Side:アリア


志緒達が、闇の書の主と接触したか……尤も、闇の書の主には、己が世界を滅ぼしかねないロストロギアの持ち主である自覚はない様だけどね。
如何なされますか、お父様?



『取り敢えずは状況を静観し、事が動きそうな場合は彼等に加担してくれ。
 万が一、最悪の事態が起きそうな時は、彼等の身を第一にして行動してほしい……志緒君達が居なくなってしまったら、この先二度と闇の書を、
 処理する事は出来ないだろうからね。』




了解しました。
さて、聞いた通りだロッテ。私達は私達のすべきことをしよう――全ての因縁を、此処で断ち切るためにもね。



「オウともアリア。
 闇の書には思う所はあるけど、私等に課せられた使命は、志緒達のサポートだからな――其れをキッチリ熟してやるさ。そうじゃなきゃ、お父様の
 顔も立たないからな。
 まぁ、アタシとアリアが力を併せれば、大概の事は如何にでもなるから、きっと何とかなんだろ?」



ま、確かにね。
だけど、如何にも嫌な予感がするのよね……何か、私達の予想を超えた事態が起きるんじゃないか、そう思えて仕方ないのよ。……私の思い過
ごしであればいいんだけれどね――











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE52
『最高の戦いの末の最悪の結果』










Side:志緒



さてと、持って来たカツ丼は、米粒一つ残らずに完食されて、なのはが持って来た『翠屋超デラックスデコレーションシュークリーム』も箱しか残って
ねぇ状態だ……まぁ、満足はしてくれただろうな。

俺としても、アレは楽しい時間だったからな。



「其れじゃあ、バイバイなのは。」

「また、学校でね。」

「うん、またねアリサちゃん、すずかちゃん。」



んで、アリサとすずかは、一足先に帰路に就いた訳だが……俺達にとっては、此処からが本番だ――色々と、話さなきゃならねぇ事があるんでな。
……取り敢えず、屋上にだな。



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さてと、単刀直入に言わせて貰うが、お前等、今直ぐ魔力の蒐集を止めろや。此のまま魔力を蒐集して行ったところで、その先に待ってるのは終焉
以外の何物でもねぇ。



「蒐集を止めろだと?……其れは出来ん相談だ。
 我等は、何としても書を完成させねばならぬのだ!!――書が完成すれば、主はやてへの負担も減る。さすればきっと主はやてだって――!」

「そうして、書を完成させても、書が完成したら、書の主が命を落とすとしてもか?」

「な、に?」



ユーノの奴が調べてくれた事なんだが、闇の書ってのはとんでもないバグを抱えた、最強最悪のロストロギアなんだが、幾つかの機能にはバグが
発生しちまってるみたいでな?
詳しい事は分からんが、何れにしても書が完成したら、書の主は間違いなく命を落とす――この世界を道連れにしてな。



「……その話、信ずる証拠は?」

「管理局のデータバンクに残ってた資料と、過去に滅びた文明の遺跡資料に残されていたじゃ駄目?
 管理局のデータバンクのは、アンタ達には信用ならないと思うけど、ユーノが遺跡に直接足を運んで得た情報なら信じるに足りるんじゃない?」

「加えて、其れはグリムグリード級の存在を過去に蒐集していたの……貴女達が、グリードを召喚出来るのもそのせいよ。
 其れだけの力を有しているモノが暴走したら、この世界を滅ぼすだけでなく、宇宙の一空間を異界に作り変えてしまう可能性すらある――そんな
 事は、ネメシスの執行者として、何よりもX.R.Cのメンバーとして見逃す事は出来ない。」

「貴女達が、本当にあの子の事を、はやてちゃんの事を大切に思っているなら、書を完成させちゃダメなんです!」


「るっせぇんだよ、この野郎!!!!」



――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!



く……このチビガキ、行き成りか!聞く耳持たずか、この石頭が!!
思いっきり直撃しちまったが、大丈夫かなのは?



「大丈夫です……」



咄嗟にバリアジャケットを展開して、無傷とは恐れ入るぜ。
だが、如何やらこっちの話を聞く気はねぇみてぇだなテメェ等?



