Side:志雄


アミタとキリエとマテリアルズがエルトリアに、ヴィヴィオとアインハルトとトーマとリリィが未来に戻るって時に、桜色のゲートが現れるとはな。
如何やら、俺達も元の世界に――杜宮に戻る時が来たみたいだな。

マッタク持って唐突だが、ある意味ではこのタイミングが一番だったのかも知れねぇ……そうだろレム?


『君達は、この世界でなすべき事を成した――故に、元の世界に戻るのは必然さ。
 だけど、別れの挨拶もないままにさようならと言うのはさみしいから、せめてお別れ位は出来る様にした――だから、最後の挨拶を済ませ
 ると良い。』




最後の挨拶だと?



「あら?此処は何処かしら?」

「僕達は翠屋に居た筈だが……」

「何らかの力で、此処に引き寄せられたって言うのか?」

「摩訶不思議とは此の事?……結構貴重な体験だね此れは。」



って、桃子さん達が此処に!?……成程、お前の力で此処に呼び寄せたって事か――中々に粋な事をしてくれるじゃねぇかレム。
此れだけの御膳立てをして貰ったんだから、杜宮に戻る前に確りと決めねぇとだな。











リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE111
『A's portable~The Gears of Destiny~』











すんません、桃子さんに士郎さん。恭也さんと美由希も、行き成りこんな所に呼び出しちまって……まぁ、俺が呼び出したんじゃなくて、この
宙に浮いてるちびすけが、此処に転移させたらしいんですが。



「「志緒君?」」

「其れにフェイトちゃん達も?」

「見慣れない人達も居るみたいだが……随分と大所帯だな?」

「まぁ、この面子で派手にドンパチやらかしまして、んで、今から桃子さん達が初めて会う連中は自分の世界に戻る所だったんすよ。
 ――そして、俺達7人と……アンタもだろ、プレシアさん?」

「えぇ、そうなるわ。
 私は、闇の欠片として一時的に復活しただけの存在……死者が、何時までも現世に留まる訳には行かないモノね。」

「志緒君達……元の世界に帰るのかい?随分と唐突だね。」



其れに関しちゃ悪いと思ってますが、こっちに来た時と同様に、この桜色のゲートが出現した以上、俺達が元の世界に戻る時が来たっての
は間違いねぇんですよ。
だから、このちびすけはお別れの挨拶をする為に桃子さん達を此処に転移させたって訳ですよ。



「そう……何時か別れが来る事は分かって居たけど、いざその時が来ると寂しい思いがこみ上げて来るモノね。」

「其れは俺もっすよ桃子さん。
 ぶっちゃけ、今まで色んなバイトやって来たけど、翠屋は一番働いてて充実した店だったっす!」

「休憩時間には、士郎さんのコーヒーと、桃子さんのお菓子が嬉しかったし、アイドル以外の仕事もスッゴク楽しいんだって実感できたし♪」

「そう言って貰えるとありがたいが、しかしそうなるとお客さんにどう説明したモノかなぁ?
 流石に1度に7人も居なくなったとなると怪しまれるだろうからね?……特に、此れだけ個性的なメンバーがいなくなったというのはね。」

『其れについては問題ない。
 彼等と強い縁を紡いだ人間以外のこの世界の人間は、彼等が此のゲートを潜ったその瞬間に、彼等の事を忘れてしまう――彼等がこの
 世界に存在していたという矛盾を回避する為にね。』



そいつは便利だが、寂しい……って事もねぇか。
強い縁ってのは決して少なくねぇ――高町一家に、フェイトにハラオウン一家、八神家の連中にアースラの面々、月村姉妹にバニングスと、
思い付くだけで此れだけ存在してるからな。
何にしても、お世話になりました。こっちの世界での経験は、良い経験だったって、胸を張って言えます。



「そう……なら、良かったわ。
 其れじゃあ此れは餞別ね?
 本当は、志緒君が戻ってきたら渡そうと思ってたんだけど……私のシュークリームのレシピよ。持って行って。」

「んな!?良いんすか?」

「えぇ、志緒君の腕前は相当な物だし、お菓子作りの腕も凄い速さで上達してたから、春からはシュークリームの仕込を任せようと思ってい
 たの。
 その為にレシピの詳細を纏めておいたの――良ければ持って行って?」

「……有り難く、頂戴します桃子さん。」

「何かの役に立てば嬉しいわ……なのは、貴女も志雄さんにお別れを言わないと。」

「……うん……」



なのは……ったく、何て面してやがる。
幾らお別れだからって、しんみりってのはあんまり好きじゃねぇんだ俺は――フェイトとプレシアさんを見てみろ。





「其れじゃあねフェイト?2度目のお別れになるけど、幸せになりなさい?」

「おっけ~~!りょーかいしたよおかーさん!
 でもさ~、1どしんでからふっかつしたんだから、若しかしたらなんかのきかいに、またふかっかつしたりして?」

「ふふ、そんな事があるかも知れないわね――改めて、後はお願いねリンディ?」

「えぇ、任せておいてプレシア。」

「任せるわ……其れじゃあ、さよなら。また会えて、嬉しかったわフェイト。」

「ばいばいおかーさん!あ、てんごくにもどったらアシリアによろしくねーー!!僕はげんきにやってるっていっといて!!」

「ふふ、了解。」


――シュゥゥゥン……



どうだ、もう二度と会えねぇにも拘らず、しんみり感ゼロだろ?
俺とお前は、フェイトとプレシアさんと違って2度と会えねえって訳でもねぇ――実際に、5年の時が経ってたとは言え、今回こうして再会でき
た訳だし、一度繋がった縁ってのはそう簡単に切れるもんじゃねぇから、きっとまた会える筈だぜ。



