Side:志緒
あの青ガキ……まさか、あんなモンを持って居たとはな――マッタク持って笑えねぇもんだぜ。
しかも大量摂取で異界化まで引き起こしてくれた訳だからな……まぁ、異界化は俺達で鎮圧してやる心算だが――お前は如何する心算なんだ、犬っころ?
「アタシも行かせて貰うよ!
フェイトはアタシの御主人様で、友達なんだ!――其れを見捨てるなんて言う事は出来ないじゃないか!!」
「なら一緒に来いや!
グリードにはソウルデバイス以外の物理攻撃は効かねぇが、魔法なら効くってのはなのはが証明済みだからな?魔法が使えりゃ、問題ねぇだろ!!!」
「一緒に行きましょうアルフさん!フェイトちゃんを助ける為にも!!」
「言われるまでもないさね!!」
ふっ、頼もしい限りじゃねぇか犬っころ!
そんじゃまぁ、異界迷宮の攻略と行くとすっか!!!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE31
『Calm_Passion~廃墟の異界~』
――異界迷宮:蒼銀の廃墟
コイツは……アキの時の迷宮にそっくりだな?
いや、HEATの異常摂取で現れた異界って事を考えると、似てるのも当然か――異界ドラッグ『HEAT』は、異界の植物を生成して作ったもんだからな……!
この迷宮にも、所々草やら蔦やらが床や壁に這っているから、HEATの材料には充分て所なんだろうな。
で、犬っころ、お前は何だってコイツの存在を知ってたんだ?
「前に、あの鬼婆から、貰った事が有ったんだよ『窮地に陥ったら使いなさい』ってね。
流石に、怪しいと思ったから、フェイトに渡す前に、一錠試しに飲んでみたんだけど……確かにアタシの能力は底上げされたんだけど、其れと引き換えに
力に呑み込まれちゃった感覚を覚えたんだ、まるで、今の自分なら何でも出来るような気になってね。
薬の効果が切れると同時に其れは無くなっただけど、こんな危険物をフェイトに飲ませる訳には行かなかったから、全部焼却処分したって訳さ。
だけどあの鬼婆、まだ持って居やがったんだな!!そして、今度はフェイトに直接――!!」
「成程な……」
「でもさ、行き成りあれだけの量を一気に飲むとか有り得なくない?
どんな物であっても『クスリ』だって事を考えれば、大量摂取は危険て事は分かりそうなモノだと思うんだけど……」
「若しかしたら、黒幕に『負けそうになったら、此れを全て飲みなさい』的な事を言われていたのかもしれないわね。
此れまでの事を考えると、あの子は『母親の為』という理由で、其れに疑問を持たずにジュエルシードを集めていたのだから『母親』の言う事ならば、疑う
事もしないで信じて従う可能性はゼロではないから。」
だとしたら、本気で腸が煮えくり返る話じゃねぇか!
要は、テメェに向けられてる信頼やら何やらを全部利用して、テメェの都合の良いように利用して、最悪の場合は斬り捨てる――まぁ、異界化はなのはも巻
き込む事が前提だったのかもしれないとしても、大凡許せる話じゃねぇだろ!
だが、黒幕の奴に言いてぇ事は山ほどあるが、今は異界の攻略と鎮圧、そんで青ガキの救出が先決だな。
オイ柊、此の異界――迷宮の色が違うだけで、アキの時の迷宮とよく似て居やがるし、HEATの存在を考えると、最深部に居るのは『アレ』って事なのか?
「植物型のエルダーグリード『ダークデルフィニウム』……確かにアレが居る可能性は充分にありますが、今回のHEATが黒幕であるグリードのお手製の物
であるのなら、アレが出て来るよりも、服用した彼女自身がグリードと化して現れる可能性もあります。」
「んな!?フェイトが人間じゃなくなっちまうってのかい!?」
「可能性の話だけれど、あり得ないとは言い切れないわ。
尤も、そうなってしまった場合でも、グリードと化した存在を倒せば、ベースとなった存在を助け出す事は可能だけれど。」
「あ、千秋先輩の時と一緒ですね!」
「グリードに捕らわれた存在を助け出すって意味では、姉さんの時とも似てるかもね?」
……何にせよ、アキの時よりも面倒な事態になる可能性は考えといた方が良いって事か――上等じゃねぇか!
こちとら、世界の危機を相手に戦い抜いた面子だ!今更、多少手強い程度の事で怯む訳ねぇだろう!ガッツリと、気合を入れてやってやろうぜお前等!!