「……悪魔め。」

「悪魔でいいよ……話を聞いてくれるなら悪魔でもいい!
 其れに、悪魔なら悪魔らしいやり方で、話を聞いてもらうから!!レイジングハート!!」

『All right.(了解しました。)』



話を聞く気がねぇ相手は、一度ぶちのめした後で話を聞かせる以外に手はねぇ…ちゃんと分ってるじゃねぇかなのは。其れでこそ、俺のBLAZE魂を
継ぐ奴だぜ!!
何にしても、此れで戦う以外の選択肢はなくなっちまった訳だ……覚悟を決めろよお前等!!



「覚悟なんざ、とっくに出来てるっスよ志緒先輩!」

「人の話をきかない。そーゆーのはよくない!良くないことしたお前等はぶったぎる!!っていうか、なのは達の敵は僕の敵だから!!」

『Yes sir.』

「其れは極論かも知れないけど……だけど、戦うしかないと言うのならば…」

「押忍!やるだけです!」

「人の話聞く気がないって、ドンだけ脳筋なの?……ま、やるって言うなら相手にはなるけどさ。」

「ゾディアックの白の巫女として、貴女達を止めさせていただきます。」

「やるって言うなら手加減なし!アイドルの力、思い知らせてあげるわ!!」



「……荒事は私達がやる、シャマル、お前は結界の維持と通信の阻害、そしてグリードの召喚に専念しろ。」

「分かったわ、シグナム。」



俺達もお前達も、やる気は充分って所だな?
なら、始めるとしようぜ……この世界の命運と、あのガキンチョの命を懸けた戦いってモンをな!!――吼えろ、ヴォーパルウェポン!!

さぁ、行くぜ!!








――――――








No Side


そうして始まった戦いは、志緒vsシグナム、なのはvsヴィータ、フェイトとX.R.Cメンバーvs召喚されたグリード軍団の構図となっていた。


「限界まで飛ばすぜ……ドォラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

「く……相変わらずの馬鹿力だな高幡……!!」

「生憎と、其れしか取り柄がねぇもんだからな!!」

「此れだけの力があれば、それだけでも一級品、だ!!」


まず、志緒とシグナムの戦いは轟撃と洗練された剣術が真っ向からぶつかり合う構図となっていた。
言うなれば力の志緒と、技のシグナムと言う所だが、此れは少しばかり志緒の方が押し気味だったのだが、其れは志緒のパワーは技を上回る純
粋な強さだったからだ――生半可な力では、シグナムには及ばないのだから。


フレアスラッシュ!!

飛竜一閃!!」



――ドガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!



そして、放たれた炎熱砲と炎の斬撃波がかち合い、大爆発!!
これだけで、焔の重剣士と炎の騎士の力が如何程であるか分かると言うモノだ。


「これ程の力とは、正直に驚いている。
 私自身が認めよう、お前は此れまで戦って来た相手の中でも最強だ――もし違う出会い方をしたなら、我等はどれ程の友となれたのだろうな。」

「今からでも遅くはねぇだろ?――出会いがどうであれ、ダチになる気があれば、何時だってダチになれるんだからよ。」

「そうかも知れんが、もう遅い。遅すぎた。
 此処まで来てしまった以上、我等は止まれん――止まれんのだ!!」


だがしかし、打ち合うシグナムの目からは、主への忠誠、騎士の誇り、主を守る使命……それらが混ざり合った感情が含まれた涙が流れ落ちる。
誇り高き騎士でありながら、主の為に外道の道を進む事を選んだ騎士の覚悟の涙が。


「止まれねぇってんなら、止めてやるよ……たとえそれが力尽くでもな!!」


そして、それを無視できる志緒ではない。
止まれないなら止めると言いきり、再びシグナムに斬り込んでいく!――最強クラスの炎の剣士同士の戦いは、一歩も譲らずだ。




さて、グリードを相手にしている洸達だが……


「っと、召喚されたのが揃いも揃ってS・グリード以上って、幾ら何でも反則過ぎんだろ!?やる事が汚ねぇぜ!!」

「その言い回しは、如何かと思うわよ時坂君?」

「言っとかなきゃいけない気がしたんだよ明日香!主に中の人的に!!」

「あ、納得。」


S・グリードの集団に思わぬ苦戦を強いられていた。
如何にエルダーグリードには劣るとは言っても、並のグリードよりも遥かに強い力を持つS・グリードが徒党を組んで現れたら堪ったモノではない。
それでも、戦線が崩壊しないで戦えているのは、洸と明日香と璃音、そしてフェイトの存在が大きいだろう。
加えて……


「其処!!」

「うおりゃぁぁぁぁぁ!!!」


――ズガァァァァァァァァン!!



