Side:志緒
予想通りに現れやがったな、柱の守護者が。
馬鹿でかい体躯は元より、其の力も倉敷の時の柱の守護者とは比べ物にならねぇ……流石は、封印指定のロストロギアの暴走から生み出された
柱の守護者って所か。
だが、だからと言って負ける気は毛頭ねぇがな?
幾ら手強いとは言え、力を解放した倉敷と比べれば大した事はねぇ――そのバカでかい図体は、少々厄介かも知れないが、だが其れだけだぜ!
多少の苦戦はしても、俺達が負ける事は絶対に在り得ねぇよ。
「覚悟を決めな……テメェに残された道は只一つ――俺達にぶっ倒されて霧散する、其れだけだ!」
「立ち塞がるなら、砕いて進むのみです!!」
「ネメシスの執行者として、そしてX.R.Cのメンバーとして、此処は負けられないわね!!」
「覚悟しなデカブツ――アタシ等が葬ってやる!!」
「あ~~~っはっは~~!!
相手が幾らデカくても、そんなモンはかんけーないもんね!!幾らデカ物相手でも、撃って斬ってスラッシュしてぶっ倒す!只、それだけだー!」
何よりも、此れだけの頼れる仲間が居る訳だからな。
ま、精々あの世で後悔しな――俺達を敵に回しちまった、己の愚かさって言うモノをな!!
俺達の魂を、俺となのはのBLAZE魂を、喰らえる物なら喰らってみな!!――喰らいきれずに、腹がパンクするのは間違いねぇって所だぜ!!!
――覚悟しな、柱の守護者!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE55
『柱の攻略Round1!』
No Side
柱の守護者であるグレア・ザナドゥと対峙しながら、しかし一行に緊張の様な物はない……其れは全員が最高の精神状態でこの場にやって来た
事の証明でもあるのだ。
だがだからと言って相手の攻撃が緩む筈はない。
――ドドドドドドドド!!
「ちぃ……うざってぇな。」
「此れを全て討ち掃うのは、幾ら何でも無理ですよぉ!!」
10mはあるであろう巨体から放たれる攻撃は、其れそのものが凶器であり、ともすれば肉体そのものが兵器と言っても過言ではないのである。
『グガァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』
「だぁぁぁーーーうるっさーい!!」
加えて、その巨体での咆哮は、其れすらも衝撃波となって志緒達に襲い掛かる。
とは言え、一行は空を飛ぶ事が出来る為、床に発生する毒の沼や、地を這う衝撃波などの攻撃は完全にやり過ごす事が出来ると言う点では、地
上型の戦士よりも楽だっただろう。
実際に志緒と明日香は、杜宮でも『柱の守護者』と戦っているが、その時と違い、今回は空を飛べると言う点では楽だった。
とは言え、相手は柱の守護者を務める程の、巨大で強大なグリード。
「オォォラァァァァァァァァァ!!」
「バスターーーーー!!」
「ひっさーつ!!」
志緒の斬撃と、なのはのバスターと、フェイトの力任せの横薙ぎ一閃を喰らっても小動もしない。否、確実にダメージは入っているのだろうが、ダウ
ンを奪う程の物ではない様だ。
「シュート!……く、此れもダメね。」
ならばと、明日香がグレア・ザナドゥを凍りつかせようとスプラッシュアローで攻撃するも、相手があまりにも大きいせいで、ほんの一部分を凍らせた
だけで、全身の凍結には至らないのである。
『ガァァァァァァァァァァ!!』
「ほへ?」
「フェイトちゃん!!」
――ズガァァァァァァァァァァァァァン!!
そんな戦いの中、グレア・ザナドゥが振り回した腕がフェイトにクリーンヒットし、フェイトはまるでバットで打たれたボールの如く吹き飛んで壁に激突
し、更にその壁が崩れて、瓦礫がフェイトを埋め尽くす。
僅か9歳の少女が喰らうにしては余りにも大きすぎるダメージであり、普通ならば最悪の結果――『死』を考えてしまう。考えるのが普通だ。
そう、『普通』ならば。
「やーりやがったな、このやろーーーー!!!」
――バッガーーン!!
瓦礫を吹き飛ばしてフェイト復活!
