Side:なのは


此れは……過去の記憶なのかな?其れを夢で見てる?



『おい、何だってそんなに寂しそうな眼をしてんだオメェは?』


『成程な……そう言う事なら俺に任せな。お前の家族に一発モノ申してやんぜ!!』


『ダチは何があっても護れ……其れがBLAZEの魂だぜなのは。』




映し出されるのは、4年間に志緒さんと出会った時から、別れるまでの間に志緒さんから言われた事の数々……中でも、BLAZEの魂に関する事は
今でもこの胸に刻まれてるよ。



『なら、これから自分が如何すべきかは、分かってるよな?』

「はい。分かってます!!」

『それでこそなのはだ……BLAZE魂を継ぐ者だ。――頑張れよなのは?この状況を何とかできんのは、お前と『俺達』だけなんだからよ。』



はい……其れも分かってます。
だから、終わらせます――私達で、闇の書の長き因果を断ち切って見せます!!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE53
『侵された現実・異界と化した海鳴』










Side:志緒


「!!?」

「よう、目が覚めたかなのは?」

「志緒さん……?本物ですよね?」



本物に決まってんだろ……疑うなら、身体を突っついてみるか?
あの空間転移に巻き込まれたのは事実だが、幸か不幸か、俺達は同じ場所に転移していたらしい――この『海鳴神社』の境内にな。そんで、今ま
で、寝てたって訳だ。



「寝てたって、ドレ位ですか!?」

「俺が起きたのが30分前だが……今の時間を考えると、たっぷり10時間ていう所だろうな。――寝すぎかもしれないが、魔力と体力は回復したん
 じゃないか?」

「其れは確かに……って、所で世界はどうなってるんですか?」



そいつは、口で説明するよりも実際に見て貰った方が早いかもしれねぇな……マッタク持って、トンでもない事態になってくれたもんだぜコイツは!



「へ?えぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」



現実世界が、異界と化しちまってるんだからな。
状況的には倉敷の時と同じ、或はそれ以上の状況だと言っても過言じゃねぇ……恐らくは、海鳴全土が異界と化してると言っても過言じゃねぇな。



「如何やら、今や海鳴は、海鳴全体が普通ではない異界と化して居るようだね?
 あの、嘗ては大学病院として存在していた建物を中心としてね。」



士郎さん、こんな中で街を見回って来たのか。
流石と言いたい所だが無茶はダメだぜ?アンタに何かあったら、なのはは4年前のあの時に戻っちまうからな――しかし、アレが元々病院だった
何て大凡信じられねぇな?
倉敷の時も、アクロスタワーがまるっきり違うもんに変わっちまったが、あの病院はまるで『神殿』だな?……ま、アレも結局は『匣』なんだろうが。



ふふふ、正解だよ。アレは形は違うけれど、杜宮に現れた『パンドラの匣』と根本的には同じモノさ。

「……やっぱり現れやがったか、レム。」

「ほえぇぇ!?行き成り女の子が空中に現れたの!?
 お、お知合いですか志緒さん!?」



知り合いだな一応は。自称『観測者』の人外娘だ。基本的にゃ無害だから心配しなくて良い。
んで?この状況が倉敷の時と殆ど同じだってのは分かったが……このまま、状況が進んじまった先にある結末までは同じじゃねぇ。そうなんだろ?



そうだね。彼女の場合は『倉敷栞が生存している』と言う『嘘』で世界を覆い尽くすだけで、世界の因果が捻じれてはしまうけど、
 世界そのものは存在していた。
 だけど今回は、状況が進めばこの異常事態は世界を飲み込み、そしてこの世界は消滅する……間違いなくね。

「そんな!どうすればいいの?如何すればそれを止められるの!?」

簡単な事さ、箱の中の主を倒せば良い。
 異界の迷宮を攻略するのと同じさ。この状況を引き起こした元凶を倒せば、其れで全て元通りさ。



ま、其れしかねぇんだろうな。
となるとだ……士郎さん、街の様子を見て来たって言ってましたが、病院があぁなっちまった以外に、妙なモンは街中に無かったすっかね?



「妙な物?……そう言えば、海鳴臨海公園と駅前、それから繁華街の3カ所に、今までなかった奇妙な建造物が建って居たねぇ?」

「奇妙な建造物……『匣』を護る『柱』だな。
 先ずは其の3本の柱を攻略しねぇと、匣の中に入る事すら出来ねぇ……マッタク、面倒な事態になってくれたもんだ――ヤレヤレだぜ。」

元より、やる以外の選択肢は最初から存在してねぇんだが、何だって俺の前に現れやがったレム?時坂の所には、行かなくてもいいのかよ?



