Side:志緒


時坂と玖我山が付き合う事になってから早3ヶ月だが、付き合っててもあまり変わらねぇなアイツ等は?――郁島と四宮も、交際を始めた
からって、何が変わった訳でもねぇんだが……まぁ、惚気全開のバカップルになるよりは万倍良いぜ。

だが、後輩共が前に進んでる手前、俺も次になのはに会うまでの間に、テメェの気持ちを決めねぇとだ。……何時になるかは分からんが、
少なくともヴィヴィオが俺を見て『あんまり変わってない』ってんだから、どんなに長くても2~3年て所だろうな。

まぁ、最高なのは再会した時には手に職付けてる事だな。そうじゃなかったら、ヴィヴィオの面倒を見る事なんて出来る筈はねぇからな。
如何やら、ゲートに入った事で、俺達はフローリアン姉妹の記憶消去には巻き込まれなったみたいで、ヴィヴィオの事を覚えてるからこそ
、そんな事を考えるんだけどな。

そんな訳で、進路調査票なんだが……如何書いたもんか?
将来的な安定性を考えるなら、大学に進学してから公務員ってのが最高なんだろうが、ハッキリ言ってそんなのはつまらねぇし、何よりも
役場の職員や警察官ってガラじゃねぇからな俺は。

そうなると、やっぱり此れしかねぇだろうな。
此れなら、俺の得意な事も生かせるし、将来的にも役に立つだろうからな。

俺の進路希望は――














リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE115
『杜宮最強の進路と、異世界の一大事』











んで、放課後は、何時もの様に部室に集合しての部活動なんだが、最近は異界の発生もめっきり少なくなっちまったから、今の活動の大
体を占めてるのは、杜宮に伝わる言伝えや伝説なんかを調べて、其れに関するX.R.Cの見解をネットで配信する事だな。
ネットは四宮の得意分野だが、それ以外の調べものなんかは俺や時坂がやってる事が多い――時坂の爺さんはあの歳だから色々知っ
てるし、俺の方も梧桐さんやオヤッさんから色々と話を聞けるからな。

……尤も、一番スゲェのは北都が持って来る怪談系の都市伝説だがな。……まさか、真夜中の小学校で時坂と一緒に二宮金次郎と人体
模型と段ボールで作られた良く分からねぇモンに追いかけられる羽目になるとは思わなかったからな。



「いや、あれはマジビビったっすねぇ……てか、志雄先輩なら普通に倒せたと思うんすけど?」

「やろうと思えば倒せたが、流石に学校で使われてるモンをぶっ壊すのは拙いからな……」

「アラアラ、楽しそうな体験をしてくれたみたいで良かったです。また、何かあったら情報を持って来ますね?」



二度とあんなモン持ってくんじゃねぇ!
まぁ、そう言う活動のお陰で、夏休み明けに立ち上げたX.R.Cのホームページってのは、結構なアクセスがあるみてぇだ――玖我山のダン
スの振り付けや、郁島の空手の演武の動画の存在も大きいだろうがな。



「其れに次いで人気なのは、志雄先輩の『今週の一品』かなぁ?
 こう言っちゃなんだけど、志雄先輩みたいなゴツイ人が料理してるってのが受けるみたいで、更にレシピも分かり易いってコメントも来て
 るからね。
 先輩、翠屋で働いて、相当に料理の腕があったし、バリエーションも増えたよね。」

「まぁ、桃子さんにシュークリームを任される位にはなった訳だからな。」

お蔭さんで、オヤッさんの店でも翠屋での経験が役に立ってるぜ?
甘味もあんみつと水羊羹だけじゃなく、抹茶のシュークリームと、粒あんとチーズクリームのシュークリームが加わったし、丼ものにも翠屋
でまかないとして作ったモンが加わったからな。



