――匣:転生の道


Side:志緒


チーム分けして、夫々の扉に突入した訳なんだが……コイツは、中々に攻略しがいのありそうな迷宮じゃねぇか?
最後の柱の様な不気味さはねぇが、その代わりに神格化されんじゃねぇかと誤解しちまう位の威厳を内包してやがるとは……マッタク持って恐れ
居るこった。

だが、だからと言って俺達が此処で止まる道理はねぇ!
いや、他の3つのルートに進んだ奴等だって、ドンだけトンデモねぇ異界迷宮が現れたとしたって、諦めずに絶対にゴールまで辿り着く筈だぜ!
そして、俺達だって止まる事は出来ねぇ……初っ端から飛ばしていくぞ、なのは、フェイト!!



「了解です志緒さん!!全力全壊、全てをなぎ倒していきましょう!!」

「よっしゃー、僕のぱわーを見せてやるから覚悟しろーー!!
 さぁ、いかいめーきゅーのぐりーど共、かかってこーい!!僕がまとめてけちらしてやるぞ!!あ~~~っはっはっはっはっはーーー!!!!」


「……かかって来いと言いつつ、テメェから突撃するってのは如何なんだオイ?」

「良いんじゃないですか?フェイトちゃんだし?」

「……フェイトじゃ仕方ねぇな。」

なのはの言い分も大概だが、それで納得する俺も、フェイトの彼是には大分慣れちまったって事なんだろうな……まぁ、アイツには思うように動い
て貰った方が、色々楽ではあるけどな。

何にしても、コイツがラストボス前の最後の迷宮だ……サクッと行くとしようぜ!










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE63
『匣迷宮を突破して突き進め!』










No Side


匣の内部に突入し、それぞれ異なる異界迷宮の攻略した志緒達だが、此処は最終迷宮だけに一筋縄では行かない――いや、行く筈がない。
その筈なのだが……



――匣:幽界の路


第一の扉に進んだ空と祐騎は、見事なコンビネーションで、異界迷宮を攻略していた。
前衛に空、後衛に祐騎と言う、一般的に想像される前衛後衛コンビとは役割が逆なんじゃないかとも思われるが、空と祐騎に限ってはこの布陣
の方が、お互いに力を発揮できるのだ。


轟雷撃!!

「それそれそれ!弾幕弾幕!!


郁島流空手の継承者である空の物理攻撃力は、X.R.Cの中でも、志緒と双璧を成す程に高く、特に、空気を震わす程の気合を込めた必殺の正拳
突き『轟雷撃』の破壊力は凄まじいの一言に尽きる。
そして祐騎は、そんなバリバリ格闘型の空をサポートする能力に長けていた。
空の技の射程外の敵は、ラムダショットで次々とうち落ちし、空が最適な格闘を出来るようにフィールドを整えていたのだから……実に見事だ。

元々、空と祐騎のタッグは其れなりだったのだが、晴れて恋人同士となった事で、其の力は此れまでよりもより引き出されているのだろう。


「まったくすごいよね空って……そんだけの身体能力なら、此れ出来るんじゃない?試しに次使ってみてよ。」

「此れは……頑張ります!」


そして、余裕の現れか、祐騎は空にサイフォンで、とある格闘ゲームの必殺技動画を見せて、空に使ってくれないかと言っていた……頼む祐騎も
祐騎だが、受ける空も空だろう。

尤も、其れをするほどの敵は現れずに、遂に辿り着いたゴール地点……だが!


『…………』

「此れは……エルダーグリード?でも、どこかで見た事があるような気が……」

「口の広い袖に、ロングスカートに、あの髪型……若しかして、守護騎士のシャマルさん!?」


其処で待ち受けていたのは、エルダーグリードとなったシャマル……と言うよりもシャマルの形をしたエルダーグリードだった。
温厚なシャマルとは違い、その瞳に光は無く、あるのは己が敵と認識した相手を葬ると言う意思のみ……書の暴走が生み出した、最悪のエルダ
ーグリードだった。


