Side:璃音


ピンクのポニテさんは、明らかに動揺してる――此れはこっちから仕掛けた甲斐があったかな~~?少なくとも、車椅子の子、確かはやてちゃんだ
ったけ?
この子の前で、凶行を働くつもりはないみたいだからね。

「ゴメンねはやてちゃん、少しこの人を借りてもいいかな?ちょっと個人的に話したい事があるのよ?」

「シグナムと?……其れはかめへんけど、ちゃんと返してな?シグナムは、私の大事な家族やから――てか、なんで私の名前知ってんねん?」

「前に図書館で会った時に、其方のポニーテールさん――シグナムさんが、貴女の事を『はやて』と呼んで居たから、それが貴女の名前だと推測した
 だけの事で他意はないわ。」

「そう言えば、あの時シグナムが私の名前呼んでたなぁ?」



んで、納得しちゃったよこの子は……アイドル業界で擦れまくったアタシとは違って、物凄くピュアだねはやてちゃんは。――願わくば、そのピュアさを
失わないでね~~~。

其れは其れとして、はやてちゃんの許可は貰ったから、少し付き合って貰うわよ剣騎士――シグナム。











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE46
『執行者と熾天使と剣騎士と』










Side:シグナム



さて、連れられる形で海鳴臨海公園に来た訳だが、コイツ等は一体何が目的なのだろうな?
二人とも高い魔力を有してはいるが、管理局員ではない――管理局員であるのならば、こんな事はせずに、主はやてを力ずくで拘束し、そして其れ
を人質にして、我等を投降させようとしてくるだろうからな。

だが、この2人からはそんな物は微塵も感じない――何かあるように思うのは、私の考え過ぎなのだろうか?



「此処なら良しか……先ずは、付いて来てくれた事に礼を言うわね。
 だけど、それを踏まえて敢えて言わせて貰うんだけどさ――アタシと明日香の魔力は蒐集しなくていいの?明日香の魔力は可成り高いし、熾天使
 を内包してるアタシの魔力は、其れこそハンパ無いレベルなのよ?」

「!!!!!」

な、に!?
いや、此処までの詳細を知っているとは、お前達は管理局員か!?



「局員じゃないよ――つっても、局のお偉いさんに知り合いがいんのは否定しないけどね。
 だからって何があるって事でもないんだけど――何でアンタ達は魔力を集めてる訳?少なくとも、あの子の、はやてちゃんの命令じゃないよね?」

「主はやての命ではない……此れは我等が、己の判断で行っている事だ。
 だが、我等には我等の理由がある。そして、其れはお前達に語る物でもない。」

「……この前、貴女達が襲った人達が、私達の仲間であったとしても?」



……なに?



「この間、貴女達が襲撃し、そして倒した2人の魔導師の少女と、1人の大剣使いの大男は、私達の仲間だったのよ。
 今回の事が、管理局の魔導師だけを狙った事件だって言うなら、クロノ君から要請がない限りは動く気はなかったのだけど――仲間がやられたと
 言うなら話は別だわ?私達の仲間にアレだけの事をした相手は、流石に見過ごせないもの。」

「あの3人組はお前達の仲間だったのか……知らなかったとは言え、失礼な事をしてしまったな――其れに付いては謝罪しよう。
 だが、我等はもう、止まる事は出来ん――目的を果たすその時まで、止まる事は出来んのだ!!」

無論、その中で我等に対する否定的な意見や何やらは出て来るだろうが……そんな物は斬り払って進むのみだ!
騎士の誇りにも、正義にも悖る行為だが最早、魔力を蒐集する他に道はない。……邪魔立てすると言うのならば、誰であろうと容赦はせん。



「此のアホンダラァ!!!!」

「んな!?」

「璃音さん!?」

「何でそう短絡的な訳!?てか、なんだって最初から襲撃前提で魔力を蒐集する事を考えてるのよ!
 如何して、事情を話して分けて貰おうって考えは思い浮かばないの!?魔力を集めてる事情如何んによっては、分けてくれる人だっているかも知
 れないないじゃないの!」

