Side:なのは


突如発生した封鎖結界……此れは只事じゃないね?
しかもこの結界は、前にユーノ君が教えてくれた特殊な封鎖結界――一定以上の力を持った魔導師か、或はその使い魔でない限りは感知する事
が出来ないって言う物だから。



「相手は相当の実力者……一筋縄ではいかねぇって事だな?」

「恐らくはそうだと思います。」

「ったく、何処の誰だかは知らねぇが、面倒な事をしてくれたもんだぜ。
 だが、態々招待してくれたんだったら、其れには応えてやろうじゃねぇか?……一方的に誘われて、そんでもって終わりってのは、有り得ねぇよ。」



ですよね。
相手が誰かは知りませんけど、私達が目的なのは間違いないでしょうから、来るなら相手にしてやるだけです!!って言うから、売られた喧嘩は逃
げずに、買ったうえで相手を倒す!!!其れが、BLAZEですよね志緒さん?



「良く分かってるじゃねぇか?――その通りだ。
 BLAZEは、自分からは喧嘩を売らねぇが、売られた喧嘩は全部買って、買ったうえで相手をぶっ倒す!俺も一馬も、そうやって来たからな。
 特に、今回の場合は、其れを適応してなんぼだろ?……こんな、分かり易い手口で喧嘩売って来やがたんだからよ!!」

「負けてあげる事は出来ませんね……」

誰が、何の目的で、こんな事をしたのかは知らないけど、私と志緒さんを敵に回したって言う事を、後悔させてあげるから、覚悟しておくと良いの!!












リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE43
『Kampf in der Verhinderung』










No Side



結界内に捕らわれた志緒となのはは、取り敢えず二手に分かれ、なのはは高層ビルの屋上に上り、志緒は道路を探索して、襲撃者の正体を突き
止めようとしていた。

高い所と低い場所の2カ所から攻めると言う手段は悪くない。実際に、そのデータを複合する事で、立体的なデータを得る事が出来て、後々に其れ
が役に立つと言う事だってあるのだ。


「此処なら、少し分かるかも。」


そんな中で、なのはビルの屋上に上がって、周囲の魔力を探っていた。
魔法と関わって、まだ半年ほどのなのはではあるが、ユーノの基礎練習と、レイジングハートが考案したトレーニングメニューを熟して来た事で、魔
導師としての力は相当に高くなっている上に、周囲の魔力を探る力に付いては、可成りのレベルに達していた。

だからこそ気付く事が出来た。


『Caution.Emergency.Homing bullet.(警告。緊急事態です。誘導弾が。)』


レイジングハートが発した緊急事態に、己に迫る、超高速の誘導魔力弾の存在に!!


「!!!!」


それを確認したなのはは、己の正面に魔力障壁を展開して、誘導魔力弾を見事にガードする!!――が、ガードしたとは言え、魔力弾の威力が桁
違いに高いのか、少しずつガードが圧されているのだ。

此のままではジリ貧は間違いないが……ここで、更になのはにとっては嬉しくない事態が巻き起こった。


「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「!!!!」



屋上の出入り口を突き破って、真っ赤な服に身を包んだ少女が、ハンマーのような武器を振りかざして、誘導魔力弾をガードしているなのはに襲い
掛かって来たのだ。

とは言え、攻撃自体は直線的だったので、なのはは何とかガードして直撃は免れた。
それでも、攻撃の衝撃で屋上から吹き飛ばされてしまった辺り、赤服の少女の攻撃が如何程の物であったのかは、敢えて語る必要はないだろう。

吹き飛ばされたなのはは、当然そのまま自由落下……其のまま地面に激突したら一堪りも無いだろうが――


「レイジングハート、お願い!!」

『All right.Setup.』


即座にレイジングハートに命じてバリアジャケットを展開し、其のまま空中で体勢を立て直して、襲撃して来た少女と対峙する。


「何処の子?何でこんな事をするの!?」

「魔導師か……上等だぜ!!」


なのはは問うも、対峙した少女は其れには応えるような素振りは見せず、再びハンマーを振りかざして攻撃して来た――どうにも、話し合いで如何
にか(行き成り襲い掛かってきた相手に、そもそも話が通じるかどうか、甚だ疑問だが)出来る相手ではないらしい。
加えて、相手の攻撃には一切の手加減がない事は明らかだ。