杜宮での時は、確かに彼が主役だったけれど、今度の事に関しては君とその女の子が主役だからね……だからやって来た。
 君達ならきっと大丈夫だと思うけど、気を付けて。今回の相手は、あの時よりも強大だからね。…最後まで、見させてもらうよ。


――シュゥゥゥン……



「消えちゃった……」

「相変わらず、言いたい事だけ言って居なくなっちまう奴だなアイツは。」

兎に角、匣の中に突入する為にも、先ずは柱を止めねぇとな?
恐らくは時坂達も行動を開始してるだろうから、攻略中にバッタリ出くわす可能性は高い……なら、探して合流するよりも、俺達は俺達で動いた方
が効率がいい。

とは言え、行き成りこんな事になっちまったんだ、神社みたいな神聖な場所には化け物共は入って来れねぇが、海鳴市民全員が此処に避難して
来た訳じゃねぇからな?……商店街なんかに残された人達を助けねぇとだな。
悪いが、この神社の御札とかねぇか?あるなら10枚ほど貰えねぇかな?



「御札……そんな物をどうするんですか?」

「さっきも言ったが、異界の化け物共は神社みたいな場所には入って来れねぇんだ。
 だから、この神社の御札を商店街の入り口や、人が避難してる建物の入り口に張り付けてやりゃ簡易的な結界になって安全を確保出来る訳だ。
 杜宮の時は特殊な結界具を使ったが、化け物が入って来れない神社の御札なら同じ事が出来る筈だからな。」

「そうなんですか……其れじゃあく~ちゃん、御札貰える?」

「はい、どうぞ。」



巫女装束の狐耳娘……誰だ?



「お友達のく~ちゃんです。因みに九尾の妖狐です♪」

「初めまして。」



おう、初めまして……って、九尾の妖狐が友達ってドンだけだオイ。
其れ以前に九尾の妖狐が居るって、若しかしなくても海鳴は杜宮以上の魔窟……だな間違いなく。そもそも、高町家そのものが普通じゃねぇ上に
新たに、フェイトとアルフにリンディさんが住み着いちまってるからなぁ?
おまけに、次元超えて俺達まで居るんだから普通な筈がねぇか。

まぁ、それはさておき、御札は手に入った訳だから、先ずは商店街から行くぞなのは!



「はい!全力全壊です!!」

「さぁ、行くぜ!!」








――――――








No Side


志緒となのはが神社を出発して直ぐの商店街は、若干窮地に陥っていた。商店街の中に、大型のエルダーグリードが侵入して来たのだ。
流石に商店街の人々の行動は素早く、多くの人々は襲われる前に店の中に隠れるなどしたのだが、数人の子供が逃げ遅れ、其れを護るように
八百屋の青年と、老舗豆腐屋の頑固おやじがエルダーグリードの前に出ていたのだ。


「ちぃ、何なんだよコイツ等!金属バットで殴ってもビクともしねぇ……!!」

「ワシの木刀での一撃が通じないとは……だが、何とか子供達だけでも――!!」


『ギシャァァァァァァァァアァッァァァァァァ!!!!』

『『『『『『『ギャギャギャ!!』』』』』』




もしも相手が強盗程度ならばこの2人でも何とかなっただろう。
青年は趣味で色々な武道を通信教育で学んでいる格闘マニアで、頑固おやじは若い頃はあらゆる剣道大会を総なめにした猛者なのだから。
だが、それだけの人物であっても攻撃が効かない相手ではどうしようもない。――状況は正にチェックメイトだが……


フレアスラッシュ!!

ディバインバスター!!


――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!


突如、紅蓮の斬撃波と桜色の直射砲撃がグリードに直撃して爆発四散!!
その攻撃を行ったのは、言うまでもなく志緒となのはだ。神社から全速力で駆けつけ、ギリギリのところで何とか間に合ったのだ。


「なのはちゃん!」

「金髪の小僧も一緒か!!」

「此処は私達に任せて下さい!」

「オヤッさん達は、ガキ共を連れて安全な場所に……コイツ等は、俺等がぶっ倒すぜ!!」

「……小僧……分かった頼む!死ぬなよ!!」

「ハッ、言われるまでもねぇさ!!」


志緒となのはの攻撃で、グリードが怯んだ隙をついて、豆腐屋の頑固おやじと八百屋の青年は子供達を連れてその場から離脱し、近くのスポーツ
用品店に避難し、此れで大丈夫だろう。

そして、無事に非難をしたという事は、志緒となのはは一切の手加減をしなくて良いという事でもある。――其れはつまり、絶対に斬られてはいけ
ない猛獣の鎖が斬られた事でもある訳で……


「行くぜなのは!!」

「はい!!せーの!!」

「「クロスドライヴ!!」」


――轟!!


