――異界迷宮・漆黒の刑城



Side:志緒


コイツはいかにもって感じの異界迷宮だが、逆に言うとラストステージに相応しいとも言えるぜ……杜宮学園を侵食した時の『魔女の城』以上の力を感じ
るからな、此の異界からは。

とは言ってもアレと此れは全然違うぜ……道が二つに分かれてる時点でな。
異界迷宮を攻略する場合、進むべき道が複数ある場合、その全てを通らないとゴールには辿り付けねぇから、此処は2チームに分けるのが上策だろう。
X.R.Cの面子に加えて、ユーノと執務官とアルフ(なのははX.R.C扱いだぜ。)――計11人をどう割り振るかって事になるんだが、此処は任せるぜ時坂。
X.R.Cの部長として、メンバーを割り振ってくれや。



「此処で俺に振るのかよ志緒先輩!!――まぁ、任された以上はやってやるッスけど……明日香、此の異界の情報を教えてくれ。」

「了解よ時坂君………此の異界は、大体こんな所ね。
 尤も、規模が大きいから多少の際はあるだろうけど、其れでほぼ間違っては居ないと思うわ――だけど、こんなデータが何に役に立つの時坂君?」

「チーム分けに役立つぜ!」



でもって、最高のチーム分けをするために柊の力を借りるか……悪くねぇぞ時坂。さて、どんな感じでチーム分けしたのか、聞かせて貰おうじゃねぇか!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE34
『目覚める蒼雷~Fate~』












「向かって右の扉――ルートAには、魔法攻撃を無効化するバリアを張ったグリードが多いから、俺と志緒先輩と空と明日香、アルフとクロノで行く。
 反対に向かって左の扉のルートBには魔法攻撃に弱い奴が多いみたいだから、なのはちゃんと璃音と美月先輩、祐騎とユーノに任せるぜ!!」

「良い感じじゃねぇか?
 敵の弱点も突ける構成だぜ時坂――此れなら、最終層、或は中間層でBルートとの合流も難しくないかもしれねぇからな。」

兎に角、最優先事項は、最深部に辿り着き、そんであの婆さんの面を思い切りブッ飛ばしてやる事だからな――其れに向かって前に進むだけだぜ!!
そんじゃまぁ、異界の攻略と行こうじゃねぇか?――気合い入れて行こうぜ!!



「「「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」」」


良い気合いだぜ。――此れなら如何にでもなりそうだ……と言うか、どんな時でも最終的には如何にかして来たんだ、今更怖気づく筈がネェだろ!!
ルートAは俺達に任せて、ルートBの方は確り頼むぜなのは!!



「任されました!……あとで、また。」

「後で、必ずな。」

さて、俺の『首狩り兵器(ヴォーパルウェポン)』に首を刎ねられたい奴からかかってこいや!!望み通り、その首狩ってやるからよ――精々覚悟しな!!








――――――








Side:なのは


ルートBを進行中なわけだけど、確かに此の異界迷宮は尋常じゃない位に複雑で、罠も多いみたいだね――まだ第1階層だけど、振り子刃に、過重の
呪いの沼、迫り来る剣山壁……内部に入った者を、本気で殺しに来てる感じだよ。



「その罠も、床トラップ以外は砲撃で吹っ飛ばしてる人が彼是言っても説得力皆無なんじゃないの?」

「迫り来る串刺し上等の壁も、なのはちゃんがバスター一発ブチかましたら、粉々だからね~?魔力だけなら、アタシや美月先輩上回ってるのかも……」

「其れは否定できませんね。
 まぁ、高幡君が目を掛けている子ですから、相応の能力は持っているとしても不思議ではありませんけれど……時坂君以上に欲しい人材ですね♪」



にゃはは……でも、壊せるトラップなら壊してしまった方が楽ですし、トラップ壊す序に進行方向に居たグリードも纏めて撃破出来たんですから、結果オ
ーライって言う事で。
其れに、5歳の時に『どうしても進まなきゃいけない時に邪魔な物が現れたら、事情は後で説明するとして取り敢えずぶっ壊して進め。』って教わりまし
たので――志緒さんに♪



「いや、5歳の女の子に何教えてんの志緒先輩!?」

「ある意味でらしいと言えばらしいけど……まぁ、なのはちゃん的にはOKみたいだから良いんじゃないの?
 志緒先輩の言ってる事だって、あながち間違ってる訳じゃない訳だし。――まぁ、割と極論系だけど。」

