Side:志緒


行き成り時が止まったんで、何事かと思ったが……お前の仕業って訳かレム?……ったく、テメェも大概暇人だなオイ?



『フフフ、僕はあくまで観測者で、直接干渉する事は出来ないから、今回の事も僕がやった事ではない……純粋に、『彼女』の世界が君達
 の力を望んでるのさ。
 尤も此のゲートの先には、途轍もない困難が待ち受けているから、先に進むも進まないも君次第だけどね。』



相変わらず意味深な事を言ってくれるが、俺達がその程度で止まらねぇてのは、テメェも知ってんだろレム?
自分で言ってりゃ世話ねぇが、俺達は究極の馬鹿が集まった集団だから、この程度のイレギュラーに、一々驚いてる事なんざ出来ねぇ!
ゲートの先に待ってるのが神だろうが悪魔だろうが上等だぜ……誰が相手でも、叩きのめすだけだからよ!



『フフフ、其れだけの元気があれば大丈夫だね?
 君達の仲間も集まってきたようだし、此れなら、世界を変える事が出来るかも知れない――頼んだよ、高幡志緒。君程の力があるのな
 らば、きっと出来る筈さ。
 僕は、君達の進む道を、観察させて貰うさ。』



相変わらず決定的な事は言わずに、詩的な事を言ってくなお前は……まぁ、其れがレム何だろうがな。

何にしても、先ずは此のゲートを通らない事には始まらねぇか……上等だぜ、もう一度あの世界に踏み出してやろうじゃねぇか!!
――の前に、オヤッさんに『ちょっと出てきます』って連絡入れとかねぇとな。













リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE117
『Start Up StrikerS~三度の邂逅~』











そんなこんなで、旧X.R.Cのメンバーが全員で、突如現れた桜色のゲートに飛び込んだ訳だが――3年前にも思ったが、此の異界は、本
気で絶景だなオイ?
見渡す限りの桜の花に、目に優しい新緑が加わり、もっと進めば紅葉した山々が連なり、その先には雪化粧をした山々が待ってるか……
相変わらず道のりは長いがな。
まぁ、此れ位でへこたれてちゃ話にならねぇけどよ?

いや、この面子でへこたれてるのは一人だけだけどよ?――オラ、しゃっきりしろや四宮!!!



「無理……あと5分だけ……」

「へばってるだけで本気で寝てる訳じゃねぇが、寝坊人間のお決まりのセリフとはな……やるじゃねぇか四宮!」

だが、こっちにはそれ以上の切り札ってもんがあるんだ――やれ、郁島!



「押忍!祐騎君……そろそろ起きないと、嫌いになっちゃうよ?」

「起きましたーー!!嫌いにならないで空!!」



「うわぉぉ、一発で寝ぼけ状態が解除されたね?……空ちゃん恐るべし。」

「てか、完全に尻に敷かれてるな祐騎は……」

「やりますねぇ、空ちゃん?流石は空手の国際強化選手や、オリンピック代表になるだけの事は有りますね♪」

「美月さん、其れはあんまり関係ないんじゃ……」



……まぁ、何にしても四宮と郁島は仲が良いみたいだから結構な事だ。四宮みてぇなタイプは、テメェよりも強い女と一緒の方が良いしな。

それにしても3年か……前は5年だったから、其れと比べりゃ短いが、其れでも長い事に変わりはねぇな。
砕け得ぬ闇事件は、なのは達が10歳になる年に起きた訳だから、アイツ等も13歳――中学生になったって訳か……マダマダ子供だろ
うが、ドレだけ成長したか楽しみと言えば楽しみだぜ。

だが、俺達がまた向こうの世界に行くって事は、間違いなく何かが起きるってこったろうな?……まぁ、この面子なら何が起きても、最終
的には何とかなるんだろうがな。

さてと、ゴールが見えて来たぜ?



――シュゥゥゥゥゥン!