「何て言うか、志緒先輩はすっかり料理人て感じ?
 やっぱり将来的には、今働いてるお蕎麦屋さんを継いじゃうとか、そんな感じ?」

「店を継ぐが、其れとも暖簾分けになるかは分からねぇが、オヤッさんの味を継いでいきてぇとは思ってるぜ玖我山。」

オヤッさんとおかみさんには随分と世話になったから、其れ位はしねぇと恩が返せねぇからな?――そう言う意味でも、俺の進路希望は、
間違ってるとは思わないぜ。



「そう言えば3年生は進路調査でしたっけ?志緒先輩は、なんて書いたんですか?」

「……北都には聞かねぇのか郁島?」

「美月先輩は、どんな大学にでも行けると思いますし、大学卒業後は北都グループの新会長の座が確定してると思いますので……」

「確かに、美月先輩はそのルート一択だよなぁ……」

「+αで、ゾディアックの重役も確定してる訳だけれど……」

「色んな意味で、美月先輩ハンパないわぁ……」

「絶対敵に回しちゃダメだこの人は……」

「其れ同感だよ洸先輩……この人にだけは勝てる気がしないから。」

「あらあら♪」



……確かに、北都の進路は聞くだけ野暮だったな。
最近は生徒会長室に、1年のリボン縦ロールと、3年の赤毛縦ロールが現れてるみたいだが、下手したらそいつ等も将来的には、北都グ
ループの一員になってるかも知れねぇからな。
んで、俺の進路だが――俺は調理師の専門学校に行こうかと思ってんだ。



「調理師の専門学校っすか!?」

「ある意味で予想通りで、ある意味で予想外!?」

「……予想通りなのか、予想外なのかどっちかにしろや玖我山。」

「志緒先輩の料理の腕を考えれば予想通りだけど、外見的イメージからしたら予想外って事で!」



成程、そう言う事か。
だが、伊達や酔狂で調理師の専門学校を選んだ訳じゃねぇ。調理師の専門学校に行けば、より専門的な事も学べるし、調理師の免許を
取る事だって出来るだろ?
調理師の免許があればオヤッさんの店を継ぐなり、暖簾分けなりも出来るし、免許があればいざって時には潰しも効くからよ。
其れにだ、俺となのはの関係がどうなってるかは兎も角として、ヴィヴィオは俺の養子になってるみたいだから、其れを養うって事を考え
て、尚且つつまらなくねぇ生き方ってのを考えるなら、此れが最善の選択だからな。



「ヴィヴィオは兎も角、なのはの事まで……志緒先輩って、やっぱりロリコン……」

「……良い度胸してんじゃねぇか四宮……誰がロリコンだオラァ!!」


――ギシィ!!


「おぉ……此れは何とも見事な卍固め!」

「卍固めは、志雄先輩みたいな巨漢がやった方が効くからなぁ……祐騎の体格じゃ、抜け出せねぇよな……」

「祐騎君、頑張って!!」

「いや、応援するよりも助けてくれないの空!?」

「志緒先輩には、私の正拳突きは通用し無さそうだから……大人しくやられてください祐騎君。」

「救いがない!?」



覚悟を決めろや四宮……彼女公認なら、躊躇もねぇからな!!
大人しく喰らっとけやぁ!!!



――ドゴォォォォォォォン!!



「おぉ……此れは何とも見事なジャーマンスープレックス。」

「打点の高さもさることながら、ブリッジの美しさも素晴らしいわ――初代タイガーマスクや、カール・ゴッチもビックリね。」



……妙に詳しいじゃねぇか柊?若しかしてプロレスマニアかお前?――まぁ、良いと思うぜ?最近は『プロレス女子』ってのも居るらしいか
らな。
だが、一言だけ言っとくぞ?……俺はロリコンじゃねぇ!良いな?



「「「「…………」」」」(コクコク)

「愛に年齢は関係ありませんよ高幡君?」

「テメェは、少し黙ってろや北都……」

「⊂((。。⊂))」――チーン



四宮は意識がブラックホールの彼方に飛んだままだったが、結局この日は俺の進路で盛り上がって放課後はお終いになっちまったぜ。
んで、店に戻ってオヤッさんとおかみさんに、調理師の専門学校に進んで、ゆくゆくはこの店を継ぐか、或いは暖簾分けして貰う気でいるっ
て事を伝えたら、すごく喜んでくれたから良かったぜ。

そして、其れから数カ月経って、冬休み明けに願書を出した専門学校の試験を受けて見事に合格――合格発表の時には、X.R.Cのメンバ
ー全員が集まったのは御愛嬌だがな。
だが、此れで俺の未来への道が開けたぜ。
此れなら、専門学校を卒業した後だったら、何時でもなのはと再会できるってもんだぜ。