「でも、志緒さんに教えて貰った事を実践して、悪い結果になった事ってないんですよ?
 アリサちゃんとお友達になれたのだって『理不尽な苛めをしてる奴が居たら、一発打ん殴ってでも其れを止めろ!』を実行した末の事ですから♪
 ……尤も、其の後、すずかちゃんが止めるまで続いた取っ組み合いの大喧嘩になっちゃって、最終的にお父さん達が学校に呼び出されましたけど。」

いやぁ、あの時の私とアリサちゃんは凄かったの。お互いに痣と絆創膏だらけだったからね。
で、私の方はお父さんとお母さんが、アリサちゃんの方は鮫島さんが互いに頭下げ合って、私とアリサちゃんもお互いにゴメンナサイして、其れで晴れて
お友達になれたんだよね。
まぁ、その時に『行き成りぶったのはやり過ぎたかもしれないけど、間違ってたとは思ってない』って堂々と言ってあげましたけど♪



「あらあら、頼もしい事ですね、なのはちゃん♪
 それじゃあ、その頼もしい所で、ちょっと強めの敵の撃破と行きましょうか?――来ます!!」



――Warning!Warning!!


『シャァァァァァァァァ……!!』


――S・グリード:クリムゾンレイス




「な、なんか強そうなのが居るんだけど!?」

「確かに、今までの相手とはレベルが違いますね――エルダーグリードと比べたら弱いけど、通常のグリードと比べれば倍以上の力が有る!!」

「かも知んないけど、倒すしかないんだからやっちゃえばいいでしょ?――中ボスか、面白そうじゃん。」



このグリードは焔属性だから、私の基本属性の風は効果が薄い……だったら!
レイジングハート、マスターコアのデータを風属性のアルカディアから、霊属性のメルクリウスに変更!璃音さんと祐騎さんと一緒に、アレを討つ!!



『All right Master.The master core is changed to Meruclears.(了解しましたマスター。マスターコアを、メルクリウスに変更します。)』

「OK!一気に決めます、ユーノ君、美月さん、サポートをお願いします!!」

「了解!喰らえ、チェーンバインド!!

「防御結界展開……攻撃は通しません!」



これで、相手は何も出来ないから、一撃でやっちゃいましょう、璃音さん、祐騎さん!!



「OK!!吹き飛べ、シルフィサイクロン!!

「それそれそれ!弾幕弾幕!!」

「受けてみて!バスターの属性バリエーション!!スプラッシュインパクトォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!



――ゴガァァァ!!ドドドドドドドドドド!!ドンガラガバシャァァァァァァァァァァァァァン!!!!!



一撃掃滅!!私達の前に現れてしまった事を後悔しやがれなの!適当に手強いのは確かだけど、その程度で私達に勝てると思ったら大間違いだよ!
そもそも、ゴールまで立ち止まってる事なんて出来ないから、この先どんな中ボスが出てきたとしても、今と同じように一撃でやっつけるだけなの!!



「おぉ、言うねぇなのはちゃん!流石は、志緒先輩のブレイズソウルを受け継いだだけの事はあるわね♪」

「ふふふ、頼りになりますね、なのはちゃん♪」

「てかさ、今の攻撃って僕と玖我山先輩要らなかったんじゃない?
 僕の射撃スキルと、玖我山先輩の剛撃スキルがなくても、絶対になのはの砲撃魔法だけで、今のグリードは撃破出来たでしょ間違いなく!!」

「祐騎さんと璃音さんの攻撃も凄かったけど、なのはの砲撃はそれ以上だったからね……これで、魔法と出会って1カ月未満なんだから末恐ろしいよ。
 管理局が欲しがる人材なのも頷けるさ……恐らく、管理世界の全てを探しても、此処までの魔導師はそうそう居ないだろうからね。」

「ぶっちゃけ僕達要らないんじゃないの!?
 いや、其れを言ったら洸先輩のチームも、志緒先輩が『防御何それ美味しいの?』ってな感じで、グリードを文字通り蹂躙してるんだろうけどさ……」



あはは……まぁ、志緒さんだったらそうでしょうね。
でも、其れは其れとして、一気にこの迷宮を攻略しちゃいましょう!この迷宮を攻略した最深部に、ジュエルシード事件の黒幕が居るんですから。



「OK~~!ガンガン行こうか♪」

「ま、ラスボスまではサクッと行っても良いんじゃないの?」

「では、行きましょうか。」

「僕も、可能な限りのサポートをするよ。」



洸さんが決めた、このチーム分けは意外と良かったのかもしれません――思った以上にチームワークが取れてるしね。
単純に戦闘の相性だけじゃなくて、チームワーク面も考慮して分けたのかもしれないけど、だとしたら洸さんのリーダーとしての眼力は見事なモノなの♪

このまま、一気にゴールまたは合流点に向かってレッツゴーだね!!








