Side:志緒


転送用のゲートとやらを通って着いた先は、何とも近未来的な空間だな?此れが、お前の属する艦て言う事なのか執務官?色々と、スゲェ感じがするんだが……



「如何にも、此れが僕の属する『次元航行艦アースラ』の中だ。
 現在の管理局の技術の全てを結集して作られた最新鋭の次元航行艦だけに、その性能は折り紙付きだ。」

「管理局とやらの最新鋭艦か……其れならスゲェのもな得だな――どことなくSF感が漂ってるのは否定できねぇが。」

と言うか、誰が如何見ても――少なくとも地球人が見たら、此れはSF映画に出て来る宇宙船にしか見えねぇんじゃねぇのか?其れこそ、スターウォーズに出て来た
としても、全く違和感がねぇし、寧ろ納得しちまう感じだからな。



「違和感仕事しろってやつっすね?」

「確かに、普通にSF映画に出てきそうですからね此れは……」

「艦内を撮影して、ハリウッドに売り付けたら、ソコソコの値で買ってくれるかもしれないわね――CGと疑われる可能性もあるけれど。」

「……何の話をしてるんだ一体?」



こっちの話だから気にすんな執務官。
其れよりも、艦長室ってのは未だなのか?あんまり長いのは好きじゃねぇんだが………



「もうすぐ着く――だがその前に、君は武装を解除して貰って良いか?如何に民間人と言えど、艦長の前に武装した状態で連れて行くのは問題があるからな。」



武装の解除だと?
俺も、時坂も、柊もソウルデバイスは解除してるから……つまりはなのはにバリアジャケットを解除しろって言ってる訳か……至極当然の事なのかも知れないが、
ソイツはちょっとばかし、異を唱えさせて貰うぜ、執務官様よ!!











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE23
『貫き通すが己の信念なり!』












「異を唱えるだと?如何言う事だ?」

「相手に武装解除を求めるなら、先ずはテメェから武装を解除しろってこった。
 凶悪犯相手なら兎も角として、少なくともなのはは普通の参考人なんだぜ?武装解除を求めるなら、自分の方が先に解除すんのは当然じゃねぇのかオイ?
 つーか、俺と、時坂と、柊は既に武装解除してんだから、テメェだって武装を解除するのが道理ってもんじゃねぇか?相手方にだけ求めんのは、都合良すぎだ。」

「……言われてみれば、其れもそうだな――何か起きれば、アースラのスタッフが動くだろうから、僕だけ武装解除をしないのはフェアじゃなかった。
 ――此れで良いかな?」



バリアジャケットが解除されて、普通の服になったか……其れならこっちとしても異論はない――だから、なのはもレイジングハートを待機状態にして、バリアジャケ
ットを解除しろや。もう危険はねぇだろうからな。



「分かりました――レイジングハート。」

『All right.Jacket off.(了解。ジャケットを解除します)』



――シュゥゥゥゥゥン




「はい、解除完了です♪」

「協力感謝する――序に、君も本来の姿に戻っても良いんじゃないか?幾ら何でも、その姿で艦長の前に現れるのは如何かと思うぞ僕はな。」

「あ、そう言えばそうだった。」



って、今度はユーノかよ?
確かに本当の姿は人間て事だったが、此処でその姿を拝む事になるとは、流石に予想外だったぜ――恐らくは、なのはと大して歳の変わらない子供だろうが……



「ふぅ……この姿も久しぶりだね。
 なのは達とこの姿で会うのは初めてかな?……改めまして宜しく、僕がユーノ・スクライアだよ。」

「貴方がユーノ君………本当に人間だったんだ――!」

「すげぁな明日香、フェレットが人間になったぜ?」

「彼が人間であると言うのは分かっていたけど、まさかなのはちゃんと同い年位の男の子だったとは思わなかったわ。
 其れと時坂君、何を期待してるのかは知らないけど、貴方のセリフに対して突っ込みを入れる心算は毛頭ないから、その辺りは充分理解してくれると助かるわ。」

「いや、ボケたら突っ込めよ!俺が馬鹿みたいだろ!!」



ったく、時坂と柊は相変わらずだな。
しかしまぁ、マジで人間の男だったとはな………其れを考えると、俺は色々ファインプレーだったのかもしれねぇな……部屋割りとか、温泉とか、色々と。



「もし志緒さんが部屋割りとか色々やってくれてなかったら、若しかしなくても僕って恭也さんに殺されてた……?」

「その可能性は否定できねぇな……」

それでもまぁ、酌量の余地が無い訳じゃねぇから何とかなるんだろうが――さてと、色々話してるうちに着いたみてぇだが、此処が艦長室か執務官?



