Side:志緒


オークションから数日……この所は、妙な事件も起きてなくて平和なんだが、その平和は、仮初の物でしかねぇ……最高評議会をぶっ潰さ
ない限り、ミッドチルダに真の平和が訪れる事は無いだろうからな。



「うむ、君の言う通りだが、ホテル・アグスタでの一件以降、最高評議会は表立っての活動を控えているから、有力な情報を得る事は出来て
 いない……が、逆に此れは良い機会だ。
 レティ提督の直属部隊の面々も、今日は暇を貰ってるみたいだから、今日は私達も1日フリーとしよう。
 偶には、平和な世界を謳歌しても、罰は当たらないだろうからねぇ。」

「其れで良いのかオイ……」

基準が軽いとしか言いようがねぇが、スカリエッティの野郎が大丈夫だって言うならそうなんだろうな――スカリエッティの頭脳は、四宮が無
条件で白旗を上げる位のレベルだったからな。


にしても休日か……さて、どうしたもんか?
部屋で怠惰を貪るってのもアレだから、バイクで街に繰り出すか――スカリエッティ製のガジェットの再生品てのがアレだがな。



「わ、私も連れて行ってくれますか志雄さん!」

「なのは……良いぜ?その代わり振り落とされないように注意しな!」

「はい!!」



良い返事だな?
其れによくよく考えてみりゃ、こっちに来てからは戦いばっかで真面な休日を過ごした記憶がねぇから、偶にはこう言うのもアリだろ。














リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE130
『偶の休日にデートは基本である』











Side:なのは


休日のお出掛けって言う事だけど、志雄さんと2人でのお出掛けって、此れは如何考えてもデートだよね!?……そう言う訳で、服装も可成
り気合を入れて来たよ!
バイクでお出掛けって言う事だから、スカートじゃなくて七分丈のジーパン、薄紅色のボタン付きシャツに若草色のベストを合わせて、首から
レイジングハートを下げてね。
因みにレイジングハートは紐じゃなくて、細いチェーンに変更してあるんだけど、変じゃないかな?



『No problem.Master.(問題ありません。マスター。)』

「そっか……ありがとう、レイジングハート。」

10年来の相棒であるレイジングハートに『問題ない』って言われたら、自信になるよ――少なくとも、ファッションセンスは悪くないって言うの
は間違い無いからね。


そんなこんなで待ち合わせ場所である、アジトの入り口来たんだけど



「やっと来たか……女は身支度に時間がかかるとは聞いてたが――だがまぁ、時間を掛けただけはあるみてぇだな?」



……待ってた志雄さんは、本気でカッコ良かったです!!
黒のスラッグスに、黒にグレーのラインが入ったYシャツに細めの黄色のネクタイを緩めに締めて、グレーのチョッキの上から白の短ベストっ
て言うコーディネートは、志雄さんの魅力が此れでもかって行く位に凝縮されてるからね……私の負けで良いですマジで。



「なんの勝負してんだお前は?」

「何って言うか、コーディネート勝負でしょうか?
 志雄さんてシンプルなコーディネートが多かったので、こんなお洒落なコーディネートが出来るとは驚きですよ!!」

「……此れは俺のコーディネートじゃねぇ。
 杜宮に有る『ブティック・ノマド』の店長が俺用に作ってくれた特注品だ……頼んだ訳じゃないんだがな。
 俺としては作って貰う心算は無かったからアレなんだが、折角作って貰ったモンをタンスの肥やしにするのも悪いから、何処かに出掛ける
 時には使うようにしてるだけだ。」



ほへ?そうだったんですか。
でも、こんなに志雄さんに似合う服を仕立てるなんて、そのブティックの店長さんって可成りの腕前なんですね!!



