Side:志緒
遂に、なのはと青ガキの一騎打ちか……コイツは物凄いバトルになるのは間違いねぇだろうが、其れだけに俺達が手を出すのは禁物ってやつなんだろうな。
此の2人の直接対決ってのは、言っちまえば、テメェの魂をぶつけ合う戦いに他ならねぇから、どんな状況になろうとも、決着が付くまでの間に、下手な横槍を
入れるってのは、余りにも野暮ってモンだ――なのはだって其れは望まないだろうからな。
だが、逆に言うなら、手出しが出来ねぇ以上は、お前の力だけで青ガキを倒さなきゃならねぇ訳だ……其れは分かるだろ、なのは?
「勿論です!!
私の力だけでフェイトちゃんに勝って、そして終わらせます!!」
「ハッ、言うじゃねぇか!!」
だったら全力全壊でやってこいや!!
あの青ガキに、お前のBLAZE魂を、余すことなく、ブチかましてやれ!!
「はい!行ってきます!!」
オウ、頑張れよなのは!!――お前なら、きっと如何にか出来る筈だからな!!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE30
『超絶バトル!激突のN&F!!』
No Side
「行くよフェイトちゃん!!」
「来い、しろまどーし!!」
――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
最高にして最強の最終決戦のゴングは、なのはとフェイトの射撃魔法がかち合って相殺して発生した、凄まじいまでの爆音であった!!
そして、戦いが始まったと同時に、なのはとフェイトは空中を縦横無尽に飛び回り、まるで空中演武を見ているのかと思う位の見事な空中戦を展開して来た。
フェイトのスピードは、正に雷速と言うべき物であり、目にも映らない高速移動を捉える事の出来る人物は、世界中を探しても稀であり、それはなのはの動体
視力では捕らえる事は出来ないモノだ。
「貰ったァぁあぁぁ!!」
「させない!!」
――ガキィィィィィン!!!
だが、動きそのものを捉える事は出来なくとも、自身に向かって来る攻撃の気配を感じ取る事は難しいモノではなく、ドレだけのスピードがあろうとも、攻撃の
一瞬に限定すれば、其れを見切る事は可能なのだ。
そして、なのはの強さは其れだけではない。
「アレは……私のハーミットシェル!」
超高速移動からのフェイトの一撃を防いだのは、只のプロテクションではなく自身を魔力障壁で包み込む美月の絶対防御結界術『ハーミットシェル』!
直接教えを受けた訳ではないが、見様見真似で、なのはは此れを使って見せたのだ。
「其処……シュート!!」
「んな!!」
更にカウンターで、見様見真似の明日香の『スプラッシュアロー』を放ち、フェイトを近距離から引き剥がす。
此れまでのジュエルシードを巡る戦いの中で、なのはは共に戦った仲間達の技を、見様見真似で会得して来たのだ…此れは、恐ろしい才能と言う他はない。
直接教えを受けた訳でもないのに、見様見真似で技を会得すると言う事は、多少の未完成さはあるにしろ、ドンな技であっても自分のモノにする事が出来る
と言う事なのだから。
魔導師としての実力ならばフェイトの方が上だろうが、仲間の力を使う事が出来るなのはは、その差を簡単に埋め、互角以上の戦いを展開しているのだ。
「フレアスラッシュ!!」
「電刃衝!!」
――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
ぶつかり合う魔力と魔力、其処には、一切の小細工など存在しない――あるのは、持てる全ての力を出して、目の前の相手を打ち倒すと言う思いだけだ!!
《く……初めて会った時は、まりょくがおおきいだけのしろーとだったのに、今は違う……とってもかたくて、そして強い!!》
《流石はフェイトちゃん、相変わらず凄いスピードだね?……正直な事を言うと、付いて行くのがやっとだけど、だからって根を上げる事はしないの!!
何よりも、志緒さん達から力を貰ってる以上、私は負けられないから!!私のBLAZE魂を、燃やし尽くしてやるの!!》
なのはもフェイトも、互いに思う所はあるのだろうが、今は戦うだけだ。――戦った先にの勝利にこそ、己の望むモノが待っているのだから。
――ガキィィィィン!!!
