Side:レティ


其れじゃあ、答え合わせと行きましょうかリンディ?



「そうね。
 だけどその前に……入って来てくれていいわよ志緒君達。」

「ウッス、失礼すんぜリンディさん、レティさん。」

「どうもっす。」



あらあら、まさか彼等を呼ぶとは予想外だったわリンディ――まぁ、彼等は一番の当事者だったのだから、答え合わせを聞く権利は有して
るのは間違い無い。
特になのはさんは、8年前のあの日に人生が狂わされた訳だから余計にね。



「そんじゃまぁ、話して貰うぜレティさん……アンタが知ってる事を、洗いざらい全てな!!」

「えぇ、その心算よ志緒君。」

今こそ明らかにするわ、今回の一件に関する全ての事をね。












リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE145
『答え合わせ~The Answer~』











私とリンディは大分前から最高評議会とその派閥は色々と疑わしいと思ってて、密かに連中を探っていたのよ。
でも、思う様な成果は得られなくてね……半ば諦めていた所で、8年前のあの最悪の事故が起きた――そう、なのはさんが撃墜され、そ
の後行方不明になったアレよ。

あの事件は、なのはさんが撃墜されたと言う事にも驚いたけど、同時に其れをやったのは最高評議会の一派だと言う事はそれ程時間を
掛けずに割り出す事が出来たわ。
此れだけでも有力な事実であり、『将来有望な魔導師の殺害疑惑』で最高評議会とその派閥――面倒だから最高評議会と一括りにさせ
て貰うけれど、彼等を追い込む事は出来た……でも、此れだけでは言い逃れをされてしまう可能性があったから、更なる証拠が必要だっ
たのよ。

その時に出会ったのがティーダ・ランスター君……貴方達の前に何度も姿を現したティアナ・ランスターの兄なのだけれど、彼もまた最高
評議会の手によって命を落とす所だった――彼等にとって不都合な真実を知ってしまったが為に。
其れはとても有効な物だったから、私は彼を保護した上で密偵として、そして管理局員としては殉職と言う扱いにして最高評議会の目に
付かないようにしたの。

クロノ君に関しても略同様よリンディ。
彼もまた、執務官として最高評議会の事を調べていた際に連中の手によって殺されかけた……まぁ、彼は持ち前の機転の良さで辛くも
生き延び、私の保護下で時を伺っていたのだけれど……貴女には知らせようとも思ったんだけど、クロノ君が『僕はMIA判定のままにして
おいて、母さんにも生存は知らせないで下さい。』って譲らなくてね……



「クロノらしいわね。
 取り敢えず、心配かけた罰として、帰って来たらエイミィも加えて皆でお仕置きね?」

「よっしゃー!クロノにおしおきのげんこつだー!!」

「フェイト、オメェが本気でやったら、クロノが死ぬから手加減しろよ?」

「折角生き延びたのに、妹に殺されたとか笑えないからねフェイトちゃん?」

「じゃあ、げんこつじゃなくて、全力のでんげきにするー!!」



其れも如何かと思うわよフェイトさん……ううん、話を続けるわね?
そして3年前になるかしら、私はティーダ君の妹のティアナと出会ったわ……ティーダ君の生存を伝えようかとも思ったのだけど、其れは
ティーダ・ランスター生存の事実を外部に漏らす危険性があったわ――だから、彼女にはティーダ君の生存を教える代わりに、私の直属
の部下になる事を条件にティーダ君を殺害した相手を教え、そして当時漸く管理局で少し解明できた異界に対する適格者の覚醒方法を
彼女に施して其の力を目覚めさせ、適格者の力をマイナス方向に引き出す事でソウルデヴァイスではなく異界を操る力を身に付けて貰っ
たのよ……まさか、怪異融合なんて物を編み出すとは予想外だったけれど。



「そんで、其処までやった所で訓練校でスバル達と顔見知りにして、んでもって最高評議会にスパイとして潜り込ませたと……用意周到
 ってか、徹底的っすねリンディさん……」

「うん、この辺は美月先輩以上かも。」

「あらあら、褒めても何も出ませんよ璃音さん?」

「……今のは褒め言葉ではないと思うわ北都さん……」

其処からはすこぶる順調だったわ。
最高評議会に対して従順に振る舞いつつ、ティアナは彼等の不正やら何やらの証拠を次から次へと此方に流してくれた。
なのはさん達の『BLAZE』とは密かに協力関係にあったから、私の私設武装組織である『N2R』とも連携は容易かったし、何よりも10年前
の『闇の書事件』解決の立役者と言っても良い高幡君達が此方の世界に来てくれたのが一番大きかったわ。



「そうかい……だが、そうなるとヴィヴィオを攫ったのもアンタの指示って事になるよなレティさん?
 何だってそんな事をしやがった?事と次第によっちゃ、幾らアンタでも只じゃ済まさねぇぜ?」

「説明して、貰えますよね?」

「えぇ、勿論よ。」

確かにヴィヴィオさんをティアナに攫わせたのは私の指示でもあるけど、最高評議会からの命令でもあった――彼女は、あの最悪の決戦
兵器『ゆりかご』を起動するのに必要な鍵だったから。

ティアナからの情報で、最高評議会がゆりかごを作っていた事は分かっていたけど、其れがあるのは地下深くの格納庫だったから、其処
まで部隊を送り込んで破壊するのは不可能だし、ティアナ1人でも不可能……つまり、ゆりかごを完全に破壊するには、起動して、地上に
姿を現させるしか方法が無かったのよ。

可成りの博打だけど、私にはそれが成功する自信があったわ――高幡君と高町さんが一緒に居るのだからね。
後は言うまでもないわね?彼方達がヴィヴィオを奪還した事でゆりかごは機能を停止し、フェイトさんの一撃によって砕かれ、最高評議会
の残留思念と融合して凶悪なグリードとなった挙げ句に撃ち滅ぼされ、物語はハッピーエンドと言う訳よ。


と、普通は此処で納得する所なんでしょうけど、此れでは納得しないわよね?



