Side:なのは
フェイトちゃんとの直接対決は予想してたけど、まさか、こんなストレートな方法で勝負を挑んでくるとは思わなかったよ……普通に考えるなら、時空管理局に挑
戦状を叩きつけるって言う事自体が有り得ないんだけどさ。
でも、その挑戦状の内容は、極めてシンプルでストレートなモノだったね。
『明朝6時に、海鳴臨海公園にて待つ。
君に受ける気が有るなら、手持ちのジュエルシードを全て持って指定の場所に来い――持ってるジュエルシードを全懸けしての本気のバトルをしようよ!!』
送られてきた文面が此れだからね。
……だったら、私は其れに応えるだけだよ!!リンディさんも了承してくれたからね……本気でやろうフェイトちゃん!!
この戦いが、ジュエルシードを巡る件に於ける、最大のバトルになるだろうからね!!――全力全開で、やってやるの!!そして、必ず勝って見せるからね!
だから、勝利は譲らないよフェイトちゃん!!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE29
『Seize the day~明日を掴め~』
だけど、決戦前って言うのはどうにも緊張しちゃうね?……何時もなら寝てる時間なんだけど、全然眠くならないからね……思った以上に気持ちが昂ってるの
かな?……うん、その可能性は大だね。
だけど、此のままじゃあれだから、艦内を適当にぶらついてみようかな?それで、気持ちが落ち着くかもしれないしね。
で、適当にぶらついたところで、訓練室に居る空さんを発見!何してるんですか空さん?
「あ、なのはちゃん……何って訳じゃないんだけど、身体を動かしてないと落ち着かなくて――そう言うなのはちゃんは、眠れなかったって言う所かな?」
「にゃはは……恥ずかしながら、その通りです。」
「……なら、少し此処で瞑想でもして行きませんか?
静かな場所での瞑想は、心を落ち着かせてくれるから、眠れるように成るかも知れないよ?」
そうなんですか?……なら、お願いします。
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うん、大分気持ちが落ち着いてきたかな?瞑想の効果は馬鹿に出来ないね。
「なのはちゃんは……なのはちゃんは、自分の前にそびえ立つ壁を乗り越える事が出来そうですか?
なのはちゃんが負けるとは思わないけど、越えるべき壁はきっと、途轍もなく大きくて高いと思うんだ……其れでも、越えて行きますか?」
「うん、越えて行きます。それが正しい事かどうかは分からないけど、其れを超えるのが私だから!!!」
「ふふ、なのはちゃんならそう言うと思いました――だから、此れだけは忘れないで、なのはちゃんは一人じゃない……どんな時でも、私達が付いてるから。」
はい!!心に刻んでおきます空さん!!……此れは思わぬ勇気をもらっちゃったね。
さてと、もう少し艦内を……って、情報処理室に居るのは祐騎さん?何をしてるんですか?
「なのはか……僕なりに、魔導に関するアプリを作ろうと思ってね……必要なデータは、大分とる事が出来たよ……実用化への道はまだ遠いけどね。
で、如何したのこんな所に?眠れないなら、格ゲーで対戦でもしてみる?」
「あ、其れも良いですね?気晴らしになりそうですし。
でも祐騎さん……私に格ゲーでの対戦を申し込むのは死亡フラグですよ?聖祥小学校最強の格ゲーマスターの力を知るが良いのです!フルボッコです!」
「ふ~ん?面白そうじゃん。」
ならばファイト!!
――対戦中なのでちょっと待っててね♪
『ふ!ていやぁ!!真・昇龍拳!!!』
『どわぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『KO!!Ryu Win!!』
「私の勝ちですね、祐騎さん?」
「僕が負けるなんて……中々のゲーマーだねなのは。此の腕前なら、将来はプロゲーマーとして食って行く事も出来るんじゃないの。
まぁ、其れは其れとして、明日の戦いが終わったら、なのはは如何するの?」
「如何するかですか……ジュエルシードの回収は当然ですけど、私はヤッパリフェイトちゃんとお友達になりたい……だから、その思いを伝える心算です!!」
「……OK、死亡フラグすら立たない、見事な覚悟をどうも。――なら、其れは現実にするしかないんじゃないの?あらゆるフラグをへし折ってさ。」
ですよね……頑張ります!!
