Side:志緒


聖祥小学校に戻ってきたら、良いタイミングでリンディさん達も来てくれてたみたいで、無事合流することが出来たな。
とは言え、流石に1日の間にアレだけの異界迷宮を3連続で攻略して疲れちまったのは否定出来ねぇから、今日はゆっくり休んで、匣への突入は
明朝って事に成った。細かい作戦もそん時にだな。

んで、今は何をしてるのかと言うと――

「ほらよ、カツ丼4人前上がったぜ、冷めねぇうちに配ってくれ。」

「うす、了解っす志緒先輩。」



丁度晩飯時だったんで、学校の家庭科室借りて、炊き出しの真最中ってな。
幸いな事に、食材は商店街の方から、アースラを経由して回してもらう事が出来たから、問題は無かったし、鍋や油は学校に有ったから料理をす
るには困らなかったぜ。

それに、こういう時はガツンと腹にたまる物を喰った方が力も出るってモンだ……しみったれた食事じゃ、気持ちも滅入っちまうだろうからな。



「ん~~、シオのカツ丼マジ美味しい!おかわり!!
 ん?だけど此れだけおいしいカツ丼を作れるなら、シオがカツカレーをつくったらいったいどれだけのおいしさになるのか……すごく美味しそう。」

「機会があれば作ってやるよ、フェイト。」

「ほんと!?いやっほーーー!!」



やれやれ……だがまぁ、俺の作ったもんが何かの役に立ってるってんなら、其れは其れで悪い気はしねぇし、同じ状況だったら一馬の奴もきっと
今の俺と似たような事をするだろうからな。

何にしても勝負は明日だ……気合を入れ直さねぇとな!!










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE62
『パンドラの匣に突入せよ!!』










と、そう思ってたんだが……倉敷の時以上の事態であるせいか、ガラにもなく眠ることが出来ねぇ……あの時の時坂も、こんな気分だったのかも
知れねぇな。
夜風に当たるって空模様でもねぇが、外に出て頭をスッキリさせるってのも悪くねぇかもしれねぇ。取り敢えず、屋上に上がってみっか。

普段は施錠されてるんだろうが、今この時は、屋上への扉の鍵も解放されてたか……いざと言う時の退路確保の為だろうな。屋上には、災害の
際に使える緊急避難装置も備わってるからな。
少し此処で――って、如何やら先客がいたみたいだな……眠れねぇか、なのは?



「志緒さん?……はい、正直な事を言うと、流石に。」

「まぁ、この世界の存亡をかけた戦いな訳だから仕方ねぇだろう……現に、俺も眠れずにこうしてうろついていた訳だからよ…ガラじゃねぇがな。」

「志緒さんもなんですね……アレは、確かにトンでもない気がしますから。」



実際トンでもねぇんだろうな。
只の人間に過ぎない倉敷ですら、グリードの力を解放したその時には、最終的には5S級の存在にまでなったからな……それが、封印指定のロ
ストロギアとやらが、異界の力を発揮したらドレだけのバケモンが生まれるのかは想像出来ねぇだろ。

此れまで何度も修羅場を潜り抜けて来たが、ヤバさで言うなら、今回以上にヤバい事はねぇよ。

だが、だからと言って退く気はねぇさ。
相手が誰であっても、逃げずに戦い挑んで、そんでもって最後には勝つ――其れが、BLAZE魂ってもんだからな!!お前には分かるだろ!!!



「勿論分かります!――だから、全力全壊でですよね?」

「そう言うこった。」

なんだ、考えてみりゃ答えは既に出てた訳か。
誰が相手だろうと突き進んで、そんでもって目的を達成する。其れがBLAZE魂だった訳だからな……ったく、此の程度の事態に飲み込まれかけ
てたとは、あの世の一馬に笑われちまうな。
何にしても、全ては明日だ――ガツンと一発、弩派手にブチかましてやるとしようぜ!!



