Side:志緒


2本目の柱がある駅前広場にやって来た訳なんだが……予想はしてたが、やっぱりここも化け物共の巣窟になって居やがったか。
もしもコイツが夢なら、悪夢で済ますことが出来たんだが、生憎と此れは現実だからな?……なら、払うしかねぇ――纏めて相手にしてやるぜ!


『ウウォオオオオオ!』

『『『ギギャァァァァ!!』』




妖精型が1体に、恐竜型が3体か……普通なら、此れで押し切ることが出来るんだろうが、今回ばかりは相手が悪かった…悪過ぎたらしいな!!
この程度で、俺達を足止めできると思ったら大間違いだぜ!

「柱の前に、先ずはコイツ等を黙らせるのが先だな……行けるか、なのは?」

「はい!バッチリです!!」



ならOKだ!
柱に突入する前の準備運動だ――一気に畳み掛けんぞ!!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE57
『柱の攻略Round2~罠はぶっ壊す~』










でだ……確かに準備運動の心算だったんだが――幾ら何でも、コイツは脆過ぎねぇか?
妖精型と恐竜型が一緒って事で少しは楽しめるかと思ったんだが、蓋を開ければ俺とフェイトのパワー攻撃に押されて、最後はなのはのバスター
で一撃必殺だったからな?

正直、この程度じゃ経験値の足しにもなりゃしないぜ……クソ面白くもねぇしな。



「ですが、今回の事で、駅ビルに避難していた人達の安全を確保する事が出来ましたから、そう考えれば悪くないでしょう、高幡先輩。」

「柊……」

確かにそうだな。
駅前の歩道橋の階段と、駅ビルの入り口に札を張ったから。此処に化け物共が入り込んで来る事はねぇだろうが――この異常事態に於いて『絶
対』はあり得ないからな……あらゆる可能性を考慮した上で、彼是考えるのが大事な事だからな。

なら、俺達は俺達のやるべき事をするだけだ――2本目の柱の攻略と行こうじゃねぇか!!前に進まねぇ理由はねぇからな!



「異論無しです、志緒さん!思い切りいきましょう!!」

「あ~~っはッは~~!だれが相手だろうと、僕を止める事なんでできるはずがない!にほんめの柱であっても、僕は全力全壊!!
 持てる力のすべてを出して…僕は飛ぶ!!――そして、悪いことするやつらは、全力でうちぬいて、ぶったぎって、すらっしゅする!!」

「まったくフェイトちゃんは
 ……でも、貴女のような子が居ると言うのは、雰囲気も明るくなるし、士気も高まるから、チームで戦う場合には必要な存在なのかもね。」

「よっしゃー、ほめられたーーー!」

「あはは、こりゃいいや!さっさと、2本目のデカブツも沈黙させてやらないとね!」



そう言うこった!



・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



――滅の柱・内部



この柱も、内部は予想通りに迷宮か……ま、当然だが。
だが、ざっと見た感じ、前の柱よりもトラップが多いみてぇだな?入り口から見えるだけで毒の沼に、棘付きローラーに音波兵器……奥の方には、
もっとトンでもねぇ仕掛けが眠ってそうだ――気を引き締めていくぞ!


「おう!って……ん?」

「どうかした、あるふ?」

「いや、如何やらアタシ等の前に、此処に入った奴がいるみたいだね?アタシは狼だから鼻が利くんだよ。」



俺達よりも先に?……そいつが誰か分かるかアルフ?



「そんなに時間は経ってない感じだけど……うん、この匂いは空と祐騎だね。」



四宮と郁島か!ったく、2人だけで突入するとか無茶しやがる!
確かに、四宮の数手先を読む頭の良さと、郁島の格闘センスがあれば雑魚共は問題ないだろうが、中間層では複数体のエルダーグリードが襲い
掛かって来やがるから、幾らアイツ等でも捌き切れるもんじゃねぇ!

