Side:志緒


ふぅ、そろそろゴールらしいな?
レムの言う通り、グリードが徘徊してない、迷宮じゃない異界ではあったが、まさかスタートからゴールまでが全長4kmの直線街道になってるとは、予想外だったぜ。

流石に4kmもの距離を歩いたとなったら、少しばかり疲れたか?俺は平気だが――



「俺は大丈夫だぜ、志緒先輩?」

「私も大丈夫です。」

「私もマダマダ行けます!」

「私も大丈夫。体力に自信がないと、アイドル業もやってられないからね。」


「わ、私も大丈夫です……」

「ちょ、ちょっとばかりきつかったけど、もうゴールだからね……」



大体予想してたが、北都と四宮がキツそうだな。
まぁ、北都は日常的に激務をこなしちゃいるが、デスクワークとフィールドワークじゃ勝手が違うって事だろう……だが、四宮、お前はもう少し体力を付けた方が良いん
じゃねぇのか?同学年で、しかも女である郁島が、ピンピンしてるのを少しは見習えや。



「そ、その天然空手少女と僕を一緒にしないでよ……運動が出来ない訳じゃないとは言え、僕は基本的にインドア派なんだからさ!!
 って言うか、そんな事よりもこの異界は何なの!?1000mごとに季節が変わるとか、本気で意味わからないから!!いや、良い景色だったのは認めるけど!!」

「異界に彼是言うのは今更だろ?異界については、分からねぇ事の方が圧倒的に多いんだからな。
 まぁ、四季の絶景を拝む事が出来たって事で納得しとけや――それに、もうゴールに到着したんだから、彼是言うのはここまでにしておこうぜ?」

レムが言っていた『俺と繋がっている強い縁』ってのを考えると、恐らくこのゲートの先は平行世界の日本――海鳴だろうからな。


まぁ、あくまで予想の域を出ないが、予想通りだとしたら4年ぶりの海鳴って事か……少しばかり、楽しみになって来たな?――それじゃあ、行くぜ!!













リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE2
『再会はBLAZEの魂と共に』











――キュゥゥゥゥゥゥン……



「どうやら……異界から戻って来れたみたいね……だけど此処は一体?」

「此処は、この倉庫が立ち並ぶ景色は――成程、海鳴の埠頭に出たみてぇだな。」

「海鳴って、志緒先輩が4年前に訪れた平行世界の!?」



あぁ、間違いないぜ時坂。
此処は4年前と変わってねぇみたいだからな……まぁ、分かり易い場所に出たってのは有り難いんだが――柊、俺達が通って来た異界のゲートはどうなっている?



「此れは――此処に降り立った瞬間に沈静化して、しばらく活性化する様子は無さそうですね。
 言うなれば、平行世界にほっぽり出された訳ですが、高幡先輩の過去話を聞く限りでは、杜宮に戻れる可能性はゼロではないので、危機的状況ではありません。」

「まぁ、そうだろうな。
 だが、取り敢えずは翠屋に行って見るのが良いだろうな――桃子さんに相談すれば、杜宮に帰るまでの事は、如何にかなるだろうからな。」

「……何スカそれ……って言うか、桃子さんて何モンですか志緒先輩?」



口で説明すんのは難しいな?……まぁ、会ってみりゃ分かる事だが、兎に角トンでもなく器のデケェ、凄い人だから――







「けへへへへ、巧く行ったぜ!ガキ誘拐するだけで大金が手に入る……ぼろい商売っすねアニキ!」

「確かに、力のねぇガキンチョを掻っ攫ってくるだけで俺達の懐は潤うからなぁ?こんなに良い商売はねぇだろ?
 しかも、今回の3人は将来が楽しみなくらいの上玉だからな?きっと3人とも高値で売れるぜ。」






「「「「「「!!!」」」」」」



なんだ?埠頭に停車した、1台のワゴンから降りて来た男共は……何とも穏やかじゃねえ話をしてるみてぇだが……まさか、誘拐犯かコイツ等は!?
しかも、アイツ等が車から降ろした子供の1人は……あの特徴的なツインテールは、まさかなのはか!?――冗談じゃねぇ、アイツが誘拐されて売られるなんて事は
絶対に見過ごせねぇ――勿論、一緒に連れられてた2人に関してもだ。



「なのはって、さっき志緒先輩の話に出て来た女の子だよな?
 その子が誘拐されたって、其れで如何するんすか志緒先輩?アンタの事だから、此のまま見過ごすなんて言う事はしないだろ?」

