Side:志緒
エリオとキャロが保護したガキンチョが、まさかヴィヴィオだったとは、流石に予想外だったぜ……尤も、この場でコイツがヴィヴィオだって言
うのを知ってるのは俺だけだから、滅多な事は言えねぇがな。
にしても完全に怯えちまってるなコイツは?……まぁ、大体あのシスターのせいだろうが、怯え切ってるガキを放っておく事は出来ねぇな。
と言う訳で……
「ござるーーー!!!」
先ずは、お手製のモリマル人形で先制攻撃だ。
コイツは特別可愛いって訳でもないが、この何とも緩い感じが杜宮で人気爆発だからな……ヴィヴィオみたいなガキが食いつくのは間違い
ないぜ。
「ふえ?」
「拙者、モリマルでござる~~!
杜宮を守っている精霊なのでござるよ~~!!」
「そして今は、君を守る為の精霊にござる~~♪」
って、乗って来たかなのは!!……マッタク、中々やるじゃねぇか?
俺のアドリブに合わせるとは、悪くなかったぜなのは?――其れに、今のでヴィヴィオの緊張も解れたみたいだからな。
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE134
『少女の保護と嵐の前の何とやら』
其れからなのはと一緒にガキンチョもとい、ヴィヴィオを落ち着かせる事20分……漸く落ち着いてくれたが、自分の名前を名乗った後でヴィ
ヴィオが言った『パパもママも居ない』って言うのは聞き逃す事は出来ねぇ。
そのままの意味で取れば、ヴィヴィオは捨て子って事になるからな。
そうじゃなくても、発見時の事を考えれば、コイツが真面な家庭で育った事じゃないのは分かるからな?……ならコイツが、俺や一馬と同じ
運命をたどるってのは、何としても阻止しねぇとな。
テメェの人生を後悔はしてねぇが、あぁ言う生き方ってのは世間的にはあんまし褒められた事でもねぇしよ。
それ以前に、あの時現れた未来のヴィヴィオは俺となのはの事を『パパ』と『ママ』って呼んでた訳だから、何らかの形で俺となのははヴィヴ
ィオを養子にしたって事だ。
なら、その未来を確定しなきゃならねぇか……
「ねぇスバル、身元引受人とか後見人の申請って管理局の市民課にすればいいんだっけ?」
「へ?あ、はい。其れで大丈夫です。
書類が受理されて、審査が終わって問題が無ければ申請が通ります――そうなれば、後は養子縁組でもなんでも割と簡単に出来ます。」
「成程な……ならスバル、俺となのはがコイツの、ヴィヴィオの身元引受人と後見人になっから、その旨を直接レティさんに伝えて貰っても構
わねぇか?
普通に申請しても良いんだが、俺となのはは立場上間違いなく許可が下りねぇだろうからな。」
だが、普通には無理でもレティさんに手を回して貰えば大丈夫だろ?
あの人は管理局でも可成りの地位と権力を持ってるから、書類の一つや二つ、通常の業務処理をせずに通す事は難しくねぇし、提督権限で
許可する事位可能だろうしな。
「パツキン兄ちゃんの考えてる事が若干アウトっすよね?」
「若干じゃなくて完全にアウトなんだが、其れ言ったらアタシ等N2Rだって、レティ提督が自分の権力フルに使って作った私設部隊みたいな
モンだからなぁ?
つか、案外この人達に保護して貰った方が良いかもだ。」
「うむ、ノーヴェの言う事は一理ある。
彼女が保護された時の状態を考えると、レリックと何らかの関係があるのは間違い無いので、管理局や聖王協会で保護し続けるのは最高
評議会の近くで保護しているのと同じであり、連中に狙われる可能性が高くなるからな。
いかがだろうか、姉上?」
「そうね……うん、ノーヴェとチンクの意見を採用しましょう。
レティ提督には、直ぐに伝えれば下手をしたら数時間後には志緒さんとなのはさんが其の子の保護者になる事も出来るでしょうから。」
「今更ながらに、ハンパないよねレティ提督って……」
「そして、その権力の使い方が結構正しいから、ね。」
……聞いて貰えれば御の字と思って言った事がマジで通っちまうとはな?