「まぁ、腕前は確かだろうな……ただし、ピンクのスーツに身を包んだおかっぱ頭のオカマだけどな。」

「……其れはまた、何とも強烈なキャラクターですね……」

「因みにだ、高校時代は時坂のバイト先の一つでもあったらしい……ある意味で、度胸あるぜ時坂は――よく掘られなかったもんだ。



うわぁ、洸さんチャレンジャーですね。
その店長さんは、女性には世界一安全な生き物でしょうけど、逆に男性には世界一危険な生き物ですよ絶対……まぁ、悪い人じゃないんだ
ろうけど。

っと、そうだ志雄さん、出掛ける前に此れを返しておきますね?



「コイツは、あの時の?」

「はい、10年前に預かったウォレットチェーンです。
 再会した時に返してくれって言ってたので、お返ししますね?……何だかんだで、返す機会が無かったので。」

「そうか。……だが、返さなくて良いぜ其れ。
 再会した記念て訳じゃねぇが、お前にやる。」

「へ、良いんですか!?一番のお気に入りだったんじゃ……」

「そうだったんだが、アキの奴が俺がそいつを付けてねぇのを、如何やら無くしたと勘違いしたらしくてな……蓬莱町の骨董屋で同じモンを買
 って来やがってな?
 俺も同じ物持ってんだよ……流石に同じのを2本持っててもしょうがないんでな……良ければ貰っておいてくれや。お古で悪いがな。」



いえ、そんな事有りません!
くれるって言うなら、有り難く貰っておきます!……其れに、此れって志雄さんとお揃いって事になりますから♪



「言われてみりゃ確かにそうだな?
 まぁ、そう言うのも悪かねぇか……そんじゃまぁ、そろそろ出掛けるとしようじゃねぇか?――ブッ飛ばして行くから、振り落とされるなよ!」

「は~~い!」

志雄さんのバイクに乗って、いざデートスタート!
今日は最高の一日になりそうだね♪








――――――








Side:璃音


今日は完全オフって言う事だから、洸君とデート!
杜宮じゃこんな事は滅多に出来ないからね~~~……アタシとしては交際宣言したい所なんだけど、事務所からダメって言われてるから中
々デートとかできないし。
アイドルグループのメンバーとマネージャーが付き合う位、割と普通だと思うんだけど、如何よ洸君?



「お前の気持ちは分からないでもないけど、俺としては有り難いぜ?
 アイドルとマネージャーが付き合うってのは、確かに珍しい事じゃないけど……俺は夜道で背後から刺されたくねぇ。つーか、夜の商店街
 が怖すぎる。
 下手したら僚太が菜切り包丁で斬りかかってくるかもしれないしな。」

「其れは如何だろう?
 伊吹君て、チヅルちゃんと付き合ってるんでしょ?」

「僚太曰く、『彼女が居る事とアイドルのファンである事は別』らしいぜ?」



成程……ってか、伊吹君はアタシと洸君が付き合ってる事知ってるよね!?



「単純に高校時代、学園で何かと噂の美少女達と一緒に居た俺を、そして璃音と付き合ってる俺を色々と殴りたいらしい……尤も、殴って来
 たら来たで、カウンターをブチかました上でチヅルちゃんに突き出すけどな。」

「ウワォ、洸君グレイト……」

伊吹君も二十歳なんだから、そろそろ落ち着いても良いと思うんだけど、あれが彼の個性なんだろうから仕方ないか。
其れで洸君、此れから如何しようか?
アタシ的には、ミッドチルダで大ヒットしてる映画って言うのを見たいんだけど。



「別に構わねぇが、何て映画なんだ?」

「『魔法少女リリカルなのはThe Movie~2nd A's~』
 闇の書事件の事を描いた『事実を基にしたフィクション』って事みたい……当然だけど、アタシ達も出演してるみたいだからね?
 ぶっちゃけて言うと、なのはちゃんやアタシ達をどんな人が演じてるのか見てみたい!特に志雄先輩役を!!」

「色々突っ込み所はあるが、確かにそいつは興味があるぜ……なら、映画館にだな!」



うん!