「当たり前だろ時坂。
 だが、助けるにしてもちょいと問題があるのも事実でな――こっちの世界では、俺達には戸籍も身分証明書も何もねぇから、なのは達を助け出しても、其の後の警
 察の取り調べなんかを受けるのは勘弁願いたい所だろ?
 下手したら、俺達全員が『身分証明不可の不審者』として警察に拘留されかねないだろうからな。」

「そ、其れは確かに拙いけど……だからって、此の誘拐を見過ごす事は出来ないわよ志緒先輩!」



勿論見過ごす心算はねぇよ玖我山。
幸いにして、翠屋の電話番号はサイフォンに登録してあるから、こっちで繋げた縁を頼らせて貰うぜ。――あの人なら、最善の一手を打ってくれるだろうからな。



――prrrrr…prrrrr…ガチャ



『はい、喫茶翠屋です♪』

「もしもし、桃子さんですか?お久しぶりです、高幡です。」

『え?……そ、その声は若しかして志緒君!?
 あの地震の時に行き成り消えちゃって何処に行ったのかと思ってたけど、無事だったのね!?……よかった、心配していたのよ?』




どうも、心配をかけちまったみたいで、スンマセン。
まぁ、4年前のアレは、元の世界に戻っただけの事でだったから大した事はなかったんだが――あん時とは状況が違うが、今回も杜宮と海鳴が繋がって、こっちに来
れたって訳だんだが……こっちに来て、行き成り面倒事が起きちまったみたいでな……



『面倒事?』

「単刀直入に言うと、なのはが誘拐されちまったみたいだ。」

『!?』



タイミングが良いのか悪いのか、俺達がこっちに来た直後に、誘拐犯が海鳴埠頭の倉庫の1つになのは達を連れ込んだのを目撃してな。
少しばかり聞こえた会話から、身代金の線は先ず無い筈だ……恐らくは人身売買――連中は、なのは達を売って金にする心算だろう。

無論、俺は此れからなのは達の救出に向かう心算だが、警察の事情聴取は受ける事が出来ないんで、代わりに事情聴取を受けられる人を用意できねぇもんかな?



『……なら、恭也と忍ちゃんにそっちに行って貰うようにするわ。
 幸い恭也は、1人で10人くらいは相手に出来る位に強くなったし、忍ちゃんも中々の腕前だから、2人が誘拐犯を倒したと言っても説得力はあるわ。
 序に、移動用の車も用意しておくわね♪』

「話が早くて助かります。」

『……志緒君なら、大丈夫だと思うけど、無茶はしないでね?』



其れについては大丈夫だから安心してくれ。頼りになる仲間も居るんでな。



『そう……なら、お願いするわね、なのはの事――!』

「了解っす。」


さてと、そう言う訳だから、助けに行くぞ。



「其れに異論はないけど、娘が誘拐されたって言うのに、今の人冷静過ぎでしょ!?
 志緒先輩を信頼してるって言ったら其れまでかも知れないけど、普通娘が誘拐されたって聞いたらもっとこう、パニックになっちゃったりするもんじゃないの!?」



それだけ、この人の心が強いって事だ四宮。
無論心配してねぇ訳じゃねぇが、パニックを起こしちまうような柔な精神の持ち主じゃねぇんだよ桃子さんはな。


しかし、こっちに来てくれるのが恭也さんとは、何とも頼りになるぜ――4年前に手合わせしたが、5回戦って全て決着付かずだったからな。



「「「「「「!!?」」」」」」

「ん?如何した、何を揃いも揃って、ハトが豆鉄砲喰らった様な顔してやがる?」

「し、志緒先輩と引き分けたって……」

「その恭也さんて言う人、本当に人間なの!?」

「いや、如何考えても、ゴリラみたいな人でしょ絶対!?志緒先輩と引き分けるとか、普通の人間じゃ無理だから!」



おいコラ、時坂、玖我山、四宮、会っても居ねぇってのに恭也さんに失礼な事言ってんじゃねぇ。
確かにあの人は相当に強かったが、身体つきは時坂よりも少しでかい程度で、しかも容姿は佐伯先生とタメ張れるレベルだぞ?……多少生真面目で堅物だがな。

つーか、それ以前にオメェ等は俺の事を一体何だと思ってやがるんだ?



