Side:志緒
まぁ、大体予想はしてたが、最後の柱がある繁華街の入り口付近には化け物共が大勢押しかけて居やがったな?
繁華街内に入って行かない所を見ると、恐らくは時坂達が先攻して柱に入って、突入前に繁華街に疑似結界を施したって言う所なんだろうが、何
にしても通行の邪魔なんでな……大人しくどけや。
「道を開けて下さい!」
「きみたちジャマだからどいてね~~♪」
――ドゴォォォォォン
此の程度か……雑魚が群れやがって。
だがまぁ、疑似結界が機能してる以上は、繁華街の中は安全だからな……繁華街に入ったら、すぐさま最後の柱に突入する――覚悟決めておけ
よお前等!!
「はい、勿論です!!」
「僕のまえにてきはない!たちふさがるならぶった切って前に進む!」
「ま、始めたゲームはクリアしないとだからね……最後までやるさ――其れが正解でしょ、志緒先輩?」
そう言うこった……なのはとフェイトは兎も角、お前も良い感じにノッテルじゃねぇか四宮?……乗りと勢いと気合ってのは案外バカに出来ないモ
ンがあるから、此れは良い事だな。
最後の柱――相当な迷宮なんだろうが、速攻で攻略してやんぜ!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE60
『撃滅!進行!邁進する最強!!』
――葬の柱内部
で、柱内部に突入した訳だが……コイツは、此れまでの柱とは格が違うな?
灼熱の溶岩が床板のない部分で燃え盛って灼熱の迷宮を作り出し、迷宮の壁はまるで生き物の内部に閉じ込められたんじゃないかって錯覚す
る位に脈動して居やがる。
灼熱の世界に、むせ返る程の血と肉と鋼の匂い……きっと、地獄ってのはこんな世界なんだろうな。
だが、此の程度で俺達が怯むと思ったら大間違いだぜ!!
確かにトンでもねぇ場所かも知れねぇが、攻略できない訳じゃねぇだろ!――まして、先行した時坂達は、この迷宮を突き進んでいったんだろうか
らな……だったら俺達も、前に進むだけだろうが!!
「そうですね……前進あるのみです!!」
「行きましょう!私達ならやれるはずです!!」
よし、よく吠えたぜなのは、郁島!!
まったくその通りだ……止まってる暇なんざねぇ!兎に角前進あるのみ――とっとと突き進んで、先行しただろう時坂達と合流すんぞ!!!
大人しく道を開けな雑魚共!!
――――――
No Side
洸達が先行したとは言え、新たな侵入者に対して迷宮は新たなグリードを配置するモノであり、最後の柱であるこの『葬の柱』の再配置されたグ
リードは、先に攻略した2本の柱と比べても強力な物だった。
その特徴は、出現グリードの実に70%が魔法ダメージを0にする魔法絶対防御障壁を纏っている事だろう。
先に柱に突入した洸、璃音、美月の3人は、洸が物理寄りのバランス型、璃音が魔法よりのバランス型で美月は魔法特化型と、魔法攻撃の方が
多くのグリードを撃破していたのだ。
其れを踏まえて、魔法に強いグリードを再配置したのだ――其れも、オーガタイプやリザードタイプ、スペルタイプと言った巨体と高い戦闘力を持っ
ったグリードに障壁を纏わせて。
この手の巨体の相手には、距離を取っての遠距離攻撃で攻撃する方が楽なのだから、遠距離攻撃を効かなくしてしまえば、近距離の物理攻撃
で戦う以外に手はなくなる訳であり、そうなれば近寄ってきた相手を巨体と怪力で圧倒できる――悪くない一手だろう。
実際に、こんな連中では魔法主体のなのはと明日香と祐騎は苦戦が免れない。(特になのはは、実質攻撃手段が封じられたに等しい。)
だがしかし、忘れてはいけない――
「喰らい……やがれぇ!!!」
「覇ぁぁ……砕け散れ!!」
「あ~~っはっは~~!めっさーつ!!」
「大人しくやられとけ、此のデカブツ!!」
此方には、志緒、空、フェイト、アルフと言うトンでもないレベルの物理特化な連中が居るという事を。
厳密な事を言うのならばフェイトとアルフは魔法も得意なのだが、此の2人は魔法での射撃戦よりも、魔法を使った近距離格闘戦の方が得意であ
り、結果として物理攻撃上等なのである。
なので、魔法無効障壁を張ってるグリードであっても何のその。『障壁?何それ美味しいの?』と言わんばかりに、次から次へと現れるグリードを
現れた端から切って、殴って、ブッ飛ばす。
一応、僅かに現れる障壁を張って居ないが物理攻撃が効き辛いグリードはなのはと明日香と祐騎が対処しているが、其れにしたって撃破数が雲
泥の差である事は火を見るよりも明らかだろう――まぁ、そもそもにして対応する敵の数に偏りがあるから仕方ないと言えば仕方ないのだが。
そして、物理特化の中でも活躍しているのは、矢張り志緒とフェイトだ。
「行くぜフェイト!!」
「よっしゃーーー!」
――カッキーン!……キラーン☆
最早突っ込み不要となっている怪力で、身の丈3メートルはあるであろうオーガ型のグリードを持ち上げた志緒が、其れをフェイトの方に投擲し、
フェイトはフェイトで、投げられたグリードをバルディッシュで殴り飛ばして特大の場外ホームラン!