で、映画を見た訳なんだけど、まさか志雄先輩役にミッドチルダで大人気のプロレスラーが起用されるとは予想外だった……でも、志雄先輩
を再現するなら、其れ位の人を連れて来ないとだよね。

良く出来た映画だったけど、最後だけは史実と違って、リインフォース――アインスさんが消滅しちゃうエンドだったけど、其れは映画的には
こっちの方が感動の演出が出来るって言う事だったんだろうね。

取り敢えずよく出来た良い映画だったよ♪








――――――








Side:空


今日は一日オフと言う事なので、祐騎君とお出掛けしたんですが……さて、なんでこんな事になってるんでしょうか?
祐騎君とウィンドウショッピングをしてた最中、ちょっと興味本位で入った路地裏で、賭けストリートファイトが行われていて、其れを見ていた
ら、何故かバトルフィールドに連れ出されてるんですが……何ででしょうか祐騎君?



「空が試合について呟いてたのを聞いてたんじゃない?可成りの酷評だったからね。」

「えぇ!?私は何も言ってないよ!?」

「るせぇ、こそこそ言ってたのは聞こえてんだよ!文句付けるんだから強いんだろ!!」



何ですか其の理不尽!?
……まぁ、確かに無意識的に試合のレベルがあまり高くないと言う事は言っていたかもしれませんが……って言うか、誰なんでしょうか、目
の前の辮髪頭さんは……
あまり胸倉を掴んで揺すらないで欲しいのですけれど……



「メスガキが……何とか言えよオイ。」

「……ふん!!」



――メキィ!!



ちょっと頭に来たので、頭突きを鼻っ柱に喰らわせてやったら、その一撃でダウン……矢張り、あまりレベルは高くなかったみたいです。
ですが、此れで火が点きました……私の拳を満足させて貰います。



「なら僕は、持ち金の全てを空の勝ちに賭けるとしようかな?……空なら、大概の相手には勝てるだろうしね。」

「うん、その心算だよ祐騎君♪」

され、誰から来ますか?……誰でも良いですよ、私は負けませんから!!!








――――――








Side:明日香


はぁ、志雄先輩はなのはちゃんと、時坂君は璃音さんと、空ちゃんは四宮君とそれぞれデートか……私達って、ある意味で置いてけぼりじゃ
無いのかしら?
そうは思いませんか、美月先輩は?



「そうですねぇ……まぁ、私も明日香さんも立場が特殊ですから、恋人と言うのは難しいかも知れませんが……確かに置いてけぼり感を拭う
 事は出来ませんね。
 ですが、此れもまた悪い事ではないでしょう?……そのお陰で貴女とこうして他愛ない話が出来るのですから。」

「ふふ、其れはそうかも知れませんね。」

偶にはこう言うのもいいかもしれないわ。



「あれ~?アスカもミツキも何やってるんだ?」



もっともそうは行かないのだろうけどね……と言うか、フェイトちゃんが居る時点でゆったりとした休日を過ごせる筈もない――なら、せめてフ
ェイトちゃんに付き合わなくてはね。

此れは明日の筋肉痛は間違いないわ。








――――――









Side:ティアナ


六課もスカリエッティも、今日は隊員達に暇を出しているみたいね?……逆に好都合だわ――此処でアイツ等を一網打尽に出来るかも知れ
ないからね。
お前は如何する包帯野郎?



「私も彼等には興味があるのでね……接触をしてみようと思っているよ。」

「まぁ、妥当な所ね……尤も、貴方の身体が持てばの話だけど……まぁ、貴方の身体は、もう終わっているのだけどね?」

「なに?其れは一体……ぐがぁ!?な、なんだこれは……私の腕が、足が、身体が!!」



資格を持たない物が異界に触れたら待っているのは破滅だけ……お前はリスクを考えずに力を使い過ぎた――その代償として、お前は今
を持って、人からグリードへと姿を変える。



『グガァァァァァァァァァァァァ!!!』

――3S級オメガグリード:スカーライト




現れたのは3S級……なら、暴れなさい――己の本能が導くままにね。
ミッドチルダ全域を滅ぼしても構わない――最高の休日を、最悪の悪夢に変えてあげるから、楽しみにしてなさいスバル、ノーヴェ……!!









 To Be Continued…