「そうなるが……入る前に一言だけ言っておく、中が色々と凄いから覚悟しておいてくれ。
 正直この部屋の内装は、此の艦のクルーでも慣れてない人の方が多いんだ――初めて見る君達には、色々と突っ込みを入れたい所が満載だろうからな……」

「「「「「どんな部屋だ!?」」なの!?」」」

「見て貰えれば分かる。
 ――艦長、クロノ・ハラオウンです。先程の魔導師達に来てもらいました。」

「どうぞ、入って頂戴。」

「失礼します。」



――プシュ………



「「「「「!?」」」」」



な、何だこりゃあ?畳敷きの座敷に、段々になってる滝、満開の桜に生垣、挙げ句の果てには鹿威しって、室内に日本庭園でも再現してるってのかオイ!?
しかも、どことなく微妙に日本文化を勘違いしてる感が漂ってる上に、壁なんかは廊下と同じ金属製のモンが剥き出しになってやがるからミスマッチ感が半端じゃね
ぇなこりゃ……執務官の忠告に納得だぜ。



「お疲れ様。どうぞ、皆さんも楽にして。」

「あ、はい………」



そしてコイツが、此の艦の艦長である『リンディ・ハラオウン』か。
実際に会ってみると、モニター越しじゃあ感じなかった『オーラ』みてぇなもんを感じるな?……北都に近いタイプの人種だろうが、経験はコイツの方が上で腹黒度合
では北都の方が上って所だろうな。



「改めまして、次元航行艦アースラの艦長、リンディ・ハラオウンです。」

「えっと……高町なのはです!」

「ユーノ・スクライアです。」

「時坂洸っす。」

「柊明日香です。」

「高幡志緒だ……」

取り敢えず、先ずは此れまでの事を説明する事になるんだろうが……果たしてどうなる事やらだぜ。
コイツ等が何者とかは正直どうでも良い事なんだが、コイツ等が介入した事でジュエルシードの回収に影響が出るのだけはゴメン被りたいもんだ――回収すべき
ジュエルシードは、まだまだある訳だからな。








――――――








Side:なのは


さてと、此れまでの経緯を説明したんだけど………リンディさん、貴女今一体何をしましたか?



「え?お茶が苦いから、お砂糖とミルクでマイルドにしてみたんだけど?駄目だったかしら?」

「ダメに決まってんだろうが!!緑茶を舐めてんのかテメェは!!つーか、日本人に喧嘩売ってんのかオイ!!」

「緑茶は、その渋さを楽しむモノなんです!だから、お茶請けのお菓子には羊羹みたいな甘いお菓子を合わせるんです!!!
 紅茶なら兎も角、緑茶に砂糖とミルクは認めないの!って言うか、湯飲み1杯のお茶に角砂糖8個って、其れはもう絶対に砂糖水になってます!!」

「おぉ、志緒先輩となのはちゃんの見事な突っ込みだな。」

「確かにアレは無いわ……」


「だって、苦くて渋いんですもの~~~。」

「だったら日本茶飲むんじゃねぇ!最初からミルクティーやカフェオレでも飲んでろ!!」

「其れじゃあ此の部屋の雰囲気に合わないじゃない?」

「そもそもこの部屋自体がアンバランスだろうが!!どうせやるなら、壁紙も張って金属製の壁を隠せ!マッタク持って違和感しか感じねぇ!
 って言うか、室内に日本庭園を造るな!室内に再現するなら、せめて茶室にしろ茶室に!!室内に庭を再現するなんて土台無理な事してんじゃねぇよ………」



リンディさんは色々とあり得ないの!!……お母さんに味覚矯正して貰った方が良いのかもしれないね?――其れでも治る保証が無いのが怖い所だけど。
えぇと、其れで話が脱線しましたけど、此方の事情は分かって頂けましたか?



