Side:なのは
ジュエルシードの発動を感知して、やって来た先に居たのは、ジュエルシードの力で異常なまでに巨大化した『馬鹿でかい子猫』。一歩間違えれば只の怪獣ネコ。
尤も、其れだけだったら封印砲をブチ当てて、ジュエルシードを封印で終わったんだけど、今回に限ってはそうは行かないみたいだね。
「今ならまだ間に合う……怪我をする前に、僕にそのじゅえるしーどを渡す気はない?」
「貴女が、何の為にジュエルシードを集めてるのかをお話ししてくれたら、内容によっては渡す事もやぶさかじゃないけど、何の理由もなしに渡す事は出来ないの。」
私と空さんの前に現れたのは、ウォーアックスみたいな武器を携え、レオタードみたいな服の上に漆黒のマントを羽織った水色の髪の女の子。
恐らくっていうか、先ず間違いなくこの子もジュエルシードを集めてるんだろうけど、だからと言ってジュエルシードを渡す事は出来ないの。
私達には、全てのジュエルシードを封印して回収するって言う目的があるからね。
「僕にだって目的はあるさ……でも、其れは言えない。言わないんじゃなくて言えない。
でも、僕にはじゅえるしーどが必要なんだ……だから、君が退かないって言うなら、僕は無理矢理にでも押し通る。手加減は出来ないから、悪く思わないでよ?」
「其れは、私のセリフでもあるかな?
私は魔導師としては、マダマダ未熟かも知れないけど、だからと言って、こんな理不尽な横槍を『はいどうぞ』って受け入れられるほど、大人でもないし心が広くも
ない……寧ろ、邪魔立てするなら全力全壊で吹き飛ばすからね。
アドバンテージは貴女にあるけど、だけど私は絶対に自分からは退かない――さぁ、如何するの?」
「ん~~~~……良いね、そう来なくっちゃ!
君は僕の好きなタイプだ――なら、トコトンやろうか?じゅえるしーどを抜きにしても、君との戦いは、楽しい物になるだろうからね……僕も本気で行かせて貰う。」
本気上等なの!!
ジュエルシードは、絶対に渡さないからね!!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE14
『Enigmatic Uncertainty』
と言う事を思ってました、戦闘が始まるまでは。
でも、いざ戦闘が始まったら、一切何も出来てないのが、現状……アレだけのスピードで動き回られたらマッタク的を絞る事が出来ないから、砲撃は撃てない。
仮に、誘導弾を放ったとしても恐らく簡単に避けられて牽制にすらならない……だったら!!
「これで終わりだ!!光翼斬!!!」
「其れを待ってたよ!!ディバインバスター!!!!」
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
「うわ、危ない!!………どうやって攻撃を見切ってカウンターをブチかましたの?全然見えなかったよ!?」
「簡単な事だよ……幾らすごいスピードの持ち主だって、必殺の一撃を放つ前には、どうしても溜めが入るでしょう?お兄ちゃんが言ってた事だけどね。
確かに貴女の動きを捉える事は私には出来ない。だけど、攻撃の瞬間にカウンターを合わせる位の事はやって出来ない事じゃない!
攻撃される事が前提になるけど、貴女の攻撃に合わせてカウンターをブチかます事くらいは、朝飯前なの!!」
「なるほど、君は君で自分を鍛えてたんだね。でも勝つのはこの僕だ。」
「……其れは如何かな?
貴女は確かに凄く速いけど、その速さを出す為に、若しかしなくてもバリアジャケットは装甲の薄い軽量タイプだよね?一発の被弾が、必殺になってしまう位の。」
「……君意外と鋭いね?
バレちゃったなら隠す事もないから言うけど、確かに僕のバリアジャケットは、速度特化の為にぼーぎょりょくを犠牲にしてるよ。
でもさ、きょくたんな事を言えば、こーげきが当たらないならそーこーなんてひつよーないじゃないか。
それに、君の狙いがカウンターだって言うなら、僕は君にカウンターを撃たせない程のスピードで攻撃すれば良いだけのことだもん、僕は負けない。」
だったら、何が何でも必殺の砲撃で一撃必殺をやってやるの。当たりさえすれば、勝てるんだから!
大体にして、今回ジュエルシードが発動した場合には、志緒さんに『任せる』って言われてるんだから、絶対に負けられないの!!
「君にも負けられない理由が……なら、あらためてじんじょーにしょーぶだ!」
「望むところなの!!」
「盛り上がってるところ悪いけど、助けてーーーーー!!!」
「「へ?」」
今の声は空さん?……一体何が……
「にゃ~~~ご♪ゴロゴロ♪」
「猫が、猫が~~~!!モフモフでゴロゴロでふわふわなんですーーーーー!!」
「……何か凄い絵面だね?」
「そうだね。
超巨大な猫に両手で抱えられて、頬を摺り寄せられてる女子高生……怪奇番組真っ青な、リアル超常現象なの此れ。」
動画をネットに投稿したら滅茶苦茶再生数が伸びそうなの。
あの、空さん、その猫は郁島流空手で如何にか出来ないんですか?空さんのパワーだったら、幾ら巨大化してるとは言え、猫1匹KOするのは容易いと思うんです
けど……無理ですかね?
