Side:なのは
異界が発生して、其れを攻略してから数日……此のところ、ジュエルシードが発動してないみたいだね。
発動条件を満たすだけの願いがないのか、其れとも発動する前に、私達以外の誰かが回収してるのか……如何思いますか、志緒さん?
「恐らくは前者だな。
発動する前のジュエルシードを、俺達以外の何者かが回収してる可能性もない訳じゃないが、発動前のジュエルシードを探し出すのは、富士山からたった1個の
ビー玉を探し出すくらいに難しい事だ……そうだろ、ユーノ?」
「うん。発動すれば、その魔力を探知できるからすぐに現場に向かう事も出来るんだけど、発動してないジュエルシードは只の石に過ぎないからね。
偶然未発動の物を見つけてしまう事はあるかも知れないけど、発動して居ないジュエルシードを、探し出すのは凄く困難だと思う。と言うか、先ず無理だよ。」
「そうなんだ。」
となると、やっぱり発動するだけの何かがないって言う事なのかな?
流石に、この前みたいに異界出現のトリガーになるのはゴメン被りたいけど、発動しないとジュエルシードの回収は出来ないから、小規模な発動は有って欲しいの。
発動したら、即私達が封印に向かうからね!
「おぉ、なのはちゃんカッコいい~~!
この間の異界化で恐れるどころか、寧ろやる気満々だね?流石は、志緒先輩が認めただけの事はあるわよ!!つまりは、全力全壊って事でしょ?」
「全力全壊ですよ璃音さん!!」
「なんだか、全力全開が別の意味に聞こえるのって、僕だけなのかな?
なのはが言う全力全開って、凄く物騒な意味が含まれてる気がするんだよね……」
其れは、全力全開じゃなくて、全力全壊ですから!その差ですよ祐騎さん。
って言うか『全力全開』は当たり前ですから、その先は『全力全壊』じゃないとダメなんです!!だから、私は全力全壊でやるだけなの!!
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE13
『Encounter of destiny:Fate』
で、話しは変わりますけど、今度の土曜日に、すずかちゃんの家でお茶会があるんですけど、その日手が空いてる人は一緒に如何ですか?
すずかちゃんとアリサちゃんが、『誰でも良いから、異世界からの来訪者を連れて来て』って言う事を言ってまして……まぁ、多分純粋にお話しをしてみたいって言う
事だと思うんですけど……誰か、手の空いてる人は居ますか?
「あ、その日だと私が非番です。」
「空さんが非番だったんですか?……だったら、一緒に行きませんか?」
「其れは、構わないけど、私が行ってもいいのかななのはちゃん?
折角のお友達とのお茶会に、高校生が立ち入るって言うのは、少しばかり気が引けるのだけど……」
無問題です空さん。
寧ろ、ウェルカムです!さっきも言いましたが、異世界からの来訪者を連れてこいとの事なので、是非とも一緒に参加してほしいのです!!
其れに、すずかちゃんの家は、海鳴でも有名な『猫屋敷』ですから、きっと空さんも楽しめると思いますよ?空さんも、猫は大好きですよね?
「大好きだよ!!流石に、アユミちゃんの猫好きには負けるけど、自由奔放な猫は、見ていて飽きないから。
でも、そう言う事なら、参加させてもらうね?猫の写真撮って、杜宮に戻った後で、猫好きの友達に送ったら喜んでもらえると思うし♪」」
「それは、良いですね♪なら、宜しくお願いします。」
「ま、ダチ公との交流ってのは良いもんだし、その交流で縁ってのはより強くなるってモンだからな。
其れに、あの2人は、なのはにとって一生涯のダチ公になるだろう事は間違いねぇ……思い切り楽しんでくりゃいいさ。」
「空も、翠屋の方は俺達に任せて、楽しんで来いよ。」
「はい、志緒さん♪」
「はい、洸先輩♪」
「……なのはちゃんは勿論だけど、空ちゃんも時坂君に対しては……」
「ワンコだわ。犬耳と尻尾が見えるわ……まぁ、空ちゃんの場合は、兄に懐く妹って感じで恋愛要素は無さそうだけど……」
…?何か言いましたか、明日香さん、璃音さん?
「あ~~、何でもないから気にしないで~?なのはちゃんと、空ちゃんが可愛いって話だから♪」
「「ふえぇ!?」」
「その純真さと素直さは、掛け替えのないモノよ?2人とも大事にしてね?」
「「は、はい!!」」
ま、まさか、こんな事を言われるとは思っても居なかったの。しかも、明日香さんみたいな人と、元の世界ではトップアイドルグループのセンターの璃音さんに言われ
るだなんて……うん、頑張るの!!