「先に進みたいなら、倒せって言う事か……上等だね。
 全力でサポートするから、思い切りやっちゃいなよ空!!」

「了解!!全身全霊で行きます!!」

「……って、今のセリフって、普通は立場逆だよね?」

「気にしちゃダメだよ祐騎君!」


だが、立ち塞がるなら倒すのみ!
先ずは空が一足飛びから轟雷撃を繰り出し、祐騎も霊子核を分裂させると、其れを空の周囲に展開して攻撃と防御が同時に出来るサポートユニ
ットとして配置し、空の剛撃スキルに合わせて鋼属性の魔力弾を発射する。
X.R.Cのメンバーの中で、空の剛撃スキルの破壊力は志緒に次いで高い故に、如何にエルダーグリードであっても真面に喰らえば只では済まな
い。済まないのだが……


「此れは……バリア!?」

「そう言えば、あの人って結界とか得意だったっけ……並外れた防御力って訳か。」


其処はシャマルを模したエルダーグリード。
姿だけでなく、能力もほぼ完全にコピーし、本物のシャマルさながらの結界を展開して、空と祐騎の攻撃をシャットアウトして見せたのだ――と言
うか、障壁破壊効果を持つ、剛撃スキルを受けても砕けないとかトンでもなさすぎである。


「でも、そう言う事なら……さっき祐騎君が見せてくれた動画の技を使うだけです!」

「え、此処で使うの!?」

「勿論です!行きます!」


だが、一撃でダメならばと思った空は、此処でさっき見せて貰った動画の技を使う事にした様だ。
胸元から、アーバングラス(茶色のサングラス)を取り出すと、其れをシャマルグリードに向かって放り投げ、其れが結界に当たると同時に、凄まじ
い勢いでの乱舞攻撃開始!
目にも留まらぬ勢いで、拳と蹴りが結界に叩き込まれ、それと同時に祐騎が展開したサポートユニットからも魔力弾が発射されて、攻撃の手数を
増やしていく……そう、一撃でダメなら壊れるまで殴れである。
単発の剛撃スキルならば防げるとは言え、其れが矢継ぎ早に何発も打ち込まれては、如何にシャマルの結界であっても耐えられる筈がない。


――パリィィィィン!


丁度15発目で、結界が砕け散り、残る連撃は的確にシャマルグリードに炸裂!
どうやら、本物のシャマル同様に、サポート能力には長けても、直接的な戦闘では余り強くないようだ。――或は、必殺のコア抜きがあるのかも
知れないが、この状況下で其れを使うのは殆ど不可能に近いだろう。

なので――


「これで終わりです!!祐騎君!!」

「OK。ヴァリアブルメテオ!!


連撃を終えた空が祐騎に呼びかけ、祐騎は其れに応えるように、空の周りに展開していたユニットを一つに纏めて巨大化させてから、シャマルグ
リードに叩き落す!
此れだけでも充分なダメージだが、やるからには徹底的にだ。


轟雷撃!ハァァァ……天翔脚!!


駄目押しとばかりに、空が轟雷撃→天翔脚のコンボを決め、此れが決定打となってシャマルグリードは沈黙!そして、それと同時に、奥に有った
扉が開き、ゴールのゲートが現れる。


「やったね、祐騎君♪」

「ま、僕達の敵じゃなかったって奴?兎に角、道が開けたみたいだから行こう。」

「うん!」


祐騎と空は、抜群のコンビネーションで、迷宮を突破したのだった。








――――――








――匣:霊界の道



明日香と美月のコンビは、夫々ネメシスの執行者とゾディアックの白の巫女だけあって、全く無駄のないコンビネーションで異界迷宮を苦戦する
事無く進んでいた。
明日香も美月も、何方かと言うと魔法タイプだが、明日香が魔法よりのバランス型でクロスレンジも得意な事で、美月は本来のサポートに徹する
事が出来たと言うのも大きいだろう。