投げる志緒も志緒だが、其れを打ち返すフェイトもフェイトである――取り敢えず、葬の柱が新たな侵入者に対して講じた策は、ハッキリ言って無
意味だったのは間違いないだろう。
だから……
――Warning!Warning!!
――Sグリード:ティルドーン・オメガ
開けた場所で現れたSグリードであっても、一行を止める事は出来ないだろう。
「中ボスか……面白そうじゃん。」
現れたのは、Sグリードの中でも特別強い力を持つとされているティルドーン・オメガと、下級グリードのティルドーンタイプが全属性だ。
物理・魔法防御共に高く、真面にやり合うのは厄介な相手だが、この一行にそんな常識など通用しない。
「弱い奴ほど良く群れるってな……一気に片付けんぞ!」
「はい!!せーの!」
「「「「「「「「クロスドライヴ!!」」」」」」」」
クロスドライブを発動し、敵の弱点属性を全属性とした上で猛攻をかける。
如何に相手が高い防御力を有してるとは言え、志緒となのは達はその防御をも上回る攻撃力を有しているのだから、全属性が弱点となってしま
えば、最強レベルのティルドーンタイプの揃い踏みであってもぶっちゃけ敵ではないのだ。
「オォラァァァァァ!!!」
「ひっさーつ!!」
志緒とフェイトの斬撃が敵を切り裂き、
「すっ込んでろデカブツ!」
「終わりです!!」
アルフと空の鉄拳が敵を砕き、
「これで終わりね。」
「そらそら、弾幕弾幕!」
「行きます…ガトリングスマッシャー!!」
明日香と祐騎となのはの魔法攻撃が敵を撃ち抜く――特になのはの三連射直射砲の威力は凄まじいの一言に尽きるだろう。
「頃合いだな……フェイト、殺れ。」
「おっけー!
いっくぞ~~!ぱわ~きょくげーん!雷刃封殺……爆滅剣ーーーーー!!!!」
――ドガァァァァァァァァァァァァァン!!
そしてトドメは、志緒の命を受けたフェイトの、最大奥義である『雷刃封殺爆滅剣』!!
アルフをして『フェイトのアレはヤバイ』と言わしめた一撃が炸裂し、憐れティルドーン達は、全員が蒼い雷を目一杯喰らい、真っ黒焦げになって爆
発四散!――攻撃特化のアホの子恐るべしだ。
「いえ~い!やっぱり、僕さいきょ~~!!」
「やったね、フェイトちゃん♪」
――パァン!
Sグリードを撃破し、思わずなのはとフェイトはハイタッチ。
並の適格者であったならば苦戦するであろう布陣であっても、この面子の前には、只の肩慣らしにしかならなかった様だ。
そんな感じで志緒達が快進撃を続ける中、先行した洸、璃音、美月の3人は一足早く中間層に到達していた。
決して楽な道のりではなかったが、常に洸が前線に立ち、璃音と美月が魔法で其れを援護すると言う、絶妙なコンビネーションで、此処まで辿り
着いたのである。
「ハァ、ハァ……くそ、流石にキツイな……」
「ですが……此処で止まる事は出来ません。」
「最後までバッチリ決めないと、ステージは失敗だからね!」
それだけに疲労は隠せないが、だからと言って此処で止まると言う選択肢は無い。
洸も璃音も美月も、一度かかわった事に対して途中で止める事が出来ない性質であるが故に、如何に疲れて居ようとも、止まる事は出来ないし
止まらないのだ。
「……!この気配は――来ます!!」
だが、此処でその意思を折りかねない事態が勃発!