「時空管理局のリーゼ・アリア。」

「同じくリーゼ・ロッテ!お父様の命により、此れよりアンタ等に加勢するよ!!」

「味方…助かるぜ!!」



グレアムの命を受けたリーゼ姉妹が参戦!
嘗てクロノの教官を務めた、この猫姉妹が参戦したというのは、X.R.Cの面々からしたら嬉しい誤算だろう――ギリギリの状態で仲間が増えたのだ
から。


「ついて来なひよっこ!本番はマダマダ此処からだよ!!」

「おう!了解っす!!」


此方のバトルは、取り敢えず問題ないだろう。



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そんな戦いの中で、真っ先に決着が付こうとしていたのは、なのはとヴィータの戦いだった。
ヴィータは、総合能力ではシグナムに続く騎士第2位の実力を持っているが、なのはの実力は其れを上回っていた…魔法に関わって僅か半年で。

そして、激しい戦いの中で、遂になのははヴィータをバインドで拘束する事に成功した――ならば、後は言わずとも分かるだろう。


「これで終わりだよヴィータちゃん!ディバインバスターEX!!

『Go to Hell.(地獄に落ちなさい。)』


必殺の砲撃が放たれ、其れがヴィータを襲う!
直撃すれば間違いなく戦闘不能になる一撃ではあるが……しかしそうはならなかった。


「コイツは……!」


ヴィータの前に、黒い蛇が幾多にも絡み合った異様な物が現れて、なのはの砲撃を防いだから。
だが、この黒い蛇の集合体の出現こそが、終焉へのカウントダウンに他ならなかった――現れた黒い蛇は、ヴィータの前だけではなく、シグナム達
の前にも現れて、その身から黒い茨の棘を発して騎士達を拘束し、リンカーコアを奪ったのだから。


「何だ、此れは?」


突然の事に志緒達は困惑するが、だからと言って如何にもできない――拘束された騎士達は、目の前から消えてしまったのだから。

では、その騎士達は何処に行ったのか?――答えは簡単だ。



「此処は……って、シグナム!それに、皆!!」



書の持ち主であるはやて元にだ。
ご丁寧にも、はやてを屋上に転移させた上で、蔦に巻き取られた騎士達の姿を見せつける……何とも悪趣味なシチュエーションと言わざるを得ない
が、此れが現実なのだ。


「待って、返して……皆を返して!!」


本能的に嫌な予感を感じ取ったはやてが叫ぶが、時すでに遅しだ。



――ザクゥゥゥ!!



蔦から伸びた鋭利な槍が騎士達を貫き、その存在を無に帰す――其れこそ、元々それはそんな者は存在していなかったとでも言うかの様に。
だが、同時にそれは書の主に、絶対的な絶望を齎すモノでもあった。


「そんな……此れは嘘や……嘘やぁぁぁぁぁぁッァあぁぁぁぁ!!!!」


慟哭の叫びと共に、滅びのカウントダウンが、始まった……始まってしまったのだ。








――――――







Side:志緒


剣騎士がイキナリ居なくなりやがった……何が起きてやがる?只事じゃねぇんだろうが――



――ドクン



「な、何ですか今の!?」

「地震?いや、僕達そらにいるからかんけーないはずなのになんで?っていうか、カラダをちょくせつゆすられたような……?」



コイツは……冗談だろオイ。
こんなモンが発生するとは、ドンだけの化け物を内包してやがるってんだ、闇の書は!!



「虚空震……まさか、そんな!!」

「しかも、病院の方から紋様が!!――色こそ違うけど、これは……栞の時に発生したのと殆ど同じじゃねぇか!!」



倉敷の時に発生したアレか!!!
こうなった以上は、ドレだけの力をもって居たとしても、抗えるもんじゃねぇ……空間転移まで発生しちまったみたいだからな――だがせめて……



「なのはーーーー!!!」

「志緒さーんーーー!!!」






お前だけは、絶対に……!!
もう少し……クソが、届かねぇ――!ぐ……うおわぁぁぁあっぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!











 To Be Continued…