Side:志緒
ゆりかごの残骸と、脳味噌の残留思念が融合して凶悪なグリードになっちまったみてぇだが、逆に言えばテメェをぶっ倒せば其処でゲーム
セットって事だな?
なら、遠慮なくぶっ飛ばすだけなんだが……流石にお前はきついか、なのは?
消耗した状態でスターライトブレイカーを放ったんだ……もう、殆ど魔力残ってねぇだろお前?
「ほとんどすっからかんですけど、だけど私は戦いますよ志緒さん……何よりも、最高評議会には、私の手で鉄槌を振り下ろさないと気が済
まないですから!」
「だろうな。」
なら、これを食って回復しとけや。
――特上カツ丼
「……ごちそうまでした!――お陰で魔力も戻ってきましたから、これなら行けます!!!」
「ふ、頼もしいな。」
だが、これで俺達が負ける可能性は兆に一つもありゃしねぇ……テメェ等は滅殺してやるから覚悟しな、最高評議会の成れの果て共!!
テメェ等は、俺達が引導渡してやんぜ!!覚悟しな!!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE144
『真の最終決戦!魂を燃やせ!!』
No Side
志緒達の気合が充実してる中で、最高評議会の残留思念がゆりかごの残骸と融合して凶悪なグリードとなった存在が現れたが、その姿
は醜悪其の物だ。
ゆりかごをベースにしたと思われる身体からは、機械的な脚と生物的な脚が合計で6本生え、更に3本の蛇の首が生えているのだが、首
の先にある頭は人の頭蓋骨である上に、頭頂部は骨が砕けて脳が剥き出しになっている。
加えて全身から節足動物、軟体動物、脊椎動物問わず様々な腕が触手として生えているのだから気持ちの悪い事この上ない。
「気持ちの悪さだけならラスボス級だが――今更そんな見てくれのコケ脅しで、俺等がビビると思ってんじゃねぇ!!」
「見た目は兎も角、お前なんざ、闇の書の闇の足元にも及ばねぇ……何よりも、ラスボス戦後のイベントバトルってのは、主人公側が絶対
に負けないようになってるってのがお約束なんだよ!」
だが、志緒達は怯まない。
全員の思いを代弁するかのように、志緒と洸が夫々のソウルデヴァイスを最高評議会とゆりかごの成れの果て――偽りの不死者へと向け
て終了を宣言する。
同時に、其れが合図だった。
「捕らえて!」
まず最初に動いたのはシャマル。戒めの糸を使い、クラールヴィントのワイヤーで偽りの不死者を完全に拘束する。
無論これだけの質量を抑え込むのは普通なら無理だが……今のシャマルは何時もの金髪と赤みがかった黒の瞳ではなく、青みがかった
銀髪と空色の瞳に変化している――ツヴァイとユニゾンし、其の力を高めているのだ。
この状態ならばシャマル自身の力も増す上に、クラールヴィントのワイヤーの強度も高くなるので、これだけの質量の完全拘束が可能にな
るのである。
そして、これだけの巨体が動きを封じられれば、其れはもう只の的だ。
「郁島流空手師範代、郁島空、参ります!押忍!!」
「おっしゃ、オレも行くぜ!!」
其れを見て真っ先に飛び出したのは空と三月。
更にそれに続くように、スバル、ノーヴェ、ギンガ、ザフィーラ、アルフの格闘組が出撃し、本体に重い打撃を加えていくが、中でも凄いのは
空だろう。
尤も小柄な体格でありながら、その一撃は重戦車の如き重さで、偽りの不死者の身体を揺るがせるほどだ。
無論他のメンバーだって負けてはおらず、ザフィーラの一撃はゆりかごの装甲部分を砕いて内部を露出させ、其処にアルフが腕に雷を纏
わせてパンチを叩き込み、偽りの不死者を一瞬痺れさせる。
「真空波動拳!」
「電刃波動拳!」
「滅殺剛波動!」
「ハドウバースト!!」
スバルとノーヴェとギンガと三月が放った技は、若干突っ込み所があるモノの、確実にダメージを与える事は出来ているようだ。
だが、未だこれはただの先制パンチ。
「………」
「フリード!ヴォルテール!!」
「「紫電一閃!!」」
「ぶっ潰れろ!ラケーテンハンマー!!」
続いて無口少女・七緒が投擲したブーメランブレードが数本の触手を切り落とし、キャロが使役する2体の龍がブレスで身体を焼き、エリオ
とシグナムのダブル紫電一閃が装甲を切り裂き、ヴィータのラケーテンハンマーが頭蓋骨の一つを完全に粉砕する!
