Side:シグナム
ん……此れは、今日も少しばかり寝過ごしてしまったみたいだな。
スミマセン、主はやて今日も少しばかり寝坊してしまったみたいです。
――シーン
って、誰も居ない?
主はやては誰よりも早起きだから、何時もなら既に台所に立って朝餉の準備をしているというのに……まさかとは思うが、珍しく寝坊でもしたかな?
まぁ、我等の彼是をしてくださっているから、偶には寝坊しても良いとは思う――主はやては、あの小さな体で全てを受け入れたのだからね。
「え?……ちょ、如何したんだよはやて!!確りしろはやて!!!」
!?この声はヴィータ!!
そう言えば、ヴィータは主はやてと同じベッドで寝ていたが、そのヴィータがこんな切羽詰まった声を上げるとは……まさか、主はやてに何かあった
のか!!
「「主はやて!!」」
「はやてちゃん!!」
「シグナム、シャマル、ザフィーラ……これ、如何したらいいんだよ?アタシには、分からねぇよ――!」
部屋に入り込むと、其処には苦しそうな様子の主はやてと、其れを前にして如何して良いか分からなくなっているヴィータが……!!!
主はやてのこの様子は、闇の書が完成していないが故に、書に魔力を蒐集されて起こった一種の発作だろうが……此れが頻繁に起きたら、主は
やての命が危険にさらされる……其れだけは何としても避けなばならん。
最早、書を完成させるためには、本当の意味で形振り構ってる事は出来ないようだな……!!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE51
『闇の書の主~八神はやて~』
Side:なのは
ほえ、お友達が入院って……大丈夫なのすずかちゃん?
「大事じゃないくて、一時的な発作らしいんだけど、念のために入院するって……」
「発作って、その時点で大分ヤバいじゃないのよ!!
てか、すずかアンタ、アタシとなのはとフェイト以外に、プライベートでの友達が居た訳!?初耳よ!!」
「はつみみだぞー、すずか?」
「うん、今言ったから。
前に図書館で知り合った子なんだ。車椅子の子で、手が届かない本を取ってあげた事がきっかけで仲良くなって、結構メールのやり取りとか、電
話とかしてるんだ。」
へ~~、そんな子が居たんだ。何が切っ掛けで人の縁が繋がるかって言うのは分からないモノだね。志緒さんも言ってた事だけど。
それですずかちゃん、其の子はなんていう子なの?出来れば私もお友達になりたいんだけど?
「八神はやてちゃんて言う、関西弁の女の子だよなのはちゃん。
おっとりとした感じだけど、芯は強そうだったなぁ?
……そう言えば、メールで『このままだとクリスマスを病院で過ごす事になりそうや』ってボヤいてたよ。」
「にゃはは……仕方ないとは言え、其れは確かにキツイね。
なら、クリスマスにはまだ早いけど、クリスマスプレゼントを前倒しして持ってお見舞いに行こうか?翠屋特製のケーキも一緒にして。」
「ナイスアイディアよなのは!
クリスマスはアタシ達にだって予定があるからお見舞いなんて出来ないから、其れを前倒しするって言うのは悪くないし、何よりも翠屋特製のクリ
スマスケーキが一緒なら、効果は抜群よ!!
桃子さんのスウィーツは天下無敵!クリスマスケーキの予約状況は、海鳴の不○家を圧倒的に上回ってるからね翠屋は!!」
全国チェーンの店を上回る個人経営の店って、普通は有り得ないんだけど、お母さんのスウィーツなら、有り得ないとは言い切れないよね此れは。
って言うか、お母さんのスウィーツは、全国区のタウン誌にも取り上げられるレベルだからね……全国区のチェーン店が相手でも渡り合えるとしても
不思議はなかったね。
でも、折角だから、お母さんにちょっと我儘なお願いをしても良いかもしれないね。
「けーきもいいけど、翠屋だったら、けーきみたいなでっかいしゅーくりーむ作って、それにデコレーションしても良いとおもうんだけど、どーかな?」
「フェイトちゃん、幾らなんでも其れはむり……あ、でもお母さんだったら出来るかも。
飴細工で食べられる器作ったり、チョコレートでエッフェル塔作ったり、メレンゲでキャラクターマカロン作っちゃったりするお母さんだったら………」
「雑誌とかテレビで紹介されるカリスマパティシエールなんて目じゃない位の腕前よね桃子さんて……それこそ、宮廷晩餐会のデザートを依頼され
たって言われても、アタシは割と信じちゃうわよ?」
「凄いモンね、桃子さん。」
にゃははは……お父さんを筆頭に、人外だらけの高町家に於いて、伊達にヒエラルキーのトップには君臨してないって言う事なんだろうなぁ。
って言うか、戦闘能力以外で見れば、お母さんも大概人間辞めてるような気がするの……パティシエールの腕前と、主婦力と、それから裏で海鳴を
牛耳ってるんじゃないかと思われる謎権力とかね。
――あれ?若しかしてお母さんが一番人間じゃない?
