Side:志緒
ジュエルシードを集めてる新たな勢力に敗北してから、なのははその相手に対抗する為の手段を会得しようとしてるみてぇだな。
どんな奴が相手だったのかは知らねぇが、遠隔操作できる魔力弾と、一瞬の高速移動を練習しているところ見ると、相手は郁島みてぇなスピードに物を言わせた、
超高速型の奴だって事は間違いなさそうだぜ。ラッシュタイプか、其れともヒット&アウェイタイプかは分からねぇがな。
なのは自身も思うところがあるんだろうよ。
そうでなきゃ、空き缶を地面に落とさない様に魔力弾を当て続けるなんて言う訓練をする筈がねぇ……見てるよりも相当にハードである事は、間違いねぇだろうし。
「それ以上に凄まじいのはなのはの才能ですよ。
確かに、魔力弾を自在にコントロールする魔導師は珍しくないけど、普通は魔力弾を操作するだけで最低でも1ヶ月はかかるって言うのに、まさか僅か3日で基礎
を覚えて、そして此処まで操作して見せるなんて……天才なんて言葉じゃ足りないくらいですよ!!」
「俺達の中で、誰よりも魔法に触れているお前がそう言うのならそうなんだろうなユーノ。」
「はい。
でも、僕からしたら、志緒さん達もなのはといい勝負だと思いますよ?
飛行魔法を習得する場合、先ずは地面から浮き上がるだけでも相当にかかるのに、志緒さん達は、いとも簡単に浮遊魔法と飛行魔法をして見せたんですから!」
まぁ、其れに関しては、やり方を覚えれりゃ難しくなかったからな。
其れに、空を飛ぶって言うのは意外な程に想像しやすいもんなんだぜ?……ま、最後の最後までそれをイメージできなかった四宮は大分苦戦してたみたいだが。
だが、俺達は空を飛べるようになり、なのはは自在に操れる魔力弾と瞬間高速移動を会得ってんだから、戦力が底上げされたのは間違いねぇだろうよ。
って、如何した時坂、玖我山?
「いや、今の志緒先輩はちょっと怖かったかなーって思ったッス……」
「野獣の笑みを浮かべて、右拳の指を鳴らすとか、杜宮学園最強の不良どころか、杜宮最強の任侠不良兄貴全開だったよ、志緒先輩!!迫力あり過ぎよ!!」
其処までか?……俺としては、そんな心算は全く無かったんだが、そう言う事なら、次からはちと気を付ける必要がありそうだな。
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE15
『海鳴温泉戦闘語録の始まり』
そんな感じで日々を過ごし、気が付きゃ毎年恒例って事らしい、温泉旅行の日になったな。
なのはが言うには、高町家、月村家、バニングス家の三家で、毎年この時期に行ってる年中行事の一つらしく、俺達も参加させて貰う訳なんだが、此れだけの人数
を、一体如何やって目的地に運ぶ心算だ?
士郎さんのワゴンを使ったところで全員乗り込む事は出来ねぇからな。
「あぁ、其れに付いては心配しなくて良いですよ志緒さん。
アリサちゃんがこっちに『全員が乗る事の出来る車』を回してくれることになってますから。」
「そうだったのか?だが、この面子が全員乗り込むとなると、相当なモンだろうな。
まぁ、如何しても乗り込めねぇって事になったらその時は、俺はバイクで行けばいいだけの事だからよ。」
「あ、そうなったその時は、私は志緒さんのバイクで行きたいの。もう一度タンデム乗車したいからね♪」
まぁ、そうなった時には好きにしろや。――っと、どうやら、そのお迎えが着た様だぜ?
「ですね……って、まさか此れで来るとは思わなかったよアリサちゃん!!確かに此れなら、全員乗る事が出来るかも知れないけどね!?だけど此れは……ね。」
「何ですか、この長い車?」
「何だって……此れ、リムジンじゃねぇかよ!!まさか、此れに乗る事が出来るとは、夢にも思ってなかったぜ!!」
「幾ら何でも豪華過ぎない!?」
「私も、此れには少々驚きですね…。」
そのお迎えがリムジンとは恐れ入るぜ。
と言うか、お前が驚くって言うのは意外だな北都?こんな事を言ったらアレだが、お前学園への送迎はリムジンじゃなかったか?
何度か学園の前に、北都グループのエンブレムが入ったリムジンが停まってるのを見た事が有るんだが……アレはデカいだけで、リムジンじゃなかったのかよ?
「アレも一応リムジンではあるのですが、北都の特注品で、通常の2/3程の大きさなんですよ。フルサイズのリムジンに乗るのは、此れが初めてなんです。」
「成程な。しかし、移動用の車まで特注品とは恐れ入るぜ。」
「やっぱり世界が違うよこの人……」
まぁ、北都に関しちゃ今更だがな。
だが、コイツに乗る機会なんざ滅多にある事じゃねぇ訳だし、此処は一つセレブの気分てのを味わってみるのも悪かねぇだろうからな。
「それじゃあ、宜しくお願いします鮫島さん!」
「畏まりましたなのは様。
アリサお嬢様からも、無事にお連れするようにと申し使っておりますので、目的地まではこの私めが皆様を安全に届ける次第でございます。では、どうぞ。」
オイオイ、リムジンてだけでも驚きだってのに、運転手は本物の執事とか、バニングスも北都に負けず劣らずの奴らしいな?