無事ゲート追加ってな。……んで、此処は何処だ?
見渡す限りの荒野と言うか、殺風景な岩山だが……海鳴にこんな場所有ったか?其れとも、3年の間に海鳴の山がこんなに荒れ果てち
まったってのか?



「どっちも違うと思うよ志雄先輩。
 遠くに街が見えるけどさ、明らかに海鳴の街並みじゃないでしょあれ?――こう言っちゃなんだけど、SF的な街並みじゃない?」

「祐騎の言う通りだな?……少なくとも海鳴に、首都高並みに入り組んだ高速道路なんてなかった筈だからな?」

「でもさ、此処が海鳴じゃなかったとしたら一体何処なの?
 レムは『彼女の世界』って言ってたから、少なくとも此処って、なのはちゃんやフェイトちゃんの居る世界なんだよね?」

「其れは、間違いねぇだろうが……」

如何やら、俺にとっては3度目となる異世界渡航は、行き成り面倒事からの始まりみてぇだ……まさか、何処なのかも分からねぇ場所から
スタートするとは思わなかったからな?
仕方ねぇ、先ずは街に降りて情報収集をするとすっか。先ずは此処が何処なのかを知らねぇと、動きようがねぇから――って、ん?



――ドゴォォォォン!ドォォォン!ドォォォォォン!ドドォォォォン!!



行き成り空から何か降って来やがったな?……コイツはロボットか?
球状の身体に、無数の足と背中に装備されたミサイルランチャーみてぇな兵器……何処かで見た記憶があるんだが、一体何処で見たん
だろうな?



「TM-1ランチャースパイダーじゃない?」

「それか。」

前に孤児院のガキ共への差し入れとして、カードゲームのカードを持って行ってやった事があったが、枚数を集める為に中古屋で買った
カードの中に、コイツによく似たカードがあったな。
しかしまぁ、如何にもコイツ等は友好的な存在じゃあ無さそうだが、如何する?



「聞くまでもないっすよ志雄先輩!……何処の誰だか知らねぇが、敵対するってんならぶっ倒すだけっす!」

「洸君の言う通り!アタシ達を攻撃する気バリバリの相手に、話し合いの余地なんてないでしょ?……そもそも、話が通じるかどうかも分
 からないし。」

「ニューゲーム開始でいきなり戦闘?まぁ、チュートリアルバトルだろうから余裕だろうけど。」

「油断は禁物だよ祐騎君。……郁島流空手師範代、郁島空、行きます!!」

「此処が何処なのかを確かめる為には、此れを破壊しないとならないみたいね……行くわよ!」

「現れて直ぐで申し訳ありませんが、退場して頂きましょうか?」

「答えなんざ聞くまでもなかったか……なら、速攻でぶっ倒すぞ!!」

「「「「「「おーーーー!」」」」」



そう言う訳で、喰らえや……フレアスラッシュ!!



――シュゥゥゥン……



!?……此れは、フレアスラッシュがロボットに当たる前に霧散しただと?
自分で言うのもなんだが、俺のフレアスラッシュは、並のグリードを纏めて葬る事が出来る上に、夕闇の使途と化した倉敷のシールドでも
破壊する事が出来る位に強力だ。
其れが、霧散するとは……?



「ブリリアントレイが弾かれた!?熾天使の力を込めた攻撃なのに!!」

「まさかこのロボットは、魔法攻撃に対しての防御を搭載しているというの?」



魔法に対しての防御だと?――俺達の中で、圧倒的な魔力を誇る玖我山の一撃が弾かれたってんなら、確かにその可能性は高いかも
知れねぇな?
そうなると、ソウルデヴァイスを使ってる俺達には分が悪いって事になるんだが……舐めるなよ?ぬおぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!



「廃棄されてた鉄骨を持ち上げたぁ!?」

「一体どんな腕力してるのさ!って言うか、其れで何する心算なの!?」

「決まってんだろ……こうするんだよ!!」


――バッキィィィィィ!!


