Side:志緒


取り敢えず異界は攻略完了だな。
まぁ、異界から帰還したら、黒装束共々リンディさんの呼び出しを喰らっちまったのは、まぁ予想の範疇って所だな。最悪の場合は、首切られると思ってたからな。



「斬首の刑って、江戸時代じゃないんですから、流石にないと思いますよ志緒さん?」

其れにそんな事をしたら、管理局の信頼は地に落ちる。
 リンディが、そんな馬鹿な選択をするとは思えないわ。



なら安心だな。――幾ら頑丈だとは言っても、流石に白刃の刃を弾き返す事が出来るほどには、頑丈な身体じゃねぇからな。
だが、この黒装束は、如何やらリンディ提督と知り合いみてぇだな?…その辺も含めて、聞きたい事、聞くべき事はトンでもねぇ数になりそうだ…骨が折れるぜ。


ったく、面倒な事になって来やがったぜ。
尤も、だからと言って泣き言こぼして、撤退するなんて言う事だけは絶対に有り得ねぇけどな!!

相手がドレだけの奴だろうと、俺達の魂が折れる事は有り得ねぇ!!――時が来たら見せてやるぜ、俺達の燃え盛るBLAZE魂の真髄ってモンをよぉ!!

俺達の魂が燃え盛るその時を、精々楽しみに待ってな!!


誰が相手だろうと関係ねぇ……纏めて燃やし尽くしてやんぜ!!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE27
『奮闘するアルフ。犬狼の意地!』












――時の庭園


Side:アルフ


この扉の先にアイツが居る……フェイトの母親を名乗るアイツが!プレシア・テスタロッサが!!
アタシは沸点が低い事は自覚してるけど、其れを踏まえても、フェイトを撃ちやがった事は絶対に許せない!!って言うか、絶対に許しちゃいけない事だろ!!

アレだけの責め苦を受け乍ら、其れでもフェイトはアンタの為にジュエルシードを集めてたのに……其れなのに!!!



――バガァァァァァァッァアッァァァァッァァァァァァァン!!



「……アルフ?何用かしら?
 新たなジュエルシードでも見つかったのかしら?」

「新たなジュエルシードってんなら、此処に4つある。
 だけど、コイツをどうぞってアンタに渡す心算は無いよ……私は、アンタの部下でも何でもないんだからね!!」

「……其れは確かにそうかも知れないけれど、大人しく其のジュエルシードを渡した方が身の為よ?――幾ら頑丈な身体であるとは言っても、出来るだけダメー
 ジを受けたくないと思うのは生物の本能だから、貴女の思うようにはならないかもしれないわよ?」



確かにそうかも知れないけど、其れでもアタシはアンタを討つ!!
実力から言ったら、アタシは絶対にアンタには敵わない。其れは間違いないし、簡単に覆す事が出来ない事だって言うのも分かってる。でも、其れでもアタシは!



「如何して其処まであの子に拘るのかしら?……役立たずの人形なのにね。」

「その口閉じろよ糞婆。誰が人形だ誰が!
 もしもフェイトの事を言ってんなら、一度目ん玉かっぽじって洗浄液で洗浄して来る事を勧めるね!」

其れに如何してフェイトに拘るかって?
決まってんだろ、アタシにとって、フェイトは唯一無二の御主人様であり、友達であり、家族だからさ!だから、アタシはフェイトの為なら、どんな事だってするよ。
そうさ……フェイトの為だったら、アンタをぶっ殺す事だって戸惑わないよプレシア!!



――ガッ!!!



「つまり、貴女は私に反旗を翻すと言う事ね?……愚かな選択をしたわね、駄犬が!!」

「愚かな選択かどうかは、アンタがその身で判定しろ!!
 フェイトの心を護る為にも、アタシは負けない――狼の爪牙の餌食にしてやるよプレシア!閻魔大王様への言い訳でも考えときやがれってな!!覚悟しな!」

魔法戦だったら、アタシは絶対に勝つ事は出来ないけど、クロスレンジでの格闘戦なら如何だろうね?
幾らアンタの魔力が凄くたって、其れがクロスレンジの格闘戦に使えるかどうかは別問題だ――だから、私の領域である格闘戦で一気に押し切ってやる!!

決定打が与えれなくてもラッシュ攻撃に対して防御に回ったら、間違いなくどこかで綻びが出来るから、その綻びにカウンターで一撃ブチかませば即KOも可能!
この戦いで有利なのはアタシの方だ、プレシア!!



