Side:志緒


コイツは……壁も天井も床も、漆黒のタイルで敷き詰められた小迷宮か……上等だぜ。
濁度はそれ程酷くはねぇから、目視でも其れなりの範囲は見渡せるみてぇだな……まぁ、面倒なバケモンが居るのは変わりないみてぇだがな……ったく、ウゼェな。

「おぉらぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁ!!」

『『『ぴぎゃぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』』』



尤も、そんな雑魚は、適当に纏めて一撃でぶち殺してやるがな……マッタク、雑魚共が群れやがって。てんで相手になりゃしねぇぜ。
って言うか、群れる以外に脳は無いのかよテメェ等は?



『『『…………』』』

「図星かオイ。
 だがまぁ良いぜ……おかげでなのはに異界の彼是を教えてやる事が出来るからな……取り敢えず、先ずはこの異界の攻略だ……行くぜ、なのは!!」

「はい!!」



良い返事だぜ、上出来だ。
このまま一気に、此の異界迷宮を攻略してやろうじゃねぇか!!!気合を入れて行くぞお前等!!



「「「「「「はい!!」」」」」」」

「了解です!!」



さぁて、其れじゃあ精々全力で行くとしようぜ!!……迷宮の奥には、きっとトンでもないエルダーグリードとやらが待って居やがるんだろうからな――!!












リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE12
『異界迷宮を全力で攻略せよ』











Side:明日香


此れは……意外にやるわねなのはちゃん?
覚醒したばかりのあの子を連れて来るのには抵抗が有ったけれど、此れは連れて来たのは、大正解だったとしか言いようがないわ。お世辞抜きの本気でね。



ディバインバスター!!



――ドッゴォォォォォォォォン!!



今もまた、敵勢力を一撃粉必殺の砲撃魔法で一掃してくれていて、大凡ついこの間魔法を知った子とは思えない位の戦いぶりですもの。本当に素人だったのか、
疑いたくなるレベルだわ。
攻撃手段は、単純な砲撃のみとは言えその威力は凄まじいし、何よりも複数のグリードの動きを同時に把握して夫々に攻撃するなんて、戦いのプロでも難しいって
言うのに、其れをこうも簡単にやってしまうなんて……なのはちゃんは、一体何者なのかしら?



「アレは、なのはの才能って言うか、生まれ持った能力って言った方が良いかな?」

「ユーノ君?……って、四宮君の霊子核に乗ってたのね?」

「この姿で、僕達に付いて来るのは無理があると思ったから乗せて来たよ。
 幸いにして、カルバリーメイスの霊子核だったら、ユーノの事を乗せてても攻撃する事が出来るからね。」



成程ね。四宮君ならではの方法ね。
其れでユーノ君、なのはちゃんが生まれ持った能力って言うのは、一体如何言う事なのかしら?



「なのはは極めて大きな魔力を持ってるし、魔法の才能は僕なんかとは比べ物にならない物があるんだけど、なのはには多分、驚異的な空間認識能力と、並行思
 考能力が備わってるんだと思う。生まれつきね。
 だから、複数のターゲットを同時に認識する事が出来るし、夫々に対して有効な攻撃を行う事が出来るんだと思う。
 恐らくだけど、今のなのはは同時に3~5個くらいの事を考えてるんじゃないかな?……何て言うか、管理局が知ったら喉から手が出る程欲しがると思う位だよ。」

「其れは……ネメシスにスカウトしたい位だわ。」

「ゾディアックにもスカウトしたいですね?」



一体どれだけだと言うのなのはちゃんは?
9歳で此れだけだって言うのなら、更に研鑽を積んで大人になったらどうなるのか想像もつかない……其れこそ、下手をしたらAランクエルダーグリードを1人で倒す
事が出来るほどの使い手になるのかも知れないわ……末恐ろしいわね。



「やるじゃねぇかなのは、良い動きだぜ?」

「はい!ありがとうございます志緒さん!!」

「おし、このまま一気に片付けんぞ!!」

「はい!!」






「……なのはちゃんの魔力がグーンと上がったな。」

「防御力もグーンと上がったわね~~~。」

「MPも全回復して、攻撃は全てクリティカルヒットの追加効果も発動かな?」

「……何かしら其れ?」

「「「ゲーム風に言ってみた!」」」



時坂君、璃音さん、四宮君………まぁ、確かに高幡先輩と一緒だと、なのはちゃんはより強くなるみたいだから、一概に馬鹿には出来ないのだけれどね。
それに、高幡先輩となのはちゃんのコンビは、典型的な前衛後衛の布陣になるからバランスも良いし、2人とも攻撃力に関しては一切の不安がないわ――素早い
小型グリードはなのはちゃんの砲撃が吹き飛ばし、頑丈な中~大型グリードは高幡先輩がヴォーパルウェポンで一刀両断ですもの。