「……やるじゃん君、あのでっかいにゃんこの時とはぜんぜん別人みたいだ。もしかして、ものすごくとれーにんぐとかしてたりするの?」
「其れは勿論、時間が有れば魔法のお勉強!」
「なんで?」
「ジュエルシードを回収するんだったら、魔法が上手な方が良いし、何よりも、フェイトちゃんに負けっぱなしって言うのも悔しいから!」
「お~~~!いいね~~~!!そー言うのは嫌いじゃないぞーーー!!」
レイジングハートとバルディッシュで鍔迫り合い状態になりながらも、こうして言葉を交わす事が出来るのも、ある意味で総合的な実力が拮抗して居ると言う
事なのだろう。
尤も、筋力に関してはフェイトの方が上なので、この鍔迫り合いも、フェイトが一気に押し切ろうとする。
だが、なのはその力を逆に利用し、いなすような形で体を入れ替えてフェイトのバランスを崩しにかかる!そして、勢いが付いたフェイトは其のままバランスを
崩し、大きな隙が出来る
「シルフィサイクロン!!」
「ちぃ、天破・雷神槌!!」
その隙を逃さず、なのはは今度は璃音のシルフィサイクロンを放つが、フェイトも恐るべき運動神経で無理矢理バランスを立て直し、強烈な雷を放って其れを
相殺する……決定打は、そう簡単に打てる物でもないようだ。
一方で、この戦いの立会人的な立場になっている志緒達はと言うと………
「不謹慎て分かってて敢えて言うけど、この戦いをDVDに録画して、適当なタイトル付けて売ったら、特撮マニアに人気出ると思わない?」
「ホントに不謹慎な事言ってんじゃねぇよ、祐騎!!」
「祐騎君、其れは流石にないよ!?」
天才少年が、何やら悪巧みをしていた。――尤も、本気ではなく、場を和ませるための冗談の類なのだろうが……まぁ、祐騎なりの気遣いと言うやつだろう。
尤も、先輩と恋人には、割とガチで引かれたが。
「ったく、どんな時でもブレねぇなアイツ等は……ま、アレ位の方が丁度良いかも知れねぇって所だがな。
しかし、あの青ガキ、やっぱり只モンじゃねぇな?スピードとパワーなら、郁島も相当なモンだが、アイツのアレはモノが違う……正に雷神じゃねぇかよ。」
「まぁ、其れがフェイトだからね。
だが、其れに付いて行ってるあの子だって相当なモノじゃないかい?只ついて行くだけじゃなくて、瞬間的な高速移動で背後を取ったりとか、正直な事を言
うなら、フェイトと此処までやり合えるとは思ってなかったよ。」
その一方で、志緒とアルフは、夫々にフェイトとなのはの事を評価していた。
志緒はなのはの事を、アルフはフェイトの事を、この場に居る誰よりもよく知っている故に、其れと戦う相手の事を、素直に凄いと思っていたのだ。
「何だってあの子は、あそこまでフェイトに喰らいつく事が出来るんだい?
確かに、あの子は強いし、防御だってフェイトが簡単に抜く事が出来ない位には堅い……それでも、経験とかでは絶対にフェイトの方が上なんだよ?」
「そうだろうが、自分に勝る点があるってんなら諦める理由は何処にもねぇだろ?
