――絶の柱・内部


Side:志緒


さて、柱の内部に入り込んだ訳だが……ここも異界迷宮よろしく、一筋縄じゃ行かねぇ迷宮になってるみてぇだな?
倉敷の時と、殆ど同じ状況だって事だから、ある程度は予想もしてたし覚悟もしてたんだが、実際に厄介な迷宮が柱の内部に展開されてるっての
は、流石にヤレヤレだぜ――ま、それでも攻略するだけだがな。

其れよりも――



「フェイトちゃーん!アルフさーん!!」

「柊ーー!聞こえたら、返事をしやがれ!!」


ち……返事なしって事は、俺達の声が届かない場所まで進んじまったって所なんだろうな。
柊はプロだし、フェイトのあの糞力と、アルフの戦闘センスがあれば、早々簡単にやられることはねぇだろうが、倉敷の時と同じだとするなら、柱の
内部に出て来る化け物共は、今までの異界に出てきた奴等とは格が違う上に、中間層ではエルダーグリードまで出て来るハードモードの筈だ。
だから、気合入れて行くぞなのは!!



「はい!初っ端から全力全壊!エルダーグリードだって、バスターでブッ飛ばしちゃいます!!」

「はっ、そう来なくちゃな――じゃあ行くぜ?
 兎に角、行く手をさえぎる雑魚は叩きのめせ!俺が許可する。」

「了解です志緒さん!」



俺に切り倒されるか、それともなのはに撃ち抜かれるか……せめて望みの方法で葬ってやろうじゃねぇか、柱内部の化け物共を一匹残らずなぁ!
ま、リクエストがなかったその時は、問答無用で斬撃とバスターの餌食だけどよ。











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE54
『Revolt Against Doom』










No Side


先に柱の内部に、明日香とフェイトとアルフが入っているのならば、其の3人が進んで行った道のグリードは掃討されていると思うだろうが、異界迷
宮は、新たに入って来た侵入者に対しても、新たなグリードを向かわせるのだ。

という訳で、柱内部に明日香達から遅れて侵入した志緒となのはに対しても、新たにグリードが現れて行く手を阻まんとするのだが――


「雑魚が群れやがって……!!」

「道を……開けて下さい!!」

『Destroy.(撃滅。)』


物理攻撃力がカンスト振り切れて、クロスレンジ無双の志緒の斬撃と、魔法に携わるようになって僅か3カ月とは思えないなのはの砲撃・射撃魔
法の前では、下級のグリードなどは経験値の足しにもならない。

志緒のヴォーパルウェポンが、一振りで最低3体のグリードを叩き斬り、なのはのレイジングハートから放たれる砲撃は一撃で5体以上のグリード
を、滅殺!抹殺!!大激殺!!!
最強の剣士と、最強の魔導師が手を組んだら負けは無いとは誰の言葉だったか分からないが、志緒となのはのコンビは、まさにそれを体現してい
たと言っても過言ではないだろう。


「テンで話にならねぇな?俺となのはを倒したいなら、バズーカ砲か戦車でも用意して来るんだな。」

「其れでも、負ける心算は有りませんけれどね!」


そして、背中合わせに立って、ヴォーパルウェポンを背に担いで左手の中指を立てる志緒と、レイジングハートを脇に抱えて右手の親指を立てた
状態でサムズダウンするんなのはが実に絵になる。
これこそ『正義のアウトロー』その物だろう。……なのはは、将来が少々不安ではあるのだが。

しかし此処は、異界建造物内部の迷宮であり、少し進むだけでグリードが次から次へと湧いて来る――其れこそ、どんなに長くても10mも進めば
下級グリードの集団が待ち構えているのだ。
其れだけの相手をしていたら、志緒は兎も角、なのはの体力は持たないだろうが、なのはは息一つ上がって居ない。
と言うのも、なのはは事前に志緒からソウルデバイス用のエレメント『青龍鱗』を受け取って、レイジングハートに収納していたのだ――この『青龍
鱗』は、失われた体力を回復してくれる効果を持ったエレメント故に、なのはは息切れを起こしていないのである。


「やれやれ、うざってぇな……散れ、ヴォルカノゲイザー!!

「道を開けて下さい!ガトリングスマッシャー!!