「純真さと素直さ……お前には、最も縁遠い言葉だな北都?」
「高幡君、其れは暗に私を腹黒と言っているんでしょうか?」
「そんな心算はねぇが……ワリィな、つい本音が出ちまったみてぇだ。」
「殴らせてください、高幡君♪」
「だが断る。」
え~っと、喧嘩はダメですよ、志緒さん、美月さん?みんな仲良くしなきゃダメなの。
「……訂正します高幡君。確かになのはちゃんの純真さは、私には最も縁遠い言葉でした。」
「分かりゃいい。
まぁ、茶番は此処までにしてだ……もしもその日に、ジュエルシードが発動した時には、お前達に一任するぜ、なのは、郁島。」
へ?志緒さん?
「すずかもバニングスも事情は知ってるって事だから、問題はねぇだろう?
時間にもよるが、場合によっちゃ俺達が出張る事が難しいって事も有るからな……だから、お前達に任せてぇんだが……不都合だったか?」
「……其れを聞きますか志緒さん?
不都合なんて何もないです!ジュエルシードの封印と回収が、私達の目的なんですから、其れを遂行する事に何の迷いも不都合もありはしません!!今の私達
のやるべき事をやるだけなの!」
「その通りですよ志緒先輩!
ジュエルシードの封印と回収こそが、私達の目的です!その目的を成す為ならば、一任していただいても問題ありません!!」
「良い返事だぜ。
だがまぁ、其れも発動したらの場合の話だからな、先ずは普通にお茶会とやらを楽しんでくりゃ良いだろ。」
もしも何か起こった時は、ですね。
確かに、ジュエルシードはまだたくさんあるから、『もしも』は考えておいて損はないだろうなの……でもまぁ、まずはお茶会を楽しむ事を考えないとだよね♪
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と、言う訳で、お茶会当日。
お兄ちゃんも忍さんに呼ばれてたみたいで一緒に来たんだけど、玄関で会うなり忍さんに拉致られちゃったの……まぁ、此れもある意味で何時もの事と言えるんだ
けど、此のままだと、私は小学生の身で『叔母さん』になっちゃう可能性が否定できない感じなの……
「そうなったら、なのはちゃんは私のお姉ちゃんに成るのかな?」
「リアルに生々しいから、其れは言わないですずかちゃん!!」
そんな未来が、何て言うか略確定してる気がするからね。
さて、お茶会の方は思った以上に盛り上がってる感じなの。
アリサちゃんとすずかちゃんが、空さんに杜宮での事とかを色々聞いて、空さんも其れに丁寧に答えて、時々猫と戯れて…何て言うか、凄く良い時間だよね此れ。
正に『癒しの空間』だよ。
「へ~~~、地名は同じでも字が違うのね?」
「そうなるかな?『東京』は『東亰』で、『九州』は『玖州』だし、杜宮に至っては地名まで変わってるからね……まさか、立川なんて言う地名になってるとは……」
「なんで、其処だけ変わっちゃんだろうね?」
何でだろうね?
或は、向こうの世界での杜宮は大きな事件の舞台になったって言う事だから、其れが重ならない様に地名が異なるのかも……あはは、流石にトンでも論だけど。
でも、それらを踏まえた上で聞きたいんですけど、こっちの世界でも『東亰震災』に匹敵する天災って起こるんでしょうか?
「分からないけど、その可能性は低いと思うよ?
明日香先輩が言うには、東亰震災は極めて強力な『グリムグリード(エルダーグリードよりも強力なグリード。脅威度は最低でSランク)』が引き起こしたって言う事
だから、こっちの世界で東京震災が起こる可能性は、多分限りなくゼロに近いと思うよ。」
「そうなんですか?」
「東亰震災の引き金となった5S級のグリムグリードが現れる事は滅多にないって言う事だし、そもそも本来は異界化その物が頻発する物じゃないみたいだから。」
成程、其れなら安心しました。
それで、如何ですか空さん?このお茶会は?
「え?…うん、凄く楽しませて貰ってるよ?
お茶もお菓子も美味しいし、此れだけの猫ちゃんが居るって言うのは、凄く癒されるし……いっそ、猫カフェをオープンしても良いんじゃないかと思う位だから。」
「其処まで!?」
「その発想は無かったなぁ?……お姉ちゃんに相談してみよう。」
なはは、意外とノリノリだねすずかちゃん。
って、頭の上に猫が張り付いてますよ空さん!!いえ、頭の上だけじゃなく、両肩に膝の上にも猫がもっさりです!!気が付けば猫塗れですよ空さんーーー!!
「かく言うアンタも、頭の上にハネキツネが……」
「ついて来てたのリヒトーーー!?」
「♪」
ま、まぁ良いけどね?
動物に懐かれるっていうのは悪い事じゃないし、寧ろ良い事だってお母さんも言ってたから――
――キィィィィィィイィィィィィン……
「「!!」」
って、此れは…この感じは!!
「うん、間違いない。」
「なのはちゃん?空さん?」
「ちょ、如何したのよ2人とも?」
ゴメン、すずかちゃん、アリサちゃん……如何やらジュエルシードが発動したみたいなの。其れも直ぐ近くで!!