「はい!!」






んで、翌日。
匣に突入する前に、流れの確認。要するに作戦会議。場所は、学校内の視聴覚室でだな――なんせ、参加人数が多いから、画像用モニターが
あった人数収容できる部屋なんざ此処しかないかったからな
んで、作戦の説明をするのはリンディさん……ま、当然だな。



「それでは、本作戦の説明を始めるわね。
 明朝、エリアサーチで匣周辺を探った結果、熾天使型のグリムグリードを指揮官とした無数の天使型エルダーグリードが確認されたわ。
 なので、先ずはアースラの魔導師部隊と、グレアム提督の一個師団で、グリードの集団の両翼から攻撃して、戦力を分断させて中央の護りを手
 薄にします。
 そして、防御が手薄になった中央を主戦力であるX.R.Cが中央突破して匣に突入し、内部で元凶を沈黙させる。何か質問はあるかしら?」

「俺達の突入手段はあるのかリンディさん?
 出来れば匣に突入するまでは戦闘は避けてぇところなんだが……」

「其れに付いては大丈夫よ志緒さん。
 管理局で使われてる、特殊装甲車を持って来てあるから、其れを使ってね?一応、データ上はなのはちゃんのバスターでは大破しない強度を
 持たせてあるから、防御面は問題なしよ。
 序に言うなら、オートマ車だから操作も簡単♪校門前に止めておいたわ。」



ソイツは確かに問題ねぇな。なのはのバスターに耐えられるなら、熾天使の攻撃にだって2~3発は耐えられるだろうし、車全体を北都の結界で
覆っちまえば、防御力は更に上がるだろうからな。



「其れは良いんだけど、誰が運転するのさ?」

「まぁ、俺しか居ねぇだろうな。
 夏休みの初めに免許取ったばかりだから、若葉マークも良い所だが、オートマ車ならエンストする事もねぇだろうから何とかなんだろ?
 尤も、状況が状況だけに、安全運転だけは約束できねぇがな。ジェットコースター位は覚悟しとけよ?」

「いえ~い、僕じぇっとこーすたーだいすき~~~!」

「なんか、フェイトちゃん見てると此れから世界の存亡をかけ戦いが始まるって思えないんだけど……其れってアタシだけかな明日香?」

「……私も、そう思うわ璃音さん。」



良いじゃねぇか別に。フェイトみたいなのが居た方が余計な緊張が打っ飛ぶってモンだろ?
此れから始まるのは、確かにトンデモねぇ戦いかも知れねぇが、だからと言って緊張してちゃ何も出来ねぇからな……と言うか、此れだけの戦力
が集まったんだ、負ける要素は何処にもねぇ!
海鳴の、そして世界の存亡はこの一戦に在りだ!気合い入れろよお前等!!!



「「「「「「「「「おーーーーーーー!!」」」」」」」」」

「恐らく、あまり時間は無いでしょうから、直ぐに作戦を決行します!各自持ち場に付いてください。」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」×沢山



流石、管理局員の動きは速いな。
俺達も校門前の車に移動だ。




んで、コイツが例の車か……特殊装甲車と言ってたが、6つのタイヤに低めの車高のせいで主砲のない戦車みたいな外見になってやがるな?
だが、頑丈そうなのは間違いなさそうだから頼りにさせて貰うか。
おし、全員乗り込め!!



「りょ~~か~~い!って、アレあるふは乗らないの?」

「あ~~……今回はフェイト達と行くよりも、陽動の方を手伝った方が良いと思ってさ。
 確かに匣の突入メンバーの戦力が高いに越した事は無いんだけど、より確実に突入する為にも、陽動の方の戦力も高くなきゃ駄目だろう?
 そんな訳で、今回は露払いに徹するから、アタシの分まで暴れてきておくれよ。」

「あるふ……うん、わかった!!」



お前が露払いとは、豪華なもんだが、其れだけに頼りになんぜ!
お前の分まで、確りと暴れて来てやるから安心しなアルフ!そして、終わらせてやろうじゃねぇか、闇の書の無限の呪いってやつをな!!!