「既に試したんだけど、此の毛皮がクッションになってるみたいで、此方の攻撃が思った以上の効果を出せてない感じだよ此れは。
その青髪の子の攻撃が直撃して、更には私だって轟雷撃を喰らわせたのに全然平気なんだから……此れは、見た目以上の難敵だよ!と言うか、助けてーー!」
「ごろにゃん♪」(すりすり)
其れはまた何とも。
でも、此のままだと空さんがモフ死しちゃうかもしれないし、封印しないとジュエルシードを回収する事は出来ないからね……さて、如何したモノかな?
攻撃の衝撃を毛皮が吸収するって言うのが厄介なんだよね?
……逆に言うなら、毛皮を取り払ってしまえば攻撃は有効って言う事に成るんだけど……問題はどうやって、毛皮を取り払うとまではいかなくても、せめて毛を刈り
取るかって言う事だね。
私の砲撃や魔力弾は破壊力には優れてるけど、何かを『裁断』する能力には乏しいから……貴女の魔法で、あの猫の毛を刈り取る事って出来るかな?
「僕の魔法で?」
「さっき私に使った、回転カッターみたいな魔法で毛を刈る事って出来ない?
私も貴女もジュエルシードが目的だけど、先ずは封印しないと如何にもならないから……無理かな?」
「確かにいちりあるし、光翼斬なら行けるかもしれないから、良いよやってみよう。刈り取る場所は何処でも良いんだよね?」
出来るだけ急所は外して欲しいの。猫さんに怪我はさせたくないし。
前足か、後ろ足の太腿部分が理想なの。
「わかった、やってみる。
行くぞ、巨大猫!!喰らえ、光翼斬!!」
――ゾリィ!!
よし、良い感じで毛が刈られた!!
これでもう、その部分は体毛でのガードは効かない!!レイジングハート!!
『All right Master.Ceilingmode Setup.Divine Buster.』
「ジュエルシード封印!!!」
――ドゴガバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァン!!!……コトリ
ど、如何やらジュエルシードは封印出来たみたいなの。
そうだ、空さんは?空さんは無事なの!?
「巨大猫がモフモフでゴロゴロでふわふわなんです~~~」
「……此れは、誰が如何見てもダメっぽいの。」
巨大猫に散々ぱらすり寄られた挙げ句に、私のディバインバスターの余波を受けてKOされたって言う所だね……こう言ったら失礼だけど、空さんは使い物にならな
いのは間違いないみたい。
だけど、其れは私としては有り難くないかな……ジュエルシードは封印したけど、其れを狙ってるあの子との戦いは終わってないからね。
空さんが健在だったら、援護も期待できたんだけど、其れは期待できないから、私の力だけで何とかするしかないよね。
このジュエルシードは、絶対に渡さないの!!!ディバインバスター!!
――ドゴォォォォォォォォォォォォン!!
略ゼロ距離で、不意を突いた一撃だったから、決まれば必殺は間違いない……此れなら!!
「悪くない攻撃だったけど、残念だったね……僕の方が君の攻撃よりも速かったみたいだよ……これで終わりだ!!!!」
「!!!」
そんな、零距離からの砲撃すら躱して背後を取るなんて……予想以上のスピードだよ――こんなの、対処できるはずがない……!!!!
「うおりゃぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁあぁぁ!!!!!!!!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあっぁあっぁぁぁあぁぁ!!!」
――ドガァァァァァァァァァッァアッァアッァアァァァン!!!
あぐ……攻撃を真面に喰らったのと、地面に叩き付けられた衝撃で、意識を失いそうなの……まさか、これ程とは思っても居なかった……文字通りの完敗だよ。
私は、全く何も出来なかった……誰が何と言おうとも、完全敗北には違いないよ。
「ごめんね。」
でも、そんな中でも、去り際にあの子が呟いた一言が私の頭の中に残っていた。
なんで『ごめんね』だったの?其れは、何に対しての『ごめんね』だったの?――其れ以前に、貴女は一体何を目的にジュエルシードを集めてるの?……聞きたい
事は山ほどあるけど、其れを聞くのは難しそうだね……そろそろ、私も限界みたいだから……ね。
――――――
Side:フェイト
じゅえるしーどの発動を感知してやって来た場所には、じゅえるしーどの影響で巨大化した子猫と、其れに立ち向かう白い魔導師の姿が有った。
まぁ、僕としてはじゅえるしーどが手に入れば良いからと思ってたんだけど、白い魔導師の子は、僕の前に立ち塞がってくれた。
じゅえるしーど回収の妨げになるだろうと思って戦闘を行ったんだけど、凄く強かった。
それこそ、並の魔導師じゃ絶対に勝つ事なんて出来ない。僕はそう思う――って言うか、絶対に並の管理局員なんて相手にすらならないレベルだと思うよ。
尤も経験が少ないみたいだから、その隙を付けば行けるかも知れないと思って攻撃したらその通りだった。
途中ハプニングが有ったけど、じゅえるしーどは僕の手の中に有る。
だけど、不意打ちは良くないから、せめて一言謝っておこう……『ゴメンね』。
悪いとは思おうけど、僕達にも此れは必要な物なんだ――だから、何が有っても絶対に譲れない!!