「えぇ、筋は通ってるし大体の流れは分かったけれど、貴女は未だ一番肝心な事を言ってないわレティ。
 レティ、貴女には最初からすべてが分かっていたのでしょう?――恐らくは志緒君達が再びこの世界に現れる事まで含めて……」

「……えぇ、正解よリンディ。私は全てを知っていた。」

ティアナにもやった適格者への覚醒を、私自身にも行った事があったのだけれど、私にはソウルデヴァイスが顕現しない代わりに、騎士カ
リム以上の予知能力を得るに至ったわ。
と言っても、其れは私の意思で明確に操れるモノではなく、何の前触れもなく突然頭の中に未来のヴィジョンが流れ込んでくると言うモノ
だったわ。

最初は変な力を手にしてしまったと思っていたけれど、暫くすると、その未来のヴィジョンが此のままでは最悪の未来が訪れる事を教えて
くれた――だから、私は其れを変える為に色々と画策したのよ。
其れで未来が変わったのかは知らないけれど、ある日から未来のヴィジョンは最悪の結末ではなくなり、その過程の中で高幡君達が再
び此の世界に現れる未来も見えた……だから後は簡単だった。
最高評議会が滅びる未来を確定させるための一手を打ち続けて行けば其れでチェックメイトだったのだからね……



「要するに、全てはアンタの手の平の上だったって事か……少しばかり気に入らねぇが、まぁ終わり良ければ全て良しって事にしとくぜ。」

「普通だったらとんでもない事だけど、アンタがやったって言う証拠は何処にもないからちょっとヤバ目の事であっても罪には問えないし、
 流石は提督様、巧くやるもんだね?」

「祐騎君、気持ちは分かるけどあからさまにトゲ在り過ぎだよ?」



ふふ、良いのよ郁島さん。そう言われるだけの事はしてしまったのだから。
でも、私は敢えて誰の裁きも受けないように画策したのよ――裁きを受けず、断罪もされなければ、私が許される事は無くなるからね。



「レティさん……アンタ……」

「裁きを受け、罰が言い渡されれば其処で終わりになってしまうし、その罰が終われば許されてしまうでしょう?
 私にはそんな甘い処分は必要ない――罰を受けない代わりに一生許される事なく、罪を背負って生きていく……其れが私の下した私
 への処分内容よ。」

「レティ……」



そんな顔しないで頂戴リンディ……間違っても『私だけは許す』だなんて言わないでよ?……そんな事言われたら、きっと私は其れに甘
えちゃうと思うからね。



「其れがアンタの覚悟って訳か……本当なら一発殴ってやろうかと思ってたが、アンタがそんだけの覚悟をしてるならそいつは無粋な事
 だよな?
 だが、此れだけは言わせてくれレティさん……アンタが画策した彼是で、結果としては巧く行った訳だから、よくやってくれたぜマジで。」

「ですね。レティさんのその手腕が無かったら、きっと此処まで巧くは行かなかったと思いますから。」

「!!!」

彼方達は……本当にお人好しだわ。
一生許されない覚悟を決めていた私に、一番欲しかった言葉を掛けてくれるのだから……でも、彼方達にそう言って貰えたのなら、許さ
れない覚悟をした意味があったのかも知れないわね。

――此れが全ての真相、答え合わせ。……ふふ、これで本当にすべてが終わったわ。








――――――








Side:志緒


「酷いよティア!そうならそうと言ってくれればよかったのに!アタシ、ティアが敵になっちゃったんだってマジで落ち込んだんだよ!?」

「言える訳ないでしょバカスバル!
 ってか、アンタに本当の事言ったら間違いなく其れが最高評議会派閥の馬鹿共の耳に入るでしょうが!アタシは自殺願望ないから!」



レティ提督の答え合わせも終わって一息って所だが、真相を知ったスバルはランスターと絶賛遣り合ってる真最中か……まぁ、双方の言
い分は尤もだから、余計な口出しはしねぇけどよ。
だがまぁ、此れでミッドチルダでの一件は決着が付いた訳だから、近い内に海鳴に行かねぇとだぜ。



「へ?海鳴に……どうしてですか?」

「どうしてって、決まってんだろなのは?」

士郎さんから、お前を貰う許可を貰わねぇとならねぇからだ。



「成程……でも、志緒さんだったらお父さんもお母さんも絶対に反対しないとは思いますよ?――特にお母さんなんて『志緒君みたいな子
 がなのはの旦那様になってくれたら翠屋は安泰ね♪』って言ってましたから。」

「思った以上に高評価だなオイ……」

まぁ、其れだけの高評価なら多分大丈夫だろうが……士郎さん、桃子さん、アンタ達の娘は俺が貰わせて貰うぜ?――まぁ、仮にダメだ
って言われても、認めてもらうその時まで何度でも頼み込むだけだけどな!

さぁて、一丁気合い入れて行くか!!










 To Be Continued…