まぁ、柱を何とかしようとしたって言う、その心意気は大したモンだが……コイツは、出来るだけ早く追い付かねぇとだな。
となると、必要なのは突破力か……よし、戦闘前の腹ごしらえだフェイト。コイツを食ってみろ。



「コロッケ?どっから出したのか分からないけど、おいしそー!いっただきまーす!!……む、これは!!
 此れは只のコロッケじゃない!すりつぶされたじゃがいもの甘さをころすことなく、それでいてぜんたいをピリッとひきしめるすぱいしーな辛さ……
 このコロッケは、カレーコロッケだ!
 いぃよっしゃー!!此れだけおいしいかれーコロッケを食べた僕はこうげきりょく3倍だーー!どっからでもかかってこーい!!!」



うし、思った通りにフェイトの能力が上がりやがったな?『熱々カレーコロッケ』、持って来て正解だったぜ。



「一体何処に隠し持ってたんですか志緒さん?」

「そいつを聞くのは野暮ってモンだろなのは。
 大事なのは、俺が何処にコロッケをもって居たかじゃねぇ……そのコロッケを食ったフェイトが、超絶パワーアップしたって事だ。」

「……確かにフェイトちゃんは物凄くパワーアップした感じですけど、そうなると何処にコロッケを持っていたのかって言う事よりも、志緒さんお手製
 のコロッケは一体どんな回復アイテムなのかって話になるんですけど……」

「其れも突っ込むな。突っ込んだら負けだぜなのは。」

「予想はしてましたが、やっぱりそうなんですね。」



世の中には、突き詰めちゃいけねぇモンがあるってこった。――まぁ、そんな事を言い始めたらキリがねぇし、身も蓋もなくなっちまうけどな。
なんにせよ、2本目の柱の攻略開始だ……気ぃ抜くなよ!!








――――――








No Side


柱内部に出現するグリードは、通常の異界迷宮に出現するグリードと比べれば多少手強い物が現れるのだが、だからと言って志緒となのは達の
進行を阻害出来るだけの力があるかと言えば、其れは否だ。

大体にして、志緒となのはとフェイトと言う、超攻撃型が3人揃っている時点で、中ボス未満のグリードなどそもそも相手にすらならないのだ。


「シュート!!」

「オラァ!逝けや!!!」

「ひっさーつ!!」



現れた端から、なのはが得意の射撃と砲撃をブチかまして大幅に数を減らし、対魔法攻撃障壁を張っているグリードは、志緒とフェイトが力任せに
叩き伏せて撃滅!

この地獄の様な連携をすり抜けたグリードは、今度はすり抜けた先で明日香かアルフに叩きのめされるのがオチであり、この布陣に隙は無い!
まぁ、此れまでと大体同じ流れで、グリードに対しては全く問題ない。

寧ろ厄介なのは、グリードよりも迷宮内の仕掛けやトラップだ。
振り子刃や、迫り来る棘壁は志緒とフェイトの力押しで、トラップそのものを破壊して進む事が出来るし、毒の沼みたいなギミック床ならば飛行魔法
で回避できるのだが………


「幾ら何でも、こりゃ反則じゃねぇか?」

「美月さんの結界が有っても、此れを通り抜けるのは至難の業だわ。」


一行の目の前に現れたのは、50mほどの通路に、所狭しと設置された電撃発生装置――早い話が、超大型のスタンガンである。
秒単位で放電が起こっているため、此れを抜けるのは略不可能――加えて、飛び越してくる事も見越して、天井部からも同様の物が釣り下がって
いると言う隙のなさ。

恐らくは、空達の時には此処まで複雑ではなかったのだろうが、簡単に超えられた事でトラップも強力になったのだろう。
何れにしても、このままでは先に進む事など出来ないのだが――


「反則には反則技だ……なのは、頼む。」

「はい!ディバイィィィィン……バスタァァァァァァァァァァァァ!!

『Divine Buster.』


――ドッガァァァァァァアァァァァアァァァァァァァァァァン!!!




