Side:アリサ
大きな地震が発生したから、避難所であるこの学校に避難して来た訳なんだけど……なんなのよ、コイツ等、この化け物共は!
おまけに、海鳴の街もなんか変な事になっちゃてるし!アタシは、悪い夢でも見てるっての?悪い夢なら、早く覚めて欲しいわよホントに……!!
「夢じゃなくて、現実だよアリサちゃん……!」
「んな事は分かってるわよすずか!
だけど、悪い夢でも見てるんじゃないかって思わないと、大凡やってられないでしょ?……こんな非日常は、全く想定外だった訳なんだからさ。」
「其れは、確かにそうだけど……」
其れに、確かのこの状況はヤバいかもしれないけど、其れだけにアタシ達は助かるんじゃないかって思うのよ?
私達の親友は、誰が何と言おうともヒーロー気質なのは間違いないし、志緒も又、なのはとはベクトルの違うヒーローだから、きっとこのピンチに駆
けつけてくれる筈よ!
だからすずか、なのは達が来るまで頑張ろうじゃない?
なのは達はきっと来てくれる。アタシは、そう信じてるから。
「アリサちゃん……うん、そうだね。」
アンタなら、きっとこの状況を何とかできるでしょなのは?……だから、さっさとアタシ達を助けに来なさいよ――アタシ達は、アンタ達に頼る以外に
出来る事は無いんだからさ。
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE56
『友を救え!聖祥学園大戦!!』
No Side
緊急避難場所となっている聖祥学園に向かって居る志緒達だが、その道のりは平坦な物ではない。
海鳴全土が異界と化している今、道を歩くだけでもグリードとエンカウントするため、目的に着くまでにも多数の戦いを行う必要があったのである。
尤も、雑兵のグリード如きでは、一行の足止めにもならないのが現実なのだが。
「雑魚が群れやがって……散れや!!」
「道を……開けて下さい!!」
「あ~~はっはっーーーー!お前達が何人来たところで、僕の敵じゃない!メンドクサイから、纏めて吹き飛んじゃえーーーーーーーー!!」
マッタク持って問題なし!
志緒とフェイトの斬撃が群がるグリードを両断し、なのはの射撃がこの上ないサポートになっている故に、雑兵のグリード如き相手ではないのだ。
「ほらほら道を開けな雑魚共!アンタ等なんざお呼びじゃないんだよ!」
「悪いけれど、彼方達如きに足止めされる訳には行かないのよ――はぁぁぁ、砕け散れ!!」
そして、其れをすり抜けたグリードであっても、アルフの剛拳と明日香の氷結の剣が的確に処理し、結果として志緒達に攻撃を加える事が出来た
グリードはこの時点で0!
完全なサポート役こそいないが、此れは此れでバランスのとれた『超攻撃型のチーム』であるのかも知れない。
「見えました、学校です!!」
そうしてグリードを撃破しながら進む事十数分、遂にゴールである聖祥小学校の校舎が見えて来た。――見えて来たのだが……
『ガァァァァァァァァァァァァアァ!!!』
『『ギギギギギギギギ……』』
其処には、漆黒の犬狼型のエルダーグリード『アビスハウンド』と、影の手を模したエルダーグリード『マリスクロウ』が両手揃った状態で出現して、
今まさに学校に襲い掛かろうとしていた。
無論、其処に居る人達だって黙ってはいない。
「バケモンが……可愛い教え子に手出しはさせないよ!」
「年下を護るのは、年長者の役目……ここから先は通さないぜ!」
聖祥学園の体育教師や、避難していた住民の中でも、武道系の部活に所属してるのであろう高校生が、竹刀片手に上級グリードの前に立ちは
だかり、この先には進ませんとしていたのである。
その心意気は立派だが、グリードには通常の攻撃はマッタク持って無意味である上に、適格者でない者では、そもそも立ち向か事そのものが無
謀極まりないのだ。(志緒は、適格者として覚醒する前に、エルダーグリードと素手でやり合ったのだが……)
「ちぃ、コイツ等に限っちゃ、気合と根性だけじゃどうにもならねぇ……速攻で合流すんぞ!」
「はい!!」
状況が悪いと判断した一行は、一秒でも早く現場に駆け付けようとするが、こう言う場面に限って余計なのが現れるのは最早お約束なのだろう。
『ギヤァァァァァァァァァァァ!!』
「此れは、魔鳥!!」
「此処に来てAAA級のエルダーグリードか……ったく、うざってぇな!!」
志緒達の進行を遮るかの如く、巨大な鳥型のエルダーグリード『カオスレイヴン』が現れて一行の前に立ち塞がる。
5S級のグリードを相手にした経験のある志緒と明日香にとっては、今更AAA級であっても苦戦する事はないだろうが、しかし瞬殺が出来る相手で
はないのも事実。故に、聖祥学園到着が遅延するのは間違いない。
そうなると、避難民の危機が高まるのだが――
「スティンガー!!」
「彼方達の好きにはさせないわ。」
「お父様から、この危機を何とかしろって言われてるからね!」
氷の刃と、魔力弾、そして強烈な蹴りが3体のエルダーグリードを吹き飛ばす!!