なので、志緒となのはの行く手を阻むものはない。
新たに現れたグリードの集団も、志緒がヴォーパルウェポンを地面に突きさして発生させた火柱と、なのはの3連射の直射砲で『お前はやられる
為に出て来たのか?』と言わんばかりに速攻粉滅!正に圧倒的!
此処まで強いとなると、ヴィータがなのはの事を悪魔呼ばわりしたのは、あながち間違いでなかったのかも知れない。

とは言え、一筋縄では行かないのが異界迷宮であり、それが重要な『柱』の内部であるのならば尚更だ。


――Warning!Warning!!


『グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

――S・グリード:ゼファームスペル



中間層を目前にして、強力なS・グリードが出現!
荒ぶる風の力を纏わせたエネルギーの剣を両手に持って襲い来る大型のグリードであり、しかも巨体の癖に動きが意外に素早い難敵の登場だ。

が、しかし――


「うぜぇって、言ってんだろうが!!」

「邪魔です!!」


風属性に強い焔属性を備える志緒と、圧倒的な馬鹿魔力を備えたなのはの前では、如何に強力と言えどもS・グリード程度は下級グリードに毛が
生えた程度の存在でしかない。
ゼファームスペルが攻撃動作に移るよりも早く、なのはの射撃が攻撃動作の出鼻を挫き、それによって生まれた隙をついて、志緒がヴォーパルウ
ェポンを横一文字に振り抜いて一刀両断!――若しかして、コイツ等はレベルがバグっているのでは?と思う位に圧勝であった。


「ったく、この程度じゃ準備運動にもならねぇな。」

「全くです。」


『そんなのはお前等だけだ。』と言ってはいけない。少なくとも志緒となのはの中では、そう言う認識であるのだから。
そして、それ故に高難易度の異界迷宮もサクサク進む事が出来てるのだから、野暮な事は言わない方が良い。言わない方が良いのだ絶対に。

そんなこんなで中間層に到達したのだが――



「オイオイオイ、幾ら何でも此れはやる気出し過ぎじゃないのかい?」

「ダークデルフィニウムに、グレアファントムとアストラルウィドウ……エルダーグリードが3体だなんて!!」

「よーし、まとめてやっつけよう!!」



其処では、先行していた明日香、フェイト、アルフの3人が、3体のエルダーグリードと対峙していた。
此の3人の戦闘力は申し分ないが、それでも3体のエルダーグリードを同時に相手をするのは流石にキツイ――フェイトだけはやる気十分だが。



フレアスラッシュ!

ディバインバスター!



しかし其処に、志緒となのはが到着し、アストラルウィドウとグレアファントムを斬撃波と直射砲で吹き飛ばす!
相手はエルダーグリードだけに、今の一撃で倒す事は出来なかったが、それでも十分なダメージが入ったのは間違いないだろう――と言うか、志
緒となのはの攻撃を喰らって無事でいられる者が存在するのならば、是非とも紹介して頂きたい。


「高幡先輩!なのはちゃん!」

「無事だったんだなアンタ等も!」

「やっほー、元気だった?シオ、なのは~~~♪」


同時にそれは、先行していた一行にとっては思わぬ援軍であったのは間違いないだろう。
何よりも、志緒の焔属性はダークデルフィニウムに、なのはの風属性はグレアファントムに対して有効な属性であるが故に、此の2人の加入で一
気に流れが傾いたのは間違いないだろう。


「此処までよくやったぜお前等……細かい事は後だ、先ずはこの化け物共を片付けるぞ!!」

「全力全壊で!!」


「おー!なのはとシオが一緒になったら百人力だーーー!!」

「確かに、この局面での加勢は、有り難いわね……行きましょう、高幡先輩、なのはちゃん!!」

「アンタ達が一緒なら負ける気がしないねぇ?――覚悟しな、この化け物が!!」


同時に志緒となのはの加入は、士気を高める結果にもなったらしい。
そして、元々高い能力を有する明日香とフェイトとアルフの士気が高まったらどうなるのか?……言うまでもなく、其れは最強クラス間違いなしだ。

なので、志緒となのはが合流した時点で、3体のエルダーグリードは只の的でしかないのだ。

元々の属性が『風』に属するなのはとフェイトがグレアファントムを攻撃し、属性を『影』に変えた明日香と『鋼』の属性を備えたアルフがアストラルウ
ィドウに対処し、焔属性の志緒がダークデルフィニウムを炎熱斬撃で攻め立てる!