それどころか、勝る点が一つもなかった所で、なのはは絶対に諦めねぇ……アイツの心は不撓不屈、そして燃え盛るBLAZE魂が消える事はねぇからな!」
「其処で根性論かい?……まぁ、アタシもフェイトも根性論は嫌いじゃないけどさぁ……
でも、そう言う事なら、尚の事決着には時間がかかりそうだね?……今のフェイトとあの子の戦いは、完全に拮抗している状態だからね。」
流石に、此処に来て心の力や魂の力が出て来るのは予想外だったようだが、だが逆に其れなら納得と言った状態で、上空の戦いを見やる。
アルフの言うように、なのはとフェイトの一騎打ちは、何方も決定打を相手に与える事が出来ず、完全に削り合いの状態に陥った泥仕合の様相を呈して来て
いる故、此れは決着に時間がかかりそうだ。
「でも、その拮抗状態は、ちょっとしたけっかけで直ぐに崩れる事になるわ。」
「えぇ、果たしてどちらが先に痺れを切らすか、ですね。」
「拮抗を崩した方が崩した勢いをそのままに押し切るか、崩された方が何とか持ち堪えて、反撃の一手で返り討ちにするかって所ね?」
だが、執行者として多くの戦いを経験してきた明日香は、その拮抗状態は意外とあっさり崩れる物だと言い、美月は何方が先に仕掛けるかが鍵と考えて居る
らしい。そして、璃音の言う事は、恐らく間違いではないだろう。
「拮抗は簡単に崩れるか……如何やらそうみてぇだな?」
其れを聞いた志緒が視線を戦場に移すと、今正にその拮抗状態が破られようとしていた。
互いに決定打を欠く、射撃戦の最中、先にその拮抗状態を破ったのは――フェイトだった。
「うおりゃー!捕まえたぞ!!」
「バインド!?何時の間に!!!」
射撃の撃ち合いの間の一瞬の隙を突いて、なのはをバインドで拘束し、その身の自由を奪う。
如何になのはの防御が高いとは言え、こうして拘束されてしまっては手も足も出ない――つまり、フェイトはバインドが効いている間は攻撃し放題なのだ。
「君は強い、だから僕のさいきょーの攻撃でやっつける!!」
だが、フェイトは動けないなのはをタコ殴りにする事はしないで、上空に舞い上がり、バルディッシュに魔力を集中していく――どうやら、己の最大の一撃を持
ってして勝負に出たようだ。
相手を拘束した上で、最大の一撃をブチかますと言うのは、確かに悪い手ではないだろう。
しかし、此れに驚いたのは、他の誰でもない、フェイトの使い魔であるアルフだった。
「フェイト、其れは!!!
拙い!!逃げろ!逃げろ白ガキ!!!フェイトの其れは、冗談抜きでマジでヤバイんだ!!幾らアンタの防御が堅くたって、耐えきれるもんじゃない!!」
どうやら、此れからフェイトが放とうとしているモノの危険度は重々知っているらしく、無理だとは分かっていながらも、なのはに逃げろと言う――が、
「其れが如何した犬っころ!お前さんの様子からして、アレは確かに相当ヤバイ代物なんだろうが……なのはを舐めるなよ?
あれがドンだけヤバいモンだとしても、なのはは耐えきるに決まってるぜ?……アイツは、俺がアキ以外で唯一認めたBLAZE魂の継承者だからな!!!」
志緒が一喝!
完全な根性論、精神論だが、志緒はこの一撃でなのはが負けるとは微塵にも思って居なかったらしい。――ある意味で、此れも信頼なのかもしれないが。
「行くぞしろまどーし!此れが僕のさいこーの技だ、うけてみろーーーー!!
くらえ~~~~!!超必殺!!雷刃封殺爆滅剣ーーーーーーーーーーーーー!!!」
――キュイィィィィィン……ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
其れに呼応するように放たれたフェイトの攻撃は、いっそ数えるのが面倒になる位の電刃衝の雨霰!
38個もの魔力スフィアから、秒間7発と言う驚異的な連射力で電刃衝をジャスト4秒間続けることで、相手に1000発以上の攻撃を喰らわせるフェイトの最終
奥義『雷刃封殺爆滅剣』……其れが炸裂したのだ。
如何になのはの防御が堅いとは言え、1000発以上の攻撃を身動きが封じられた状態で喰らえば只では済まないだろう。
「はぁ、はぁ……ど、どうだ!参ったか!!」
攻撃した側のフェイトも、相当に消耗したらしく肩で息をしているが、手応えはあったのだろう……その顔には、勝ったと言わんばかりの笑みが浮かんでいる。
「……バインドって、攻撃が終わると解けちゃうんだね?」
「な!?……そんな!!!」
だが、攻撃の粉塵が晴れると、そこにはなのはが立って居た。
バリアジャケットは上着が殆ど吹き飛び、スカートも大きく破損しているが、しかしなのはは、フェイトの最大の一撃を喰らっても落ちる事なく、其処に存在して
居たのである――志緒の読みは正しかったのだ。
「今度はこっちの番!!」
『Restrict Lock.』
――ガキィィィン!!!
「んな、バインド!?」
「ちょっと真似させて貰ったよ、フェイトちゃん!」
お返しとばかりに、今度はなのはがフェイトをバインドで拘束!!――と言う事はつまり、今度はなのはが最大の一撃をかますと言う事なのだろう!!