其れを行ったのは、クロノとリーゼ姉妹。管理局屈指の実力を持つ魔導師が現れ、避難民の危機を救ってくれたのである。此れは、嬉しい誤算以
外の何物でもないだろう。
とは言え、相手は強力なエルダーグリードであり、しかも志緒達が合流するまでは1人1体を相手にしなくてはならないと言うのは、流石に厳しい。
加えて、魔鳥、魔犬、影の手の3種のエルダーグリードには、それらを纏める『主』まで存在しているのだ。
『アハハハハハハハハハ!』
其れこそが、耳障りな笑い声と共に現れたS級エルダーグリード『迷霧ノ魔女』だ。
茨の蔦を撃ち出す、影の剣を射出する、自身の周囲に回転する刃を発生させる、分身を作り出す等、多彩な技を持つ上に、時には眷属である3種
のエルダーグリードとの連携まで使いこなす難敵だ。
「く……新手か!」
「此れは、少しキツそうね……」
「ちぃ、一個小隊位連れて来れば良かったか……!」
如何にクロノとリーゼ姉妹が管理局屈指の実力者とは言え、強大な力を持つエルダーグリード4体を同時に相手にしろと言うのは、幾ら何でも無
理がある。と言うか、只の無茶振りである。
――が。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ひっさーーーーーーーつ!!」
――バガァァァァァァァァァァァァァァァン……ズドォォォォォォォォォン!!
フェイトの声が聞こえたかと思った次の瞬間、物凄い打撃音と共に、炎に包まれたカオスレイヴンが空から落下し、偶然落下地点に居たマリスク
ロウ2体を押し潰してしまった。
何が起きたのか?
「鳥の丸焼き、一丁上がりだな。」
「食べられそうにはありませんけどね♪」
「あの巨体をブッ飛ばすって、相変わらずの馬鹿力だねコイツは……」
「吹き飛ばされたアレを、更に地面に打ち落としたフェイトちゃんの馬鹿力も相当なモノだと思うわよ?」
何の事はない、立ち塞がるように現れたカオスレイヴンとの戦いの中で、志緒が攻撃の隙を突いて『イグニスブレイク』でカオスレイヴンを吹き飛
ばし、フェイトが其れに追撃を加えて地面に叩き落したのである。
志緒とフェイト、常識外れのパワーを持つ2人だからこそ出来た、パワー上等のコンビネーションが、カオスレイヴンに大ダメージを与え、偶然とは
言え、2体のマリスクロウを倒すに至ったのだ。
「来てくれたのか、クロノ、猫娘……お前等が来てくれたおかげで、此処に避難してる連中は無事だったみてぇだな?礼を言うぜ。」
「ありがとうございますリーゼさん、クロノ君!」
「いや、気にしないでくれ。此れも僕の仕事だからな。」
「管理局としても、今回の事は、管理外世界での出来事とは言え、だんまりを決め込む事は出来ないからね~?」
「其れに、礼を言うのは私達の方だわ。
もしも、アレを落としてくれなかったら、コイツ等を相手に可也苦戦したでしょうからね……でも、彼方達のお蔭で形勢は完全に逆転したわ。」
そして、それは同時に道が開いた事でもあり、志緒達は目的地の学校敷地内に到達し、クロノ達との合流を果たしたのだ。
反対に迷夢ノ魔女の方は、影の手2体を失い、眷属の中では最も強い力を持った魔鳥も瀕死状態と、一気に劣勢に立たされてしまった――しかし
ながら、グリードは人を襲い、滅ぼすのがその本質だ。
故に、其処に襲う相手が居るのならば、劣勢など関係なしに襲い、力のままに暴れるだけなのだ。
其れは、ドレだけ高位のグリードでも同じ――栞ですら、その姿をグリードへと変貌させた後は、知性を保ちながらも幼馴染の洸や、友人である璃
音に容赦なく攻撃を仕掛けて来たのだから。
――閑話休題
だからと言って、チートとしか思えないパワーを持つ志緒とフェイト、成長速度がバグってるなのは(魔鳥との戦闘で、また少し強くなった)を擁する
この一団が、手負いのエルダーグリードが1体と、AA級とS級の3体を相手にして苦戦する事など有るだろうか?
「一気に片付けんぞ!」
「はい!!」
「よっしゃー!ぱわーきょくげーーん!!」
答えは、断じて否!
「マッタク……でも、一気に行くわよロッテ!」
「応よ、アリア!」
「「ミラージュアサルト!!」」
先ずは手負いの魔鳥に、リーゼ姉妹が目にも留まらぬコンビネーション攻撃『ミラージュアサルト』を放ってそのまま撃破!如何にAAA級とは言え、
手負いであっては、管理局屈指の実力者であり、クロノの師まで務めたリーゼ姉妹の相手ではなかったらしい。
「行くわよ!はぁぁぁぁ……クリミナルブランド!!」
魔犬――アビスハウンドには、明日香のクリミナルブランドが炸裂し、その巨体が衝撃で大きく吹き飛ばされる。
まぁ、この一撃で撃破とは行かないが、明日香のクリミナルブランドは単なる下準備に過ぎない――最強の一撃をブチかます為の下準備なのだ。
「アルフさん、お願いします!」
「任せな!!
どぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁぁ!!ライトニング……フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォル!!!」
本命はアルフ!
吹き飛ばされたアビスハウンドの巨体を空中でキャッチすると、そのまま逆さまになって、錐揉み回転をしながら雷と共に地面に叩き落す!!
日本においては、『百舌落とし』或は『飯綱落とし』として知られる技だが、その効果は充分であり、脳天から地面に突き刺される事となったアビス
ハウンドは、断末魔を上げる事も出来ずに消滅した。
そして、残る迷夢ノ魔女は……
「確かにテメェは手強いグリードだが、俺に言わせりゃ、長らく死んでて復活したラスボスみてぇなもんだ……今更、俺の敵じゃねぇんだよ!!
大人しく地獄で眠ってな!!」
多才な攻撃を繰り出すも、元々異常とも言える頑丈な身体にバリアジャケットを纏った志緒にはそれら全てが殆ど通じずに、反対にハイジャンプか
ら頭上を取られ、其処から繰り出された力任せの兜割りで、文字通り身体を縦に切り裂かれてしまったのである。
この時点で、既に勝負は決したようなものだが、志緒は其処から更に縦横無尽にヴォーパルウェポンを振るい、魔女を切り刻んでいく。
「コイツで止めだ……ブチかませ、なのは!フェイト!!」
「はい!これで終わりです!ディバイィィィン……バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「僕の友達にひどいことしようとした奴はゆるさない!そんなやつは、僕がやっつける!喰らえ、爆光破!!」
そしてトドメは、なのはとフェイトのダブル砲撃魔法!
桜色の砲撃と、蒼雷の砲撃は、容赦なく細切れにされた魔女の身体を飲み込み、欠片すら残さないとばかりに消滅させていく――もう、こうなって
は、S級のエルダーグリードとは言っても如何にもならないだろう。
「ハッ、出直してきな!」
「私達の勝ちです!」
「いえ~~い!もう、だれにもまけないもんねーーー♪」
結果は志緒達の完全勝利!
かくして、聖祥学園に避難していた人々の安全は守られたのであった。
――――――
Side:志緒
校門と、裏門に海鳴神社の御札を張って、此れで大丈夫だな。
此の御札がある限りは、この学校はグリード共が侵入する事の出来ない『聖域』になった訳だからな――とは言え、海鳴の状況は楽観できるモン
じゃねぇんだが。
「なのは~~~~!」
「なのはちゃん!!」
「アリサちゃん、すずかちゃん!!……良かった、無事だったんだ!!」
「……遅いのよ、このバカ!もう、駄目かと思ったじゃないのよ!!」
「にゃはは……ゴメンねアリサちゃん?」
「でもまぁ、何とかなったみたいだから、ギリギリ間に合ったって言う事でチャラにしてあげるわ!」
だがまぁ、なのはのダチが無事でよかったぜ。
取り敢えず、此処はもう大丈夫だろうから問題ねぇんだが……残る2つの柱も攻略しなくちゃならねぇから、あんまりゆっくりもしてられねぇよな?
そう言う訳だから、クロノ、猫娘、もしもに備えて学校の防衛は任せるぜ?俺達は、残る柱の攻略をしないとならないからよ。
「任された。――だが、くれぐれも気を付けてくれ。」
「ハッ、誰に物を言ってやがる!俺達が、そう簡単にやられる筈がねぇだろうが!!」
「なのは、フェイト……やっぱり行くのね?」
「うん、此れは私達がやらなきゃいけない事だから。」
「だいじょーぶ!僕達が力を合わせれば、どんな相手であってもぜったいにやっつけることが出来る!だから、心配ご無用!」
「あはは……フェイトちゃんが言うと、妙な説得力があるね?」
「ホントよね……なら、行ってきなさいなのは、フェイト!そんで、絶対に帰って来なさい?約束だからね!」
「「うん!!」」
なのは達の方も纏まったみてぇだし、そろそろ行くか2本目の柱の攻略にな!
2本目の柱は、海鳴駅の真正面に発生してた筈だ――こんな所まで、杜宮の時と一緒だが、状況が一緒なら、あの時と同じように一つずつ攻略し
て、確実に潰していくだけだろうが!
何よりも、タイムリミット前に全部の攻略が出来なきゃゲームオーバーな訳だからな……アクセル全開でブチかましてやんぜ!!
封印指定のロストロギアだか何だか知らねぇが、今回に限っては世界の破滅はあり得ない――俺となのはと、そして仲間達が其れを絶対に食い
止めるからなぁ!
その為にも、先ずは2本目の柱の攻略と行こうじゃねぇか!!
To Be Continued… 
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