「「「「「おぉーーーーー!!!!」」」」」
「私も頑張ります!!」
「フェイトはアタシが助ける!アタシがやらなきゃ、誰がやるのさ!!」
その意気だ!さて、攻略開始だな!
――――――
No Side
一行が足を踏み入れた異界迷宮は、さすが『廃墟』と言うだけあって中々に寂れた、ある意味では味のある場所であったが、不気味な雰囲気は隠せない。
更には、異形のグリードが闊歩しているのだから尚更だ。
「貫け、スティンガー!!」
「刃よ……!」
「ディバインブレイザー!」
「イグニス……ブレイク!!」
だが、そのグリードも、志緒となのは達の前にはゴールに辿り着くまでの障害にすらなりはしない。
サイフォンの機能(異界専用アプリ)で、異界迷宮に存在するグリードの弱点属性傾向を調べた結果、この迷宮には風属性が60%、焔が20%、鋼と霊が
夫々10%の割合で存在している事が明らかになり、志緒となのはと洸と美月は焔に、明日香と璃音が霊に、祐騎は鋼、空は風で挑んだのが大当たりだ。
次から次へと現れる、風属性のグリードは志緒、なのは、洸、美月が現れた途端に撃滅し、
「覇ぁぁ……砕け散れ!!」
「吹き飛べ、シルフィサイクロン!!」
「喰らいなよ、グラムインパクト!!」
「砕け散れ、轟雷撃!!」
それ以外のグリードは、明日香、璃音、祐騎、空が的確かつ効率よく撃破!此の連携の良さもまた、X.R.Cが杜宮全土を巻き込んだ異変を解決し、更には
奇跡を手にした理由なのかも知れない。
「邪魔だ雑魚共!道を開けろぉぉ!!!」
そしてアルフもまた、魔力を付加した打撃でグリードを叩きのめしていた。
単純な物理攻撃では効かないが、魔法なら効くと聞いたアルフは、魔法で攻撃するのではなく、魔法の力を纏わせた拳脚での格闘戦を選択したらしい。
が、その効果は絶大で、ソウルデバイス以外の物理攻撃を受け付けない筈のグリードを、1匹、また1匹と確実に撃滅して行った。
とは言え――
「おい、大丈夫かなのは?」
「はぁ、はぁ……だ、大丈夫です!マダマダ行けます!!」
なのはに疲労の色が見えるのは隠せない。
まぁ、既にフェイトと一戦交えた上、フェイトの切り札を耐えきった上で、本気の一発を放ち、更には究極技とも言うべき集束砲撃を使ったのだから、普通に
考えて、疲れていない方が異常なのだ。
既に、体力は限界に近いだろうが――
「ん?ラッキー、宝箱じゃん!」
――現実世界の品が紛れ込んでいるようだ。『リポビタ○D』を手に入れた。
偶然祐騎が見つけた宝箱の中から、『ファイト一発!!』でお馴染みの栄養ドリンクを入手!(果たして何故に異界に紛れ込んだのか、甚だ謎だが。)
「コイツは……なのは、飲んじまえ。」
「此れなら確かに……いただきます!」
そしてなのはは其れを一気に飲み干し………
「ファイットォォォォォォ!!!いっぷぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!!」
――轟!!!
体力と魔力が一気に全回復!!ファイト一発の謳い文句に偽りなし!何とも、恐るべき回復力である。
だが、なのはの体力と魔力が全快したと言う事は、其れはつまり一行の戦闘力が大きく上乗せされたと言う事である訳で……
「ディバインバスター!!!」
「フレアスラッシュ!!」
志緒の射撃スキルと共に放った砲撃で、雑魚グリードを一撃奮滅!志緒となのはのコンビは、正に無敵にして最強のコンビと言っても過言ではない筈だ。
恐らく、世界の何処を探しても、志緒の力任せの斬撃と、なのはの魔力任せの砲撃の両方を完全に防ぐ事の出来る者など存在しないだろうから。
しかし、此処は人知を超えた異界の迷宮、如何に一行が強くとも、そうは簡単に異界のが世の常だ。
――Waning!Waning!!
