いできるか?」



ハッ!何当然の事を聞いていやがるクロノ!
この世界をぶっ壊そうとする化け物を叩きのめすのに、手を貸さねぇ筈がねぇだろ!!なのは達だって、異論はねぇよな?



「勿論です!!」

「よっしゃー!やってやるぞ!!!」

「書の呪い、此処で全部断ち切らへんとね!」

「真のラスボス戦か、面白そうじゃん?」

「此処まで来たら、やってやるしかねぇ!どんな反則モンスターでも来やがれってんだ!!」

「天使を宿したアイドルの力、見せてあげるわ!!」

「守護騎士の将として、この事態、収束させねばな。」

「邪魔する奴はぶっ叩く!!そんだけだ!!」



満場一致って奴だ!!
此れがホントに最後の戦いになるだろうからな……此れまで以上に、全力全壊の気合を入れて行くとしようぜ!!!








――――――








No Side


クロノに少し遅れる形で、ユーノとアルフも合流し、ラストバトルに参加するメンバーが此れで揃い、後は討つべき相手が現れるのを待つだけ。
既に作戦も、出来上がっている様だ。


「先ず、ナハトが展開する多重防御を破壊。」

「んで、そのあとで本体をそーこーげきして、コアをろしゅつ!」

「そして、ユーノ君達が、軌道上のアースラ前までコアを運ぶ!」



「でもって、アルカンシェルで砲撃!消滅!!」

「アルカンシェル、チャージ開始!」

「「「了解!!」」」


地上とアースラで交信を行いながら、作戦の最終確認を行い、同時にリンディはアースラの主砲『アルカンシェル』のエネルギーチャージを命令。
準備は着々と進んでいる。


「そうや!戦いの前に……シャマル!」

「はい、皆さんの治療ですね?
 クラールヴィント、本領発揮よ。風よ、癒しの恵みを運んで。」


そして、作戦開始前に、シャマルが癒しの風で回復を行い、なのはや洸達が戦いで負った傷を癒し、体力を回復していく。
その効果は一般的な治癒魔法を大きく上回り、傷の治癒と体力回復だけでなく、破損したバリアジャケットまでをも修復して行ったのだから、正
に圧巻と言うほかないだろう。


「凄い……!」

「ありがとー、シャマル~~!」

「湖の騎士シャマルと、風のリングクラールヴィント、癒しと補助が本分です♪」


これで、一行は本来の力の全てを出す事が出来るだろう。



「コア露出までは、アタシ達がサポートだ……巧い事、動きを止めるよ!」

「うん!」

「あぁ。」


アルフ、ユーノ、ザフィーラが、黒い淀みを取り囲み、スタンバイはOK!
それと同時に、黒い淀みから闇色の魔力が溢れ出し、禍々しい力が増幅して行く……いよいよラストバトルスタートだ。


「始まる……」

「夜天の魔導書を、闇の書と呼ばせた防衛プログラム・ナハトヴァールの異界吸収暴走体――闇の書の闇!」



『グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』


――10S級XYZグリード:闇の書の闇



黒い淀みから現れたのは、まるでこの世の負の存在を全て融合したかのような存在だった。
蜘蛛を思わせる巨大な身体には、8本の足の他に無数の触手が生え、本体には頭部の8つの複眼の他に、複数の単眼がギョロ付き不気味さ
を増幅させている。
更に、触手だけでなく10本もの蛇の頭がうねり、硬質の10枚の翼を背に持ち、極めつけは蜘蛛の頭部からは人間の女性と思しき上半身が生
え、その背後の石柱からは6本の腕が生えている……正に、闇の書の闇と言うに相応しいだろう。


「来たな!!チェーンバインド!

ケージングサークル!!

囲め、鋼の軛!!」


現れた闇の書の闇に対し、先制攻撃としてアルフとユーノがバインドで拘束し、ザフィーラが鋼の軛で串刺しにして動きを止めようとする。
が、流石に其の位で止まる相手ではなく、高速を無理矢理引き千切ると、蛇の頭から闇色の砲撃を放って攻撃開始!!

