Side:志緒


8月に入って、いよいよ夏本番て感じだが、今日は妙に街が賑やかだな?
朝っぱらから合図花火が上がってたし……今日は何かあんのかなのは?前に来た時とは季節が違うから今一分からねぇんだが、此の賑わいは普
通じゃねえ事位は分かるぜ?



「そう言えば、前に志緒さんが来た時は、此れが終わった後でしたっけ……なら知らなくても仕方ないですよ。
 実は今日から3日間、海鳴の夏の風物詩とも言える『海鳴臨海祭り』が行われるんです。
 夏の東北三大祭りには負けますけど、山車が街を走ったり、色んな出店が出たりと、可也大規模なお祭りが今日から始まるんです!地元紙の取
 材が来るくらいのお祭りが!」

「祭りか……成程な。」

日本人にとって、祭りってのは魂が燃える一大行事だから、こんだけ賑やかになるってのも納得ってモンだ――杜宮の夏祭りも盛り上がるからな。
って事はだ、今日は早めに仕事を切り上げて祭りに参加すんのか桃子さん?



「そうなるわ志緒君。
 翠屋も甘味の屋台を出す予定だけど、其れは私と士郎さんで切り盛りできるから、志緒君は恭也達と一緒になのは達の事をお願いね?」

「ウス、了解っす。」

翠屋の甘味屋台って、そんなモンが出たら、そんじょそこらのカキ氷やチョコバナナの屋台は商売あがったりなんじゃねえか?だからと言って、屋台
出店を止める理由もないけどな。

でもまぁ、なのはの事を任されちまったから、其処はキッチリやらねぇとな!!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE41
『夏祭りは絶対に外せない!』










と言う訳で、そろそろ祭りが始まる時間になったんだが、女子連中は何してやがんだ?着付けがどうのこうの言ってたが、一体何してやがるんだ?



「お待たせしました、志緒さん!」

「ゴメンね待たせちゃった?」

「お待たせ洸君♪」

「ゴメンね祐騎君、待たせちゃった?」



と、来たか。
着付けがどうの言ってたがこう言う事か……祭りに浴衣は王道だからな?なのはも美由希も玖我山も郁島も良く似合ってるじゃねぇか?
もっと言うなら、なのはは淡い桜色に濃い紅色の桜の花びらを散りばめた浴衣で、美由希は黒地に天の川をイメージした装飾の浴衣、玖我山は黒
地に笹の葉の模様をあしらったシックなデザインで、郁島は空色の地に入道雲を模わせる白い紋様があしらわれた浴衣……良い感じだぜ。



「如何ですか志緒さん?」

「似合ってるかな志緒君?」

「良いんじゃねぇか?大輪の花と、可憐な花の揃い踏みって所だな。」

おら、ボサットしてんじゃねえ時坂、四宮!――お前等も、玖我山と郁島を褒める所があるだろうが!!!



「えと……うん、良く似合ってると思うぜ璃音?
 いっその事、今度のライブで、SPiKA全員が浴衣でステージに上がるってのは如何だ?結構ファン受けするんじゃねぇか?」

「其れは……確かに行けるかも。
 洸君は、プロデューサーの才能もあるかも……いっそうちの事務所でプロデューサーのバイトしない?アタシのコネで、バイト代可也弾むけど?」

「何それスッゲー魅力だぜ!?」



「あぁ、もう可愛いな空は!!僕の理性破壊する気なの!?」

「理性を破壊?……壊れたらどうなるの祐騎君?」

「僕は僕を抑える自信がない…!!」



良い感じに暴走してやがるなアイツ等は……まぁ、直接的な害は無さそうだから、放置しても問題は無いだろうがな。
んで、乗り遅れた感はあるが、お前等も良く似合ってるじゃねぇか柊、北都?――玖我山と郁島と比べたら、可也大人しい感じの浴衣みたいだが。
柊は兎も角、お前はもっと遊ぶと思ってただけに、意外だぜ北都。



「いえ、単純にサイズが合うのが此れしかなかったんですよ高幡君。」

「サイズじゃしょうがねぇな。」

こればっかりは、簡単に変える事は出来ねぇからな。
だが、女性陣が全員浴衣って事は、履物は下駄だと思うんだが……こんだけの数の下駄が有ったか、この家には?
有ったら有ったでスゲェ事なんだが、なのはと美由希の分は有っても、北都達の分は確実にねぇだろ?