……深く考えるのは止めとくか。あんまり考えるってのは性に合わねぇからな――兎に角、この温泉旅行とやらを存分に楽しむとしようじゃねぇか!!
――――――
Side:洸
出発してから20分てとこだが、此れはスゲェ景色だな?
海鳴の市街地でも海が臨める良い景色だったが、海鳴温泉てのがある高地も良い景色だぜ!山と海が纏めて拝めるってのが凄すぎるからな!!
「本当に、良い景色ね。空気も美味しそうだわ。」
「ドレだけかと思ったが、コイツは神山温泉にも引けを取らねぇ景色だ……コイツは温泉の方も期待できそうだな。」
ハハ、其れは確かにそうっすね志緒先輩。
「ほらほら、凄いよ洸君!あそこって、さっき出発したあたりだよね?其れがあんなに小さく見えるよ!!」
「そうだな!……って、近いぞ璃音!!」
「何よ?アイドルとこんだけ密着する事なんて、普通は絶対に出来ない事なんだから有り難く思わないと罰が当たるわよ?役得と思って、受け入れなさいって♪」
「役得かもしれないが、そのせいで俺は学園の男共から恨まれてんだよ!
同じ部活所属ってだけで、視線が突き刺さるし、良太からは血涙流しながら嫉妬と羨望全開の彼是聞かされるし、夏休みまでに貰ったカミソリレターは数知れず!
少しは自分の立場ってモンを考えろよ……」
「……鈍感ですねぇ、時坂君……」
「此処までされたら、普通気付きそうなものだけど……此れはある意味で病気だわ。」
「あはは……洸先輩の場合、身近な女性が九重先生位だったから、そう言った方面には疎いのかも知れませんね。」
「よ~~し、ハイスコア更新。」
何の話をしてるんだよ明日香達は。
それから、お前は会話に参加しろ祐騎。こんな所に来てまで、サイフォン弄ってるんじゃねぇっての……って、そんな事をやってる間に、目的地に到着したらしいな。
……此れが海鳴温泉か。
神山温泉みたいに温泉宿が点在してるんじゃなく、完全な温泉街になってるんだな……まさか、こうなってるとは思わなかったぜ。此れは最高の旅行になりそうだ
ぜ!!って言うか、間違いなくなるだろうな。
――――――
Side:志緒
と、言う訳で到着したんだが……
「此れだけの温泉街なんだから、可能な限り楽しまないと損よ損!
特に、異世界からの訪問者は尚の事楽しまないとでしょ?――と言う訳で、早速海鳴の温泉街を周るわよーーー!!明日香はアタシと一緒に来てね!!」
「え?ちょ、アリサちゃん!?」
「じゃあ私は……御一緒していただけますか、美月さん?」
「はい、御一緒しますよすずかちゃん♪」
「其れじゃあ空ちゃんは、私と一緒に行こうか?」
「はい、宜しくお願いします美由希さん!!」
女共は、早々に温泉街を誰と探索するかを決めちまったみてぇだな……なのはと玖我山がまだ決まってないが、アイツ等は間違いなく組むだろうからな……取り立
てて何かを言う心算はねぇが後悔だけはしないようにしとけや。
「それじゃあ、一緒に行こうかなのはちゃん?」
「はい!道案内は任せて下さい璃音さん!!」
でもって、なのはは玖我山とか。
だが、そう言う事ならお前はこっちにこいやユーノ。あのままなのはに張り付いてたら、なのはの性格的に女風呂一直線は間違いねぇからし、そうなったらお前の精
神が持たねぇだろうから、俺達一緒に来てもらうぜ。
「……寧ろ助かりました……あのままなのはにくっついてたら、僕は色々なモノを色んな意味で失ったかもしれないですからね。」
「拙いって自覚はあったんだな。」
まぁ、言いだせる空気じゃなかったからな。
女子共は盛り上がりまくりだった訳で、ユーノが口を挟む隙すら無かったからな…果たして、ドレだけの事になるのかは想像も出来ねぇってのが本音だな此れは。
だが取り敢えず今は、温泉を楽しむとしようぜ?
此処の温泉は、疲労回復の効果があると言う事だから、俺達にはピッタリかもしれねぇな。ま、楽しませて貰うとしようじゃねぇか!!!
――――――
Side:なのは
そんなこんなで、璃音さんと一緒に海鳴の温泉街を見て回った訳なんだけど、目ぼしいお土産は無さそうですね?……何かありましたか璃音さん?