……おし、効果は抜群だな!
魔法攻撃が効かないってんなら、普通に物理攻撃で打ん殴る分には全く問題ねぇってこった――ロボットみたいな精密機械は、外部から
の強烈な衝撃には弱いからな!

弱点が分かればどうってことはねぇ!纏めて叩きのめしてやんぜ!!






――雑魚ロボット掃討中だ、少し待ってろ。





「オラオラオラ!反撃してみやろやオラァ!!」

「鉄骨の次は鉄パイプ!?アンタ、何処のハガー市長っすか!?」





――まだ戦闘中だ、もう少し待てや。





「調子こいてんじゃねぇぞコラァ!!」

「……志緒先輩の前では、魔法防御を搭載したロボットも雑魚同然だよね?……って言うか、遂に素手でブッ飛ばしたし……」



んでもって、ロボット共を掃討完了ってな?
魔法防御を搭載してるのには驚いたが、物理攻撃に対しての防御が疎かじゃ話にならないぜ……俺の素手でぶち抜ける程度の紙装甲
じゃ、大凡戦闘に耐えるレベルじゃねぇしな。
だが、これでロボットは全滅だ――改めて街に降りて聞き込みをしようじゃねぇか?



「そうっすね……先ずは情報が大事――」



――ギギギギギギギギ……ガシャァァァァァァァァァン!!



「って、志雄先輩がぶっ倒したロボットが合体して、1体の大型ロボになった!?……アニメや特撮ではお馴染みだけど、実際に目にする
 とトンでもねぇな?
 しかも、さっきよりも強くなってるからな。」

「だが、所詮は死にぞこないの悪足掻きだぜ時坂……デカくなろうが、俺の敵じゃねぇ!!」

「まぁ、そうっすよね。志雄先輩は、天下無敵っすからね。」

「なんだそりゃ?」

天下無敵って、俺はそこまで強くもねぇだろ?……まぁ、こんな巨大ロボに負けてやる心算は毛頭ないがな。――精々俺を、楽しませて見
せろや、合体ロボが!!









「目標捕捉……殲滅します――ファイア!」

「あ~っはっは!僕達にねらわれたことをこーかいしろー!!おまえは滅殺だーーー!」



――バッガァァァァァァァァン!!



と思った矢先に、合体ロボが、桜色の砲撃と、蒼雷の一撃で吹っ飛ばされたな?
……魔法防御を備えてるみたいだが、許容量を超える一撃なら、防御を貫通してダメージを与える事は可能って訳か――となると、今の
一撃を放ったのは相当な使い手って事になるんだが……



「いえーい!粉砕!玉砕!!大喝采!!!やっぱり僕さいきょー!」

「10年経っても、変わらないよねフェイトちゃんは……其れよりも、大丈夫ですか?」



俺達の前に現れたのは、水色の髪を一本に束ねて黒いレオタードみたいな服を着た女と、茶髪をサイドテールに纏めて、バイザー型のア
イマスクをした女――お前等、若しかしてフェイトとなのはか?



「およ?どっかで見たことがあると思ったらシオだーー!!やっほー、げんきだった!!?」

「志緒さん?」



茶髪の方が、バイザーを外して、現れたのは大人になってはいるがなのはの顔だった……予想通り、なのはとフェイトだったか。
しかし、僅か3年で此処まで変わるか?……こう言っちゃなんだが、なのはもフェイトも普通に大人になってんじゃねぇのか?



「……志緒さんの方では3年しか経ってなかったんですね――私達の方は、あれから10年が経過してるんですよ志雄さん。」

「10年だと!?」

マジか?……って事は、なのはもフェイトも19歳って事か――そりゃあ、大人になる筈だぜ。
だが、知り合いに会えたってのは僥倖だ――この世界が何処で何なのかってのを聞くことが出来るからな?……だが、此れだけは確実
に言えるぜ?
如何やら俺達は、砕け得ぬ闇事件をも超える厄介事に巻き込まれたって事はな――!










 To Be Continued…