そのトラップを、なのはが必殺の直射魔力砲『ディバインバスター』で、跡形もなく吹き飛ばす!一切の容赦も手加減もなく、全てを吹き飛ばす!
結果として、トラップは全て破壊され、序に射線上に居たグリードも纏めて沈黙させたのである……わずか9歳にして、高町なのは恐るべしだろう。

だが、此れで先に進む事は出来るようになったのも事実であり、なのはの功績は非常に大きいと言える。


「此れで良し!でも、反則技は酷くないですか志緒さん?」

「本来なら苦戦するトラップを、力技でぶっ壊すのは、正攻法の攻略ってよりも反則技の方があってんだろ。
 其れにだ、その小さな体にそれだけの力が詰まってる時点で、存在その物が反則ってモンだ……そいつは、フェイトにも言える事だがな。」

「……生身でエルダーグリードと、素手でやり合った高幡先輩も、充分存在が反則だと思いますけど?」

「まぁ、否定はしねぇさ。」


そのおかげで、こんな事を言いながら、普通に移動できるのだから。
次の区画までのグリードまでもが、なのはのバスターで駆除されたと言うのは、非常にありがたい事であり、その恩赦として進路上の宝箱も安全
に開ける事が出来るのだから。


――現実世界の品物が紛れ込んで居た様だ。『ミソロジーロケット』×3を手に入れた。


「コイツは上モノだな?自分の技の威力を底上げしてくれる上に、あらゆる状態異常を防いでくれる便利なモンだ。
 俺と柊は持ってるから、この3つはなのは達が使えば良い。お前等の技が更に強くなれば、中間層の中ボスと、最深部の柱の守護者以外の化
 け物なんざ、雑魚以下になり下がるからな。」

「ありがとうございます。いただきます。」

「おぉ、なんかちからがわいてきたーーー!!」

「コイツは、良い感じだねぇ!」


その宝箱から入手したのは、何ともありがたい装備品だったので、早速なのは達が装備し、己の力を底上げする。
そして、この瞬間にエルダーグリード未満のグリードは、経験値稼ぎの為の試し斬りの相手になる事が確定した。否、ある意味では最初からでは
あったのだが、より圧倒的にそうなったのである。

その証拠に、中間層間近で現れたSグリード『ガイアラース』ですら、出会い頭にアルフが打ん殴り、明日香がスプラッシュアローで足元を凍らせて
動きを封じた所で、志緒とフェイトがダブル袈裟切りを喰らわせ、トドメになのはがバスターで吹っ飛ばして極めて楽勝。
なのはとフェイトの攻撃が、ガイアラースの弱点である『風』属性である事に加え、志緒もマスターコアを『風』に変え、明日香が影属性以外の全て
属性に対して、ダメージが増加する『影』属性に変更してた事も大きいだろうが、其れを考えてもであるのだ。


「この先が、中間層だ……気合入れていくぞ!!」

「はい!!」


一行は其のまま、中間層に突入。

そして其処には――


「う……あぁ……ごめ……祐騎…君……」

「空?……お前等……よくも空をやってくれたね?
 何だろうな……姉さんの魂が捕らわれた時以上に、お前達を倒したいと思ってる――空を傷つけたお前達が、そしてそれ以上に、空を護れなか
 った僕自身を許せない!!
 だから、此れは完全な八つ当たりって奴なんだろうけど……せめてもの憂さ晴らしはさせてもらうよ!!」


恐らくは対峙するエルダーグリード、『アストラルウィドウ』か『グレアファントム』の攻撃を真面に受けて大ダメージを負ったのであろう空と、其の事
で怒りに燃える祐騎だった。
普段は、軽口上等で物事に対して車に構えた祐騎であっても、自分の恋人が傷付けられた事を黙って見ていられる性質ではなかった――祐騎も
また、立派に『漢』であったらしい。


「テメェの惚れた女が傷付けられて、そんで其れを防ぐことが出来なかったテメェに怒りを覚える……やるじゃねぇか四宮、それでこそ『漢』だ。
 だが、怒りのままに突っ込んでも、怒りのパワーが切れたら其れまでだから先ずは落ち着けや?……てか、冷静な判断力こそが、お前の売りだ
 った筈だろ?」

「志緒先輩!?其れに、柊先輩達も!!」


今にも突っ込まんとする祐騎を止めたのは、此処に辿り着いた志緒だ。
確かに怒りは途轍もない力を与えるが、怒りが切れれば其れまでなのだ――だからこそ、一度冷静になった上で、怒りを取り込んで自分の力に
する事が大事なのである。