こんな危険人物と対峙したら、普通の少女ならば委縮してしまう所だろうが、生憎となのはは普通の少女ではない。
魔法と言う戦う力を手にし、それ以上に志緒から受け継いだ『BLAZE魂』をその身に宿し、不屈の心を持つ少女なのだ――だから、襲撃者を前にし
て『逃げる』等と言う選択肢は存在しない。

何よりも、目の前の少女が行ったのは『闇討ち』にも等しい行為であり、それは志緒が言っていた『どうしても必要な時には、喧嘩をするってのも悪
い事じゃねぇ。だが、自分から喧嘩を仕掛ける時は、絶対に闇討ちだけはするな。喧嘩する時は、正面切って喧嘩する事だ。』という事に反する。
だからこそ、なのはは少女と真正面からぶつかる事を選んだのだ。


「言ってくれなきゃ……分からないんだから!!」

『Divine Shooter.』


誘導魔力弾『ディバインシューター』を生成し、其れをそのまま赤服の少女に飛ばし、その誘導性を持ってして、相手の突撃を止め、そして動きを制
限する……ジュエルシード事件からの半年間で、なのはの魔導師としての実力は可成り底上げされていたのだ。

赤と白、対照的な2人の少女の戦いが、本格的に始まっていた。








――――――








さて、結界に捕らわれたなのはと志緒だが、実はこの結界内には、もう1人捕らわれていた……と言うよりも、展開された結界の中に無理矢理入り
混んで居た者が居た。


「結界のちゅーしんちはなのはの家だから、ぜったいになのはがいる筈なんだけど、駄目だ、全然ねんわがつながんないや。
 ばるでぃっしゅはどう?れいじんぐはーととつーしん出来た?」

『Don't communicate with a raging heart.(いえ、レイジングハートとの通信は出来ません。)』


其れはフェイト。
子犬モードになったアルフと夜の散歩に出かけていた最中に、この結界の存在に気付き、持ち前のパワーで無理矢理結界内部に侵入してたのだ。
因みにアルフは『結界を展開してる奴を見つけて来る』との事で、結界外に残って別行動中だ。


「ま、いっか……なのはが簡単にやられるとは思わないし。
 だけど、僕のゆくてをじゃまする奴にはよーしゃしない!!どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


そして、飛行していたフェイトは、突如バルディッシュを横薙ぎに一閃!!



「気付いていたのか?……大した勘の良さだな。」

「そんだけのとーきを溢れださせておいてよくゆーよ!って言うか、僕は急いでるから道開けてくんない?」



その一閃は空を切ったが、バルディッシュが振り抜かれた場所には、片刃の西洋剣型のデバイスを携えた、桃色の髪をポニーテールにした女騎士
の姿があった。
この結界の内部に居て、そしてフェイトの行く手を遮ると言う事は、なのはを襲撃した少女の仲間であるのは間違いないだろう。


「其れは出来ん相談だな……此処から先は通さん。」

「知るかーー!!お前が誰とかどーでもいいけど、何でもいいから邪魔すんなブシドー!僕は急いでるんだよ!!!」


女騎士は、僅かな殺気を込めてフェイトに言うも、元祖アホの子であるフェイトには、そんな殺気など通じる筈もなく、逆にステータスを攻撃力とスピ
ードだけに振り分けたとしか思えないその身体能力で、女騎士にタックルを喰らわせ……



――メシャァ!!



「ぶっ!」

「あ~~~っはっは!!ブシドー踏みつけ僕は飛ぶ!!まっててねなのはーーーーー!!!」



一瞬怯んだ女騎士の頭を踏みつけて……と言うか、踏み付けの勢いで地面に蹴り落して、フェイトは先に進んで行く。…アホの子恐るべしである。


「ふふ……くはははは!!
 まさか、守護騎士の将たる私が、足蹴にされるとはな……良い度胸だな魔導師!!貴様は、私が直々に落としてやる!!」


しかし、其れは女騎士の闘志に火を点けただけだったようだ。


「待て!!!」

「やだ!!」

「待てと言っている!!」

「待てと言われて待つバカは居ないよーだ!!アッカンベー!!」

「良い度胸だ、望み通り叩きのめしてやる!」

「え~~?そんなの僕はぜんぜん望んでないぞ~~~~!?」


会話内容は、途轍もなくアホクサイが、展開されて居る戦闘は、クロスレンジを得意とする魔導師の手本になるのではないかと言う位の激しい剣戟
の嵐!
フェイトのバルディッシュと、女騎士の剣がかち合う度に飛び散る火花が、その戦闘の激しさを物語っていた。