辿り着いた中間層にて、漆黒の天使『カースアンヘル』3体と、地龍『ヨルムンガルド』が2体現れ、洸達の前に立ち塞がる。
「漆黒の天使が3体と、地龍が2体……!」
「ちょ、幾ら何でもサービスし過ぎじゃない此れ!?」
「コイツは、幾ら何でもキツ過ぎんだろ――!!」
無論負ける気はないが、だからと言って簡単に倒せる相手でもないが故に、洸は思わず歯噛みする。
この連中を倒さなければ先に進む事は出来ないが、この戦力でこの相手に挑むのは無理ゲーに近い……ともすれば、ゲームオーバーの可能性
すらあるのだから。
だが、世の中良くしたもので、この苦境に対して援軍が良いタイミングで到着したのだ。
「気合を入れろや!!」
「この声は……志緒先輩!!」
其れは後からやって来た志緒一行だ。
再配置されたグリードも、一切意に介さずに撃破し、この中間層で洸達に追いついたのだ――そして、此れは形勢が逆転した事の証でもある。
今此処に、X.R.Cのフルメンバーとフェイトとアルフが揃ったのだ……ならば漆黒の天使と地龍が相手であっても、負ける可能性は皆無だ。
「一気に畳み掛けんぞ時坂!」
「了解だぜ、志緒先輩!!」
其れからは正に圧巻!
地面に潜るヨルムンガルドは、出てきた所をなのはとアルフがバインドで捕らえて動きを封じ、其処に空が『風塵虎吼掌』を、祐騎が『ヴァリアブル
メテオ』を、明日香が『クリミナルブランド』を叩き込んで撃滅!
そして3体のカースアンヘルは、璃音が『セラフィムハーツ』で先制攻撃を仕掛けたのを皮切りに、美月が『カオスエルドラド』を叩き込み、トドメに
志緒と洸が、夫々『クリムゾンレイド』と『エクステンドギア』をブチかまして状況終了!
フルメンバーが集った状態では、天使型や地龍であっても敵ではなかった様だ――故に、本番は此処からだと言っても過言ではないだろう。
この先には、更に手強いグリードが待っている筈だし、最深部には守護者が待っているのだから。
尤も、この面子には、そんな事はたいして関係ない事なのかも知れない――何れにしても、この柱の内部で、全ての仲間が集ったのは事実であ
るあるが故に、この一行の妨げになる物はきっと存在しないだろう。
――――――
Side:志緒
何とか間に合ったが……随分と踏ん張ったみてぇじゃねぇか時坂?――それでこそ、俺の見込んだ漢だ……良くやったな。
「志緒先輩……はは、あざっす。
でも、俺の力だけじゃないっすよ――璃音と美月先輩が居なかったら、マジでヤバかったすから。」
「かも知れねぇが、お前はこうして生きてんだから、生き残ったって言う事実に胸を張りな!
兎に角、残りは半分だ――気合い入れていくぞお前等!!」
「「「「「「「「「おーーーーー!!!」」」」」」」」」
恐らく最深部では、柱の守護者とやらが現れるんだろうが――そんなモンは、俺達の相手じゃねぇからな、出てきたらぶっ倒すだけの事だぜ!!
この柱を止めれば、匣への道が開けるからな――残り半分、全力で攻略してやんぜ!!
――――――
Side:???
此れは……最後の柱が攻略されようとしている?……アレが攻略されるとなったら、一体何年ぶりの事なのか――もはや記憶が多過ぎて思い
出す事も出来ないが、過去には確かに3本の柱を攻略した人物がいた――最終的は、私に倒されたがな。
もしも、3本の柱を全て攻略し、そして私の前に現れることが出来たのならば、其れは正に奇跡だ。
だが、そんな奇跡は起きないだろうな――起きないからこその奇跡なのだからね。
誰がどれだけ手をこまねいて策を弄しても、運命を変える事は出来ない――私が存在している限り、闇の書の主が存在している世界は、最後に
は、滅んでしまうのだからね。
だからこそ、もう疲れた――或は、彼等ならば私をこの呪いから解き放ってくれるのだろうか?……分からない。
だが、分からないこそ、其処には可能性があるという事なのかも知れない――或は若しかしたら、この身の呪いが終わる時が来るのかも知れな
いな……あくまでも希望的観測だがな。
果たして起きるのは奇跡か、それとも繰り返される歴史なのか……其れを、先ずは見せて貰うとしよう――時間は、あまり残されていないがな…
To Be Continued… 
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