レティさんは、この世界での10年前の闇の書事件の事で、俺達の事は知ってる訳だから、其れを考えたら速攻で許可してくれるのは頷く事
が出来るけどよ。
「ま、そう言う訳で俺となのはが、お前の身元引受人と後見人になるぜ。」
「よろしくね、ヴィヴィオ?」
「……身元引受人と後見人って何?」
おっと、子供には少し難しかったか?
身元引受人と後見人てのはつまり……オイなのは、こう言うのを子供に分かり易く説明する場合にはどうやったらいいんだ?孤児院のガキ
共を相手にする事は有るが、こう言う小難しい事を説明する機会なんざないから分からねぇんだが……
「ふえぇ?そ、そんな事言われても私だって分かりませんよぉ!?」
「つまりはお手上げって訳か……よし、何とかしろナカジマ六姉妹。」
「おい、こっちに丸投げすんなよ!!」
「ぶっちゃけアタシ等にも無理っすよ~~……てか、身元引受人と後見人てなんか違いあるんすか?」
「ウェンディ、管理局員なんだから其れ位理解してようよ……」
「お姉ちゃんちょっと心配だわ……」
「うむ、姉も心配だ……」
何とかなるかと思って丸投げしてみたが、やっぱり駄目だったか……さて如何したもんか?……ん?スバル?
「あのね、志雄さんがヴィヴィオのパパで、なのはさんがヴィヴィオのママって言う事だよ。」
「この人達が、私のパパとママ?」
「そう、志雄パパとなのはママだよ♪」
……成程、そう言う説明の仕方が有ったか。
少々語弊はあるだろうが、完全に間違ってるって訳でもねぇから、この説明でも全然OKだ――ってか、これで俺となのはが、ヴィヴィオの親
になる未来は確定できたから、そう言う意味ではナイスプレイだぜスバル。
「ふふ、御二人が其の子のパパとママですか……まるで夫婦ですね?」
「何を言ってやがるギンガ、まだ籍は入れてねぇ。」
「そうだよ、未だ夫婦にはなってないよ?」
「未だって事は、予定はあるんですか?」
取り敢えず、この一件が片付いたら、なのはの家に挨拶に行って、其の後で何とか杜宮になのはを連れて行ってオヤッさんと女将さんに紹
介して、OK貰ったら速攻で籍入れる心算だ。
まぁ、多分OKはして貰えんじゃねぇかって思うけどな。
「私の両親は多分大丈夫だと思いますよ?
お父さんもお母さんも志雄さんの事気に入ってますし、『なのはが将来結婚する相手は志雄君みたいな人が良い』って言ってましたから。」
「マジか?」
「マジです。
なので、私的には私が認めてもらえるかがちょっと心配ですねぇ……」
いや、大丈夫だと思うぜ?
オヤッさんは『良い年なんだから女の一つでも作りやがれ』って言ってるし、女将さんも『志緒が結婚して身を固めてくれたら安心できる』って
言ってるから、多分俺がお前を連れて行っても速攻で了承は間違いねぇ筈だ。
「そうなんですか?なら、安心ですね♪」
ま、そう言う事だから身元引受人と後見人の件は頼んだぜ?
只、そいつが許可されるまでは、ヴィヴィオは此処に置いとかなきゃならねぇから、その間の護衛は頼むぜ?俺もなのはも、立場的に24時
間護衛する事は出来ねぇからな。
俺達は世間的にはテロリストって認定されてるしよ。
「其れについては大丈夫です。
今し方レティ提督に確認を取ったら『書類の方は此方で何とかしておくから、保護した子は連れて行って貰いなさい』との事でしたので、ヴィ
ヴィオの事は連れて行ってくれて構いませんよ。」
「アッサリ行ったなオイ?」
「レモンジュースも真っ青のアッサリさですね此れは。」
だがまぁ、面倒な事が無くていいと思えば悪い事でもねぇか。
ウシ、帰るぞヴィヴィオ、お前の新しい家にな――俺達以外にも色んな奴が居るが、取り敢えず誰一人として悪い奴はいねぇし、お前を虐め
るような奴も居ねぇから安心しな。
「怖くない?」
「大丈夫、怖くないよ。皆いい人だから。」
「分かった……パパ、ママ、其処に連れて行って?」
頼まれなくてもその心算だぜヴィヴィオ。
そんじゃあまぁ、帰るとすっか、俺達の家――スカリエッティのアジトにな!!
