Side:洸


取り敢えず、志緒先輩の大活躍で誘拐事件はギリギリで何とか出来た訳だが……此れはまた、何つ~か流石は志緒先輩って言うところなのか?



「す、凄いです!1人で8人も倒しちゃうなんて!!」

「なのはから話には聞いてたけど、実際に目にするとトンでもないわよね……こんな事言ったらアレだけど、貴方って本当に人間なのかしら?」

「少なくとも俺自身は其の心算だ。
 と言うか、お前はダチに俺の事をどう伝えてやがったんだなのは?」

「ほえ?大柄で、親分肌で、半分人間辞めてるお兄ちゃんと引き分けた凄い人としか言ってないですよ?」

「……間違っちゃいねぇと思うが、色々突っ込みどころが満載だな…この分だと、こっちでは俺はモンスター扱いされてるかも知れねぇな…



助け出した子達に、滅茶苦茶懐かれちまってるからな?
しかも、栗毛のツインテールの子――なのはちゃんには、ピコピコ動く犬耳と、盛大に振られてる犬尻尾が見える気がするんだが、コイツは俺の幻覚なのか明日香?



「貴方の幻覚ではないと思うわよ、時坂君――何となく私にも見える気がするから。」

「って言うか、私にも見えるから大丈夫だよ洸君。」

「何となく、私にも見えますよ時坂君。」



明日香だけじゃなく、璃音や美月先輩にも見えるって言う事は、俺の幻覚って訳じゃなさそうだな。

でも、此れだけ子供に懐かれるってのは、やっぱり志緒先輩の人柄が有ってこそだぜ――子供は敏感だから、本当に良い人じゃないと懐く事は無いって言うしな。



ったく、マッタク持ってアンタは本当にスゲェよ志緒先輩。
腕っ節の強さだけじゃなく、周りを引っ張ってくリーダーシップに、更には子供にも懐かれる人柄の良さ……きっと、10年経ったって俺は其処まで辿り着けないかもな。

俺も、もっともっと精進しねぇとダメだなこりゃ。













リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE3
『Uminari is Okay!!』











Side:なのは


夢かと思った。幻かと思った――其れ位に衝撃的な事だったんだよ、志緒さんとの再会は。
正直な事を言うなら、4年前のあの日に消えてしまった志緒さんとは、もう二度と会う事は出来ないかもしれないって、そう思ってたんだけど……奇跡ってあるんだね。



「奇跡だと?……馬鹿な事言ってんじゃねぇ。
 確かに俺も、二度とお前と会う事は出来ねぇと思ってたが――それにも係わらず、今こうして俺とお前は再会できた……多分、この再会は必然だったんだろうよ。」

「必然……ですか?」

「4年前の、高々2週間程度だが、あの時に俺とお前の縁は確かにつながったからな。
 一度繋がった縁ってのは、そう簡単に切れるモンじゃねぇんだ……どれだけ時が経とうとも、俺とお前は再会していたんだろう……そう考えた方が、楽じゃねぇか?」



それは、言われてみれば確かにそうかも知れませんね。

ところで、あの人達って、志緒さんのお友達ですか?黒髪のお兄さんと、小柄なお姉さんは犯人の内2人を撃破して居ますから、相当に強いんですよねきっと。



「ダチって言うよりも、同じ志を持つ仲間って所だな。
 まぁ、時坂はあれでなかなかやるし、度胸も据わってやがるから、俺の相棒としちゃ充分過ぎる位だ――其れは郁島にも言える事だがな。
 だが、細かい事は後回しだ――オイお前等、先ずは自己紹介だ!!」

「やっぱり強いんですね……って、このタイミングで自己紹介なんですか!?」

「俺以外の連中の事は、お前も月村もバニングスも知らねぇだろ?なら、先ずはテメェの名を名乗る位は普通の事じゃねぇか。
 其れに、如何やら暫くはこっちの世界で暮らす事になりそうだから、互いの名前位は知っといた方がいいだろ?」

「へ?暫くこっちに居るんですか?」

其れは、私的には嬉しい事ですけど……



「こっちに来る為に通って来たゲートが、安定化して閉じちまった上に、強制的に開く事も出来ねぇみたいでな?……ゲートが開くまではこっちに居るって訳だ。」

「そ、そうなんですか。」

でも、暫くこっちに居るって言うなら、確かにお互いに名前位は知っておいた方が良いかもしれないですね。



「だろう?……だがまぁ、その前に恭也さん達が到着したらしいがな。」



ほえ?お兄ちゃんが?
確かに向こうから猛スピードで突進……て言うよりは、突撃してきてるワゴン車は忍さんがエンジンやら何やらを改造しまくったやつですから、お兄ちゃんが乗ってて
もオカシクはないと思いますけど、如何してお兄ちゃんが此処に!?