尤も砕かれてもすぐに、より醜悪な姿となって頭部だけは再生してしまうのだが。
だが其れでも攻撃の手は緩まない。
「やるぜ璃音!」
「うん!行こう洸君!Uw~~~~~……」
洸はレイジングギアのチェーンエッジを展開すると、其れに向かって璃音は熾天使の力を乗せた歌をぶつける……するとその歌の振動に
よってレイジングギアが震え、そして璃音の歌を何倍にも増幅して偽りの不死者に向けて発射する!
音と言う防ぎようのない一撃を増幅した上で指向性を持たせた『音の槍』は、反射も中和も出来ない攻撃ゆえに、偽りの不死者を貫く!!
『ぐ……貴様等なんぞにぃ!!』
これだけの攻撃を喰らっても生きている事に驚きだが、此処で偽りの不死者はゆりかごの船首から巨大な大砲を、機体側面から無数の機
銃を展開し、其れを一斉掃射して来た。
「させません……結界よ!」
「弾幕勝負なら負けないよ!」
だが、その攻撃も大砲の一撃は美月のハーミットシェルで防がれ、機銃の攻撃は祐騎のラムダショットの弾幕で相殺されてしまう……攻守
において、このチームには一切の隙が無かった。
「なのはを殺そうとしたおまえたちを、僕はぜったいゆるさない!!」
「人の命を奪おうとしたんだ……出来なかったその時は、死はテメェに跳ね返ってくる覚悟ぐらいはしてたんだろうなオイ!!」
続いて動いたのは、なのはの親友であるフェイトと、これまたなのはの(将来の)旦那である志緒だ。
此の2人にとって、なのはが殺されかけたと言う事実は、他の誰よりも許し難い事であり、故に攻撃も苛烈だ――と言うか、怒りで闘気が
高まったせいか、志緒のヴォーパルウェポンも、フェイトのバルディッシュのザンバーフォームも何時もよりも刀身が巨大化している。
「いい加減逝っちまいな!!」
「じごくでえんま様にさばかれてこーい!そんでもどってくんな!」
その巨大な剣で、志緒は炎の重斬撃を、フェイトは雷の高速斬撃を加え、結果的にこの2人の攻撃によって、全ての触手は切り落とされ、
足もまた破壊された。
「哀れね……ま、己の愚かさを呪いなさい。この毒は、そう言えばアンタ等が作ったモノだったわね。」
四肢を失って崩れ落ちる偽りの不死者の身体に突如突き刺さった爪の正体は二乃……彼女の本分はスパイ工作だが、だからと言って直
接的な戦闘力が低い訳では無い。
寧ろ暗殺者としての能力を駆使した闇討ちは強力であり、実際にこの場の誰にも攻撃の瞬間まで気付かれていなかったのだから。
其の二乃が突き立てた爪には、最高評議会が自ら開発した『物質を腐食させる毒』が仕込んであり、其れを喰らった偽りの不死者は爪を
突き立てられた場所から腐食し、崩れ落ちて行く……正に因果応報と言う奴だ。
『グ、我は不滅にして不死……我等は……!!』
其れでも腐食した部位を無理矢理再生しようとする執念はすさまじいが……
――ドガァァァァァァァァァァァァァァン!!
此処で突如天空からの光が偽りの不死者を貫いた。
其れを行ったのはこの場に居ない者……
「お父様、今の一撃は一体……」
「すんごい破壊力でしたわよ!?」
「ハッハッハ、衛星兵器……サテライトキャノンと言うのはロマンだとは思わないかい?」
「何を作ってんですか此のマッド。」
アジトに居たジェイル・スカリエッティだった。
何時の間にやら作っていたサテライトキャノンにマリーが突っ込みを入れたのは、ある意味で当然と言えるだろう。
そして――
「来たれ宿木の枝……」
『銀月の槍となりて撃ち貫け!』
「第一、第二、第三拘束術式解放……」
状況は完全に詰みの状態に。
アインスとユニゾンしたはやてが魔力を集中し、明日香が己に施されていた拘束術式を解放し、その真の力を解放する。
「『石化の槍、ミストルティン!!』」
「終焉の魔剣、コールドアポクリファ!」
そして放たれた石化の槍と終焉の魔剣は、偽りの不死者を石化させた上で凍り付かせ、一切の動きを封じてしまう……こうなった以上は、
もう滅びを待つだけだ。
「ブチかませや、なのはぁぁ!!!!」
――キュゴォォォォォォォォォ
そして偽りの不死者に滅びを与える一撃は、既に準備が出来ていた。
なのはは周囲の魔力を集めて必殺の集束砲を放つ準備をしていたのだが、これは何時もの集束砲ではない――周囲の魔力どころか、ミ
ッドチルダ全域はおろか、ミッドチルダ外の宇宙からも可能な限りの魔力を集めた正に超必殺技だ。