「既にお母さんが、A○azonで、下駄を注文してるから大丈夫だと負いますよ志緒さん?」

「なら心配ねぇな。そういや、午前中に宅急便が来てたか。

流石は桃子さん、準備に抜かりがねぇな。
そんじゃあ、そろそろ行くとすっか?まだ時間前だが既に町は祭りの雰囲気に満ちてるし、既に営業を始めてる出店も何件位かあるだろうからな。



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――カラコロ、カラコロ………


町に響く下駄の音と、祭独特の喧騒……海鳴の夏祭りも、杜宮の夏祭りに負けず劣らず大きなモノみてぇだな。日が暮れたら花火もあるらしいし。
しかし、何だってこんな事になっちまったんだ?



「あはは……何でだろうね?」

「後で、四宮…は、考慮してやるとして、時坂はシバいといた方が良いか?」

「いや、洸君はある意味でこっちより大変だと思うよ?明日香ちゃんと、璃音ちゃんと、北都さんの相手をする訳だから……」

「其れもそうだな。」

現在、俺と美由希は、なのは、アリサ、すずかと一緒に祭りを周ってる訳だ。
なのはが、ダチ2人と祭りに行く約束をしてたのは予想してたが、まさか3人の引率を美由希と一緒にやるとは思わなかったぜ……てか、恭也さん
は如何した?あの人が、なのは達の事をほっぽり出すとは思えねぇが……



「お兄ちゃん「恭ちゃんなら、忍さんが連れ(拉致っ)てったよ?」」



なんか、連れて行ったって言う部分に、不穏なルビがふられてる気配を感じ取ったんだが……成程、恭也さんは忍とデートじゃしょうがねぇか。
そんじゃ、俺達は俺達で楽しむとすっか!!先ずは……軽く腹ごしらえと行くか?何か食いてぇもんは有るか?



「タコ焼き!」

「焼きそば!」

「焼きイカ!」

「見事に夏祭りの定番だな。
 其れじゃあそれらを人数分買って、後は飲み物を買っとくとするか。」

それと、行きたい出店が有ったら遠慮なく言えよ?遠慮してたら、祭りを心の底から楽しむ事なんざ出来ねぇ。祭りの時ってのは、少し羽目を外した
位の方が丁度良いって部分もあるからよ。



「羽目を外すって……あの人みたいに?」

「うぃ~~~~ひっく!!」



いや、あれは外し過ぎだ。
祭りは始まったばかりだってのに、何だって出来上がってやがんだこの親父は?……取り敢えず邪魔だから、何処か他の場所で寝てろや!!!



――バシュン!

――キラーン☆



「人が星になったわよ!?」

「流石は志緒さん!!」

「半分人間辞めてる恭ちゃんと渡り合うだけの事はあるね……」

「凄いです志緒さん。」

「此の位は朝飯前だ。
 杜宮商店街や、蓬莱町でガラの悪い連中を叩きのめしたり、迷惑な酔っぱらいを排除したのは一度や二度じゃねぇからな……慣れてんだよ。」

なんて事をやりながら、目的のモンを買って、腹ごしらえをしたんだが……腕相撲勝負の出店で、郁島が店側最強の筋骨隆々の奴をぶっ倒したの
を見た時にゃ、流石に驚いたな――ギャラリーも大層驚いてたけどよ。

普通は、アレは彼氏の役目なんだろうが、四宮と郁島の場合は其れが逆転するからな……まぁ、話題には成ってるみたいだから悪かねぇさ。

んで、腹ごしらえの為のタコ焼きは『イイダコを丸ごと生地で包んだ』って言うもんにしたんだが……普通のタコ焼きの上にイイダコの頭が鎮座してる
って言う見てくれは中々にインパクトが有ったぜ――美味かったけどな。








――――――








Side:なのは


腹ごしらえを終えた私達は、其れから色んな出店を周ってみたんだけど、やっぱり夏祭りは最高に楽しいね♪
私とアリサちゃんとすずかちゃんの頭には、お面屋さんで志緒さんが買ってくれたお面が装備されています。(私がピ○チュウで、すずかちゃんがカ
ー○ィで、アリサちゃんがドン○ーコ○グ。)
何気にお姉ちゃんも、某未来から来た青色ネコ型ロボットのお面を頭にぶら下げてご満悦だからね。




「小さじ一杯のザラメ砂糖が400円……ぼったくりも良い所だよね。」

「祐騎君、其れは言っちゃダメ。」




祐騎さんが綿菓子にいちゃもん付けてたのは見なかった事にするとして――志緒さん、この金魚すくいは外す事が出来ないと思いませんか?
他の金魚すくいの屋台にはない此れは外せません!!



