Side:志緒


クソッタレ共の謀略のせいで、ヴィヴィオが10S級のオメガグリードになっちまうとはな……普通なら、此処で諦めちまう所かも知れねぇだろ
うが、生憎と俺となのはに限っては諦めるって選択肢はしねぇんだ!
ドンだけ低確率だとしても、ヴィヴィオを助ける為に足掻かせて貰うぜ!!



「でも、その足掻きは悪足掻きじゃないです。
 必ず最後にはヴィヴィオを助ける事が出来るって、私はそう信じてますから――だからこそ、全力で足掻かせて貰います!!」

「なのは、テメェ……よくぞ吼えた!!」

無駄な足掻きなんてもんは絶対にねぇ!
足掻けば足掻くだけ、道が開けるって、少なくとも俺はそう信じてるからよ……最強の敵を相手に、精々足掻かせて貰おうじゃねえか!!

何よりも、コイツをぶっ倒さない限り、ヴィヴィオを救う事は出来ねぇからな……全力でぶちのめしてやんぜ!!覚悟しな!!












リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE142
『聖王との決着~Bravely Storm~』











喰らいやがれ!フレアスラッシュ!!



ディバインバスター!!


『Divine Buster.』


――ドッゴォォォォォォォォォォォォォン!!




「やった?」

「並の相手なら吹っ飛んだろうが……」



『うぅ……殺す…殺すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!』


俺となのはの攻撃を喰らっても小揺るぎもしねぇとは、ドンだけ堅いんだコイツは?――若しかしたら、聖王の鎧とやらの10倍近い耐久力を
備えてるのかよ……だとしたら脅威だぜ。
しかも其れだけじゃなく、最後に一欠けら残ってたヴィヴィオの意識が消えちまったせいで暴走して、無差別に近寄ったモノを攻撃する殺戮
マシーンになり果てたからな……コイツは、正気に戻すのも一苦労って所だぜ。



『グガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』



――ドッガァァァァァァァァン!!



加えてヤバいのは、コイツの攻撃力だ。
直撃しなくても、攻撃の余波だけで結構な圧力を与えて来やがるからな……直撃したら拙いのは当然として、バリアジャケットを纏ってなか
ったら、余波だけでもダメージを受けてる所だぜ。



「マッタクですね……さて、如何した物でしょうか?」

「普通に戦ってたんじゃ、千日組み手になって、何れはこっちがジリ貧になっちまうからな……此処は馬鹿デカい一発を打ち込んで、一撃
 必殺を狙うしかねぇだろ。」

「やっぱり、其れが一番ですよね……」



なのはも気付いてたか――否、気付いて然りって所か。
この手の相手をぶっ倒すには、彼是考えるよりも、喰らった相手を問答無用で戦闘不能にする技をブチかますしかねぇ……なのはがテメェ
の戦闘スタイルの集大成として編み出した不敗の奥義、スターライトブレイカーをな!

嘗て闇の書の闇すらぶち砕いたアレなら、コイツをぶっ倒す事だって出来るだろうからよ。



「当たれば確実に倒せると思います。
 でも、問題はどうやって当てるかです……ブラスタービットを展開して、魔力を集束して放つまでにかかる時間は約10秒――アレが10秒
 もの時間をくれるとは思えませんし、バインドで拘束しても10秒は拘束できないと思いますから。」

「成程な……だが、そう言う事なら話は簡単だ。
 その10秒、俺が稼いでやらぁ!」

「志緒さん……お願いします!」



任せとけや!!
行くぜバケモンが……ヴィヴィオの中から出て行きやがれクソッタレが!!