『グガァァァァァァッァァァァァァァアッァァァ!!!!』
――S・グリード:ゼファームスペル
開けた場所に現れたのは、風属性の魔力剣を両手に装備した、強力なS・グリード。
通常のグリードと一線を画すS・グリードの力は、エルダーグリードには及ばないモノの、強力である事には変わりはなく、熟練の戦士でも苦戦は免れない
のであるが……
「おぉぉぉぉ!エクステンドォォォ…ギア!!」
「はぁぁぁ……カオスエルドラド!!」
「畳み掛けんぞ!!クリムゾン……レイド!!」
風属性に効果覿面の焔属性を有する志緒と洸と美月の前では只の雑魚でしかない――まぁ、この3人の必殺技を纏めて喰らえば、どんなグリードであろう
と、問答無用でKOされるのは間違いないだろうが。
「ハッ、出直して来な!!」
「一昨日来やがれってんだ!!」
ともあれ、相手に何もさせずにS・グリードを撃破したのは大きいだろう――其れはつまり、最深部に至るまでの間に、一行の敵となる相手は居ないと証明
した事でもあるのだから。
「おぉらぁ!!邪魔だぁ!!散れぇぇぇぇ!!!!」
「ディバイィィィィィィィィィィィィィィン……バスタァァァァァァァァァッァァァァァァァァァァァッァァ!!!」
――ズバァァ!!バキィィィ!!ドガァァァァァァァァァッァア!!!
――キィィィィィン……ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァァァン!!!
加えて、志緒となのはの『無敵前衛後衛コンビ』が、其れを強烈に後押ししていた――文字通り、志緒となのはの前には敵が居なかったのだから。
だが、味方からしたら、此れは有り難い事だ――此れだけの仲間がいるのならば、どんな事が有っても、何とかできる、そう思わせる物だったのだから。
「喰らい……やがれぇぇぇえ!!!」
――ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァン!!
そして、進みに進んで、辿り着いた最終層に現れたS・グリードをも、志緒がイグニスブレイクで撃滅し、一行は、遂に最深部にまで辿り着いたのである。
――――――
Side:なのは
此処が異界の最深部……思った以上に開けた場所だけど、此れは……見過ごせないよフェイトちゃん!!
「………」
最深部の空間で、そのほぼ中央から縛られてつりさげられているフェイトちゃん…此れじゃあ只の曝し物なの!!何とかして、フェイトちゃんを助けなきゃ!
「フェイト!フェイト!!アタシが分かるかい?アタシの事が見えるかい?」
「……へ?あるふ?……そっか、君達も来たんだ。」
如何やらフェイトちゃんは意識が有るみたいだから、それなら――!!
「馬鹿みたいだよね僕……お母さんの為にジュエルシードを集めてただけなのに、如何してこんな事になっちゃうかなぁ?……僕は頑張ったんだよ!?
其れこそ、お母さんの言う事を信じて頑張って来たのに、何で!如何して……幾ら何でも、疲れちゃったよ。
お母さんから貰った薬も、使ってみればこんな事になって……僕は要らない子だったのかな?……それすらも、もう分からないよ。
もう沢山だよ……誰かを騙すのも、誰かを貶めるのも……だけど、僕一人じゃ何も出来ないから……助けて!助けてよ!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
――轟!!!
此れは……フェイトちゃんから途轍もない魔力が!!
――違う、此れはフェイトちゃんの魔力じゃない!もっと重くて禍々しい……そんな感じの魔力なの!!――此れは一体………
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
『キハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』
――3A級エルダーグリード:雷神の襲撃者
「そんな……」
私には何も言えなかった……言う事すら出来なかった訳だからね――だからこそ、此れを倒して貴方を救う!!其れが私の全力全壊だからね!!!
幾らグリードと化してしまったとは言っても、倒せば取り戻せるって言う事だったから、余計なの!
「助けてくれ……だと?
青ガキ、テメェ……何を当たり前の事を言って居やがる馬鹿野郎!!」
――轟!!
そして志緒さんも、やる気は120%!!――だから、必ず助けるよフェイトちゃん!!
此れが、私達の全力全壊!!――本気で行くよフェイトちゃん!!グリードと化した貴女を倒して、そして貴女を取り戻して見せる!!絶対に!!
「全力全壊なの!!」
「派手にブチかまそうぜ、なのは!!」
そして、その為に私は戦うの!!――必ず貴女を取り戻す!!其れは、私にとっても大切な事だからね!!
――だから行くよフェイトちゃん!!私の本気を、払って捌く事が出来るならトコトンまでやってみると良いの!――その為に出来る事は惜しまないからね。
「志緒さん……」
「皆まで言うんじゃねぇ……コイツ等をぶっ倒してなんぼだろうが!!」
ですよね――それじゃあ、始めましょうか?
エルダーグリードと化してしまったフェイトちゃんを倒し、そして助け出す為の戦いをね――だから、本気で行くよ、フェイトちゃん!!
私のBLAZE魂を、その身をもって味わうと良いよ!!
To Be Continued… 
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