如何に強力なエルダーグリードが3体とは言え、此れは相手が悪かったとしか言いようがないだろう――3体の内2体は、弱点を的確に突かれて
しまうのだから。

そして、それだけでは終わらない


「なのは、柊……一気に行くぞ!」

「はい!」

「えぇ、一気に決めましょう!!」



「「「クロス・ドライブ!!」」」



駄目押しとばかりにクロス・ドライブを発動し、一気呵成に攻め立てる!
クロス・ドライブを発動中は、相手の属性に関係なく全ての属性が相手の弱点となる故に、その効果は非常に高く、エルダーグリードが相手であっ
ても、一撃必殺が可能になるのだ。


「終わりだ……クリムゾンレイド!!

「吹き飛べ……ディバインバスター!!

「凍てつけ…クリミナルブランド!!


そして放たれたそれぞれの奥義は、アストラルウィドウ、グレアファントム、ダークデルフィニウムに直撃し、攻撃を受けた相手は断末魔の叫びを上
げる事も出来ずに爆発四散!



「お~~~!すっごーい!!」

「明日香は兎も角、志緒となのはは本当に人間なのかね?……ちょいと疑いたくなってきたよアタシは……」


アルフの言う事は尤もだが、志緒となのはに限っては其れは言うだけ徒労だ――真なる強者は、理論や理屈などを超越した、ただ只管に強い存
在であったと言うだけなのだから。
故に一行は止まらない!止まる筈がない!



「残り半分、一気に片付けるぞ!!!」

「「「「おーーーーーー!!!!」」」」


志緒の号令に一行は呼応し、最高の状態で柱の後半戦に突入!
管理局のランク付け的には、オーバーAAクラスが5人も集まったこのチームに負けはない――其れこそ京に一つも負けはないだろう間違いなく。








――――――








Sied:志緒


ふぅ……流石に、其れなりに強力なグリードが集まってただけあって、簡単に攻略とは行かなかったか――まぁ、さして苦戦した訳でもねぇがな。
と言うか、後半はフェイトの奴がなのはと無双してたからなぁ……ッタク、ドンだけの体力なのかって疑いたくなるぜ。俺が言えた義理じゃないが。
だが、少なくとも此処までの戦いは誰にとってもマイナスにはなってねぇ――だから、本番は此処からだぜ!



「ですね……!」

「栞さんの時と同じと考えるなら、確実に『アレ』が現れるでしょうから、確かに油断はできないわ。」


「何やら、ヤバそうな奴が居るみたいだね……」

「そうなの?……メンドクサイから、誰が相手でもやっつけるだけだけどね!」

「其れは、とっても頼りになるよフェイトちゃん!!」



確かにな。
だが、気を抜くなよ?俺や柊の記憶の通りなら、此れから現れるのはグリムグリードに匹敵するだけの力を持った、最強にして最悪の敵だからな。



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



「ふん……如何やらおいでなすったみてぇだな?」

「此れは……凄く大きいです!」

「栞さんの時と同等……否、それ以上だわ!!」

「こんな奴が最後の最後で……柱のラスボスって事か――!」

「あ~~っはっは~~!寧ろ上等!
 此れ位のラスボスが居ないと、ダンジョンを攻略する意味はない!それに、ドレだけ強い相手だろうとも、今の僕達に敵はない!ある筈がない!
 だから……かくごしろラスボスーーー!!!」



『グゴアァァァァァアァァァァァァァァァァァ!!!』

――絶の守護者:グレア・ザナドゥ




現れやがったな『柱の守護者』!!
グリムグリードに勝るとも劣らない力を持った、トンでもねぇ相手だが……テメェ如きで俺達を止められると思ったら大間違いだぜ、木偶の棒が!!

確かにテメェ等からしたら、人間なんてのはちっぽけな存在だろうし、実際そうなのかも知れねぇが……だからと言って、俺達の未来にまで手出し
をするんじゃねぇ!!

「とは言っても、言って聞く相手じゃねぇだろうから、準備運動がてら、コイツをぶち殺させて貰うぜ!!――さぁ、覚悟しな!」











 To Be Continued…