「行くよフェイトちゃん!!ディバイィィィィィン……バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「…く……やらせるか!!!」
そして、その通りになのはは必殺の直射砲撃を放ち、フェイトは其れを何とか魔力障壁でガードする。
此の一撃を防げば、まだ何とかなる……自分の最大の攻撃を受けたんだから、白魔導師も限界だ……そう考えて、残った魔力の全てを持ってしてガードに
徹したのだ。この一撃を耐えれば、まだ勝機はあるのだから。
――バガァァアァァァァァン!!
そして、フェイトは耐え、バスターは消えた……だがしかし、如何言う訳か、フェイトの拘束は未だ解けていない。
「何で、如何して………まさか!!!」
――キィィィィィィィィィィィィィィン!!!
其れを疑問に思い、そして辺りを見渡す中で、フェイトは見つけてしまった……上空に形成されている桜色の巨大な魔力球を。
そう、なのはの本当の切り札はディバインバスターではなく、此の一撃――周囲に散らばった魔力をも集めて放つ、必殺の集束砲撃であったのである。
「ずっと考えてたの、一撃で相手を倒すには如何すれば良いのかって……そして、辿り着いた答えが此れ!!
受けてみて、フェイトちゃん!私とレイジングハートの知恵の結晶であるバスターのバリエーション!!――此れが、私の全力全壊!!!」
『Starlight Breaker.』
「ブチかませや、なのはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「スターライトォォォォォォォ……ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
放たれた集束砲撃は、正に桜色の魔力の奔流と言うが如く勢いでフェイトに向かって行く!
無論フェイトも、何とか魔力シールドで防ごうとするが、空気中に散らばった魔力の全てを集めて放たれた集束砲撃を防ぐ事などどんな魔導師であっても不
可能な事であり、そのシールドはアッサリと貫通される。
そして、シールドが無くなれば、その砲撃はフェイトに直撃する訳で……
――ドガアァァァァァァァァッァァァァァァァッァァァァァァァン!!!
凄まじい爆音と共に、フェイトは海上に存在する瓦礫に激突!!
辛うじて意識は保っているようだが、其れは誰が如何見ても満身創痍……立っているのもやっとと言った所だろう。
「フェイトちゃん………」
「やるな君……今のは流石に効いたぞ?
だけど、僕は負けない……負ける事は出来ないんだーーーー!!!」
ならば、此処でなのはの勝ちと言う所だろうが、フェイトはまだ諦めず、それどころか胸元からタブレット状の何かを取り出すと、其れを口に含んで噛み砕く!
そして、その瞬間にフェイトの魔力は爆発的に高まったのだ。
「馬鹿な、アイツは!!!」
「異界ドラッグ『HEAT』!!……如何して彼女が!!」
其れに驚いたのは、X.R.Cの面々だ――何故なら、今フェイトが服用したのは、嘗て自分達が関わった異界事件で使われていた異界ドラッグ『HEAT』だった
のだから。
「あの薬は……あの糞婆、本気でフェイトを斬り捨てる心算かよ!!」
「アレを知ってんのか?……まぁ、其れは今は重要じゃねぇが……あの量は、ヤバいぞ!!!」
だからこそ、その危険さは誰よりも知っている。
特に志緒は、其れを服用したアキに苦汁を舐めさせられた経験があるだけに、其れの危険性は誰よりも知っている……そして過剰な摂取が何を齎すのかも
分かっているのだ。
――ピキ……ピキ……ゴオォォォォォォォォォォォォォ!!!
「え?……な、何だよ此れ………な……そんな……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「フェイトちゃん!?」
大量のHEATを摂取したフェイトの背後には、突如として赤い亀裂が現れ、そしてそのままフェイトを飲み込み、次の瞬間に真っ赤に染まったゲートが出現!
HEATを大量摂取したフェイトを特異点として、異界が発生し、その異界がフェイトを飲み込んだのだ。
「ちぃ……如何やら俺達の出番みてぇだな?……行くぞお前等!!」
「「「「「「おぉ!!!!」」」」」」
そして、異界が発生したとなれば、X.R.Cが黙っている筈もなく、志緒の号令のもと、全員が出撃準備OK!!
如何やらなのはとフェイトの直接対決は、其れだけでは済まない事態になってしまったらしい……寧ろ、或はここからが本番なのかもしれなかった。
To Be Continued… 
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