んで、戻ったら戻ったで、時坂と四宮が盛大にからかって来やがったから、取り敢えず脳天に拳骨喰らわせてやったぜ……俺は良いが、度
の過ぎたからかいで、なのはが沸騰してたからな。
ったく人をからかってる暇があったら、お前等もさっさと籍入れて身を固める事を考えろってんだ――四宮は兎も角、時坂は可成り難しいかも
知れねぇがな。
「いっその事色々暴露して、東亰ドームで結婚式でもやっちゃう?」
「いや、其れは勘弁してくれ璃音……なんて言うかガラじゃない。」
「むぅ、東亰ドームは駄目か……じゃあ、日本武道館にしよう!」
「いや、そう言う事じゃねえからな璃音!?」
「とーきょーどーむ?僕行ってみたいーー!らいおんずとじゃいあんつの試合をなまでみてみたいぞーーーー!!」
……取り敢えず、アジトは今日も平和って所だな。
フェイトがヴィヴィオを気に入った事も有って、ヴィヴィオもアジトの連中と慣れたみてぇだからな――狼形態で、ヴィヴィオを背に乗せてアジト
の案内を買って出てくれたザフィーラには感謝してもし切れねぇ。
今度、牛の良い肉を手に入れて牛刺しでも奢らせて貰うぜ。
何にしてもヴィヴィオは保護した……後は最高評議会をぶっ潰すだけだぜ!!
「うむ、そろそろ最高評議会を潰す時だろう。
近く管理局の本部で公開意見公聴会が行われるんだが、其処で最高評議会が何かを仕掛けてくる可能性は可成り高いから、此方も其れ
を利用して最高評議会を叩く。
恐らくだが、レティ提督も同じ事を考えてるだろうから、N2Rの諸君と君達が連携すれば、其処でケリをつける事も出来るだろう。
ヴィヴィオ君の事は、我々に任せておきたまえ――エリオ君とキャロ君、其れに三月と七緒が居れば、大抵の敵は有象無象の烏合の衆で
しかないからね。」
そいつを聞いて安心したぜスカリエッティ。
なら、公開意見公聴会とやらで仕掛けようとしようじゃねぇか……なのはを殺そうとしたクソッタレ共によ!!
テメェ等が何を考えてなのはを殺そうとしたのか、その理由は如何でも良いぜ……大事なのは、テメェ等がなのはを殺そうとしたって言う、そ
の事実だからな!!
精々首を洗って待ってな……テメェ等が殺し損ねた最強のエースと、杜宮最強の不良が、テメェ等の首を狩りに行くからよ!!
尤も、脳味噌だけの奴の首を狩るってのはちょっと矛盾してるけどな。
――――――
Side:ティアナ
事は順調に進んでる……計画通りなら、公開意見公聴会が一つの大きなポイントになるのは間違い無いし、このポイントでは管理局が表面
上は負ける事が確定してる――そう言うシナリオだからね。
そして、私にとっても、公開意見公聴会は、大きな節目になる……まぁ、私は所詮与えられた役を演じる事を命じられただけの『アクター』だ
から、己の役目を果たすだけだけどさ。
「ぐあ……ランスター、貴様……一体如何言う心算だ?我々を殺すなど、只では済まんぞ――この事が表沙汰になれば貴様は……!!」
「……本気でやったのに、まだ生きてる奴が居たとは……台所のGも驚きのしぶとさね?」
で、此の事が表沙汰になったら何なの?私は最高評議会に居られなくなるって?……そう考えてるんだとしたらおめでたいとしか言いようが
ないわね?
「な、どういう事だ?」
「答える義理は無いけど、冥途の土産に教えてあげるわ……私は、最高評議会じゃない。」
「!!……貴様まさかーー!!」
「はい、其処までよ。」
――ガァァァァァァァン!!!
……ダガーモードで喉を切り裂くべきだったかしら?
至近距離で頭を撃ち抜いたせいで、バリアジャケットに血だけじゃなく飛び取った脳漿までもが着いちゃたわ……洗わないとダメね此れは。
取り敢えず、最後の最後まで利用させて貰うわよ最高評議会……そして、覚悟しておきなさい――年貢の納め時はそう遠くは無いからね。
To Be Continued… 
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