「ちょ、何あのピンクの元気玉!?」
祐騎が思わず突っ込んでしまったぐらいに、この一撃は相当なのだ。
「全力全壊!!」
『Starlight unlimited Breaker.』
「スターライトアンリミテッド……ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
放たれたのは星を砕く一撃……否、銀河ですら粉砕できるであろう全てを滅ぼす撃滅の光……攻撃が終わった其の後には、一切何も残
っていなかった。
この一撃を持って、不死の欲望に捕らわれた愚者は、完全にこの世から姿を消したのだった。
――――――
その一方で、完全敗北となった最高評議会派閥は恐慌状態にあった。
まさか自分達が負けるとは思っていなかったためにその混乱は相当な物だが……此処で更なる追い打ちが彼等を襲う。
『我々は、反最高評議会組織、新時空管理局――我等は決起する。
最高評議会派閥を撃ち滅ぼし、そしてミッドチルダの市民諸君に真の平和を齎す為に。』
突如ミッドチルダの上空に謎の次空航行艦が現れたと思ったら、次の瞬間には最高評議会一派が此れまでひた隠しにして来た違法研究
や企業との癒着、裏金や売春と言ったモノがネットを通じで暴露されたのだ。
これには最高評議会派閥の連中は当然驚くが、それ以上に驚いたのは其れをやった人物だ。
「馬鹿な……何故奴が……クロノ・ハラオウンは死んだのではなかったのか!!」
其れを行ったのは行方不明だったクロノだったのだから。
クロノがMIA判定を受ける事になったのも、実は最高評議会派閥がクロノを消そうとして画策した事だったのだが、クロノは辛くも生き延び、
レティの元に身を寄せ、今の今まで最高評議会派閥の目の届かない所で着々とトドメの一撃を用意していたのだ。
「まさか、こんな事まで用意していたとは、レティ提督が何処まで予測してたのか考えると恐ろしくなるわ……ま、何にしてもアンタ等はお終
いね最高評議会派閥の方々?」
「ランスター!何を暢気な事を言っている!!」
そんな状況でも冷静なティアナに対し、評議会派閥のメンバーは声を荒げるが、直後に其れはティアナに胸を撃ち抜かれて絶命した……
正に電光石火の早業――恐らく相手は殺された事にすら気付かなかっただろう。
「ランスター、貴様裏切るか!!」
「裏切る?……何時から私がアンタ達の味方だと勘違いしてたの?
私は最初からアンタ等の敵よ――アンタ等が兄さんを殺したって言う事はレティ提督から聞かされてたしね……ま、兄さんは生きてたけど
ね――だとしても、アンタ等は私の敵よ……そして、その罪を牢屋の中で悔いると良いわ!!」
最高評議会派閥の面子を適当にあしらうと、ティアナは指を鳴らし、その瞬間にレティの配下であった武装隊が部屋になだれ込み、最高評
議会派閥のメンバーを次々と拘束して行く――マッタク持って隙のない動きと言えるだろう。
「お見事、素晴らしい手腕ねランスター執務官?」
「貴女が巧く立ち回ってくれたお陰ですよオーリス女史。」
そんなティアナに話しかけたのはレジアスの娘であるオーリス・ゲイズ――最高評議会派閥の幹部であるレジアスの娘でありながらも、最
高評議会派閥のやり方に疑問を抱き、密かにレティと内通していたのだ。
「オーリス、貴様!!」
「お父様、潮時ですよ……ご自分の罪を認め、そして罰を受け入れて下さい。」
まさかの娘の裏切りに激高するレジアスだが、もう既に時は遅い――ティアナが射殺した1人を除いて、最高評議会派閥のメンバーは全員
が拘束され、最高評議会派閥は事実上の終わりを迎えたのだった。
――――――
Side:レティ
ふぅ……此れで全てが終わったわ。――其れで、何か用かしらリンディ?
「あら、態々言わないと分からないかしらレティ?貴女なら私が訪ねてきた理由は分かると思うのだけれど?」
「何の事かしら?……と、とぼけるのは簡単だけど、貴女相手には其れは通じないわねリンディ――そして、適当な誤魔化しも貴女には通
じないからね……良いわ、貴女の望みに応えてあげるわよリンディ。」
「レティ、スッゴク悪い顔になってるわよ?……相当なのね、今回の事は。」
えぇ、相当な事だったわ。
話すと長くなるけど、答え合わせと行きましょうか、リンディ。
To Be Continued… 
|