それから、祐騎さんと色んなゲームで対戦して、適当に艦内をぶらつく中で、今度は洸さんと鉢合わせ。
「何だよなのはちゃん、眠れないのか?」
「にゃはは……恥ずかしながら……」
「そっか……まぁ、しょうがないよな、明日は大決戦な訳だから、緊張するなってのが無理ってモンだぜ………俺だってそうだったからな。」
ほえ?洸さんもなんですか?
「あぁ、俺も俺の居た世界での決戦の時には滅茶苦茶緊張しまくっちまって、今のなのはちゃんみたいに歩き回ってたんだよ――でも、そのお蔭で、皆から力
を貰って前に進む事が出来たんだけどさ。」
「そうだったんですか……」
「でも、なのはちゃんは、俺以上に仲間の力を得てるんじゃないのか?――なら大丈夫だから、全力でやってやろうぜ!!――全力全壊だろ?」
「――はい!全力全壊です!其れが私ですから!!」
「なら、悩む事は無いよな?あの子に、なのはちゃんの思いをぶつけてやろうぜ!!」
はい!!――なんて言うか、洸さんは志緒さんとは違うタイプの『アニキキャラ』の印象を受けますね……実際に頼りになるんですけど。若しかして、声のせい?
……まさかね。一瞬、洸さんの背後に、オレンジ色の髪を逆立てた、顔中ペイントだらけの人が見えた気がするけど、絶対に気のせいだね、うん。
さて、洸さんと別れて、今度はデッキにやって来たんだけど、何をしてるんですか美月さんと明日香さん?
「あら、なのはちゃん?」
「夜更かしはイケませんよ?明日の事も有りますから。」
「にゃはは……分かってるんですけど、気持ちが昂っちゃって。それで、少し艦内を周ってたんです。――で、美月さんと明日香さんは、何か相談ですか?」
「えぇ、管理局が異界と如何関わってるのかは分からないけれど、もしもの場合に備えて、ネメシスの執行者とゾディアックの白き巫女としてやれるだけの事は
やっておこうと思ってね。」
「尤も、今は私も明日香さんも、所属している組織のバックアップは受けられないので、精々明日、なのはちゃんとフェイトちゃんの戦いの最中に、何らかの理由
で異界化が起きた時の対策を話し合う程度しか出来ませんけれど……」
其れでも、もしそんな事が起きた場合に明日香さん達が対処してくれるなら助かります。
其れなら、私はフェイトちゃんとの勝負に集中する事が出来ますから!
「ふふ、そうですね。
明日、不測の事態が起きた時には、私達が何とかしますから、なのはちゃんはフェイトちゃんとの勝負に集中して下さい。」
「なのはちゃんならきっと大丈夫……だから、明日に備えて、あまり遅くならない内に眠った方が良いわ。」
「えと…はい。おやすみなさい、明日香さん、美月さん。」
「「おやすみなさい。」」
とは言っても、まだ眠くはならないからもう少しだけ。
と、転送ポートの横にある此れは、確かエレベーターだったよね?此れを使えば、甲板に出る事が出来るんだっけ……うん、夜風に当たるのも良いかもね。
――ウィ~~~~~~ン……プシュ
と言う訳で甲板に到着。
外に出ると……少し冷たいけど、夜風が心地いいの……ん?
「キラリ 木漏れ日の下
笑いあって 過ごした毎日
さりげない繋がりに ドレだけの強い勇気を貰えただろう?
今日も何かが始まって行く
『大丈夫よ』『大丈夫だから』と何度も繰り返した」
「璃音さん?」
「あ、なのはちゃん!……えっと、若しかして聞いてた?」
えっと……はい、バッチリ。
でも、素敵な歌ですね?何て言う歌なんですか?とっても、心に沁み込んでくる歌だったんですけど………
「Wish☆Wingって言う、SPiKAの最新曲。そして、洸君のお蔭で、私の一番好きな歌になった曲だよ。」
「Wish Wing……願いの翼ですか。
タイトルも素敵ですね?璃音さんが、一番好きな歌って言うのも、なんか納得しちゃいます!少し聞いただけですけど、私も好きになっちゃいそうですから!」
「そう?だったら嬉しいかな。
……でも、ゴメンねなのはちゃん。」
ほえ?璃音さん?
「君は、明日凄く大事な戦いに臨もうとしてるのに、私は何も出来ないから……ただ、見てる事しか出来ないから。
本音を言うと、一緒に戦いたいんだけど、其れは出来ないから……だから、ゴメンね?」
「そ、そんな事ないですよ!!