「其れは、確かに一理あるわね?」



甘いな。事情を話して、魔力を分けてくれるような人間など居るまい。
管理局に知り合いが居ると言う事は、既に我等の事は知っているのだろう?ならば、闇の書の事だって知っている筈だ――世間的には、忌み嫌わ
れている闇の書に、魔力を分け与えるような酔狂な輩など、いる筈がない。



「そりゃそうよ。って言いたい所だけど、この世界は半年前までは魔法も何もなかった世界で、闇の書なんて知ってる人は当然いないわ。
 フェイトちゃんはミッド出身らしいから分からないけど、志緒先輩となのはちゃん――大男と栗毛の女の子は、闇の書なんて知らないし、あの二人
 なら事情によっては、魔力位快く分けてくれるわよ?そう言う人達だから。」

「なに?……いや、確かに目覚めたあの時、魔力も戦いの匂いも感じなかったが――だが、其れではあの大男の異常な戦闘力の説明がつかん。
 失血のショックで動けなくなったが故に勝てたが、そうでなければ私の方がやられていた……アレは、戦いの中に身を置いていた者でなくては得
 る事の出来ない強さだ。」

「高幡先輩は別格だわ。
 嘗ては伝説の不良チームのリーダーだったらしいから、他のチームとの抗争なんかで戦う事は多かったでしょうし、リーダーを辞めてからも、商店
 街の治安維持に一役買っていたと言う事だから。」

「てか、そもそも志緒先輩を常識で考えるのが間違いでしょ?
 腕っ節の強さは学園一で、並の不良との戦力差は1:10。その癖、勉強も出来て、家事能力は主婦並。おまけに指定暴力団の若頭が知り合いに
 居るんだから、高校生アイドルやってるアタシ以上に普通の高校生じゃないわ。」



あの大男が規格外なだけか?
いや、ヴィータが倒した白い少女も、中々の使い手だと聞いている――仮に、本当に半年前までは魔法がなかったのだとしら、あの少女は僅か半年
の間に、ヴィータが本気を出す程の使い手になったと言う事になる……だとしたら恐ろしいな。

だが、半年前までは魔法が存在していなかった世界と言えど、今は存在しているのならば、矢張り事情を話した所で魔力を分けてくれる人間等は期
待出来ん……下手をしたら、其処から管理局に我等の事が漏洩する可能性があるのでな。



「どうやっても、平和的な道を選ぶ気は無い訳?」

「例え蛇蝎の如く忌み嫌われようと、茨の道であろうと、我等は邁進するのみだ。」

「そう……なら、私達も其れを止める以外の道はないわ。
 貴女達の目的が何であるにせよ、これ以上イタズラに被害者を増やすのを、ただ見ている事は出来ないもの。」



だろうな…だが、此処でお前達とやり合う気はない。シャマルの結界も展開されていないし、白昼堂々やり合ったとなれば主はやての耳にも入る。
其れだけは避けたいのでな――悪いがお前達には『其処』に行って貰うぞ?



――ヒィィィィィィィン……



「んな、此れは!!!」

「異界のゲート!!!」



ほう?此れを知っているとは驚きだな……管理局員でも知らない、闇の書の隠された力なのだが――まぁ良い、その門の向こうの世界に捕らわれ
た者で、此れまでに帰還した者は極めて少ない。
お前達程の魔力があるのならば大丈夫だろうが、即時の帰還は難しい筈だ……しばし、その世界を楽しむと良い。
騎士として、最低の行為である事は認めるが、全ては主はやての為に――だから、我等の目的が達成されたその時は、縄で縛り上げた上で叩き伏
せてくれて一向に構わん。
目的を成す為に、罪を犯しているのは事実だからな……



「シグナム~~~。」

「主はやて?如何なされました?」

「いや、折角訪ねて来てくれたんやから、お話しが終わったらちょっとお茶でもどうかと思ったんよ?
 ――やけど、もうあのお姉さん達は、帰ってもうたみたいやな?ちょお残念やけど、一体話って何やったん?」