このまま放っておいたら、大変な事になりかねないから、封印をしないとなんだけど、一時空さんと一緒に席を外しても良いかな?
「ジュエルシードが?……だったら、是非もないわ!
さっさと出動して、余裕で封印して『私の敵じゃない』って、決めて来なさいよ。」
「行ってきてなのはちゃん。
聞いただけだけど、ジュエルシードって言うのは物凄く危険なモノで、でも現状で其れを如何にか出来るのはなのはちゃんだけなんでしょう?だったら行ってきて。
戻って来た時の為に、新しいお茶とお菓子を用意してまってるから。空さんもお願いします。」
「押忍!任されました!!行きましょう、なのはちゃん!」
はい!!
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と言う訳で、ジュエルシードが発動した現場に来た訳なんですけど……空さん、此れは一体何でしょうか?
「猫……かな?余りにも大きすぎるけど。」
「に゛ゃあぁぁぁぁごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
うん、確かに外見は猫。もっと分かり易く言えば子猫なんだけど、目の前の此れはドレだけ少なく見積もっても、全長20m、体長12mはある超巨大にゃんこなの!
幾らなんでも大きすぎるの!!此れも、ジュエルシードの影響なのユーノ君!!
「多分そうだと思う。
推測の域は出ないけど、子猫の『大きくなりたい』って言う願いを、ジュエルシードが歪んだ形で叶えた結果、こんな事になったんだと思うよ。」
「成長と巨大化は、全然別だと思うんだけど……」
「ジュエルシードの歪み具合が良く分かりますね。」
でもまぁ、現状では実害は皆無みたいですから、さっさと封印して回収する事にしましょう。
幸い相手は、其れほど危険な感じがしないので封印砲撃一発で終わらせる事が出来ると思うから、空さんは万が一の場合に備えていて下さい。
「押忍!了解しました!!」
お願いします!!
……ゴメンね猫さん、少し痛いかもしれないけど、其れも貴方を助ける為の事だから、ちょっとだけ我慢してね……レイジングハート!!
『All right.Ceiling mode Setup.』
「封印すべきは忌まわしき器!ジュエルシード………」
「光翼斬!!」
――ズバァァァアァァァァァァァァァァァアァァァァァァァ!!!
って、えぇぇぇぇぇぇぇえ!?
私が砲撃を放つのと同時に、別の魔法が巨大猫に着弾して大爆発!!まぁ、ジュエルシードを封印する事は出来たと思うんだけど……今のは誰が?
「まさか、僕以外の魔導師が、じゅえるしーどを集めてるとは思わなったけど、此れは絶対に渡さない。全てのじゅえるしーどは、僕が手に入れるんだ。」
「貴女は……」
私の考えに応えるようにして現れたのは、青髪をツインテールにして、黒いバリアジャケットを纏い、ウォーアックスを思わせるデバイスを装備した女の子って!!!
確かに、私以外の魔導師が居たって不思議はないのかも知れないけど……
「貴女は…一体何者なの?」
気が付けば、私は無意識のうちに話しかけていた。
何でか何て言う事は分からないけど、敢えて言うとしたら、この子が嘗ての……志緒さんと出会う前の私と同じだと、直感的に感じ取ったからなのかも知れないね。
――――――
Side:フェイト
じゅえるしーどの発動を感知したから現場に来たんだけど、まさか先客がいるとは思わなかった。……おっきな猫を攻撃したのは、心が痛むけど此れは必要悪!!
それよりも、問題なのは僕よりも早く現場に来てただろう白い魔導師の女の子……
僕なら負ける事は無いと思うけど、あの子から感じる魔力は、一歩間違ったらお母さんにも勝るとも劣らない感じがした……でも、僕は絶対負けられないから!!
負けちゃダメなんだ、全てのじゅえるしーどを手に入れなくちゃ。
「貴女は、誰なの……?」
「へ?」
でも、注意がじゅえるしーどに向いてたせいで、僕は相手の問いに咄嗟に答える事が出来なかった……だけど、誰だって言われても答えようがないよ?
だけど僕は僕だ。お母さんの娘である『フェイト・テスタロッサ』だ!それ以外の何者でもない!!誰にだって、否定はさせない!!
「僕は僕だ、それ以外の何物でもない……だから退いた方が良いよ?
君は君でじゅえるしーどを集めてるのかも知れないけど、僕も僕でじゅえるしーどを回収してた訳だからね……このじゅえるしーどは、僕の物だ!!!」
「それは、ちょ~~~っと、無理がある理論かもだけど、ある意味では正論と言えるかも知れないの。暴論上等レベルだけどね。
だけど、後からノコノコ現れてきた人に、みすみすジュエルシードを渡す事なんて出来ない!!出来る筈がない!!」
なら、交渉は破談だね。――貰うよ、其のじゅえるしーどは!!
To Be Continued… 
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