「お前等が其処に運び込まれたのを見た後で、桃子さんに連絡を入れてな。
 俺達は、警察の事情聴取なんぞ受けちまったら面倒な事にしかならねぇ存在だから、代わりに警察に対応してくれる人を頼んでな……其れが恭也さんだった訳だ。
 桃子さんはもう一人『忍』ってのも向かわせるって言ってたがな。……桃子さんに信頼されてるみてぇだが、忍ってのは一体何者なんだなのは?」

「忍さんはお兄ちゃんの彼女さんで、すずかちゃんのお姉さんです。
 手先が器用で、家電品の改造や修理だけじゃなく、ロボット掃除機や自宅のセキュリティシステムなんかも自分で作っちゃうんです――偶に妙な物も作りますが…」

「護身用にって、最大電圧10万ボルト、最大電流100アンペアのスタンガン作った時には驚いたよ……」

「其れ、護身用じゃなくて普通に相手を感電死させられるわよ?」

「……色々突っ込みたい所は有るんだが、取り敢えず凄い人なのは良く分かったぜなのはちゃん。」



はい、凄いんです。っと、土煙上げながらワゴンがドリフト急停車!
運転してるのは、ノエルさんだよねきっと。



――バン!!



「なのは無事か!?」

「すずかとアリサちゃんも大丈夫!?」

「怪我とかしてない!?」



お兄ちゃんと忍さん、其れにお姉ちゃんまで!!

うん、私もすずかちゃんもアリサちゃんも大丈夫だよ?志緒さん達が助けてくれたから。――って言うか、お姉ちゃんも一緒だったんだ。



「偶然だけど、帰り際に恭ちゃんとバッタリ出くわして、何か急いでるみたいだから事情を聞いたら『なのはが誘拐された』って言うから、一緒に来たのよ。
 誘拐犯と乱闘になった場合には、恭ちゃん程じゃないにしても、私だって戦えるからね。」

「まぁ、そう言う訳だ。
 だが、無事で安心したぞ……母さんから志緒が居ると言う事は聞いていたが、そうであっても矢張り心配は心配だからな……
 しかしまぁ、なのは達が無事だった事は何よりだが、まさか俺達が到着する間に誘拐犯全員を倒してしまうとは、相変わらずの強さだな志緒?彼是4年ぶりか。」

「あぁ、久しいな恭也さん。
 アンタの方こそ、相変わらず鍛えてるみてぇじゃねぇか?其れに、美由希の方だって4年前とは比べ物にならねぇくらいに腕を上げてやがるな?」

「勿論よ♪」



にゃはは……何て言うか、極普通に接してるよねお兄ちゃんとお姉ちゃんも。
忍さんも、すずかちゃん経由の又聞きではあるけど志緒さんの事は知ってるから『彼が志緒か』って言う顔で、特に驚く事もないみたいだからね。



「時に、そっちの方々は……」

「俺の仲間だ。コイツ等も、誘拐犯を打っ倒すのに、相当力を貸してくれたぜ。」

「そうなのか……ありがとう、なのはの兄として礼を言わせてくれ。」

「私も、すずかの姉として礼を言うわ。」

「私からも、ありがとう皆!」


「そんな、当然の事をしたまでだぜ。
 其れに、こんな事を見て見ぬふりするなんて言うのは、俺の流儀に反する事だからな。」

「そうそう。って言うか、何かできるかも知れないのに何もしなかったなんて言うのは後悔が残るし、何よりもSPiKAのメンバーとして納得する事が出来ないからね♪」

「いや、SPiKA関係ないでしょ其れ?」

「どんな時でも、アイドルとしての誇りを忘れない……そのプライドには、見習う物があります!璃音先輩、カッコいいです!」

「そう言うモノ……なのかしら?」



何て言うか、志緒さんの仲間の人達って言うのも個性的な感じですね?お友達になれたら、楽しそうです♪


で、時に此れから如何するんですか?