「フェイトー、回収できた?」
「あるふ、この通りバッチリだよ。」
「おぉ!流石はフェイト!凄いじゃん!!」
うん。だけど、これでやっと2つ目だから今以上に頑張らないとダメだと思う。
僕達以外にもじゅえるしーどを集めてる人達が居るみたいだからね……回収はひとすじなわじゃ行かないと思うんだけど、大丈夫かなあるふ?
「大丈夫だって。アタシとフェイトが力を合わせれば怖いものなんてないさ、そうだろ?
どんな奴が相手だろうとも、アタシとフェイトなら超える事が出来るさ。…だから、何も心配はいらないよ?どんな事が有ろうとも、アタシはフェイトの味方だから。」
「……そうだよね、ありがとうあるふ。」
あるふが一緒なら、僕は何処までだって飛べるんだ。
そして何よりも、お母さんの為にも全てのじゅえるしーどを集めなきゃならないからね……だから、僕は飛ぶんだ!!全てのじゅえるしーどを集める為に!!
その為だったら、僕はどんな事だってする!してやる!!
「その意気は見事だけど、アタシを斬り捨てたりはしないどくれよ?」
「そんな事する筈ないじゃないか!あるふは僕の最高のぱーとなーなんだからさ。」
でも、それ以上にさっきの白い魔導師の子が気になるかな?
僕に向けられてた視線は、凄く真剣で鋭かったけど、同時に何とも言えない強さと温かさを感じたからね……あんなのを感じたのは、若しかしなくても初めてだよ。
あの子の事は、覚えておいて損はないだろうね。あの子は――
って、そう言えば名前聞いてなかったな~?
まぁ、良いか。何れまた会う事もあるだろうし、名前はその時に聞けば問題ないだろうからね……だけど気になるよ、あの子の事。
もう一度会えば、何でこんなに気になるのか、其れが分かるのかな?……僕にはまだ分からないや。
――――――
Side:志緒
「ん……ん~~~~……此処は……私の部屋?」
「よう、目が覚めたか?」
「志緒さん!?……って、あれ?私は確かすずかちゃんの家でお茶会で、その最中にジュエルシードが発動して、封印しようとして……其れで負けたんですね。」
概ね間違っちゃいねぇな。
月村邸の庭でぶっ倒れてたお前と郁島を、ファリンが送って来てくれたんだよ此処までな。
まぁ、其れは良いんだが――なのは、お前相当な手練れと戦っただろう?
お前が気絶するってのは相当なモンであるのは間違いねぇ。其れこそ疑いようもないって所だが、だからと言って並の使い手じゃ出来る事でもねぇからな。
一体何が有ったってんだ?
「其れは――」
――なのは説明中
成程、ジュエルシードを狙う新たな戦力とは、厄介な奴が現れたもんだな?
話を聞く限りじゃ、相手の方が上って所だが、戦力差は俺達が出張れば何とかなるだろうから一切合切問題はねぇし、なによりもなのはが、ソイツとの関係を良好
にしたいと持ってるなら大丈夫だろ?
「でも、私は今回負けて―――!!」
「負ける事は恥じゃねぇ。
寧ろ負けたくせにへらへら笑ってる奴ほど軽薄なモンは無いからな……大切な事は、敗北から何を学んで次に進むかって事だ。
負けた事のない奴は大成しないって言うが、其れはありとあらゆることに於いて真実だと思うからな……だが、今回は全てにおいて仕方ねぇさ。」
其れに、最終的に21個のジュエルシードの全てを集める必要がある訳だから一度の失敗でくよくよしてる暇なんて無いだろ?
だったら、俺達は俺達の流儀を突き進めばいいだけだぜ!!
「それは、確かに其の通りですね」
「そして分かり易いだろ?」
「確かに♪」
なら問題ねぇな……今度会ったその時に、今日の借りは返してやれば良いさ。
だが、それ以上に、燃えさせてくれるじゃねぇか!!
一筋縄で行く事件だとは思ってなかったが、此処で敵対勢力が現れるとは、絵に描いた様なシチュエーションとしか言いようがねぇだろ?
寧ろ最高だぜ。
相手が誰であろうとも、絶対に退かないのがBLAZEだぜ……鬼が出ようと蛇が出ようと、俺達は絶対に退かねぇ!BLAZEの炎は、決して消えはしねぇからな!!
コイツは、少しばかり面白くなって来やがったぜ!!!
To Be Continued… 
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