――――――








No Side


全ての準備が整い、匣に突入する為の戦いが始まった。

「攻撃開始!志緒達が突破する道を確保するんだ!」


「アースラ部隊と連絡を取り合って、何方かにグリードが集中しないように注意しながら敵の意識を此方に向けるように。勿論、倒せそうなら倒し
 てしまって構わないからね?」


アースラ部隊を現場で指揮するのはクロノ、グレアムの一個師団を指揮するのはアリア。
リンディは、軌道上のアースラへと戻り、最終段階の為の準備をしながら指示を出し、オペレーターのエイミィは、常に状況を確認する役目を担っ
ている。
詰まる所、戦闘員も司令官もオペレーターも隙は無いという事だ。

其れを証明するように、匣周辺で始まった戦闘では、アースラ部隊とグレアムの一個師団が実に見事な連携を取って天使型グリードに攻撃を加
えて戦力を両翼に分散している。

その効果もあって、中央は略がら空き状態になっている。


「おし、良い具合にやってくれたな……俺達も行くとすっか!!北都、頼んだぜ?」

「はい、防御結界を展開します。」


其れを見た志緒達も発進する。より防御を高める為に、車輌を美月の防御結界で包み込んだ上でだ。
思い切りアクセルを踏み込んだからだろうが、車輌は一気に加速し、スピードメーターは既に70kmを突破!普通だったら、違反切符を切られると
ころだが、生憎と今は道交法など関係ないのだ。
加速してグングン進む車輌だが、世の中そう簡単に行かないのが世の常だ。


「!!やばい、側面からくるわ天使型が!!」

「マジかよ璃音!!」


璃音が特有の感覚で天使を感じ取ったのと同時に、車輌の側面から3体の天使型が出現!空間転移で、此方に移動して来たのだ。
なのはのバスターに耐える装甲を持ち、更に美月の防御結界で守られてるとは言え、エルダーグリード3体の攻撃を真面に受けたら只では済ま
ないだろう。

だが、味方は管理局の魔導師だけではないのだ。


――ドス!ドス!ドス!


『『『ウワオォォォォ!!!!!』』』



突如、何処からともなく放たれた矢が3体の天使型エルダーグリードを射抜き、その存在を霧散させたのだ。
エルダーグリードをも消滅させるとなれば只の矢ではなく、破魔矢を改造したものか、或は鏃が神木か霊石で出来ている特殊な物だろう。
そして、其れを放ったのは――



「間に合ったみたいね!」


「お姉ちゃん!?」



なのはの姉である美由希だった。
如何やらグリードに有効な武器を持って、妹の援護に来たのだろうと思われるが、其処に居たのは美由希だけではなかったのである。


「父さんに頼んで神木の二刀小太刀を作って貰った、此処は俺達に任せておけ!」

「アンタはさっさと自分のやるべき事をやって来なさいなのは!」


神木の二刀小太刀を装備した恭也と、破魔矢を改造した特殊な矢を発射するクロスボウを手にしたアリサとすずかの姿があった。全員が、自分
に出来る事は無いかと考えて、この場に来てくれたのだ。



「美由希に恭也さんに、アリサにすずか……頼りになんぜ!!此のまま突っ切る、舌咬まねぇように、確り掴まってな!!」


――ドルン!!


思わぬ援軍のおかげで危機を脱した一行は、更にスピードを上げて匣を目指す。
局の魔導師と、美由希と恭也とアリサとすずかの奮闘もあって、天使型のグリードは後から後から湧いてくるとは言え、出現量を上回る速度で駆
除されていた。

だが、匣の守りは堅いらしい。


『グガァァァァァァァアァ!!!』

「んな、夕闇ノ落し子だと!?こんなモンまで召喚して来るなんて、インチキも大概にしやがれ!!」

「うわ~お、洸君ナイスリアクション♪」

「って、そんな事言ってる場合じゃ無くない!?」


現れたのは3S級のグリムグリードである『夕闇ノ落し子』。嘗て杜宮の異変の際に、全ての元凶と間違われた程の力を誇る最強レベルのグリム
グリードである。
まさか、こんな物まで出て来るとは思っていなかったのだろう――洸が、中の人繋がり的な事を言ってしまったのは仕方ない。
だがしかし、忘れてはいけない。海鳴には、トンでもないメカニックが居たという事を!



――ズドォォォン!!!