尤も、此の異界迷宮に出現するグリードの属性も有るのかも知れないけれどね。
此れまでの戦いを見ると、なのはちゃんの攻撃は鋼属性のグリードに対して大きな効果を発揮してるから、恐らくなのはちゃんは風属性なんでしょう。

そしてこの異界迷宮には、風に弱い鋼と、焔に弱い風属性のグリードが多めに出現しているから、それならこの大暴れも納得だわ。


だけど、一つ気になるのは、なのはちゃんが風属性だとした場合、此処に来るまでに出会った焔属性のグリードの攻撃で殆どダメージを受けていなかった事ね。
なのはちゃんは風属性だろうから、焔属性は天敵の筈なのに、なぜ殆どダメージを受けてなかったのかしら?



『ギガァァァァァァァァ!!!』



――パシュゥゥゥゥゥゥゥ!!



「志緒さん、危ない!!」

『Protection.』



――バリィィィィィィィン!!



「ワリィな、助かったぜ?」

「えへへ……頑張りました♪」



不思議に思ってたら、なのはちゃんが高幡先輩に対して放たれた攻撃を、見事に魔法シールドで防いで見せてくれたわ。
高幡先輩の焔属性の天敵である霊属性の攻撃を完璧に……此れは、只魔力シールドが堅かったで済ませる事は出来ない……幾ら何でも、有り得ない堅さだわ。

まさか………なのはちゃんは、攻撃は風属性で、防御は鋼属性だとでも言うの!?

そんな、有り得ないわ。

でも、鋼属性のグリードへの攻撃の有効性と、水属性のグリードの攻撃に対する耐性を考えると、其れを頭から否定する事は難しい……と言うか、殆ど無理だわ。

だけど、そうだとしたら凄すぎるわよなのはちゃんは?
確かに私達だって2属性(時坂君は何故か全属性)を使う事は出来るけど、其れはあくまでソウルデヴァイスのマスターコアを交換する事で可能になる訳で、一度
に使えるのは実質的は1属性……それを、常時同時に2属性を扱っているのだとしたら稀有な才能どころじゃないわ。



「ま、あんまし彼是考えんなよ明日香。
 なのはちゃんは、異界攻略でも頼りになる仲間だった……其れで充分だろ?」

「って言うか、其れで充分でしょ?
 なのはちゃんは強い!其れで全然OK!!強い仲間が居るに越した事は無いからね!!…でしょ、明日香?」



……其れもそうね。
なのはちゃんの強さは疑いようもないし、マダマダ伸びる可能性が充分にある訳だから、ある意味で最高の仲間とも言えるわ。

だったら、彼是言うのは此処までね。なのはちゃんが凄い事は、充分理解できたし。――だけど、そろそろ異界迷宮の最深部に到達するから気を引き締めてね?



「心得ています明日香先輩!!」

「漸くボス戦か……面白そうじゃん。」


「この先に待ってるのは強敵だ……気ぃ抜くなよ!!」

「はい!」

「分かってるぜ、志緒先輩!!」

「頑張ろうね、明日香、美月先輩!」

「はい、行きましょう♪」



さぁ、行きましょう?
私達なら、ドレだけ強力なエルダーグリードが待っていようとも、打ち倒す事が出来るって、私はそう信じているから――信じる事が出来るようになったんですもの。

だから、出し惜しみしないで全力で行くわ!!








――――――








Side:なのは


そんなこんなで辿り着いた異界迷宮の最深部って言うか最後の部屋……天井が吹き抜けになってて、陸上競技場での試合に臨む気分。
まぁ、此処までは相手があまり強くないみたいだったから其れほど苦戦しなかったけど、此の最深部での戦いは、そんな簡単な物とは思えないの――強大な何か
が近づいて来てる気配がするからね。



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴッゴゴゴゴッゴゴッゴゴゴゴッゴオゴゴゴゴゴッゴオッゴゴ!!




『ゴガァァァァァァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』




「来やがったか、迷宮の主が!」

「コイツは相沢の時の……!!」

「えぇ、人の心の隙間に入り込むエルダーグリード『グレア・ファントム』!
 恐らくは、あの男の子の思いと、持って居たジュエルシードが反応して特異点と化し、此れだけのエルダーグリードを呼び寄せてしまった……そう言う事なのね。」



そんな、そんなのってないですよ!!
あの男の子は、純粋に自分の思いを伝えたかっただけなのに、其れがこんな事になっちゃうなんて、あんまりですよぉ!!

なのに、異界には人の心すら利用する相手が居る……其れは絶対に許す事は出来ない――全力全壊で叩きのめすの!!



『グガオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』

「雄叫びだけは世界レベルだと思うけど、其れだけじゃあ勝つ事は出来ません!――お願いします、明日香さん、空さん!!」

「任せなさい、なのはちゃん。砕け散れ、クリスタルソード!!

「はぁぁぁぁぁぁ…轟雷撃!!



先ずは先手必勝なの!!
明日香さんと空さんの重い一撃を喰らったら、此れは効果抜群だね。



「貰ったぁ!ラウンドエッジ!!

「吹き飛べ!シルフィ・サイクロン!!

「穿て、刃よ!」

「ほらほら、弾幕弾幕ぅ!!」



更に追撃として、洸さんと璃音さん、美月さんと祐騎さんも攻撃をしてくれてる……そして、此れは間違いなく効いてるから、此処が最大の好機!!
お願いします、志緒さん!!



「一気に行くぜ!!
 おぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!クリムゾンレイドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!



――ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァァァァン!!



決まった!志緒さんの最強技『クリムゾンレイド』!!
豪快な連続斬りから、全体重を乗せた突撃攻撃は、凄いと思うの……思わず見とれちゃったからね。――でも、効果は抜群みたい。

だったら、トドメは私がだよね!!



「出来るよな?……このまま一気にたたみ掛けろ!!」

「はい!!!」

終わりだよファントム!!悪しき闇は、光の中に消え去れなの――レイジングハート、行ける?



『No problem.I can be shot.(問題ありません。直ぐにでも撃てます。)』

「なら、心配は無用だね……全力全壊なの!!!
 だから、此れで終わらせる……一撃必殺、ディバインバスター!!!!



――ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン



此れが私の全力全壊!!この一撃から、逃れることなんて出来ないの!!!
そして、レイジングハート!



『All right.(了解です。)』



エルダーグリードって言うのを倒した後には、ジュエルシードが……やっぱりこれが特異点って言うのになってたんだろうね……取り敢えず、封印完了だよ。
って、此れは?



――キュゴォォォォォォォォォ!!!



「大丈夫、心配する事は無いわ……異界化が収束して元に戻るだけだから――ミッションコンプリートよ。」

「そうなんですか?……なら、良かったの。」



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そんな訳で、異界化は収束してジュエルシードも回収できた。
異界に捕らわれた男の子達も、特に外傷はなかったから、明日香さんが異界での記憶を消去して自宅に帰したから、多分大丈夫な筈なの。



「まぁ、心配すんな。俺達と違って、柊はプロだ。上手くやるだろうさ。」

「志緒さん……そうですよね!!」

大丈夫。きっと大丈夫なの。
だけど、異界化は捨て置ける事じゃないから、何時何が起きても対応できるように、トレーニングメニューを見直さないとだね!!

此れから先、何が起きるか分からないから、自分の力を高めておいても、絶対に損はしないだろうから――寧ろ、自分にとってはプラスになるかも知れないしね。



でも、なんだろう……そう遠くない未来に、ジュエルシードを巡って、誰かと戦う予感がするんだ……きっと、間違いなくね。



「何を難しい顔してやがる。今は、ジュエルシードを回収できた事を喜ぼうじゃねぇか?」

「志緒さん……其れもそうですね。」

だけど、きっと何が有っても大丈夫!!
志緒さん達が一緒なら、ドレだけ凶悪なジュエルシードの暴走体や、凄まじい異界迷宮が出て来ても、何とかなると思いますから……だから、大丈夫です!!



「頼もしいじゃねぇか?」

「此れが、私のBLAZE魂ですから♪」

「ハッ!言うじぇねぇか?……なら、此れからも期待してるぜなのは?」



はい!その期待には、応えて見せますよ志緒さん♪全力全壊で、やってやるの!!












 To Be Continued…