――――――








Side:フェイト


……僕は、いったいなんのためにじゅえるしーどをあつめて、戦ってたんだろう?
じゅえるしーどを集めるのは、お母さんのためだって、そう思ってたのに、ぼくは『ありしあ』って言う子のこぴーでしかなくて、お母さんは最初から僕の事
なんてみてなかった……僕はどうぐでしかなかった。

僕はありしあの偽物で、この記憶も何もかもが、ありしあの記憶の――


――フェイトちゃん


「!!!」

違う、そうじゃない!!

たしかに僕はありしあのこぴーで、この記憶もありしあから受け継いだモノかも知れないけど、あの白い子との記憶はありしあの記憶のこぴーじゃなくて
僕の、僕だけのきおくだ。

思えば、あの子はずっと僕と向き合ってくれた……僕の名前を呼んで『友達になりたい』って言ってくれた。
それなのに僕は――!!


『Sir.』

「バルディッシュ……そうだよね、僕はこんな所で終わっちゃいけないんだ!
 諦めれば良いって事じゃない、捨てれば良いって事じゃない……僕の全ては、まだ始まっても居ないんだ……だったら僕は――!!行こう!!」

『Yes sir.Recover.』



――カキィィィィィン!!



バルディッシュも完全復活!!
しょうじきな事をいうなら、何が正しいかなんて言うのは分からないけど、僕は僕が思った通りに行動して、そして飛ぶんだ僕が僕であるために!!



「……如何やら吹っ切れた様ね?」

「……誰?」

で、行こうと思ったやさきに、僕の前に現れた黒ずくめの人――声の感じかららして女の人なんだろうけど、めちゃくちゃ怪しんだけどだいじょうぶかな?
管理局の艦内に居るいじょうはだいじょうぶだと思うんだけど……



「少なくとも敵ではないわ……言うなればなのはさん達の協力者と言った所かしらね?
 貴女が目覚めた時に備えて、アースラで待機していたのよ――幾ら貴女であっても、単騎で異界のなのはさん達を追うのは厳しいでしょうからね。」

「ついて来てくれるの?」

「分かり易く言えばね。
 リンディ、フェイトと共に異界に向かうけれど、問題は無いわね?」

『拘束した容疑者を連れ出すのは、本来だったらNGなんだけど、今回は事態が事態だけに許可するわ。
 此れだけの事態が発生してしまった以上、管理局の法だけで対処する事は難しいし、管理外世界は一種の治外法権だから全く問題ないわよ。』


「と、言う事だから遠慮しないで行きましょうか?――きっと、あの子は貴女の復活を待っているでしょうからね。」



うん!!
どんなけつまつがまってるかは分からないけど、僕は僕として生きる!ありしあのコピーじゃなくて『フェイト・テスタロッサ』として!!――もう迷わない!

いっくっぞ~~~!!パワー全開だ~~~~~!!!!








――――――








Side:なのは


第2階層を攻略して、辿り着いたのは大広間みたいな空間――美月さん曰く『上位階層に向かう前の中継地点』との事で、つまりは半分まで来たって言
う事なんだけど……


『グガァァァァァァァァァァァァァ!!』
――エルダーグリード:アビスハウンド


『キョアァァァァアッァァァァァアァァァァァァ!!!』
――エルダーグリード:カオスレイヴン




「魔鳥と魔犬……超A級エルダーグリードが二体――流石は敵の本拠地と言った所ですね。」



現れたのは、2体の強力なエルダーグリード!
美月さんの言葉を信じるなら、変貌したフェイトちゃんには劣るけど、この鳥も犬もトンでもない力を秘めてるのは間違いないの……私達だけで、この2
体の相手をするのは少し辛いかもしれない。

だけど、だからってギブアップは絶対にしないの!!
こんな所でギブアップしたら、其れこそ私のBLAZE魂に反するからね!――先に進むためにも、此処は徹底抗戦一択!異論は認めないの!!



「まぁ、そう来るよね?
 倒せない相手でもないし、クロスドライブとか巧く使って行けば楽勝だって――上位階層前のお供付き中ボス戦、サクッと行こうか。」

「ゆ~君、軽っ~~~~♪
 まぁ、その意見には大賛成だけどね♪」



ですよね!!
ぶっちゃけた事を言うなら、私のブレイカーをブチかませば一撃で終わらせる事は出来るんだけど、アレは溜が長い上に、周囲から魔力を集めるとは言
っても、私自身の魔力も使いきっちゃうから、こんな所で使う訳には行かないの。

だからこそ、普通は此処は手堅く削って行くのが定石になるんだけど……そんな選択は最初から有り得ないの!!