「お前の心意気、見せて貰ったぜ四宮!
 柊、郁島の治癒はお前に任せるぜ?お前の術を使えば、その怪我も何とかなんだろ!!」

「えぇ、任せて下さい。
 術で傷を治す事は可能だし、こんな時の為に体力を全回復してくれる『キュアポーションⅢ』を持って来ていますから。」

「抜かりはないって事だね……流石だね、先輩。――まぁ、一応礼を言っとくよ、おかげで冷静になれたからさ。
 だけど、冷静になった所でコイツ等を許す気なんて無いんだよね……僕の空を傷付けてくれた訳なんだから――コイツ等を倒す事に、力を貸し
 てくれるかな、志緒先輩。」

「言うじゃねぇか四宮……気に入ったぜ!一気に畳み掛けんぞ、なのは、フェイト、アルフ!!」

「はい!!」

「よっしゃー!」

「任せな!!」


そして、空の治癒を明日香に任せ、志緒達は改めて目の前のエルダーグリードに向き合い、そしてそのまま戦闘に突入!!
敵は2体なので、部隊を2つに分け、コアの弱点が風であるグレアファントムに志緒となのはとフェイトが、弱点属性のないアストラルウィドウに祐
騎とアルフが夫々向かう。

だがしかし、如何にエルダーグリードと言えども、この面子の前では最早雑魚である。

本体のコアを実体有る影で覆ったグレアファントムは、初見殺しのエルダーグリードではあるが、影の許容を超えるダメージを受けると一定時間ス
タン(気絶)状態となり、弱点のコアが剥き出しになるのだ。
其れを知っている、志緒が居る以上は強敵ではないのだ。


イグニス……ブレイク!!


強烈無比のイグニスブレイクで、強引にスタンさせれば、其れはゲームエンドに他ならない。


「ブチかませや、なのは!フェイト!!」

「はい!!行きます…ガトリングスマッシャー!!

「いっけー!天破・雷神槌!!


剥き出しになったコアに、なのはの3連続の直射砲と、フェイトの雷撃が炸裂し、此のコンビネーションでグレアファントムは爆発四散し戦線離脱!
そして、残ったアストラルウィドウも……


「喰らえ、ストーン・コールド・スタナー!!」


アルフが、その巨体をどこぞのプロレスラーの必殺技で、アストラルウィドウがパワーをチャージする為の石柱に叩き付けて大ダメージを与える。
己を強化するための石柱が、自身にダメージを与える凶器になると言うのはアストラルウィドウにとっては何とも皮肉な事だが……此れだけでは
終わらないのがこの一行だ。


「さっきのお返しです!!」


――バキィィィィィィ!!


「空!!!」

「心配かけちゃってゴメンね祐騎君……だけど、明日香先輩のお蔭で元気一杯です!一気に行きましょう!!」


明日香の術で回復した空が戦線に復帰し、一気にイケイケムードに!
そして、此れを逃す一行ではない!!


「はは……其れじゃあ、復帰祝いは派手に行かないとね?」

「はい、派手に行きましょう!!」


「「クロスドライブ!!」」


祐騎と空がクロスドライブを発動し、其処から空が隙のない空手コンビネーションを繰り出し、祐騎は相手の攻撃を潰すように射撃スキルで援護し
ながら機を窺い……


「此処だ!!」

「今です!!」


巨体がグラついたのを勝機と見て、祐騎は『ヴァリアブルメテオ』を、空は『風塵虎吼掌』を夫々発動する。
適格者の超必殺技とも言える『Xストライク』のツープラトンだけでも強力なのだが、


「助太刀するぜ!!」

「援護するわ!!」



その攻撃の合間に、志緒がクリムゾンレイドで、明日香がクリミナルブランド(どちらもフィニッシュブロー前まで)で追撃してダメージ増やす。この追
加ダメージは有り難い物だろう。


ヴァリアブルメテオ!!

風塵虎吼掌!!


そしてトドメの一撃が炸裂して、アストラルウィドウもまた爆発四散!!
この一行には、本当に敵が居ないのかも知れない――そう思わせる程の圧倒的勝利だった。其れだけは、きっと誰にも否定する事は出来ない筈
だろう。


「僕の勝ちだね?ま、僕に喧嘩を売ったのが間違いだよ。」

「良い経験をさせて貰いました…押忍!!」


残る迷宮は半分だが、空と祐騎が加入したこのチームならば、危なげなく最深部まで辿り着くのは間違いない。
2本目の柱の攻略は、後半戦こそが本番であるのは、如何やら間違いなさそうである。











 To Be Continued…