「ヤレヤレ……私とお前の力の差は歴然。
 人ならば、敵わない相手を前にした時に理性で退く事を選ぶし、畜生でも生存本能が警鐘を鳴らして退く事を選ぶ――けれど、畜生にも劣る駄犬では、そんな
 判断をする事は出来ない様ね?」

「ハッ、違うねぇ!此れはアタシの狼としての本能さ。
 狼は群れで暮らすから仲間意識が強い。群れ同士の抗争が起きた時には、敵を倒すだけでなく仲間を護る事だってするし、仲間が襲われてるなら助けるさ。
 群れのリーダーがやられてるってんなら尚更だ。
 アタシにとってフェイトは、群れのリーダーであり姉みたいな存在だった……アンタは其れを、無慈悲に撃ち落としやがった!絶対に許さないよプレシア!」

「アレに其処まで感情移入するなんて、馬鹿な使い魔ね。
 其れに、あの攻撃が無ければお前達は管理局に捕まっていたのではないかしら?……アレが撃たれる事で、お前達は捕まらずに済んだのよ。」



お前……!!
もう良い!!今のやり取りで、お前が如何言うやつなのか、改めてハッキリ認識したよ――やっぱりお前は、最悪の人でなしだ!生きてちゃいけない人間だ!
フェイトの未来の為にも、今此処でぶっ倒す!!!



「本気で私に勝つ心算?身の程知らずね。
 其れに私がクロスレンジでの戦闘が出来ないとでも思っているの?……そう思ってるなら、貴女もこの鞭の威力を身体で味わってみましょうか?」

「鞭攻撃……だけど、そんな大振りな鞭捌きで、疾駆する狼を捉えられると思ったら大間違いだ!!」



――シュン!!バキィィィィィィィィィ!!!



「!?」



狼は、数ある肉食動物の中でも、瞬発力と持久力の双方を兼ね備えた野生のハンターだって事は知ってるだろ?
獲物を追い回す持久力と、一瞬で距離を詰めて仕留める瞬発力が狼の強さで、其れは人型になったアタシだって変わらない。アンタの鞭攻撃や、魔法攻撃を躱
して、攻撃する事位は訳ない事なんだよ!!



「其れは厄介ね……認識を改めましょう。」



って、クリーンヒットした筈なのに効いてない!?
……にゃろう、馬鹿でかい魔力にモノを言わせて、バリアジャケットの強度と剛性も最高クラスに引き上げてやがるな?……でも其れなら、其れで無効に出来な
い攻撃をしてやるだけの事だ!!

ハァァァァァァァァァァァァァァァァアァッァ!!喰らえぇぇぇぇぇ!!!



――バキィィィィィ!!バァァァァァン!!



良し、幾ら堅いバリアジャケットでも、バリアブレイクならぶっ壊せるからダメージも通る!このまま一気に押し切ってやる!!
バリアブレイクの連続使用はきついモンがあるけど、フェイトの為なら此れ位は、この程度の事なんか大した事じゃないんだ!!覚悟しろ、プレシアァァァア!



――バキィ!!バゴォ!!ガスゥ!!!ドガァ!!



最初のバリアブレイクから、続けざまにワンツーのボディブローに繋いで、アッパーカットで撃ち抜き、そんでもって渾身の蹴り上げで蹴り飛ばしてやったけど、そ
こで終わりじゃないよ!!

蹴り上げで吹き飛ばしたプレシアを追いかけて、其のまま空中で足を掴んで頭を下にして、両腕の自由を足で制して、一気に急降下!これで終わりにしてやる!
喰らえキン肉ドライバー!!!



――ドゴォォォォォォォォォォオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!



どうだ!!
幾らアンタが強くたって、バリアブレイクの攻撃を連続で喰らって、更に石造りの床に脳天から叩きつけられたら一溜まりもないだろ?普通なら死んでる筈だし。
仮に死んでなくても、戦闘不能にはなったんじゃないかねぇ?プレシア自身はあんまり頑丈そうじゃなかったし。



「……成程、悪くない攻撃だったわアルフ。でも、ソレモソコマデネ。」

「んな!?」

コイツ……バリアジャケットこそ破損してるけど、身体は全くの無傷だと!?
って言うか、思い切り叩きつけてやったってのに、頭から流血の一つもないなんて、流石に有り得ないんじゃないのか!?……コイツ、本当に人間なのか!?

クソ、だったらもう一度バリアブレイクの一撃で!!



――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァン!!



「ククク……無駄ヨ。適格者デナイオ前デハ、私ヲ倒ス事ナド不可能ダ。」



そ、そんな……嘘だろ、此れも効かないだなんて……本気で無敵だとでも言うのか、この鬼婆は――!!



「精々絶望ヲ知リナサイ……」



――グニャリ……



「!!!」

な、何だよ此れ……何なんだよ此れは!!
プレシアの姿がイキナリ変わりやがった!!何だよ此れ………何なんだよ一体!!何なんだよ、プレシアが変わったこの化け物は!!一体何がどうなって……



「オ前ガ、其レヲ知ル必要ハナイ。………奈落ノ闇ニ沈ミナサイ。」



――バリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!



うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
そんな……こんな事って……こんなのアリなのかよ…攻撃が通じない相手なんて、反則以外の何物でもないじゃないか…!其れにコイツは、プレシアは――!


正真正銘の化物じゃないか!!……こんなのに勝てる奴なんているのかい?


……ゴメンねフェイト、アタシは何も出来なかったよ。



もうアタシに出来る事はない……だから、誰でも良いからフェイトを救ってやっておくれ。そして、プレシアを倒しておくれ。誰でも良いから、頼んだよ……








――――――








Side:リンディ


「とまぁ、つまりそう言う訳だ。」

「分かりました。寧ろ良くやってくれましたねなのはさん、ユーノ君、志緒君……そして、其方の黒装束さんも。」

艦長室で、今回の彼是を聞いたのだけれど、本当になのはさんと志緒君とユーノ君は良くやってくれた――彼等に独立機動権を認めたのは正解だったわね。
事の次第は分かったので、なのはさんと志緒君とユーノ君は退席して良いわ。お疲れ様でした。



「まぁ、やりたいようにやっただけだから、お疲れ様もへったくれもねぇと思うがな。」

「でもまぁ、結果的にはジュエルシードも1個は回収できた訳だから、其れに対する労いだって思いましょうよ志緒さん。」

「なのは……お前が其れで良いなら、構わねぇがな。
 そんじゃリンディさん、失礼すんぜ。何かあったら呼んでくれや。」



えぇ、その時は呼ばせて貰うわ……よし、退室したわね。
さてと……16年ぶりね?そんな黒装束に身を包んで、貴女は何をしようとしているのかしら、プレシア・テスタロッサ?



「……まぁ、貴女にはバレてるとは思ったわリンディ。今回、姿を現したのは失策だったわね。
 って言うか、こんな黒装束で身を固めて、ボイスチェンジャーまで使っていたのに、良く私だと分かったわね?私としては、そっちの方が相当の驚き事項よ?」

「見くびらないでもらえるかしら?自分の親友を見誤る程、目は曇っていない心算よ?」

だけど、今貴女がこうしてジュエルシード事件に関わって来たって言う事は……今回の1件は、16年前のあの事故と――ヒュードラの暴走事故と、其れをトリガー
にして引き起こされた『異界化』と関係が有るのね?



「えぇ、密接に関係しているわ。寧ろ、私だって驚いているのよ。
 16年前のあの事故を境に生まれた『もう1人の私』が、此処で此れだけの事をしたと言う事がね。」



16年前に生まれたもう1人のプレシアですって!?まさか、そんな存在が居たとは、全然予想すらしていなかったわ。
でも、そう言う事だと16年前の事故に関する彼是は、まだ終わってはいないのね?――寧ろ、現在進行形で、負の記録が暴れてるって言う所かしらね?



「その認識で間違ってないわリンディ。
 だけどね、私は其れももう終わりだと思っているのよ……あの小さき白い魔導師と、大剣を手にした大男が力を合わせれば、アレを倒す事だって出来る筈よ。
 何れにしても、漸く16年前の事を清算出来そうだわ。」



まさか、管理局の負の記憶とも言えるあの事故が、今回の件と深く関わっているとはね。
如何やらこの一件は、只のロストロギア回収って言う任務では終わりそうにないわ――場合によっては、なのはさんと志緒君達に、全てを任せる事になるかも
知れないわね――








――――――








Side:アリサ


なのはがやるべき事をやる為に、居なくなってから1週間か……やっぱり、なのはが居ないと物足りないわね。
あの子ってば、目立つ方じゃないけど、自然と人を引き寄せる力があったから、自然とアタシ達のクラスの中心人物になってたのよね……そして、その中心人物
が居なくなったアタシ達のクラスは、何て言うか勢いがないわね。

って、駄目よこんな事じゃ!!
なのははなのはで頑張ってるんだから、なのはが居ない時こそ、親友であるアタシ達が頑張らないと嘘じゃない!!よし、ガンガン頑張って行こうじゃない!!

取り敢えず、家に帰ったらなのはの為に授業のノートを纏めて、プリントを――って、ちょっと待って!鮫島、車を止めて!!



「如何なさいました、お嬢様?」

「犬!!犬が居た!!其れも怪我をした大型犬が!!」

ちょっと、貴女大丈夫!!



「……………」

「!!!!」

息はしてるけど、意識が無い……素人目に見てもヤバい状態だって言うのは間違いないわ!!鮫島!!



「委細承知でございますお嬢様!行先は『牧島動物病院』で宜しいですね?」

「是非もないわ!!全速力でブッ飛ばして!!!」

「御意に。」



待ってなさい、もう少しで貴女を手当てしてあげられるから……だからもう少しだけ頑張んなさい!!絶対に死んじゃ駄目よ!!必ず、助けるから、頑張って!!














 To Be Continued…