――――――








なのはと共に結界に捕らわれた志緒は、なのはと別行動をとって結界内を探索していたのだが……


「ちぃ……うざってぇな!!」


ある区画に入った途端に、一斉に周囲から魔力弾が発射され、其れの対処に追われており、意外とそれに力を使っていた。
如何に志緒と言えども、前後左右と上方から絶え間なく降り注ぐ魔力弾を全て無傷でやり過ごす事など出来る筈もなく、被弾覚悟で迫り来る魔力弾
を、ヴィーパルウェポンの一閃で斬り裂いていたのだ。


「隠れてこそこそ狙うなんざ、女々しい事してんじゃねぇ!
 そもそも、この程度の攻撃で俺を如何にか出来ると思ってやがるのか?…だとしたら舐められたもんだ…喰らいやがれ、イグニスブレイク!


しかしながら、志緒からしてみれば、己の姿を現さずに、安全地帯からの攻撃をしてくる等と言う事は許し難い愚行であり、だからこそ必殺の轟撃ス
キルで、残る魔力弾を一撃掃滅!!


「舐めた真似しやがって……なのはは無事なのか?」


イグニスブレイクで魔力弾を一掃した後には、何故か追撃は来なかった。
だが、追撃がないのは嬉しい事だ――此のままなのはの下に向かう事が出来ると言う事ななのだから。

しかし、志緒が向かったその場所には、志緒自身も全く予想にしていない光景が広がっていることになると言う事を、志緒は予想もしていなかった。








――――――








Side:???


ふぅ、何とか倒したか……頭脳レベルは大した事がなかったが、力と素早さに関しては私をも上回っていた……此処から鍛えたら果たしてどれ程ま
で強くなるのか、楽しみに思ってしまったよ――否、闇の書の事がなければ、心行くまで戦っていただろうな。

ヴィータの方も倒したようだからな。
とは言え、いかに戦う為の爪と牙を持っていた所で、猫では狼に勝つ事は出来ん――我等が主の為に、貴様等の魔力は貰って……



「オォォォラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」



――ドガァァァァァァァァァァァアァァァァァァァァァァァァァァアァァァン!!!!



「!!」

な、何事だ!!



「妙な感覚がしたから来てみたら……なのはとフェイトがか……クソッ垂れが!!
 確認するまでもねぇと思うが、此れはテメェ等がやったのか?……回りくどい答えは好きじゃねぇんだ、シンプルにイエスかノーかで応えやがれ!」

「!!!」

まるで、隕石が落下したかのような轟音と共に現れたのは、金髪を後ろで纏めた髪型の厳つい男……相当の強者であることは間違い無いだろう。
特にパワーとタフネスに関しては、ヴィータをも上回るかも知れん。

さて、貴様の問いに関する答えだが……答えは『イエス』だ――此れは、私達がやった事だ。否定はせんさ。



「そうか……テメェ等がやったのか――なら、手加減は要らねぇよな!!!」



――轟!!!



「!!!」

「テメェ等が何モンで、何のためにこんな事をしているのかなんて事は、正直な事を言えば如何でもいいんだ俺にはな。
 だが、テメェ等は俺の仲間を傷つけやがった……それも、テメェ等の目的を果たす為に――絶対に許さねぇ!!覚悟はできてんだろうなオイ!」



な、なんだこの力は!!……コイツは、私達をも圧倒する闘気を備えているとでもいうのか!!目の前のコイツは!!

だとしたら、今回ばっかりは襲う相手を間違えたとしか言いようがないだろうな。
私達が打ち取った2人の少女は、紛れもなく牙と爪は有っても、本当の戦いを知らない飼い猫だったが……その飼い猫には、トンでもない友が居た
のだからな。

私達は、確かに猫を倒したが――その飼い猫には、最強の友である虎が存在していた。統率された狼の群れでも勝つ事が出来ない程の猛虎がな。













 To Be Continued…