――――――








No Side


なのはがエネルギーを溜める為の10秒、其れを稼ぐために志緒はゆりかごの聖王に向かって行ったのだが、如何に適格者と言えども10S
級のグリードに単騎で挑むなど自殺行為だろう。
現実に、オーバーS級のグリムグリードと対峙して命を落とした適格者だって少なくないのだから。


「ドォォラァァ!!」


だがしかし、其処は高幡志緒。
相手が誰であろうと恐れる事なく、先ずは先制攻撃としてゆりかごの聖王の顔面に渾身のケンカキック一閃!嘗て恐竜型のエルダーグリー
ド相手に大立ち回りの喧嘩を繰り広げただけあって、今回もバリバリの喧嘩殺法で行く心算らしい。

更に其処から右ストレートを振り抜き、続いてヴォーパルウェポンを叩きつけてゆりかごの聖王の反撃を許さないラッシュを繰り出して行く。

その一方でなのはもブラスタービットを展開して魔力を集束し、必殺の一撃の準備をする。
準備が完了するまであと2秒――そこで、其れは起きた。


――ガシィィィン!!


「な、コイツは!!」

「バインド!!」



突如志緒となのはがバインドで拘束され、そのせいでなのはのスターライトブレイカーも中断され、集めていた魔力も霧散してしまう。
ゆりかごの聖王が、このバインドを放った様子はない……ならば誰なのか?


『ふはははは!良い様だな高町なのは、高幡志緒。
 貴様等が集束砲を切り札に選ぶのは予想していた……だからこそ、このタイミングで拘束させて貰った――切り札を潰された気分は如何
 なモノかな?』


「最高に最悪だぜ、この腐れ脳みそが。」

「自分は安全な場所に居て横槍……本当にクズだよね貴方達って。」


正解は最高評議会の脳みそ共だ。
ゆりかごの最深部に自らを移動させた連中は、己をゆりかごのコンピュータと繋いで意思疎通の能力を得ただけでなく、ゆりかご内部限定
ではあるモノの、ある程度の魔法を使えるようになっていたのだ。
其れを利用して、志緒となのはを拘束したのだ。


『何とでも言い給え……何をどれだけほざいても、勝てば正義なのだからね。
 さぁ、ゆりかごの聖王よ、この賊共に裁きの一撃を!ゆりかごを護り、戦争を終わらせる為にも、此の者達は殺すべきなのです!!』

『う……グアァァァァァァァァァァァァァ!!!』



更には暴走状態にあるゆりかごの聖王に対して、志緒となのはへの攻撃を行うように誘導し、ゆりかごの聖王は其の誘導に従って、己を中
心とした広域の魔力波を放つ。
其れこそ、これが市街地で放たれたら、半径2kmは焦土と化す程の攻撃だ――其れが、バインドで拘束されて身動きできない志緒となの
はに炸裂して大爆発!!


「………」

「…………」


そして、爆発が収まった其処には、倒れ伏すなのはと、瓦礫に埋まって右腕だけが見えている志緒の姿があった。



『クフ……くははははははは!!
 アレだけの攻撃を喰らっては無事ではいまい!よしんば生きていたとしても、これ以上の戦闘行為は不可能の筈……我々の勝利だ。』



其れを見た最高評議会は、己の勝ちを確信して大笑い。――如何に、光学映像とは言え、其れが大笑いしている以上、水槽の中の脳みそ
が、そう言う感情であるのは間違い無いだろう。
確かに此のままなら最高評議会の勝ちだろうが……



「相変わらず、胸糞の悪いやり方をするんだなお前達は……マッタク持って反吐が出るよ。」

『『『!!!』』』


突如聞こえて来た声に、モニターの中の光学映像が驚きの表情を浮かべる――其れも、1人だけじゃなく、3つの脳みそ全てがだ。


「随分と驚いてるみたいだな?……如何した、幽霊でも見たか?」

『貴様……何故生きている、ティーダ・ランスター!!』


現れたのはティーダ・ランスター。公式記録では殉職して死亡している事になっている魔導師だ。


「殺したと思った相手が生きてて驚いたか?
 確かに俺はアンタ等に殺されかけたが……如何にもしぶとかったみたいでな、何とか一命を取り留めたんだよ。――だが、俺が生きてる
 って知られたら、どうなるか分かったもんじゃないからな……レティ提督が、俺を死亡扱いにして自分の密偵にしたのさ。」