「確かに外せねぇな?
 珍種か、或は突然変異かは分からねぇが、ピンクの金魚なんてのは普通じゃお目にかかる事は出来ねぇからな――ゲットするしかねぇだろ!!」

「ですよね♪」

「おいオヤッさん、全員1回ずつだ。」

「あいよ!1500円ね。」



それで、即開始した訳だけど……此のピンクの金魚、動きが素早い!
フェイトちゃんのスピードにだってついて行ける私でも、次の動きが読めないから追う事が出来ない……あ~~~、ポイが破れちゃったの~~~!



「あ~~……ダメだったか~~!!」

「やっぱり金魚すくいは難しいね。」

「く……この!!……ダメだわ、ポイが破けた~~!!」



ありゃりゃ、お姉ちゃんでも駄目だったか。――と言う事は、志緒さんが最後の砦になりますから、頼みましたよ志緒さん!!



「任せとけや……俺から逃げられると思ってんのか金魚風情が!!」



――ギン!!


――ビクゥ!!




「どぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


――バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!!!



うわ~~……志緒さんの眼光で怯んだ金魚を、間髪入れずに次から次へと手にしたお椀の中に救い上げて行ってるよ……ピンクの金魚も無事に
ゲットできたみたいだしね。



「兄ちゃん、その辺で勘弁してくれ!全部取られたら商売あがったりだ!」

「そんじゃこの辺にしとくぜ。
 まぁ、俺としてもこんなには要らねぇから、ピンクの金魚1匹くれれば後は元に戻すぜ。」

「其れで済むなら僥倖だぜ兄ちゃん――店の看板商品渡すのは辛いが、全部取られちまって営業できなくなるよりはずっとマシってモンだからな。」



で、志緒さんのお椀に金魚の山が生成されたところで、店の店主が泣きを入れてデュエルエンド♪
見事ピンクの金魚さんをゲットできたの♪



「まぁ、此れ位は大した事じゃねぇさ………ん?」



「型抜きだって?……此れ位は余裕だぜ!!
 オラオラオラオラララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ!」

「洸君すごーい!」

「意外に器用なのね、時坂君……」

「此れで10個目ですね♪」



「型屋で無双状態って、何してやがんだ時坂は……本人が楽しそうだから、彼是言う心算はねぇがな。」

「何か、型抜きマスターって言う状態になってますね洸さん。」

璃音さんが盛大に煽って洸さんを乗せた可能性が滅茶苦茶高いのは否めませんけれど。
でも、其れは其れとしても洸さんは手先が器用なんですね?型抜きって言うのは、可成りの精密作業だから、時間がかかるんだけど、其れを短時
間で10個って凄すぎなの。

さて、次は何処に――



――ひゅ~~~~……ドン!!



行こうかと思ってたら、此れは花火?
夢中になってて気付かなかったけど、何時の間にか陽が沈んで、花火の時間になってたんだ――夜空に咲く大輪の花、此れも夏の風物詩なの。



「土星に、ハートに……今のはピカチュ○か?只派手なだけじゃなく、中々趣向が凝らされてるじゃねぇかこの花火は?
 派手さだけなら、杜宮の夏祭りの方が上だが、見た目の楽しさなら海鳴の方が上だな、花火に関しては。マジで心の底から楽しませてくれるぜ。」



志緒さんがそう思ってくれたなら良かったの♪
1年に1回の海鳴の夏祭り、其れを志緒さんと一緒に楽しみたかったから、今日は夢が叶った――最高の一日だったね♪








――――――








No Side


かくして、平和な日々は過ぎて行く。

しかし、此の平和は仮初に過ぎない――ジュエルシードの一件が解決したその時に、もう次の戦いは始まっていたのだ、後の世に『闇の事件』とし
て語り継がれる事になる、大事件は。

無論、其の事を知る者は此処には居ない。

だが、A'sに至る門は、この時に確実に開いていたのだった。











 To Be Continued…