「俺と忍は、志緒達の代わりに警察に対応するさ。
 警察への連絡は今から入れるから、此処に到着するのはどんなに早くても10分後だから、その間に志緒達は翠屋に行けばいいんじゃないか?」

「まぁ、ソイツが一番だろうな。
 誘拐犯は、全員縛り上げてあるから問題ねぇだろ。――問題があるとしたら、このワゴンには全員乗り込む事が出来ねぇって事だぜ。」



お兄ちゃんと忍さんは警察への対応で、私達は翠屋に。其の後で、アリサちゃんとすずかちゃんが夫々の家にって言う事だね。
でもそうなると、志緒さんの言う通り、このワゴンに全員乗るのは少し無理があるかも知れないの。

8人乗りのワゴンだから10人までは乗る事が出来るけど、私達と志緒さん達だけで合計10人で、更に運転手のノエルさんにお姉ちゃんも居るとなると合計12人だか
ら、流石に全員が乗り込むのは無理があると思うなぁ?……特に志緒さんは特別大きいし。



「だがまぁ、俺はバイクが有るから其れに乗って行きゃいいだろ?
 誰かとニケツすりゃあ、全員がワゴンに乗り込めるだろうしな。」



え?志緒さん、バイクがあるんですか!?



「何かに使えると思って向こうから来るときに持って来たんだが、如何やら持って来たのは正解みたいだったな。
 俺の勘てのも、中々捨てたモンじゃねぇみたいだが、其れよりも誰が俺とニケツするかだ……俺とバイクで移動したい奴が居たら、名乗り出ろや。」

「はい!私乗りたいです!!」

「って、お前かなのは!?」



はい。志緒さんのバイクに一緒に乗ってみたいです。
それに、一度バイクのタンデム乗車ってしてみたかったですから――えっと、ダメですか?



「ダメな訳がねぇだろ?其れに、後ろに乗りたい奴がいるか聞いたのは俺なんだから拒否する理由もねぇ。
 ヘルメットも2つあるから大丈夫だ。――だが、絶対に俺から手を離すんじゃねぇぞ?手を離して振り落とされたなんて事になったら、流石に洒落にならねぇしな。」

「大丈夫です、ちゃんと掴まってますから♪」

「そうしてくれや。
 そんじゃあ恭也さん、後は任せるぜ?誘拐犯の傷については……まぁ、適当に捏造しといてくれや。」

「任せておけ志緒。――しかし、未だに目を覚まさないとは、相当に強烈にやったのか志緒?」

「手加減の必要がねぇからな。」

「言われてみれば、其れもそうだな。
 なら、こっちは俺と忍に任せていてくれ。――翠屋への道中、なのは達の事を頼むぞ?」

「ハッ、任せときな。」



お兄ちゃん達との事も纏まったみたいだし、そろそろ行きましょうか?
お母さんに連絡を入れたって言う事みたいですから、お母さんも志緒さんに会いたいと思ってるだろうし、元気になったお父さんとも会って欲しいですから♪



「……そうか、士郎さんも元気になったんだな?」

「はい。今は、翠屋で美味しい珈琲を淹れてるマスターですから♪」

「そいつを聞いて安心したぜ――4年前のあの時は、最悪目を覚まさねぇかもって思ってたからな。
 士郎さんには、改めて挨拶をしておかねぇとだぜ。」



是非そうして下さい!――お父さんも、志緒さんには一度会ってみたいって言っていたからね♪



「光栄だぜ。――さてと、そんじゃあ行くとすっか!」



はい、行きましょう♪

志緒さんのバイクにタンデム乗車……初めての経験だから、ドキドキしちゃうの。








――――――








Side:志緒


ふぅ、やっぱりバイクで疾走するってのは格別だ。車では、絶対に味わう事の出来ない風の流れを感じる事が出来るからな……アキの奴がドップリと嵌っちまう訳だ。
おい、大丈夫かなのは?振り落とされちゃいねぇだろうな?



「大丈夫ですよ志緒さん、確りと志緒さんに抱き付いてますから♪」



大丈夫ならそれで良いぜ。


にしても、4年ぶりだが、あんまり海鳴の街並みは変わってねぇな?
駅周辺は4年前よりも開発が進んだ印象を受けたが、商店街や海鳴臨海公園は4年前のままだ……そいつが、何とも安心感を与えてくれるぜ。

幾ら知って居る場所とは言え、まるっきり様変わりしちまってたら、流石に驚いちまうからな。



「本当は、もっと開発の話も出てたんですけど、商店街や海鳴臨海公園の再開発には、海鳴商店街の人達が大反対して、計画そのものが立ち消えになっちゃって。
 でも、そのお蔭で私の大好きだった風景は、壊されずに残ったんです――志緒さんと、初めて会ったあの公園のブランコも、残ってますから。」

「アレが残ってんのか……そいつは確かに感慨深いモンが有るな。」

あの時あそこで、なのはと出会わなかったら、俺は今こうして居ないだろうからな。――ったく、つくづく『縁』ってモンは、不思議なモンだぜ。



「志緒さん?」

「何でもねぇよ。ただ、縁ってのはスゲェもんだって再認識しただけだ。
 ――其れよりも、時坂達の乗ったワゴンがスピードを上げたみたいだから、こっちもスピードを上げて行くぜ?振り落とされない様に、確りと掴まっていろや!!!」

「はい!!」



しかし、普通後からついてくる奴が居るのにスピードを上げるか?