「いや、いちばん人間じゃないのはなのはだろー?
僕の必殺奥義をたえきったうえで、どらごんぼーるのゴクーのげんきだまみたいな一撃をぶっぱなしてくるんだからさ~?僕死ぬかとおもった!」
「元気玉って……其れが出来る時点で、アンタ人間じゃないわなのは。」
「えぇ!?其れは酷いよフェイトちゃん、アリサちゃん!!」
「という事は、なのはちゃんは怒りが限界を突破したら金髪碧眼に……」
「ならないからねすずかちゃん!?」
と言うか、私が人間じゃなかったら、志緒さんはどうなるの!?
魔力ランクは最低レベルなのに、魔導師ランクは最高レベルって言う、魔力ランクの低さを物理的強さでカバーしちゃってる志緒さんは!!!
「「「限りなく人間に近い、人間じゃない何か。」」」
「あ、納得。」
志緒さんの強さは本当にハンパ無いからねぇ?
この間の戦いの時だって、剣のお姉さん相手に互角に戦って…うぅん、寧ろ圧倒していたからね?パワー=強さを地で行くんだろうね志緒さんは。
其れこそやろうと思えば、ソウルデバイスの一振りで100体のグリードを消し去る事が出来る筈……じゃなくて、八神はやてちゃんのお見舞いは、
前倒しのクリスマスで良いのかな?かなぁ?
「問題ないわ。」
「おっけ~~。僕もあるふといっしょにプレゼントさがしてみる。」
「じゃあ、そう言う事ではやてちゃんにメールを入れておくね。」
うん。それじゃあ、そう言う事で!
八神はやてちゃんか……一体どんな子なんだろう?――会うのが楽しみになって来たよ♪
――――――
Side:志緒
ほう、ダチのダチの見舞いか?良いじゃねぇか、行ってきな。士郎さんと桃子さんも了承してくれたんだから問題はねぇだろ。
しかも、入院が長引く事を見越して、前倒しのクリスマスを祝おうだなんて、中々粋な事考えるじゃねぇかなのは?その心意気ってのは大事だぜ。
桃子さんも、話を聞いて『特大デコレーションシュークリーム』を作る気満々だからな。
「んで、見舞いの相手は誰か分かってのか?」
「えっと、すずかちゃんから聞いただけですけど、名前は『八神はやて』って言う子らしいです。関西弁だって言ってました。」
関西人のガキンチョか――って、如何した柊、玖我山?何を驚いた顔してやがる?
「なのはちゃん、八神はやてって、其れ間違いないの?」
「ほえ?間違いないと思いますよ?」
「……っ!!偶然にしては出来過ぎてる――運命の悪戯も、此処まで来ると笑えないわね――!
「明日香も璃音も如何したってんだ?
その八神はやてって子に何かあるって言うのかよ?」
「何かあるどころじゃないよ洸君!
八神はやてちゃんこそが、今私達が直面して最大の事件である『闇の書』の持ち主の女の子なんだよ!!」
なん、だと?ソイツは間違いねぇのか玖我山、柊!!