『グガ!?』

『みんな無事?ようやく完成して試運転て言う所だけど、取り敢えずそのデカブツは私に任せておきなさい!!』


夕闇ノ落し子を砲撃したのは、何と空中に浮かぶ巨大ロボット!しかも、其れのスピーカーを通して聞こえて来たのは忍の声だ。
一体何処から資材を調達して来たのかとか、色々と突っ込み所は万歳だが、兎に角夕闇ノ落し子にも見劣りしない位の人型ロボットが援護に来
てくれたのである。


「あれって、フリーダム・ガンダム?」

「著作権的に大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫なんじゃない?カラーリングは変えてあるみたいだから。」


果たしてどうやって最強と名高い機動戦士を造ったのかは謎だが、夕闇ノ落し子の相手をしてくれるなら有り難いだろう……取り敢えず、全てが
終わった後で、忍の技術力を調べる必要はあるだろうが。

だが今は前に進むだけ。
車輌は驀進し、匣まで残り100mを切った……のだが、矢張り匣側もトコトンまで侵入を拒むモノらしい。


「今度は……来るわ、熾天使が3体!」

「玖我山先輩が言うなら間違いないだろうけど……幾らなんでも熾天使3体はきつく無い!?
 この車が凄く頑丈で、北都先輩の結界で覆ってるって言っても、2S級のグリムグリード3体を強引に突破するのは、流石に無理ゲーでしょ!」


残りわずかと言う所で、今度は漆黒の熾天使が3体出現!


「もう少しだってのに……明日香、栞の時みたいにとっておきで吹き飛ばせねぇか?」

「コールドアポクリファの事?
 技自体を使う事は出来るけど、蓄積した魔力はあの時の半分にも満たないから、熾天使3体を葬る事は出来ないわ流石に――!」

「くそ、もうちょっとだってのに!!」


ゴール目前での強敵の出現に、思わず洸は歯噛みする。
明日香の特大の一撃ならばとも思ったが、蓄積してる魔力量が多くはないために、熾天使3体を葬る事は出来ない……となると手は無いが――


「此処は私達に任せて下さい!フェイトちゃん!」

「おっけーー!けーきづけにぶっぱなす!!」


なんと、なのはとフェイトが、レイジングハートとバルディッシュを展開して、飛び出し、車輌の屋根に陣取る。
そして、既にデバイスには魔力が集中し、3体の熾天使に向けての攻撃準備は整っていると言って間違いない――驚くほどの、判断力だろう。


「道を開けて下さい!ハイペリオンスマッシャー!!

「くらえ~~!雷神滅殺爆撃破!!


――ドガァァァァァァァァァン!!


で、放たれた桜色の純粋魔力砲と、蒼白の雷撃砲は、3体の熾天使を有無を言わさず呑み込んで爆発四散!!
2S級のグリムグリードですら、恐るべき成長速度を誇るなのはと、生まれながらのパワーカンストなフェイトの前では大した敵ではなかった様だ。

ともあれ、最後の防衛網を突破した車輌は、其のまま時速120kmを突破して匣に突入!!
取り敢えず、突入作戦其の物は成功したのだった。








――――――








――匣内部



Side:志緒


大体予想はしてたが、此処が元は大学病院だったとは大凡思えねぇ空間だなコイツは。
この先に全ての元凶が居るんだろうが、スタート地点から道が4本に枝分かれしてやがるか……恐らくは全ての道を通らないと最終的なゴール
には辿り付けねえぇ仕組みなんだろうよ。
一々全員で一個ずつ攻略してる暇はねぇ……4つの扉に対して、こっちは9人だから、チーム分けしていくのが最善だ――如何分ける時坂?



「そうっすね……向かって左の扉から順に、祐騎と空、俺と璃音、明日香と美月先輩、そんで志緒先輩となのはちゃんとフェイトちゃんで如何ッス
 かね?バランス的にも良いと思うんすけど……」

「申し分ねぇな。
 バランスを見ても悪くねぇし、このチームで迷宮を攻略して、そんでゴールで合流すんぞ!――絶対に死ぬんじゃねぇぞお前等!!!」

「勿論だぜ志緒先輩!」

「そうそう、死ぬ心算は無いからね♪」

「全員揃って必ずです!!」

「ま、欠員出た状態でラスボスってのは締まらないからね?」

「又後で会いましょうね皆さん?」

「あとでまた、必ずね。」



全員そろってこそだからな――匣の異界迷宮攻略を始めようとしようぜ!!そして、速攻で攻略して最後に待ち受けるラスボスとやらを何とかし
てやろうじゃねぇか?
一筋縄でいく相手じゃないだろうが、俺達が力を合わせれば、きっと如何にか出来る筈だからな――行くぜ!!












 To Be Continued…