「如何やら、彼女達の知り合いの少女が、変質者に襲われたらしいのです。
 その子は咄嗟の機転で、何とか無事だったらしいのですが、犯人は未だ捕まって居ないので、外を出歩く時には十分注意してくれとの事でした。
 彼女達なりに、主はやての事を気遣ってくれていたようです。」

「其れは、嬉しいけど……少女を襲う変質者かぁ……確かに、そんなんが居るんは冗談やないなぁ?
 てか、其れ考えると、私の誕生日に闇の書が覚醒したんは運が良かったわぁ~~~。私1人じゃ、そんな輩に襲われたらどうしようもないけど、シ
 グナム達が一緒やったら、そんなのが襲ってきても返り討ちにしてくれるやろ?」



問答無用で返り討ちにします。貴女に害をなす者は、全てこの手で砕くのみですので。



「さよか。ホンマに頼りになるなぁ、シグナムは♪」

「この身は、貴女の剣ですので。」

だからこそ、その主に裏切りとも言える嘘を吐いているが心苦しくあるが……全ては主はやての為に――我等を『道具』ではなく、『人』として見てく
れた、この心優しき主の為にな……!!








――――――








Side:明日香


く……まさか、異界を展開する力を持っているとは思わなかったわ。璃音さん、大丈夫?



「ん、大丈夫。
 だけど、異界を顕現する力を持ってるって、闇の書ってのは、リンディさんが言ってた以上の物かも知れないわ――んで、如何しよっかこの状況?
 サイフォンの特殊機能使えば、異界と外との交信も出来るから、洸君達に援軍要請する?」

「いえ、その必要はないわ。
 異界のゲートを顕現して来た事には驚いたけれど、彼女が展開した異界ゲートの色は黄色――エルダーグリードが存在しないフェイズ1の状態だ
 ったから、此れなら私達2人で充分攻略出来るわ。
 何よりも、今の時間帯は翠屋は忙しいから、援軍を要請するのは気が引けるもの。」

「あ~~……言われてみりゃそうね?
 ま、プロである明日香がそう言うなら、何とかなるでしょ?」



えぇ、何とかなるわ。
何よりも、今サイフォンで調べてみたら、此の異界に出現するグリードは95%が焔属性のグリードだから、私達の敵じゃないわ。
私の基本属性は、焔属性に強い『霊』だし、璃音さんのサブ属性も『霊』でしょう?



「だね。って言うか、霊の最強マスターコアの『メルクリウス』が、魔法特化だからアタシとの相性が最強すぎるのよ此れ?
 ぶっちゃけ、メルクリウス装備時のアタシの魔力は、オートクレール装備時の美月先輩超えるからね?」(原作ゲームでも、実際に僅差で越える)

「其れは、凄いわね……何にしても、先ずは此の異界を鎮圧しましょう!」

「OK、攻略開始ね!」



だけど、異界を自在に操る力――帰還したら、リンディさんに報告しておいた方が良いかもしれないわね?
異界と関わる者として、ネメシスの執行者としても、X.R.Cのメンバーとしても、此れは見過ごしていい物ではないと思うから――闇の書の守護騎士、
一筋縄で行く相手ではなさそうだわ。








――――――








No Side


そうして始まった異界攻略は、ハッキリ言って圧倒的の一言。ともすれば、明日香と璃音による塵殺劇と言っても過言ではなかった。


シルフィサイクロン!!

ブリザードピアス!!