「「「「「属性の相性なんて関係なく、大抵のグリードを一撃で倒す、名実ともに最強の不良先輩。」」」」」

「あらあら、皆さん良く分かっていますね♪」

「お前等な……まぁ、褒め言葉って事で受け取っとくぜ。
 兎に角、先ずはなのは達の救出だが、犯人の総人数を知りてぇところだな?――ワゴンから降りて来たのは5人だが、倉庫内に仲間が居る可能性もあるからな?」

「そうですね。ですが、倉庫の外に止まっている車が8人乗りのワゴン1台だと言う事を考えると、犯人グループは最大でも10人が限度です。
 8人乗りのワゴン車にギリギリ無理なく乗れる人数は、10人が限度ですので。」



10人か……其れ位なら、俺一人で何とかできるが、なのは達の救出の事も考えると、連中とやり合う人数は少しでも多い方が良いな?
……時坂、郁島、少しばかり力を借りるぜ?



「おう!勿論だぜ、志緒先輩!」

「弱気を助け、強きを挫くが武の本道!微力ながら、お手伝いします志緒先輩。」

「ったく、頼りになる後輩だぜ。だが、お前達は柊達と一緒に倉庫の裏手から入ってくれ。
 倉庫の正面からは俺一人で行く――注意を俺に引き付けておくから、隙を見て時坂と郁島で奇襲をかけてくれ。最低2人倒してくれれば、後は俺が片付ける。
 そんでもって北都達には、俺が連中とやり合ってる間に、なのは達を解放してやってくれ、恐らくはロープやらなにやらで縛られているはずだからな。」

「ふふっ、任せておいてください高幡君♪」

「バッチリ任せといて、志緒先輩!」



頼むぜ?――おし、そんじゃまぁ行くとすっか!!








――――――








No Side


「ん………あ、アレ?」

「此処は……倉庫?」

「な、何でこんな所に……って、腕縛られてるじゃないのよ!!」


志緒達が行動を起こす少し前、倉庫に連れ込まれたなのは達は目を覚ました――が、一瞬で寝起きの眠気など吹き飛んでしまった。
薄暗い倉庫の中で、現在自分達は腕を後ろ手に縛られて身動きの取れない状態……そして、眠りにつく前の一瞬の記憶から、自分達が誘拐されたのだと言う事を、
瞬時に理解したのだ。


「あっれ~?もう目が覚めちゃったの?
 この特製クロロホルムは、即効性はあるけど、持続性がちょ~~~~っと、弱いのが難点だねぇ?出来れば、眠ったまま売っちゃいたかったんだけどさぁ?」

「ま、目が覚めちまったのは運が悪かったと思いな。
 どっちにしても、嬢ちゃん達は幼女好きの変態の慰み物になる運命なんだからよぉ?いやぁ、流石に同情しちゃうね俺は、誘拐しといて言うのもなんだけどなぁ!」


同時に耳に入って来た下衆な言葉の数々……間違いなく自分達を誘拐した者達の物だ。

その声に弾かれるように、なのはは倉庫内を見渡すが、倉庫内に居る相手は全部で10人……拘束された状態の小学3年生の女子3人では、如何にも出来ない相
手が、其処には存在していたのだ。


火を見るよりも明らかな絶望的状況を、アリサとすずかも目の当たりにし、その顔からは目に見えて色が無くなっていく……普段強気のアリサですら、この状況は絶望
以外の何物でもないのだろう――


「大丈夫、きっと何とかなるから。」

「なのはちゃん?」

「なのは!?」


なのはだけは、瞳に絶望も恐怖も宿さずに、誘拐犯を睨みつけ、アリサとすずかを励ましていた。
強がりなどではなく、なのはは本気で、この状況も何とかなると信じている――少なくとも、アリサとすずかにはそう感じられたことだろう。



「あぁん?何言ってんのお嬢ちゃん?
 何ともならねぇよ、在り得ない、無理無理!!お前さん達は俺等の札束になる運命なの、お友達と同じように、お嬢ちゃんも絶望して諦めた方が後々楽だよぉ?」

「嫌です、諦めません。って言うか、諦めるなんて有り得ません!
 4年前に、志緒さんが教えてくれたんです、理不尽な暴力には屈するな、自分が違うと思ったら声を上げてその意を示せ、己の信念は絶対に曲げるなって!!
 だから、私は絶対に貴方達になんか屈しません!!――絶対に退かない意志、其れが私の『BLAZE魂』だから。」


下衆の極みとも言える誘拐犯の物言いにも、なのはは屈さず、サファイアの輝きを宿したダークブルーの瞳で、誘拐犯を睨みつける。
そして、其れは大凡9歳の少女が醸し出せる迫力ではない――が、其れが逆に誘拐犯の神経を逆なでする結果となってしまった。