「間違いありませんよ高幡先輩。
私と璃音さんは、前に図書館で八神はやてちゃんと会った事があるんですけれど、その時に闇の書の守護騎士も居ましたから、間違いないと思
います。」
「マジかよ……」
「流石に、笑えない事実だね。」
「事実は小説より奇なりですね。」
「まさか、闇の書の主が身近にいたとは……驚いて物が言えません。」
マッタクだぜ。
しかもすずかのダチって事を考えると、歳はなのはと同じくらいだろうからな……そんなガキが、最悪レベルのロストロギアの所持者って、冗談にし
たって性質が悪しぎるぜオイ。
だが、そう言う事なら、俺達もその『お見舞い』に同行させて貰うぜ?
闇の書が関わってるなら俺達が行かない理由もねぇし、若しかしたら守護騎士達が来てるかもしれねぇからな……流石に主の前で襲い掛かって来
る事はねぇだろうが、何が起きてもオカシクはねぇからな。
構わねぇか、なのは?
「問題なしです志緒さん。
守護騎士は兎も角として、人数が多ければはやてちゃんも楽しいと思いますし――もしも、何か起きた場合には、志緒さん達が一緒の方が安心出
来ますから。」
「なら、決まりだな。」
果たして鬼が出るか蛇が出るか、全く持って分かったもんじゃねぇが……この見舞が、大きな局面になるのは恐らく間違いねぇだろうな。
――――――
Side:はやて
はぁ、全く持って発作を起こして入院なんて情けない事この上ないなぁ?
シグナム達にもイラン心配かけてもうたし、石田先生にはさらに心配をかけてもうたからね……それと、すずかちゃんにもな。ホンマ情けないわぁ。
只の発作とは言え、大事があったらアカンから検査の意味もあっての入院やから仕方ないけど退屈なのは否定できへん
やから、すずかちゃんからの『お見舞いに行く』っていうメールは嬉しかったなぁ?何でも、クリスマスを前倒しして祝ってくれる上に、プレゼントまで
用意してるって事やったからな。
で、そのお見舞い当日ですずかちゃん達がやって来たんやけど……
「う~~~~~……!!」
「こらこら、何を威嚇してんねんヴィータ。」
すずかちゃん達が現れた途端に、ヴィータが私の前に立って、両手を広げて『通せん坊』のポーズをしたまま、全力で威嚇って普通に有り得へんて。
こらヴィータ、お客さんにそんな態度取ったらアカンよ?
「だけどはやて、コイツ等は!!」
「えっと、私達何もしないよ?
すずかちゃんに誘われて、はやてちゃんのお見舞いに来ただけだから……だから、安心して――ね?」
「う~~~~……!」
あはは…折角お見舞いに来てもろうたのに堪忍したってな?
ヴィータは本来いい子なんやけど、少し人見知りって言うかちょ~~っと、対人関係が上手くないんよ?悪気はないさかい、受け入れたってや。
其れは其れとして、おっきな金髪のお兄さんは何だって岡持ち持ってるん?
「あぁ、此れか?
入院してるとは言え、食事制限がある訳じゃねぇんだろ?だったら、病院食よりも腹にたまって力の付くがっつりしたモンを喰った方が良いだろ?
だから、差し入れに作って来た訳だ。」
「差し入れって……これは!!!」
な、何ともおいしそうな『カツ丼』やなぁ!
カツを包み込む半熟の卵が黄金色に輝いて……アカン、見てるだけで食欲中枢が、このカツ丼からのダイレクトアタックを受けまくっとるで此れは!
しかも湯気までたってるから、あの岡持ちには保温の機能も備わってるんやろうな。
「取り敢えず、全員分用意して来たからな。冷める前に、とっとと食っちまいな。」
「いただきま~す!」
って何やこれぇ!!
美味い!否美味すぎる!!こんなカツ丼を食べたんは、生まれて初めてやで!!
卵に閉じられてるにも関わらず、カツの衣はサクサク感を保ち、更に和風出汁を利かせたトロットロの半熟卵が其れを優しく包み込んで何とも言えな
いハーモニーを生み出しとるで此れ!
此れは、正に美味さのビッグバン!!お口の中が幸せや~~~♪これはもう、何杯でも行けそうやな!!
しかも、なのはちゃんがスウィーツを持って来てくれたみたいやから、此れはもう最高のお見舞いやで♪――ホンマ、持つべき物はお友達やね♪
To Be Continued… 
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