「コホン……えぇ、良く分かったわ。
 ユーノ君、あのロストロギア――ジュエルシードを発掘したのは貴方だったんですね。」

「はい……だから、その責任として僕が回収しようかと……」

「その心意気は立派だわ。」

「だが、無謀でもある。」



分かって貰えたみたいで、リンディさんはユーノ君のした事を立派だって言ってくれたけど、クロノ君は無謀って……一体何処が無謀なのかなクロノ君?



「ロストロギアを1人で回収しようだなんて無謀も良い所だ。
 確かに彼は、魔導師として稀有な才能が有るのは間違いないかもしれないが、其れを加味しても一個人でロストロギアの回収など無謀としか言いようがない。」

「其れは訂正してくれるかな?確かにユーノ君だけだったら無謀だったかもだけど、私と志緒さん達の事を忘れてもらっちゃ困るの。
 其れに、ユーノ君は自分1人じゃ無理だって分かった時点で、助けを求めてたの――せめて魔力を持たない人を巻き込まない為に、念話って言う方法を使って。
 結果として、私達がユーノ君のお手伝いをする事になって、そして順調にジュエルシードは回収してる……其れの何処が無謀なのかな?かな?」

「まぁ、あの青髪のガキもジュエルシードを持ってるから、全部回収するには何れはアイツとジュエルシードを賭けて戦う事になるんだろうが、少なくともテメェ等が来
 るまでに、既に何個かのジュエルシードは封印して回収してんだ、ユーノのした事を無謀と判断するってのは早計だと思うぜ?」

「志緒先輩の言うように、一定の成果は上げてる訳だからな?」

「まぁ、組織として見過ごす事が出来ないと言うのは分からないでもないけれど、ユーノ君の判断が無謀だったとは思わないわね。」



ですよね!!

それに、ロストロギアの事はユーノ君から聞いてるし、其れがドレだけ危険なモノかって言うの理解してるの――そして、理解した上で私達はジュエルシードの回収
をしてるんです!!――それが、私の住む街を、海鳴を護る事にもなるから!!



「その気持ちは分からなくもないけど、アレは本当に危険なモノなのよ。
 調べてみて分かったのだけれど、アレは次元干渉型のエネルギー結晶体――流し込まれた魔力を媒体として次元震を引き起こす事のある危険物なのよ。
 其れこそ、最悪の場合は次元断層すら巻き起こす、S級の危険物……」

「僕が間に合ったから大丈夫だったが、あのまま君とあの子がぶつかっていたら、その魔力エネルギーでジュエルシードが活性化して次元震を起こしていたかもし
 れない――其れだけのモノなんだ此れはね。
 其れに、たった1個でも其れだけの事が起きる事を考えたら、複数体揃って発動した時にドレだけの影響が有るのかなんて言うのは計り知れないさ。」

「……そんなにヤベェもんなのか次元震や次元断層ってのは?」

「次元断層が起これば、世界の一つや二つは簡単に消滅してしまうわ。
 貴方達が頑張ってくれた事には最大限の感謝はしますが――此れより、ロストロギア『ジュエルシード』の回収は、私達『時空管理局』が全権を担当します。」



そんな!!!確かに、アレが危険なモノだって言うのは分かるけど、行き成り―――!!



「えぇ、行き成り言われても納得できないでしょう?
 だから、皆で話し合って、それで改めてお話ししましょ?そっちの方が、彼方達にとってもいいでしょう?」

「でも――!」




「……気に入らねえな。」

「えぇ、気に入らないわね。」

「アンタ等、俺達を馬鹿にしてんのか?」



へ?志緒さん、明日香さん、洸さん?



「後からノコノコ現れたくせに、偉そうな事言いやがって……テメェ等が来る間にジュエルシードを回収してたのは誰だと思ってんだ?
 俺達とユーノ、そしてあの青髪のガキと――正体不明の黒衣の魔導師だ。黒衣の魔導師は俺達に協力してくれるらしいがな。少なくともテメェ等は何もしてねぇだろが時空管理局。」

「其れに今のリンディ艦長の言い方も引っかかるわ。
 私も組織に属する人間だから分かるのだけど、本気でこの件から手を引かせる心算なら、考える猶予など与えずに『この件には関わるな』って突っぱねて、必要
 なら、其れに関する記憶を消す位の事だってやるわ。
 ――私も、過去には時坂君と璃音さんに其れを施し、志緒先輩にも其れをしようとしたからね……志緒先輩にだけは術が効かなかったけれど。」