「言うねぇお嬢ちゃん?
 だけどなぁ、そんなガキっぽい理由で如何にかなるなんて信じてるなんざ反吐が出るんだよ、メスガキが!!テメェの立場ってのを、少しは弁えて話せや!!」


なのはの態度に腹が立ったのか、犯人の一人がなのはを殴り付けようとするが―――












「その辺にしとけや。」











突如聞こえて来た声に、誘拐犯グループは動きを止めて、思わず声の方に視線を向けた。


「マッタク、4年ぶりに此処に来たが、まさかそこで誘拐の現場に出くわすとは、俺も中々に厄介事に巻き込まれる体質らしいな……時坂ほどじゃねぇけどよ。


現れたのは、志緒だ。
事前の予定通り、倉庫の正面から入って来たのだろう


が、そんな事とは別に、なのはは眼球が零れ落ちるんじゃないのかと言う程に目を見開いていた。
まぁ、其れも無理はないだろう――4年前に、突然いなくなった初恋の人が、今こうして目の前に現れたのだから。


「本来なら、警察に連絡して後は任せるのが正解なんだろうが、生憎と警察に知らせて、後はお任せなんて事が出来る程利口じゃなくてな……こうして、直接乗り込
 ませて貰ったって訳だ。
 ――何よりも、テメェの顔見知りの人間が、巻き込まれたってのにケツ捲いてたんじゃ、あの世の一馬に顔向けできねぇからな。」

「なぁに?カッコイイねぇお兄さん?捕らわれの姫を助けに来た騎士様気取りってやつ?――だけど、数を相手に勝てると持ってるのかな?」

「ハッ、テメェ等こそ、10人程度で俺をやれると思ってやがるのか?」


だが、そんな事は蚊帳の外に於いておいて、志緒と犯人グループの駆け引きは続く。
其れに関しても、志緒は凄まじく、睨み一発で犯人グループに、途轍もない恐怖と威圧感を与えたようだ―――が!


「中々にやるみたいだが、こうなったらどうよ?
 アンタが少しでも動けば、このお嬢ちゃんの顔には一生消えない傷が彫り込まれちまうんだけどなぁ?」


相手のリーダーが、ナイフをなのはに突きつけ、人質作戦を展開して来たのだ。


「テメェ等……!」

「当てが外れたねぇ?……まぁ、死なない程度にリンチしてやろうじゃないか。」


此れには志緒も苦い顔を浮かべるが、――



「させるかよ!!」

「やらせません!!!」


此処で、洸と空のコンビが、相手を強襲し、ナイフを持って居た相手を含む2人を即時KOして見せた!!!


「な、仲間だと!?」

「ヘッ、よそ見してて良いのかよ?」


驚く犯人グループに、洸は言うが、時すでに遅し。



「オォォォォラァ!!」



――バキィィィィ!!!



「ゲピガァ!?」


洸達の奇襲で、混乱した犯人グループの一人に、此処ぞとばかりに志緒の突進からの横蹴りが炸裂し、数メートルも吹き飛ばした上で一撃完全KO殺!


「んな、ジャッキー・チェンの映画宜しく、蹴り一発で人が数メートル吹き飛んだわよ!?」


アリサの驚きは当然だろう。普通に考えたら、突進からの横蹴り一発で人数メートルも吹き飛ばされるなどと言う事は、絶対に在り得ない事なのだから。


だが、志緒のパワーを持ってすれば此れ位は造作もない事だと言えるだろう。少なくとも、なのはとX.R.Cのメンバーは、そう思っていた事は疑いようもないだろう。



「オォラァ!!邪魔だぁ!!散れぇ!!!」



現実に、志緒の拳が、蹴りが放たれるたびに、誘拐犯達はコンクリートの地面とキスする運命を辿っているのだから。

因みに、この間に明日香達がロープを解いて、なのは達は自由の身になって居る。


其れは其れとして、乱闘はまだ続く。


「此れで如何だぁ!!いまだ、やれ!!」


正攻法では勝てないと判断した相手が、志緒を羽交い絞めにして動きを封じ、其処に追撃を入れるように言うが……


「しゃらくせぇ!」


――バキィ!!


志緒は、己を羽交い絞めにして来た相手に、後頭部での頭突きをかまして一撃KO!!
更に其れだけでは終わらずに、自分を羽交い絞めにしていた相手を身体から引き剥がして、別の誘拐犯に全力投擲!!