究極の脳筋にして、天下無敵のアホの子であるフェイトは身体も恐ろしいまでに頑丈であり、普通なら致命傷になる攻撃であっても耐えられるの
である。――耐えられるだけで、怪我は負うのだが。
「フェイトちゃん、大丈夫!?」
「うん、全然平気!!」
「嘘こけや……頭から弩派手に流血しといて平気な筈がねぇだろうが。」
「其れが平気なんだよシオ。
戦闘中のフェイトは『バトルハイ』とも言うべき状態になってて、本人が『痛い』と自覚しない限りはどんな怪我でも大したダメージにはならないし、
その状態のフェイトってば、あれ位の怪我なら速攻で治っちゃうんだよね?
ぶっちゃけて言うと、あの状態のフェイトは、なのはのブレイカー級の一撃で意識を刈り取らない限りは、絶対に倒れる事はないのさ。」
「つまり、戦闘中のフェイトちゃんは略無敵?」
「そのフェイトを落としたなのは……大したもんだぜ。」
なんにせよフェイトの戦線離脱はあり得ない事である様だ。
其れは実にありがたい事ではあるのだが――
『グオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』
グレア・ザナドゥの凶器の拳が一向に向かって振り下ろされる。
15m近い高さから力任せに振り下ろされた拳を真面に喰らったら、志緒とフェイトであっても戦闘続行が不可能になるダメージを負うのは間違いな
いし、最悪の場合は死に至るだろう。
だが――
――ガシィィィ!!!
「ハッ、アメェんだよクソッ垂れが。
相手の隙を狙うってのは悪くねぇが、背後から襲い掛かってくるようなチキン野郎に、俺達の首はやれねぇな!!」
その拳は、志緒がヴォーパルウェポンで受けて防ぎ、一行は完全にノーダメージ。
と言うか、10m以上の巨体から放たれた一撃を、大剣一本で受けきった志緒の腕力は如何程なのかと疑いたくなってもきっと罰は当たるまいだ。
「むぅぅぅぅん!」
さらに驚くべき事は、気合一発、その腕を押し返してしまった事だ。
10mを超すグレア・ザナドゥの腕は、片腕でも100kgは下らないだろうが、其れから繰り出される一撃を防いだだけではなく、押し返してしまったと
言う事を考えると、本気で志緒は常識と言うモノを宇宙の彼方に蹴り飛ばしてしまった存在なのかもしれない。
「倉敷の時と比べると多少手強いみたいだが……だが、基本能力が底上げされただけで、それ以外の違いはねぇみてぇだな?
此れまでのお前の攻撃を見て、ソイツを確信したぜクソッ垂れが――なのは、何秒あれば行ける?」
「!……10秒です!10秒あれば、アレを倒すことが出来ます!!」
「なら、其の10秒は俺達が稼いでやるから、止めは頼んだぜ?」
「任せて下さい!」
だが、そうであっても相手は力技で押し切れる存在ではない故に、志緒はなのはに『最強の一撃』の準備を命じ、なのはもそれに従う。
最強の一撃は、放つのには時間がかかる故に、タイマン勝負では相手をバインドで拘束しない限り放つ事は出来ないのだが、チームで戦うのなら
ば話は別だ。
相手を拘束せずとも力を溜めることが出来るので、なのはとしても収束に全神経を割く事が出来るのである。
「全力……全壊――行くよ、レイジングハート!」
『All right.』
志緒達がグレア・ザナドゥに攻撃を始めると同時に、なのはは魔力の集束を開始。
其れも只収束するだけでなく、この柱の内部に元々漂っていた魔力素をも収束し、最強無比の集束砲を放つ準備を進めていく。
同時に、時間稼ぎに挑んでいた志緒達も、グレア・ザナドゥに対して、此れまで以上に優位に戦いを進めていた――明日香とアルフがサポートに
回って、志緒とフェイトがクロスレンジでダメージを与えると言うコンビネーションがバッチリと嵌ったのだ!!