「ダメ、何もない――ってか、目新しいモンがない。温泉宿とかは見事なんだけど、お土産品に関しては、あまり魅力的な物はない感じだったわ。」
「にゃはは……確かに何処の旅行先にもありそうなものが多かったですからね。」
加えて海鳴は、所謂『ゆるキャラ』の開発も遅れてるから、その辺も観光地でのお土産品の種類が少なくなっている事の原因かも知れないね……真実は知らない
けど、あながち間違いじゃないと思うの。
「かもね~~~……でも、この海鳴温泉卵と、海鳴温泉饅頭は名物みたいだから買っておくとしよう♪」
「あ、其れはお勧めです!去年買ってみたら、凄く美味しかったので!!!其れこそ、比喩じゃなくてほっぺたが落ちるかと思いましたからね!!!」
「其処までなんだ……なら、尚の事買わない手はないわ!!」
はい、一名様お買い上げなの♪
で、其の後は適当に温泉街を周ってたんだけど――
「おんやぁ?君だね、この前アタシのご主人様にアレしてくれたのは?」
その道中で、物凄くラフな格好をした、オレンジ髪のお姉さんに捕まっちゃったの……言葉から察するに、あの水色の子の仲間か、或は友達なのかも知れないね。
だとしら誤魔化しは不要なの!
「だったらどうしますか?」
「中々に度胸があるみたいだね?……だけど、調子に乗らない方が良いよ?
今度邪魔したらその時は、思いっきり『ガブ』っと行っちゃうからね?……精々狩られない様に注意しとくんだね。」
「言ってくれるじゃない……だけど、なのはちゃんは絶対にやらせない!!それこそ、一緒に居たのになのはちゃんがやられたのかなんて事に成れば、恭也さんと
志緒先輩が猛然とここに突進して来る筈だしね……アンタの好きにはさせないわ!!」
「私達は負けません!!!何が有ろうとも!!」
「ふぅん?なら楽しみにしてるよ……精々頑張るんだね……最後に勝つのはフェイトなんだ!!邪魔立てするなら容赦はしないからね?」
寧ろ望むところなの!!
あの子とはもう一度話したいって思ってたから、そちらから現れてくれるって言うのは、願ってもない事なの!!来るなら来たで、全力でやるだけの事だからね!!
何でジュエルシードを集めるのか、聞いても答えてくれないかもしれないけど――でも、聞かない事には何も分からないままで終わっちゃう。そんなのは嫌なの!!
明かされる真実は重いかもしれない……だけど、私は前に進んで行くだけなの!!
「その意気や良し!!って所だけど、少しお腹すいてないなのはちゃん?」
「実を言うと、結構お腹減ってます。」
「じゃあ、良い時間帯だしお昼にしよう♪」
「賛成です、璃音さん♪」
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で、適当にランチを済ませた後は、一休みして温泉に直行!
海鳴温泉街随一の展望を誇る露天風呂に入る事が出来たのは運が良かったね――加えて今の時間は、私と璃音さんの貸し切り状態だから、物凄く贅沢だよね♪
「くは~~~~……温泉最高~~~!
神山温泉も良かったけど、海鳴の温泉も、其れに勝るとも劣らないじゃない。来た甲斐があったわね此れは♪」
「なら良かったです♪」
こうしてマッタリと温泉に浸かるのも、良いと思いますからね♪
「だよねぇ~~~……本気で溶けちゃいそうだわ此れ。
時に、なのはちゃん、ちょっと聞きたい事が有ったんだけど聞いても良いかな?って言うか、聞くから答えを聞かせて貰っても良いかな?」
「はい?」
何ですか璃音さん、行き成り?
「ちょっと気になってたんだけど、なのはちゃんは志緒先輩の事好きだよね?LikeじゃなくてLoveの方向で。」
「はい~~~!?///」
え?あう……なんで、如何してそうなるの?
志緒さんの事が好きなのは否定しないけど、正面切って問われると、幾ら何でも照れちゃうの……顔が熱いよぉ……若しかしてバレバレだったのかなぁ?
だとしたら、幾ら何でも『あぅぅ……』なの……///
――――――
Side:???
如何やら、あの子達は次のステップに進んだみたいね……特に白い魔導師の子は目を見張るものがあるからね。
此れだけの短期間に、アレだけ伸びるとは、私でも予想が付かなかったわ……だからこそ、あの子の力を見極めなければならないわ…手間をかけるわね×××。
「気にしないで下さい○○○○……私が好きでやってる事ですから。」
ならば構わないのだけど、根を詰め過ぎて倒れないようにね。
「分かって居ますよ○○○○……全ては貴女の目的を果たす為ですから――せめて無理のない範囲で頑張るだけです。」
「良い返事だわ……任せるわよ×××。」
何が有っても、あの子の亡霊に憑りつかれているアイツに、ジュエルシードを渡す事は出来ないモノね……せめて、私達は封印の手伝い位しないと立場が悪いわ。
ともあれ、ジュエルシード封印!!
――カキィィィィィン!!
「封印完了……一撃とはお見事です。」
「此れ位は雑作もないわ。」
寧ろ、このジュエルシードを回収できたのは僥倖だわ……一度封印してしまえば、悪さはしないからね……もう暫く、その動向を観察させて貰う事にしましょうか。
貴女達ならば、アレを倒す事が出来るかも知れないからね。
To Be Continued… 
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