突如投擲された仲間を相手に、どうすれば良いかなど分かる筈もないが、彼是考えてるうちに、人間ミサイルが着弾して戦闘続行不可能!!



「おぉ、流石は志緒先輩!」

「志緒先輩、流石っす!」



洸と璃音の評価は当然だが志緒はマダマダ止まらない。


「喰らい……やがれぇ!!」

「ごぶばぁ!?」

「いってろぼあぁ!?」

「ひでぶあぁぁぁ!!」


ジャンプからの見事な回転蹴りで、更に3人をKO!
志緒の様な巨体で、これ程に動けるプロレスラーや格闘家が居るかと問われれば、其れは否!――志緒の身体能力は、プロの格闘家ですら凌駕しているのである。


「残るは、テメェだけだな?」

「ひ、ひぃ!!来るな、来るなぁ!!」



残るは誘拐犯のリーダーのみ。
志緒の圧倒的な強さを目の当たりにしたリーダーは、半狂乱になってナイフを振り回すが、そんなモノは何の意味もなさない。


「オラァ!!」



――ガキィィィィィン!!



振り回していたナイフは、志緒の蹴りで弾き飛ばされてしまったのだから。――こうなっては、もう対抗手段などないだろう。



「あ、あ……そんな……」

「精々魂に刻み込んどけや……ちゃちな刃物使おうと、人質を取ろうと、その程度じゃ俺の魂の焔を消す事は出来ねぇ。
 俺の、俺達の焔は、BLAZE魂は、幾ら消そうとしたところで、何度でも燃え上がるって事をな!!……取り敢えず、今はコイツで眠りに付けや!!」


――バキィ!!


トドメに、志緒の渾身の右ストレート一閃!
断末魔の悲鳴すら上げる事も出来ずに、誘拐犯のリーダーは完全KO!!

つまりは此れで、洸と空が倒した分も含めて、誘拐犯全員がKOされた事になった――つまりは完全勝利!
そして、計10人の内8人をKOした志緒は、今回の事件解決における、最優秀選手であると言っても過言ではないだろう。



「やるじゃねぇか時坂?郁島も良い動きだったぜ。」

「はは、あざっす。」

「押忍、頑張りました!!」




「何とも無茶苦茶だったけど、何とかなったわね。」

「終わり良ければ全て良し!細かい事は、言いっこなしだよ明日香♪」

「にしても、一人で八人を相手とか、幾ら志緒先輩でも流石に在り得ないでしょ……」

「まぁ、高幡君ですから♪」



取り敢えず、誘拐犯達は完全KOしたと言う事で、この場はミッションコンプリートだろう。








――――――








Side:なのは


私達の窮地に駆けつけてくれたのは、4年前に居なくなってしまった志緒さんだった。

はじめは目を疑ったけど、一本に纏められた金髪と、大柄な体格、其れに特徴的な低音ボイスは間違える筈がない……志緒さんが、また海鳴に来たんだね……!!



「4年ぶりの再会がこんな形ってのは、些かアレな部分はあるんだが……久しいな、なのは?……4年前と比べると、随分とでかくなったじゃねぇか?」

「……………」

「ん?如何した?」



――ガバッ!!



「おぉ?如何した、なのは?」

「志緒さんですよね?偽物じゃないですよね?本当に志緒さんなんですよね!?」

「……ったく、4年ぶりに会って言う事が其れかよ?
 お前には、俺が俺以外の何に見えるってんだ?――幻でも偽物でもねぇ……俺は俺、紛れもなく高幡志緒本人だぜなのは。」

「!!!!」



あ……あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

この物言いは、間違いなく志緒さんだ!!
4年前の地震の時に、私の前から居なくなっちゃった志緒さんだ――!!夢や幻なんかじゃなくて、本当にもう一度会えたんですね志緒さん!!!



「夢や幻の筈がねぇだろう?……だが、お前とこうしてもう一度会う事が出来たのは、俺としても嬉しい事だぜ。」

「はい!私も、また志緒さんに会えてうれしいです!」

もう二度と会う事は出来ないって思っていたから、予想もしていなかった再会に、流石に胸がドキドキしてるのが止められない…って言うか止められるはずがないの。

でも、だけど今は――

「おかえりなさい、志緒さん。」

「4年間も留守にして悪かったな……ただいま、なのは。」



志緒さんと、もう一度会う事の出来た奇跡に、只々感謝する事しか出来ないよ――













 To Be Continued…