「本当は、アンタ等だって俺達の力を借りたいはずだ……面倒な小細工は無しで行こうぜ?」



あ……そんな思惑が有ったんだリンディさんには。
其れをこうもあっさり看破するとか、志緒さん達って本気で凄いって思わずにはいられないの……仲間なら、この上なく頼もしいの♪



「……ヤレヤレ、彼方達みたいな子は相手にしたくないわね……マッタク持って此方の思うようには動いてくれないのだから。
 なのはさんとユーノ君だけだったら何とか出来たかもしれないけど、志緒さん、洸さん、明日香さんが居る状況では、小細工は一切の意味を成さないみたいね…
 ――分かりました、アースラの艦長として、ロストロギア『ジュエルシード』の回収に関して、正式に彼方達に協力を要請しますが……宜しいですか?」

「リンディさん…はい、勿論です!!」

そしてその結果として、リンディさんから協力要請を引き出す事が出来た訳だから、此れは大きいの!ジュエルシードの回収は今まで通り続けられる訳だからね。



「ただし条件は2つ――彼方達の身柄を、一時的にだけど時空管理局の預かりにする事。そして私達の指示には必ず従う事。」

「一つ目の条件に関しては異論はないけど、2つ目の条件に対しては此方の条件も飲んでもらえるかしら?
 此方にはあと4人の仲間がいるんだけれど、私と洸君を含めた6人は其方の指示に従うけれど、高幡先輩となのはちゃん、そしてユーノ君には独立機動権を認め
 て貰えるかしら?
 ジュエルシードに不測の事態が起きた場合に適切な対処が出来るのはこの3人だから、其れを通常の指揮系統に組み込む事は出来ないでしょう?」

「……良いでしょう、その方向で考えてみます――貴方の言う事は一理ありますから。」



どうやら、ジュエルシードの回収は続けることが出来るみたいだね?――其れだけでも良かったの。途中で終わりなんて言うのは絶対に嫌だったからね。
其れに、ジュエルシードの回収を続けて居れば、何処かでフェイトちゃんと会う事になるだろうから、もう一度ちゃんとお話ししないといけないと思うんだ。

如何してジュエルシードを集めてるのか、何でそんな悲しそうな目をしてるのか……聞きたい事は、山ほども有るからね――いずれ聞かせて貰うよフェイトちゃん。

でもまぁ、取り敢えずは時空管理局との協力体制を締結出来たって言う事で、すべき事はした感じ――若しかしたら、此処からが本当の意味での本番なのかも…








――――――








Side:フェイト


くっそ~~~……あの黒い奴、手加減なしでやりやがったな~~~……あの白い子のおかげて何とか躱せたけど、直撃してたらヤバかったのは間違いないね。



「もう駄目だよ!!管理局まで出て来たんじゃ、もうどうにもならないよ!!」

「…だいじょーぶだよ、あるふ。」

「大丈夫じゃないよ!!本気で捜査されたら、此処だって何時までバレずにいられるか分からないんだよ!?
 其れに、あの鬼婆――アンタのかーさんだってフェイトに酷い事ばかりする!あんな奴の為に、これ以上何かをする意味なんて無いじゃないかフェイト!!!」

「……お母さんの事を悪く言わないで、あるふ……」

「言うよ!!――だって、アタシはフェイトの事が心配だ!!
 フェイトはアタシの御主人様で、アタシにとっては世界中の誰よりも大切な子なんだ!!
 群れから捨てられたアタシを拾ってくれて、使い魔にしてくれて、ずーっと優しくしてくれた……だから、フェイトが泣くのも、悲しむのも、アタシは嫌なんだよぉ!!」



……ありがとうあるふ。
でも、それでも僕はお母さんの願いを叶えてあげたいんだ――あと少し、最後までもう少しだから、もう少しだけ僕の我儘に付き合ってくれるかな?



「フェイト……分かったよ。
 だけど此れだけは約束して――あの人の言いなりじゃなく、フェイトはフェイトの為に……自分のために頑張るって!そしたらアタシは、必ずフェイトを護るから!」



……うん、分かったよあるふ。
僕は僕のために頑張るよ――其れがきっと、お母さんの願いを叶える事に繋がるだろうからね…………












 To Be Continued…