『あの女狐……小癪な真似を!!』

「こそこそと謀略めぐらす事しか出来ない奴が小癪とか抜かすなよ……盛大なブーメランだぜ其れは。」


嘗て自分達が殺したと思っていた魔導師が、実は生きていて自分達の前に姿を現した事に、最高評議会は驚くが、ティーダは絡繰をあっさ
りと明かし、更には軽く挑発までしていく。


「まぁ、そんな事は如何でも良い――俺はお前等に引導を渡しに来たんだ。
 まさか入り込まれるとは思ってなかったから、此の部屋には防衛用の装備は何もないからな……ま、もう十分生きたんだから、ここ等で逝
 っとけよ。
 お前等みたいな老害を越えたクソッタレは、この世界にとってマイナスにしかならないからな。」

『ま、待て!』

「誰が待つか、馬鹿野郎。」


そして、言うが早いかティーダは手にしたアサルトライフルを連射し、最高評議会の脳みそが入った水槽を砕き、脳みそ其の物も粉々に破
壊して行く。
同時に、モニターの光学映像は、断末魔の悲鳴を上げる事なく消失し、不死の欲望に捕らわれた者達は、呆気なくこの世から消え去った。


「其れと、彼等があの程度でやられると思ってるなら、おめでたいな。
 あの2人は、この程度ではくたばらない……高町なのはと高幡志緒を敵に回した時点で、アンタ等の敗北は決まってたんだ――哀れ過ぎ
 て、同情する気にもならないけどな。
 ……後は任せたよ、高幡志緒、高町なのは。」


己の役目を終えたティーダは、音もなくその場から消えたのだった。








――――――








Side:なのは


く……此れは可成り良いの貰っちゃったなぁ?
志緒さんは瓦礫の下敷き……志緒さんの頑丈さなら生きてるだろうけど、状況は最悪だよ――此れじゃあスターライトブレイカーを撃つ為の
時間を稼ぐ事も出来ないからね……此れは万事休すかな?
諦めたくは無いけど、この状況じゃあ――



「この程度、屁とも感じねぇぜこの野郎!!」



――バッガァァァァァァァァァン!!!



って、瓦礫が吹っ飛んで志緒さんが中から出て来た!?あの、大丈夫なんですか志雄さん?



「この程度どうって事はねぇ!!」

「あの、色んな所から血が出てますけど……」

「喧嘩に怪我は付きモンだろうが!!」

「ですよねー……」

「俺の頑丈さを舐めんじゃねぇ!
 要らねぇ横槍が入っちまったせいで、中断させられちまったが、今度は決めんぞなのは!最大の一撃をブチかましてやれや!!」

「はい!」

光学モニターの映像が突然途絶えて、以降何も言ってこないって事は、最高評議会の脳みそは誰かの手で始末された可能性があるから、
次は邪魔される可能性は無い。
レイジングハート、もう一度行くよ!



『All right.Starlight Breaker.』



――キュゴォォォォォォォォォォォォォ……




志緒さんが時間を稼いでくれている……だから絶対に此れで決める!!――ジャスト10秒、発射準備完了です志緒さん!!



「おっしゃ!そんじゃまぁ、追加の一発と行くぜなのは!」

「ですね!せーの!」


「「クロスドライヴ!!」」


そして、此処でクロスドライヴを発動!――此れでスターライトブレイカーは、無属性であるにも拘らず、ゆりかごの聖王に対しての有効属性
を得た……行くよ!

此れが私の全力全壊!!



ぶちかませ、なのはぁぁぁぁぁ!!

スターライトォォォォォォォ……ブレイカァァァァァァァァァァァァァ!!!!!



――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!











 To Be Continued…