その攻撃は志緒達に向かうが、一行は着弾前に離脱し、逆に攻勢に転じる。


「先陣突破!ヴィータちゃん、なのはちゃん、空ちゃん、璃音ちゃん、祐騎君、お願い!!」

「任せとけ!!……合わせろよ、高町なのは?」

「うん!」

「全力で行きます!」

「任せなさい!」

「しょうがないなぁ!」


先ずは第一陣としてなのは、ヴィータ、空、祐騎、璃音が出撃!


アクセルシューターバニシングシフト!

『lock-on.』

シュート!!

「吹き飛べ!セラフィム、ハーツ!!

「はぁぁぁ……風塵虎吼掌!!


闇の書の闇からの攻撃を、なのはの誘導弾、璃音の拡散ビーム、空の直射気弾で完全相殺し、更に貫通した攻撃が本隊にもダメージを与え
て行く。


「やるぞアイゼン!!」

『Jawohl.』

「轟天爆砕!!」

『Explosion.』

ギガントシュラーク!!!!

「喰らえ、ヴァリアブルメテオ!!」


更に追撃として、ヴィータのギガントシュラークと、祐騎のヴァリアブルメテオが炸裂し、多重障壁の一段目を破壊!
だが、此れはあくまでも第一段階に過ぎない。


「シグナム、フェイトちゃん、洸君!!」


「やるぞ、テスタロッサ、時坂。」

「よっしゃー、まかせろブシドー!」

「上等だぜ!」


第2陣は、シグナムとフェイトと洸だ。
トライアングルの陣形で闇の書の闇を取り囲むと、一気にその闘気を解放する。真紅、蒼銀、紅蓮の3つの闘気は、其れこそ大気を焦がさんば
かりに凄まじい。

洸は何時も通りだが、シグナムはレヴァンティンをボーゲンフォルムに、フェイトはバルディッシュをザンバーフォームに夫々換装し、準備万端!


翔けよ、隼!!

『Sturmfalken.』


いっくぞー!しっぷーじんらーい!!

『Jet Zamber.』


「うおぉぉぉぉ……エクステンドギア!!


シグナムの放った炎の矢、フェイトの雷神の斬撃、洸の爆炎の一撃を受けて、闇の書の闇は炎上する。
誰もが『やったか?』と思ったが、此の位で何とかなるのならば、とっくの昔に闇の書は如何にかされていただろう……この攻撃を受けても闇の
書の闇はくたばらず、新たに多重障壁を構成して浮かび上がる。

だが、そうは問屋が卸さない。


「ぬおぉぉぉ!でぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「大人しく這いつくばってろ、此のデカブツが!!」



浮上し始めた闇の書の闇を、志緒とザフィーラが強襲し、破壊力抜群の斬撃と拳打で、新たに展開した障壁を粉砕して再び地面に叩き落す。


「はやてちゃん!美月ちゃん!!」


更なる追撃を行うのは、待機中のはやてと美月だ。


「彼方より来たれ、宿り木の枝…」

銀月の槍となりて撃ち貫け!

「『石化の槍、ミストルティン!!』」

「刃よ!」


遥か上空から放たれた石化の槍と麻痺の矢は、闇の書の闇を撃ち貫き、刺さった場所から石化し、麻痺効果で飛行能力ですら奪うに至った。
だが、其れでもまだ終わらない。

闇の書の闇は石化した部分を自ら切り離し、そして新たに生体部品を再構築して現れたのだ。


そのしぶとさにはある意味で敬意を払うが、しかしながら矢張り相手が悪い。
空間の一角にて、クロノと明日香は其処に陣取っていたのだ――最大級の一撃を放って闇の書の闇の動きを完全に封じ込める為に!!


