Side:洸
マッタク、ドンだけ自分がアホなのか実感させられちまったな……栞に言われるまで、俺が誰を好きなのかって事すら分からなくなってたと
はな……お陰で目が覚めたぜ。
栞が大事な幼馴染だってのは変わらねぇが、俺が本当に好きなのは、好きになってたのは、お前だったんだな璃音。
あっちの世界のバレンタインデーに気持ちを伝えられて、ホワイトデーに当たり障りのない答えを返したが、それで良いってもんでもねぇか
らな……俺の答えと思いをちゃんと伝えないとだよな。
そう言う訳で……
「璃音、放課後屋上に来て貰っていいか?ちょっと話があるんだ。」
「洸君?うん、別に構わないけど……」
放課後に璃音を呼び出す事にした……璃音はマッタク予想してなかったみたいだけどな。
其れは兎も角として、俺はこの瞬間に、杜宮学園の男子8割を敵に回した気がするぜ……リョウタなんかは、『一体何の話だ!』ってリアル
に血の涙流してたからなぁ……俺、今日生きて帰れるかな?
最悪の場合を考えて、トワ姉に連絡を入れとくか……『放課後の見回りを怠るべからず』ってな。
リリカルなのは×東亰ザナドゥ 不屈の心と魂の焔 BLAZE114
『天使の少女の思いが叶う時』
Side:璃音
洸君から『放課後に屋上に来てくれ』って言われて来た訳だけど、一体何の用なんだろ?
X.R.Cの事なら部室で良いし、SPiKAの事なら普通に廊下での雑談でも良いし、ライブの裏方のバイトの事ならアクロスタワーで良い訳だか
ら、何で屋上なのか分からないわ。
って言うか、屋上って言えば告白の定番の場所だけど……若しかして、向こうでのバレンタインの時の答えを聞かせてくれるのかな?
だとしたらかなり緊張するわね此れ!?……ら、ライブの時より緊張するかも。
「よう、璃音。」
「洸君、待ってたよ。」
で、ちょっと緊張して来た所で洸君参上。――それで、何の用なの洸君。……って言うかなんか、制服が乱れてるけど如何したの?
「お前に『放課後屋上に来てほしい』なんて言ったもんだから、クラスの連中だけじゃなく、他クラスの男子連中にも揉みくちゃにされて、何
とか其れを振り切って来たんだよ!
あ~~……流石に可成りしんどいぜ……異界でグリードと戦った方が楽なくらいだったっての……」
「それは……お疲れだったね洸君。」(汗)
それで、態々屋上にまで呼びだして如何したの?
アタシの勝手な予想では、可成り重要な話があると見たんだけど如何よ?……ライブの裏方のバイトのバイト料位なら、スタッフさんに頼ん
で、ほんの少しだけアップする事位は出来ると思うけど?
「其れは嬉しいが、そうじゃねえよ。
えっと……あ~~……何つーか……ほら、向こうに行ってる間にバレンタインがあって、お前は自分の思いを俺にぶつけてくれただろ?
で、俺は其れから随分と答えを先延ばしにしちまってたから、いい加減答えを出そうと思ってな。」
「へ?そ、そうなんだ。」
其れで、どんな答えを聞かせてくれるの?
大丈夫、どんな答えでもアタシは受け入れる覚悟は出来てるから、遠慮しないでズバッと言っちゃってくれていいよ洸君!!
「俺は……璃音、お前の事が好きだ。
俺なんかじゃ不釣り合いかもしれないが、俺と付き合ってくれ!!」
「はーい♪……って、はいぃ!?」
洸君は今なんて言った?『俺はお前の事が好きだ』って……つまり、私は選ばれたんだよね洸君に?……え、嘘、夢じゃないよね此れ?
嘘……スッゴク嬉しい!それこそ、ライブが大成功した時よりも嬉しいかも!!
でも、だけど栞は?栞の事はどうなったの洸君?
「フラれた……ってのはちょっと違うか。
告白する前に『言う相手が違う』って言われちまった上に、俺の栞に対する恋愛感情みたいなもんは、栞が作り出した『嘘の10年』の中
で栞が願ったから生まれたもんだって。
その上で、言われたんだ……本当に好きなのは誰なのかって。
其れを聞かれて、考えて、そんでもって気付いたんだ……栞がいなかった2週間、誰よりも俺の事を気にかけてくれてたのは、お前だっ
たって事に。
其れに気付いた時に分かったんだ……俺は、何時の間にかお前に惹かれてたんだってな。」
「そう、だったんだ。」
「そう言う事。
それで、答えを聞かせて貰って良いか?やっぱ、答えってのは欲しいからさ。」
答えなんて、そんなのOKに決まってるでしょ?って言うか、アタシの方からお願いしたいくらいだったんだから!
絶対に離さないから、覚悟しててね洸君!
「お、おう。
時に聞きたいんだが、何だって俺の事なんて好きになったんだ?自分で言ってりゃ世話ねぇが、俺って特別特徴がある訳でもねぇ、何処
にでも居る男子高校生だぜ?
ましてや出会いがアレだったってのに……」
「まぁ、初めて会った時には流石にカッチーンと来たわよ?