「流石ですね明日香さん、ネメシスの執行者の力、とくと見せて頂きましたよ?」

「美月先輩こそ見事なサポートでした……ゾディアックの白の巫女の名は、伊達ではありませんね。」


明日香が飛翔スキルと剛撃スキルをメインに切り込み、美月が射撃スキルで援護すると言うスタイルは、抜群の相性だったのである。
そして、ゴール目前だが…


『グルルルル……』

「矢張り現れましたか……強力なエルダーグリードですが……」

「筋肉質な身体と、狼の耳と尾……あの守護獣を模したグリードの様ですね。」


此方にも守護騎士を模したエルダーグリードが出現した。
此方に現れたのは、ザフィーラを模したエルダーグリードだ――その能力をコピーしたのならば、圧倒的なタフネスと、凄まじいカウンター攻撃が
脅威なのだが……プロである明日香と美月には、此れと対峙した瞬間に攻略法が浮かんでいた。


「刃よ!」

『ガァァァァァァァ!!』

「其処よ……脇が甘いわ!」


其れは何かと言えば、美月がザフィーラグリードに射撃を放ち、それに対してのカウンターを発動した相手に対して、明日香が剛撃スキルを叩き
込むと言う、いわばカウンターのカウンターだ。

以前にザフィーラと戦ったアルフから、ザフィーラの戦い方の特徴を聞いていたから出来た事だが、それも明日香と美月の実力があればこそ出来
た事だろう。
何にしても、カウンターのカウンターを、何度も叩き込まれたザフィーラグリードは堪った己ではないだろう。


「これで終わりよ……砕け散れ!!」


――バリィィィン!!!


トドメとばかりに放たれた、明日香のクリスタルソードを喰らったザフィーラグリードは其のまま爆発四散!そして然る後に消滅!!
ネメシスの執行者と、ゾディアックの白の巫女のタッグの前では、所詮コピーに過ぎない守護獣型のエルダーグリードは、大した脅威では無かっ
た様である。


「道が開けたみたいですね……行きましょう。」

「えぇ、全てに決着を着けるために。」


明日香と美月も、その二つ名に恥じない力を持ってして、迷宮を駆け抜けたのだった。








――――――








――匣:冥界の道



洸と璃音が挑んだこの迷宮は、グリードの強さは兎も角として、ギミック床が多数存在しているのが特徴だった。
火傷になるマグマだまりに、過重の沼、麻痺の電撃床に滑る床と、此れまで異界迷宮で確認された全てのギミック床が取りそろえられていたの
だが、空を飛ぶ術を身に付けてる2人にとっては如何という事はなかった。
他にも、振り子刃の罠や、迫り来る剣山壁などのトラップもあったが、それらも前に一度体験していた為に、大した障害にはならずに、現れたグリ
ードを撃滅して、いよいよゴール目前!

目前だが……


「璃音、俺は何処から突っ込めばいいんだ?」

「分かんない……って言うか、突っ込み所あり過ぎじゃない此れ!?」


其処で現れたのは、鉄槌を手にした、物凄く巨大で真っ黒な『のろいうさぎ』!
ヴィータの騎士服に付いていたマスコットだが、まさかそれが迷宮の番人として現れるとは、其れこそ御釈迦様だって予測する事は出来ないだろ
うが……だが、実際にこうして現れてしまったのだから仕方ない。


『う~~~さ~~!!!』


そして、こののろいうさぎ迫力あり過ぎである。
ハンマー片手に、咆哮する黒いのろいうさぎ……一歩間違えばラスボスだろう。――だがしかし、ちょっと驚いたとはいえ、洸も璃音も即座に思
考を切り替えて、のろうさグリードに攻撃する。

その攻撃は、決定打にはなり得ない程度の威力だが、それでも繰り返し叩き込んで行けば、塵も積もれば山となるの如くに何処かでその効果が
現れるモノだ。

そして其れは突如として現れた。


『うさ?』


洸達を攻撃しようとして、ハンマーを振りかぶったのろうさグリードの腕が、吹っ飛んだのだ――動き回る洸達を何とか捕まえようと動き回った事
で腕が限界を迎えて吹き飛んでしまったのだ。

そして、此れは洸と璃音にとっては好機!


「おぉぉぉぉ……エクステンドギア!!

セラフィム……ハーツ!!!