「第一、第二、第三拘束術式解放。」


魔法陣の上に片膝立ちとなった明日香は、自身に施されていた拘束術式を解放し、己の力を100%解き放つ。
腕に、足に、そして顔に金色の紋様が浮かび、瞳の色も金色に変化している。

それと同時に、クロノもリンディ経由で手に入れたデュランダルを展開し、最強の一撃を放つ準備を完了しているのだ。


「終焉の魔剣、コールドアポクリファ!

凍てつけぇ!!

『Eternal Coffin.』


放たれた2つの絶対零度魔法の威力はすさまじく、闇の書の闇のみならず、其れが浮かんでいた海上ですら瞬く間に氷の大地へと変えてしま
ったのだ。
そして此れは最大の好機と言えるだろう。


「なのは、フェイト、はやて!!」


クロノに呼ばれた3人は、既に最大の一撃を放つ準備を完了していた。


『Starlight Breaker.』

「全力全壊、スターライトォォォォ……!」


『Plasma Zamber.』

「雷光一閃、プラズマザンバー!!って言うか、雷神滅殺極光斬!!」


「ごめんな、お休みな――響け終焉の笛、ラグナロク……!!」


「「「ブレイカーーーーーーー!!!」」」



なのはもフェイトも、そしてはやてにも一切の迷いはない!
放たれた、3種類の性質の異なる砲撃は、氷漬けになった闇の書の闇を問答無用でブチ砕き、生体部品を破壊していく。

同時にシャマルは『旅の鏡』を発動して、ナハトヴァールのコアを探る。
如何にシャマルと言えども、其れは簡単な事ではないだろうが、クラールヴィントの最強レベルのサポートがあれば造作もない事だろう。


「!!捕まえた!!」

モノの数十秒でコアを探り当て、そして分離する。


「長距離転送!」

「目標、軌道上!!」


同時にユーノとアルフがコアを転送し、アースラ前に送る。




其れに対し、アースラの対応は迅速極まりない。


「コアの転送、来ます!」

「転送されながら、生体部品を修復中……は、早い!!」

転送されながらも修復を続ける闇の書の闇に戦慄するが、しかしオペレーションには一切の乱れが無いのだ。


「アルカンシェル、バレル展開!!」

「ファイアリングロックシステム、起動!」

アルカンシェルの発射準備が整ったところで、転送されたコアがアースラの前に現れる。


衛星サイズにまで巨大化した其れは、既に生物の形は残っておらず、醜悪な肉塊となり果てていた、人の闇と欲望その物の姿形だった。
故にリンディは、此れを滅する事に一切の迷いはない。――まして、此れで夫の仇を取れるとなれば尚更の事だ。


「アルカンシェル……発射!!」

万感の思いを詰めた一撃が闇の書の闇を打ちすえ、そして激しいエネルギーの高まりが起こり、そして――


――バガァァァァァン!!!


闇の書の闇は爆発四散!!
疑いようもなく完全爆砕し、アースラの観測機でも、再生の兆候はない事が明らかになっていた――遂に闇の書の闇はこの世から姿を消した
のだった。




その結果は地上にも伝えられ、全員の顔に笑みが浮かぶ。

当然はやての顔にも笑みが浮かぶが……


――ヴォン……


「え?…我が主、今融合を解かれては……」


――グラ……


はやてとリインフォースの融合状態が解除され、其れと同時になのはがグラついて空中から落ちる。


「おぉっと、あぶねぇな?……行き成りデカい力を使って、流石に疲れちまったか?」


だが、其れを危機一髪志緒が受け止め、こと無きを得る。
如何やら融合状態の強制解除は、はやての疲労が限界を迎えた故の事だったらしく、志緒の腕の中のはやては、静かに寝息を立てていた。

ともあれ、闇の書の闇は完全に砕かれ、1000年にわたる呪いは、今此処に完全に粉砕されたのだった。












 To Be Continued…