クロスドライブを発動して最強状態に!
更に、なのはがレイジングハートのマスターコアを焔属性の『オートクレール』に設定していた事で、志緒のヴォーパルウェポンと共鳴してクロスドラ
イヴの効果がより強力になっている。

そんな状態の志緒となのはに、如何にエルダーグリードとは言え果たして相手になるのか?



「おぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「バスターーーーーーーー!!」




答えは間違いなく否だ。
この2人の前では、エルダーグリードと通常グリードの大軍が相手であっても、そんなものは屁のツッパリにもならないのである。と言うか、本気で
相手ではないのだ。

なのはが射撃と砲撃で敵の動きを牽制しつつ戦力を減らし、志緒の力任せの斬撃は問答無用で敵を刈り取る。
前衛の志緒と後衛のなのは、クロスレンジ特化とロングレンジ特化の基本的な布陣ではあるが、其れを行うのが究極的に強い者だと、其れだけで
何者にも勝る布陣なのだ。

其れを示すように、商店街に現れたグリードはその数を確実に減らしている。そして――


イグニス……ブレイク!!

ディバインバスター!!



――ドッガァァァァァァァァアァァァァァァァァァァァァァン!!



志緒の斬撃と、なのはの直射砲撃を真面に喰らったエルダーグリードはあえなくダウンし爆発霧散!如何にエルダーグリードとは言え、最強の魔
法攻撃と、最強の物理攻撃の同時攻撃は耐えることが出来なかったらしい。


「雑魚が、出直してきな!」

「あなた達では、相手になりません!」


グリードを撃破した志緒となのはは背中合わせに立ち、志緒はヴォーパルウェポンを肩に担いで左手を前に突き出して中指を立て、なのははレイ
ジングハートを地面に突きさして、突き出した拳の親指を立ててサムズダウン!

その姿は、何とも様になっていた。


その後、商店街の出入り口に御札を張って、商店街の安全は確保されたのだった。
勿論、志緒となのはは安全になった商店街で、彼是質問攻めにあったのだが、事実をありのまま包み隠さず話したら納得して貰えた……この辺は
流石の海鳴市と言った所だろう。

だが、ここでゆっくりしている暇はない。
商店街の安全を確保した志緒となのはは、『柱』の一つが存在している、海鳴臨海公園へと駒を進めるのだった。








――――――








Side:なのは


「雑魚が、邪魔だ!!散れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」



――ドッガァァァァァァァァァァッァァァァアッァァァァァァァァァァァン!!!!



という訳で、柱のある海鳴臨海公園にやって来たんだけど、此処でも志緒さんは無双状態だね?一騎当千て言う言葉は、志緒さんの為に有るん
じゃないかって思っちゃうの。
だけど、そのお蔭で公園内のグリードは一掃できたけどね。



「おぉ、助かったよ君達。
 化け物に追われて此処に逃げ込んだんだが、より強い化け物が現れてどうしようかと思っていたんだ……本当に助かった、礼を言わせてくれ。」

「礼は良いんだが……アンタ、あの建造物に誰か入ったとか、そう言うのは見てねぇか?」

「アレの中に?……そう言えば水色の髪の女の子と、オレンジの髪の女性、其れと薄い茶髪の女の子がアレに入って行ったかな?
 確か、君達と同じような武器をもって居たと思うけど。」



水色の髪の女の尾とオレンジ色の髪の女性って……フェイトちゃんとアルフさん!?



「だろうな……でもって、薄い茶髪の女は柊だ。
 戦力的には問題ないだろうが……勝手に飛び込みやがって――後を追うぞなのは!!」

「はい!!」

アレの中に既にフェイトちゃんが……だったら、止まる理由は何処にもないの!!アレに突入して、そして攻略するだけだけだからね!!!
何よりも、友達は何があっても護るのがBLAZEの魂だから……私が行かずに誰が行くなの!!――此れで、間違ってないですよね志緒さん!!



「間違ってねぇ所か大正解だぜ!!
 テメェがやらなきゃ誰がやる…その思いを忘れなければ、大抵の事は大体何とかなるからな?――そんじゃ、1本目の柱の攻略と行こうぜ!!」

「了解です!」

全力全壊、手加減なし!さぁ、攻略開始だよ!!











 To Be Continued…