迷わずにXストライクをダブルで繰り出し、のろうさグリードを完全撃破!!寧ろ、完全滅殺完了である。


「やったな璃音!」

「洸君とアタシのコンビなら、早々負けないでしょ?――道が開けたみたいだから行こう!皆が待ってるかもしれないから!!」

「おう!」


洸と璃音もまた、抜群のコンビネーションで迷宮を攻略した。








――――――








――匣:転生の道



最後の迷宮だが……此れは多く語る事すらないのではないかと言う位に、志緒となのはとフェイトが、無双でも生温い位の圧倒的な戦力で持っ
て、迷宮内のグリードを鎧袖一触!
圧倒的とは、この3人の為に有ったと言っても過言ではない程のスコアを叩きだしているのである。
そもそもにして、物理最強の志緒と、魔法最強のなのはが組み、其処に攻撃特化のフェイトを加えたら、どんな異界であっても恐れるモノではな
いのだろう――実際此処までで受けたダメージは0なのだから。


「ハ、準備運動にもならねぇな!」

「これで終わり~~?こんなんじゃ、僕まんぞくできないぞーー!!」

「フェイトちゃん……だけど、ゴールを目前にしてきてくれたみたいだよ?」


『グゥゥゥゥ……』


そしてゴール目前に現れたのは、シグナムを模したエルダーグリードだ。
髪型や、服装からそうだと思うことが出来るが、中身はマッタク持って別物――シグナムが騎士として戦うのであれば、このシグナムグリードは只
敵を倒す為だけに戦う凶暴な存在なのだ。

なので、此処に立ち入った志緒達を滅さんと攻撃を開始するが……


「劣化コピーにしたって酷過ぎるぜテメェ?……此の程度じゃ、まるで相手にならないぜ!!!」

『!!!』


何と志緒は、その攻撃を片手で受け止め、更には確りと剣の刀身を掴んで逃がさないようにする――杜宮最強の不良は、刃物では怯まない!
シグナムグリードは何とか引き剥がそうと、剣を回したりするが、志緒の拘束はマッタク持って外れる気配はない。


往生しやがれ!!


――ドガァァアッァァァン!!


それどころか、シグナムグリードの顔面に喧嘩キックを叩き込み大きく吹き飛ばす!!――そして此れこそが、フィニッシュのサイン!!



「全力全壊!ディバイィィィン……バスターァァァァァァ!!!

「くだけろ、超・爆光破!!



打っ飛んだシグナムグリードに対し、なのはとフェイトの直射砲がクリーンヒットし、その偽りの存在を爆発四散させて葬ったのであった。


「所詮、劣化コピーなんざこの程度か……出直してきな!」

「全力全壊で、頑張りました!」

「いえ~~い、もう誰にも負けないモンねーーー♪」


余裕勝ちとはコイツ等の為にあるのかと思わせる程の完全大勝利!
持ち前のタフネスを誇る志緒とフェイトには、少しばかり攻撃を受けた痕跡が見受けられるが、そんな物は当人達からすれば大した事ではない。


「道が開けたみてぇだな……んじゃあ、行くとすっか!!」

「よっしゃー、乗り込みだーーーー!!」

「もう終わらせるんだ、私達で!!」


異界攻略完了。
志緒達もまた、ゴールゲートをくぐって、然るべき場所へと向かって行った。








――――――








Side:志緒


迷宮のゴール地点には、既に時坂達が居たか……全員揃ってる所を見ると、異界迷宮は全て攻略した事に成るんだろうが、其れだけじゃ終わら
ねぇ……現にゴールした俺達の前には、更なる扉が現れているからな。

この扉の先に居るのは、恐らくはラスボスって奴だ………遂に来たぜ、此処まで!!
正直な事を言うのなら、この扉の向こうには何が待ってるのか分からねぇから、不安な部分もあるんだが……お前達と一緒なら、何とかなるって
気がしてるのも事実でな?

だから、見せてやろうぜ、俺達の力を!!

この扉の向こうに待ってるのは、海鳴最大の戦いだ――準備は良いなお前等!!


「「「「「「「「おぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」


其れじゃあ、対面と行こうじゃねぇか……此れだけの事態を引き起こしてくれた、闇の書の管制人格って奴になぁ!!!













 To Be Continued…