「いっくぞ~~!パワー極限ーー!雷神封殺爆滅剣ーーーー!!」
「オォラァァァアァァッァア!!喰らいな、紅蓮武神覇斬!!」
其れを示すように、志緒とフェイトの気合十分の一撃が、グレア・ザナドゥに炸裂し、その両の腕をチェーンソーで丸太を斬り落とすかのように両断。
如何に強力なグリードとは言え、両腕を斬り落とされては何も出来ないだろう――略、全ての攻撃手段を封じられてしまったのだから。
そして、この好機を見逃す一行ではない。
「ブチかませや、なのはぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「全力全壊!!」
『Starlight Breaker.』
志緒の怒号に呼応するように、なのはは収束した魔力を一気にグレア・ザナドゥに向かって放出する!――迷いなど、其処には全く無かった。
「スターライトォォォォォォォ……ブレイカーァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
――ドガァァァァァァァァァァアァァァァアァァッァアン!!
そして放たれた一撃は、いとも簡単にグレア・ザナドゥを飲み込み、欠片すら残さずに消滅させていく――マッタク持って、なのはは規格外の魔導
師であると言ったクロノは間違っていなかったのである。
だが、此れでこの柱は攻略完了は間違いないだろう。
『ガァァ……グガァァァァァァァァァァァ!!』
なのはのブレイカーを喰らったグレア・ザナドゥは、突然発狂したかのように暴れまくり――そして消滅してしまったのだから。
「私達の勝ち!……なんでしょうか?」
「俺達の勝ちだ、過程は如何あろうともな。
――だから、堂々としておきななのは。最大の功労者が緊張に呑まれちまったなんてのは、洒落にもならねぇもんだかららな――出来るだろ?」
「はい!」
柱の守護者が消滅した事で、柱内部に発生していたグリードも全て消滅したのは間違いない。
大本を攻略しない限り、この柱は顕現したままだが、それでも機能を停止させたのは決して小さくない――否、大きな成果であると言えるだろう。
残る柱はあと2本――だが、志緒達ならば、きっと……否、必ず攻略出来るだろう。
――――――
Side:志緒
ったく、柱の守護者ってのは手強いから退屈はしねぇんだが、こんな状況では有り難い相手じゃなかったな……なのはの集束砲が通じなかった場
合、全滅してたのは俺達だからな。
そう言う意味では、よくやってくれたぜなのは。正に殊勲賞もんだな。
「えへへ……褒められると、照れちゃいます♪」
「褒め言葉は、素直に受け取っておきな――それが、お前の成長にも影響を与える事になるだろうからな。」
「了解です!」
その意気や良しだ。
恐らくは、時坂達も柱の攻略に臨んでるだろうから、3本の柱を沈黙させるのは決して難しい事じゃないだろうからな――すべき事をするだけだ!
合流出来ちゃいないが、きっと時坂達だって柱の攻略に向かってる筈だからな……まぁ、時坂達なら絶対に攻略しちまうだろうがな。
そういえばなのは、士郎さん達『高町家』の面々は、神社に居たが――アリサとすずかはいなかったよな?まさかとは思うが――
「!!若しかしなくても、アリサちゃんとすずかちゃんは、緊急時の避難所に指定されてる学校に向かっちゃったの!?……だとしたら。拙いの!」
「指定避難所か矢張り!!」
大体予想はしてたが、まさかその通りだとはな……だが、そう言う事なら行くしかねぇだろ!!
テメェのダチ公を見殺すなんてのはBLAZE最大の汚点であり、テメェに生涯付きまとう重荷になっちまうだろうからな…行くぜ、なのはの学校に!
「りょーかーい!」
「異論無し――やってやろうじゃないさ!!」
「異論をはさむ隙がありませんからね。」
「行こう志緒さん!私達なら、きっと――否、必ず出来ますよ!!」
なら、やるしかねぇ――ま、精々辞世の句でも読んでるんだな化け物…どんだけ強力な化け物が顕現した所で、纏めて払う、其れだけだからな!
――轟!!!
何よりも、ドレだけ時が経とうとも、失われないって言う物は絶対にあるからな――行くぜ、学校に!!
そして、見せつけてやろうじゃねぁか、クソッ垂れのグリードどもに、俺達の力がドレだけの物であり、歯向かう事は全く無意味だって言う事をな!
燃やし尽くしてやるぜ、俺のBLAZE魂で全てをな!!――精々、覚悟を決めときな!!
To Be Continued… 
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