若しかしたら、ワゴンを運転してるノエルってのは、末期レベルのスピード狂なのかも知れねぇな………まぁ、深く考えるのは止めておいた方が良さそうだぜ……



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でもって、走る事10分弱、翠屋に到着。
バニングスやすずかとは此処でお別れだが、如何やら時坂達とはワゴンの中で打ち解けたみてぇだな?――時坂は、すずかとバニングスに懐かれたみたいだな?
其れについては、玖我山も同様ではあるけどよ。



「なのは、無事だったのね!!良かったわ……!」

「なのは……無事で居てくれて何よりだよ。」



そんな中、まぁ娘の無事を確認するってのは親として当然だろうな。
俺に任せてくれたとは言え、桃子さんは内心不安で一杯だっただろう事は、想像に難くねぇからな……本気で、なのは達の事を助け出す事が出来てよかっと思うぜ。



「志緒君達も、ありがとう。――彼方達が居なかったら、なのは達は如何しようもない事態に陥ってたかも知れないわ。…本当に、ありがとう。」

「僕からも礼を言わせてくれ。
 特に志緒君は、僕が入院してた間、桃子さん達を支えていてくれたらしいから、其れのお礼も含めてになるけれどね。」



気にしないでくれ、俺がそうしたいからしただけだからな。

其れよりも、元気になったみたいで安心したぜ士郎さん?――こうして会うのは初めてだったよな?高幡志緒だ。



「桃子さんやなのはから話は聞いているよ志緒君。高町士郎だ。
 ……しかし、大柄だとは聞いていたが、予想以上に大きいな君は?僕も長身な方だが、其れでも全然及ばないとは……ドレだけの身長があるんだい?」

「今は大体190cmって所か……しかも、まだ伸びてるみてぇだからな。」

このまま伸び続けたら、卒業時には2メートルを超しちまうかもしれねぇぜ。――まぁ、流石にそろそろ身長の伸びは止まる頃だろうけどな。



「4年前に会った時から志緒君は大きかったですものね。
 ――まぁ、志緒君のお友達に関しても聞きたい事はあるんだけど、其れは後にするとして、志緒君達は此れから如何するの?住む家はこっちに無いでしょう?」



此れから如何するか……か。
確かに住む家はねぇし、シェアハウスを借りようにも身分証明書がなけりゃ借りる事は出来ねぇからな――さて、どうしたモンだろうな?



「だったら、此処に住むと良いわ♪
 何時の日か志緒君がお友達を連れて来ても良い様に、いくつか部屋を増設もしてあるから、遠慮しなくてもいいわよ♪」



予想はしてたが、やっぱりそうなるか。
まぁ、俺としてもそいつを拒む理由はねぇえからな?――4年ぶりになるが、世話になんぜ桃子さん。



「はい。おかえりなさい志緒君。」



さっき、なのはにも言ったがただいまだな。――で、如何した四宮?



「あり得ない、普通にあり得ないでしょ!!
 平行世界の住人との再会を信じてるって時点で突っ込みどころ満載なのに、家の部屋を増設してるって、どんだけ未来を見通してるのさ!!
 異界と関わるようになって、ある程度の不可思議現象に慣れたと思ったけど、この人は流石にあり得ない!!絶対に普通じゃないでしょ、この人は!!!」



……何だ、そんな事か。
前にも言ったが、此れが桃子さんだ。――俺達が計り知れる器の持ち主じゃねぇんだよ。

大体にして、此れから此処で世話になるんだから、慣れる以外には選択肢はねぇからな?……まぁ、精々肚を括れや!!!



「洸先輩、僕の常識が足元から音を立てて崩れて行くんだけど!?」

「異界に関わっちまったその時から、常識なんぞ崩れてるんじゃねぇか祐騎?」

「其れを言われたら元も子もないからね!?」



賑やかなこった。

でもまぁ、4年ぶりだが、今回も世話になるぜ桃子さん?



「はい、どうぞ♪」



――ったく、この人の器のデカさは、到底真似出来るモンじゃねえな……本気で格が違うぜ。



とは言え、只で居候させて貰うってのは良くねぇから、俺等に出来る範囲で手伝えることが有れば、手伝わないといけねぇよな……まぁ、其れもまた良い経験だな。




4年ぶりの海鳴、精々楽しませて貰うとしようじゃねぇか!!












 To Be Continued…