偶然ですけど、今此処に来て、そして璃音さんの歌を聞いて、なんだか勇気が湧いて来たんです!此れなら明日はきっと大丈夫だって!!璃音さんの歌が、
私に勇気をくれたんです……其れだけで充分ですよ。」
「……そっか、其れなら良かった。って言うか、ちょっとアタシらしくなかったね。
ねぇ、なのはちゃん、歌の続きを歌っても良いかな?さっきまでは練習の心算だったんだけど、今度は君の為だけに歌いたいんだ。」
大人気アイドルの歌声を独り占めできるなんて、この上無い贅沢な気がするけど……ならお願いします。出来るなら、今日一番の歌声で。
「うん……それじゃあ!
夢や希望が優しさを無くしても 私達は此処に居るよ
どんな時でも空を見上げていてね
怖がらないで 願いは翼に変わる……」
願いは翼に変わる…か。
私の願いを翼に変えて、必ずフェイトちゃんに届けて見せるの!!璃音さんの一番の歌声に誓ってね!!
で、璃音さん独占ライブを聞いて、再び艦内をぶらついてたんだけど……今度は、エントランスに志緒さんが居たよ。
「よう、なのは――北都から聞いたが、艦内をぶらついてるみてぇだな?やっぱり、明日の事で緊張しちまってるか?」
「それは……流石に否定できないですよ。」
って言うか、何で志緒さんに連絡してるんですか美月さん!!
――パン!!
「ほぇ?志緒さん?」
心の中で美月さんに抗議していた時、志緒さんに背中を軽く叩かれた。
「……何でもねぇよ。
ちょいとラウンジでコーヒーでも貰おうかと思ってた所だから、お前も一緒に来いや。なんでも、好きな飲み物奢ってやるからよ。」
「にゃはは……其れじゃあごちそうになります。」
で、ラウンジに行って、志緒さんはコーヒーを、私はハチミツ入りのホットミルクを貰ったの。……うん、甘くて美味しいね。身体が、じんわりと温まって来たの。
此れなら、よく眠れるかも。
「なら良かったぜ。――本当は、気の利いた言葉の一つでも掛けてやれば良いんだろうが、生憎と俺はそんな事が出来る程器用じゃねぇからな……きっと一馬
だったら、巧くやるんだろうが、俺は俺のやり方でしか出来ねぇからな。」
「志緒さん………」
――トン……
志緒さん?
「其れは其れとして、お前の胸の中にドレだけの思いが渦巻いてて、其れがドレだけの重さなのか、本当の意味で分かるのはお前だけで、俺には其れを想像
する事しか出来ねぇ。
だが、その重荷を、一緒に背負ってきつい坂道を一緒に上る位の覚悟はしてる心算だぜ、俺はな。
そして、背中を任せられるくらいには、お前の事を信頼してんだなのは。――だから、明日は思い切りやってきな。もし駄目だったその時は、俺達が何とかして
やるからよ。」
「――はい!!頑張ります!!」
「……良い顔になったじゃねぇか――此れなら、大丈夫だな。
あの青ガキに、お前の思いの強さをぶつけてやれや!!手加減なしの、全力全壊でな!!」
はい!!私の思い、全力全壊でフェイトちゃんにぶつけてやります!!
きっと、其れが私達の始まりになるんだろうと思いますから!!
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そして翌日、指定の場所には既にフェイトちゃんが来てた――随分と早いね?まだ、指定時間の10分前だよ?少しばかり、やる気を出し過ぎじゃないかな?
「此れ位で良いんだ……君を倒すには、此れ位の気持ちが無いとダメだと思うから。
でも、そんな事は如何でも良いんだ……持って来たよね、君が持ってるジュエルシードを全て。」
「うん、持って来たよ。此れまでに回収した12個全てを。」
「そうか……僕も9個全てを持って来た。そして、勝った方が、此れを全て手に入れる……いろんは無いよね?」
良いよ、そう言う事だったから。
フェイトちゃんを助けたいとか、友達になりたいとか………思ってる事はたくさんあるけど、ジュエルシードの問題を片付けないと、私もフェイトちゃんも、きっと先
に進む事は出来ない。
だからこの勝負……お互いに持ってるジュエルシードの全てを賭けた――其れからだよ、全部それから。
私達の全てはまだ始まっても居ない。
互いのジュエルシードを、全て賭けた真剣勝負!!
ホントの自分を始める為に、此処から先に進むために始めようフェイトちゃん!!――最初で最後の、全力全壊の本気の勝負を!!
To Be Continued… 
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