ネメシスの執行者と、熾天使を宿す歌姫の猛攻は凄まじく、現れたグリードは現れた傍から、強烈な霊属性の攻撃で行動を開始する前に爆殺KO!
もっと言うならば、璃音と明日香の連携が見事な点も挙げられるだろう。

璃音と明日香は、ほぼ同等の能力だが、体力と物理攻撃力では明日香が璃音を上回っているが、魔力は璃音が圧倒的に明日香を上回ってる事か
ら、自然と前衛の明日香と後衛の璃音の布陣となっていたのだ。

明日香のエクセリオンハーツの斬撃がグリードを斬り裂き、璃音のセラフィムレイヤーから放たれる魔力矢がグリードを貫いて行く。
其れこそ、下級グリードでは圧倒的な体躯とパワーと頑丈さを誇る『オーク』タイプのグリードですら速攻撃滅!息つく暇なく粉砕!玉砕!大喝采!
現役でエースと称されるプロと、熾天使を宿した者の前では、迷宮のグリードなど経験値の足しにもならないのだろう。

そして其れは、フェイズ1の異界に於ける最強の敵であるS・グリードであっても変わらない。



『グオォォォォォォォォ!!』



――S・グリード:キングウルフ



並のグリードとは一線を画す力を持ったS・グリードだが、霊属性が弱点である焔属性である以上は、璃音と明日香の敵ではない。
その姿が顕現すると同時に、明日香が斬り裂き、璃音が撃ち抜いて、致命傷とも言えるダメージを叩き込んでいく。無論、璃音と明日香はノーダメー
ジの状態でだ。

決してキングウルフが弱い訳ではない。
焔の力を宿した狂狼は、ともすれば『新人殺し』の異名をとる位の強力なグリードなのだ――其れであっても、璃音と明日香は、其れを圧倒的に上回
って居たのである。


「そろそろ決めようか明日香!」

「えぇ、行きましょう!」

「「クロスドライブ!!」」


更に此処で、駄目押しとばかりに『クロスドライブ』を発動!
ただでさえ強力なブースト技だが、発動した者の属性が一致して居れば、その効果は更に高まる。――今は璃音も明日香も『霊』属性だから、その
力は120%発揮されるのである。

いや、此れを発動した以上、勝利は絶対だろう。



「全てを撃ち抜け……セラフィムハーツ!!

「終わりよ……クリミナルブランド!!!



――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!



其れを示すかのように、璃音と明日香の超必殺技が――XストライクがS・グリードに炸裂し、その存在を完全掃滅!!正に最強!!!
執行者と熾天使……この2人の少女の前では、フェイズ1の異界の攻略などは、文字通りに『児戯に等しい』ものであったのかも知れない――と言う
か、児戯に等しいそのものだったのだろう。








――――――








Side:璃音


と、言う訳で無事に帰還したけど、フェイズ1とは言え、自由に異界を展開できる力は厄介極まりねーわ此れ。
てか、今回がフェイズ1の異界だっただけで、フェイズ2の赤ゲートを展開できない訳でもないからね――連中が赤ゲートを展開できる可能性だって
決して低くないでしょ明日香?



「異界ドラッグを服用してた、戌井彰宏が――異界の力に頼っていた者がフェイズ2の赤ゲートを展開出来た事を考えると、彼よりもずっと強い力を持
 った彼女達が、フェイズ2の異界を展開できる可能性は低くない。寧ろ高い筈よ。」

「だよね、ヤッパリ。」

ってなると、闇の書は、危険な異界化を起こす事が出来るって事だから、封印指定に設定されたロストロギアだって言うのも納得だわ……
明日香、今回の事って、単なる『魔導師襲撃事件』じゃ、終わらないかもしれない――ううん、確実に終わらないわよね此れは。絶対に!!!!!



「異界が関わってきた以上、只では終わらないわ。
 今回の事も含めてリンディさんに報告して、その上で此れからの事を考えていく必要があるかも知れないわね……いえ、考えてくべきだわ。」



そうなるよね?てか、其れが最上策だと思うから。
尤も、闇の書ってのがどんな物かは良く分からないんだけど、私の力を――私の中の熾天使の力を、最大限に使って最高の結果を齎して見せる!
って言うか、其れくらい出来なきゃアイドルの名が廃るからね♪

だから、必ず止めてあげるわ騎士達――主を思うが故の、彼方達の『凶行』とも言うべき行いを、私達の手で絶対に止めて見せる………!!!













 To Be Continued…