――――――








Side:ヴィータ


シオ達が元の世界に戻って2年……アタシ等ヴォルケンリッターと、はやてとなのはとフェイトは、管理局の一員として働いてた。……はや
てと、なのはと、フェイトは嘱託扱いだけどよ。

んで、戦闘スタイルの相性の良さから、アタシとなのはは一緒に現場に出る事も少なくなかった……てか、殆どの場合でアタシとなのはは
一緒に組んでる気がする。

初対面がアレで、2回目がアレだったから、コイツには少し複雑な思いがあるが、共に戦うパートナーとして見た場合には、これ以上頼もし
い奴はいねぇ!
てか、相性抜群すぎんだろ?
アタシはクロスレンジのパワー型で、なのはは中~アウトレンジのパワー型だからな?――アタシとなのはが組めば、隙のねぇオールレン
ジをパワーで押しきれるってもんだ!
実際に、アタシとなのはのコンビは、シグナムとフェイトのコンビ以上に成果を上げたからな。

なのに……何で、どうしてこんな事になっちまったんだ!!

「おい、確りしろなのは!!アタシが分かるか!!分かるなら返事をしやがれ!!」

「ヴィ………ヴィータちゃん?……大丈夫だよ、分かってるから……」



大丈夫な訳ねぇだろ馬鹿野郎!白いバリアジャケットを真っ赤に染めて何言ってんだ!!

この日の任務で、アタシとなのははコンビを組んで出撃して、そして敵を撃滅して行った……負ける事のない相手だったけど、一瞬の隙を
突かれて、敵の凶刃がなのはを貫いた!
そいつは速攻で叩きのめしたし、不幸中の幸いで急所は外れてたからなのはも即死は免れたが……此の出血量は拙い!!
バリアジャケットだけじゃなく、雪まで赤く染まって来てるじゃねぇか!!

救護班はまだ来ねぇのか!!
早く来い……来いよ!!来てくれぇぇぇ!!!――此のままじゃ、コイツが、なのはが死んじまう!!
神でも悪魔でも良い、なのはを助けてくれ!!!!








「良いだろう、彼女は今死ぬには、余りにも惜しい存在だからね。」

「え?」

だ、誰だお前?
紫の髪に金の瞳……そして白衣って、怪しさ爆発どころじゃねぇが――テメェ、何モンだ?



「何者だと問われても、そう易々と素性を明かせる身ではないのでね……取り敢えず漫画的に『ドクター・S』とでも名乗っておこう。」

「ドクター・Sだと……テメェ、なのはを如何する心算だ!!答え次第では、テメェもブッ飛ばす!!」

「ん~~……如何するかと問われれば、助けるとしか言いようがないかな?
 先ほども言ったが、彼女は此処で死ぬには余りにも惜しいからね――何よりも、私の目的を成就する為にも、彼女には生きて貰わなくて
 はならないんだよ私は。」



つまりはギブ&テイクの関係って事か?……テメェが最終的に求めるものが何かは知らねぇが、其れでなのはが助かるってんなら安い代
償だぜ!!
アタシの力だって貸してやるぜ、マッドサイエンティスト!!



「Bravo!そう来なくてはね!
 安心したまえ、高町なのは君は必ず復活させて見せよう――仮に普通の人間の生き方が出来なくなったとしてもね。彼女の復活こそが
 この世界の革命の狼煙となるだろうからね。」

「言うじゃねぇか?なら、其れに乗せさせて貰うぜ!!」

アタシも相手も目を逸らさないが、其れだけに目の前の此のマッドサイエンティストが、狂って居ながらも冷静さを持ってる異常な存在だっ
て言う事は良く分かるぜ……だが、今はコイツを頼るしかねぇ!!

力を貸せ白衣――先ずはなのはを助けやがれ!――其の後での事はアタシが引き受ける!!
――だから、絶対になのはを死なせるんじゃねぇぞ!!絶対ににな!!

生きろなのは……テメェは今此処で死んでいい奴じゃねぇ――何よりも、再会を誓ったシオと再会しないで死ぬなんて事は有り得ねぇ!
だから、アタシは悪魔と契約してでもテメェを生かす!!

だから、1日でも早く目を覚ましてくれよな?……其れが、アタシの願いだぜ……










 To Be Continued…