今売り出し中のアイドルグループのメンバーに対して『知らない』『興味ない』って来たからね?……正直『コイツ何なの!?』って思った
わよ。」
でも、其れから、駅前の電気店でCD探すの手伝ってくれたり、不良に絡まれてるの助けて貰ったり、ライブの衣装を選んでもらったりした内
に、ドンドン君の事が気になっていったんだよ。
そして極めつけは、あの異界での出来事……天使に襲われそうになってたアタシを君が助けてくれた――アタシが助けを求めた人が本当
に助けに来てくれた……あの時の洸君は、本当にヒーローだった。
アレの時の事で、アタシは君に惚れちゃったんだよ洸君……もしもあの時、洸君が来てくれなかったら、私は熾天使の一部になってかも知
れないからさ。
「そうだったのか……分からねぇもんだな。
だけど、お前とこう言う関係に成れたのは嬉しいが、お前の立場的に大っぴらに付き合うことが出来ねぇってのは悩みの種だよな?
そう易々とデートってのも出来ないだろうし……」
「いっその事、事務所の公式ブログで交際宣言しちゃおうか?」
「其れはマジでやめてくれ……そんな事になったら、俺は学園の男子略全員だけじゃなく、杜宮中の璃音ファンから冗談抜きで殺されるか
も知れねぇし、じっちゃんの神社に、俺を呪った丑の刻参りの藁人形が溢れかえりそうだから……」
……うん、確かに其れは否めない。
リョウタ君辺りは、御神木の木刀で斬りかかって来そうだからね?……其れでも洸君は返り討ちにするだろうし、そうなる前に志緒先輩が
止めそうな気もするけどね。
でも、確かにアタシがアイドルって立場なのを考えると、大っぴらに付き合うのは難しいかも知れないわ。デートだって、中々出来ないだろ
うしね?
なので、アタシの我儘を聞いて貰っていいかな洸君?
「あんまし無茶なのは勘弁な?俺にだって出来る事と出来ない事があるから。」
「無理難題じゃないから安心して。
えっとね……ハグしてほしいんだ。こうギュッとね?」
「そんな事で良いのかよ?」
そ、それでね……ギュってしたら……その……キスして欲しんだけど、ダメ?――って、何をキョロキョロしてるの洸君?
「いや、どっかでカメラが狙ってないかなと。
もしも写真が撮られたらスキャンダルどころの騒ぎじゃねぇから、璃音がアイドルを続けられなくなっちまうと思ってよ……」
「其れは大丈夫じゃない?
美月先輩が、北都の財力使って、学園の半径1km以内にはマスコミが入り込めない様にしてるみたいだから――だから、大丈夫だよ。」
「美月先輩ハンパねぇなマジで。
でも、そう言う事なら安心したぜ。」
――グイ……ギュ……
わっと!……引き寄せられてハグされて……見た目以上に、洸君て逞しい身体してるんだね?流石は男の子って言う所なのかな。
あ、分かってると思うけど、ほっぺやおでこへのキスはなしだからね?……アイドルのファーストキスを貰えるんだから、感謝しなさいよ?
「マッタクだ。俺はマジで世界一の幸せモンかもな?……此れからも宜しくな璃音?」
「此方こそ、洸君。」
ふふ、ファーストキスを好きな人に上げる事が出来て良かったわ。
こうして、アタシと洸君は付き合う事になったんだけど、不安材料がなくなった事で、アイドル業にも支障がなくなった!それどころか、洸君
と結ばれた事で、前よりも調子が良いわ!
レイカから『恋煩いは落ち着いたみたいね』とか言われたけどね。
だけど、その上り調子のおかげで、アタシはSPiKAで不動のセンターの地位を掴み取ったわ――レイカにもハルナにも、そしてアキラにもワ
カバにもこの地位は絶対に渡さないわ!
だって、アタシの一番好きな人には、アタシの一番の姿を何時までも見せたいからね!!
――――――
Side:志緒
時坂が玖我山を屋上に呼び出したってのを聞いて、時坂の後をつけて屋上に連なるドアの前で待機してたんだが……予想以上に大量に
来やがったなコイツは?
こう言っちゃなんだが、学園の男子8割が来てるんじゃねぇか此れ?
「うん、多分間違いない。
でも、僕としては其の物量を相手にして、普通に勝つ志雄先輩が信じられない。」
「私と祐騎君の出番、殆どありませんでしたからね……」
「……どうやら、海鳴での経験で腕が上がったみてぇだな。」
ジュエルシードに闇の書に、砕け得ぬ闇……杜宮で起きた異界関連の事件に勝るとも劣らない濃い時間だったから、其れを体験すれば腕
も上がるってもんか。
「にしても、やり過ぎじゃない?息吹先輩、腕が曲がっちゃいけない方向に曲がってるけど……」
「まぁ、そいつは大丈夫だろ?ギャグ属性の特性で、1分もあれば復活するってもんだ。」
だが、コイツ等の事は良いとして、思いが叶ってよかったな玖我山?――そして、玖我山の思いを受け取った上で、テメェの答えをちゃんと
出した時坂も漢を見せたじゃねぇか?
絶対にお互いに相手を離すんじゃねぇぞ?……ま、お幸せにって所だな。
To Be Continued… 
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