「其処まで言っておきながら、定石戦法全否定!?」

「攻撃こそ最大の防御ですよ祐騎さん!
 そもそも、防御主体でチマチマ攻めるのは性に合いませんし、レイジグハートだってそんな戦い方じゃ満足出来ない筈ですから!!」

『Yes.Search&Destroy.(はい。索敵即撃滅です。)』

「デバイスがクールにデンジャラス!?」



ふふふ、レイジングハートにもBLAZE魂が宿って来たみたいで嬉しいね♪
だけど、冗談抜きでこの2体のエルダーグリードは、グリード化したフェイトちゃんには劣るとは言え、トンでもない力の持ち主だから、気を抜かずに行き
ましょう!!



「だね!……って、なのはちゃん後ろ!!」

「へ?」

『―――――!!』
エルダーグリード:マリスクロウ




っ!!背後からもう1体!巨大な手のエルダーグリード!!――まさか、魔犬と魔鳥に隠れて、私達を攻撃する機会をうかがってたって言うの!?
だとしたら、何とも小賢しい手だけど、この攻撃は避けられない!
プロテクションを張っても、この巨大な手で張り手には多分耐える事は出来ないし、迎え撃つにもバスターを撃つ為のチャージ時間が全然足りない!!

諦める気はないけど、万事休す状態――



「させるかぁぁぁぁぁぁぁ!!
 僕はもう迷わない!!僕が僕であるための一歩を踏み出す!その為に、お母さんと向き合うんだ!!喰らえぇぇ、天破・雷神槌!!

「邪魔よ、サンダーレイジ!



――バリィィィィィィィィィィ!!!

――ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!




と思った所で此れは……水色の雷と、闇色の雷って言うことはまさか!!プレ…もとい、黒衣の魔導師さんと――

「フェイト……ちゃん?」

「うん、僕だよ……何とか立ち直る事が出来たんだ、君のおかげで。
 僕は確かにありしあのコピーかも知れないけど、君と出会ってからの記憶は僕だけの物だから、誰にもそれはひてーさせないし、其れが僕の証だよ。
 何よりもお母さんには聞きたい事も言いたい事もあるからね……此処は一気に突破しちゃおう!!」



フェイトちゃん…!!立ち直ってくれたんだ、あの状況から!!――良かった、本当に良かった!!
其れに、立ち直った直後だって言うのに、碌に休まずに戦場に出て来て……此処はもう、絶対に突破する以外の選択肢はないの!全力全壊上等!!

「フェイトちゃん!!」

「うん、僕達で決めよう!!」



「まさかの援軍だけど……死闘を演じた好敵手が、助けに来てくれるなんて最高のシチュエーションじゃない!此れは、燃える展開でしかないでしょ!」

「ベタだけど、確かにね。
 手の方は乱入の一撃で吹っ飛んだから、残るはあの2体……なら、動きを制限するだけってね!」



そして、フェイトちゃんと黒衣の魔導師さんの参戦で、一気に士気も上がったし、其処から璃音さん達が魔犬と魔鳥の動きを制限するように立ち回ってく
れたから、後は一撃で撃ち抜くだけだよ!!

「レイジングハート!」

『All right.』

「ばるでぃっしゅ!」

『Yes sir.』



「此れで決めるの!!ディバイィィィィィィィィン……バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

「パワー全開ぃ!!爆光破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!



――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

――バリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!



『『ギヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』』



「A級以上のエルダーグリード2体が一撃で……凄まじい破壊力ですね……」

「なのはちゃんも、フェイトちゃんもやっる~~~♪」



全力全壊ですから♪

それよりも、来てくれて助かったよフェイトちゃん。――本当に、もう大丈夫なんだよね?



「僕は、まだ何も始まってないし、君の『友達になりたい』って言うのにも応えてないから、終わる事は出来ない!
 君への応えは全部が終わってからになると思うんだけど、その為にも僕はお母さんと向き合って、そして飛ぶんだ、ありしあのコピーじゃなくて、僕が
 僕として!フェイト・テスタロッサとして!!」

「うん、その意気だよ、フェイトちゃん!」

なら、全ての決着をつける為に――


「「行こう!!」」


目指すは、異界迷宮の最上層――プレシアさんの名を騙る、最強クラスのグリムグリードが待っているであろう玉座のみ…全力全壊で行くだけなの!














 To Be Continued…