「でも……でも――!!」

「オラ、泣くんじゃねぇ……コイツをお前に預けておくぜなのは。
 俺が持ってるウォレットチェーンの中でも、一番お気に入りのやつだ……コイツをお前に預けておく――今度俺がこっちの世界に来るまで
 は好きなように使ってくれていいぜ?壊したり無くしたりしなければな。
 だが、俺が今度こっちの世界に戻って来た時には返してもらうけどよ……テメェのお気に入りを、幾らお前にだって簡単にくれてやるって
 のは癪だからな。」

だからコイツは、再会の約束のアイテムって事にしようぜ?
其れを返してもらいに、俺は必ずこの世界に来る……其れが明日なのか、それとも10年後なのかは分からねぇが、絶対に戻って来るって
約束するぜなのは!!



「本当に……戻ってきますか、志雄さん?」

「俺が、お前に嘘を吐いた事があったか?」

「……ないです。」



なら、信じて待ってな。――そもそもにして、俺となのはが親だって言うヴィヴィオが未来から来てる時点で、俺がもう一度こっちに来るのは
確定してるようなもんだからな。

さて、アミタ、キリエ……そろそろ時間だろ?



「はい!時空渡航の準備が出来ました!!」

「それじゃあ、時間旅行の始まり始まり~~~♪出発進行、SPS~~~♪」

「お世話になりました!」

「パパ、ママ!まったね~~♪」

「其れじゃあね、オリジナル。」

「何時の日か、また機会があれば……」

「貴様等との日々……まぁ、悪くはなかったぞ?」

「何から何まで、お世話になりました。」



おう!
マテリアルとフローリアン姉妹とは、もう会う事もねぇだろうが、それ以外の連中は、何れ未来で会おうぜ!!――さて、俺達も行くぞ?



「あ、行く前に待って下さい志緒さん!その、少し屈んでもらって良いですか?」

「……此れで良いか?」

「はい。……えい!」



――チュ



「!?」


「あらあら、なのはったら♪」

「なのは……志緒君なら、まぁ良いかな?」

「美由希……俺はこの場合、兄としてどういう反応をするのが正解なんだろうか?」

「取り敢えず、妹の一歩踏み出した勇気を祝福しとくと良いと思うよ?」



「やるなぁ、なのはちゃん?此れは流石に予想外だったぜ……」

「なのはちゃんの思いは、本物みたいね……」

「OK、なのはちゃん良くやったわ!其れでこそ、恋する乙女……アタシも負けてられないわね――!!」

「あらあら、此れは困りましたね高幡君?」

「こ、此の土壇場で……祐騎君!!」

「空、今は勘弁して!!羞恥プレイは好きじゃないから!!」



コイツは完全に予想外だったぜ……まさか、キスして来るとはな……其れも頬っぺたとかじゃなくて口に来たからな……驚くなって方が無
理ってもんだろう。



「わ、私のファーストキスですから!///」

「馬鹿野郎、俺だって初めてだ!///」

ガキにキスされて動揺するとは、俺もまだまだだな?
だが、其れだけなのはが俺の事を思ってくれてるって事だろうから、その答えを出す為にも必ずこっちに戻って来ねぇとだ――其れまで待
ってろよなのは。
今は無理だが、次に会った時に必ず答えを返すからよ。



「はい、待ってます!!――また会いましょう、志雄さん、皆さん!!」

「ふ、良い面するようになったじゃねぇか?それでこそBLAZEの魂を継ぐ者だぜ――じゃあな、また会おうぜ、必ずな!!」

「お~~!!ぜったいもどってこいよー、シオたちーーー!!!」



あぁ、必ず戻って来るさ……色んな思い出があるこの世界にな!!








――――――








Side:ヴィヴィオ


それにしても、不思議ですねアインハルトさん?2人で同じような夢を見ていたなんて……滅多にある事じゃないと思うんですけど。



「はい、極稀なケースだと思います。ですが、貴重な体験とも言えるでしょう。」

「それは、確かにそうですね。」

其れはそうと、ここらで一息入れませんかアインハルトさん?時間的にも、丁度お昼の時間ですし、午後はノーヴェ達とスパーリングする予
定になってますから。



「そうですね、一息入れるとしましょう。」



「此れから休憩か?良いタイミングだったみてぇだな?」

「ヴィヴィオ、アインハルトちゃん、一息入れようか?」



パパ!ママ!!――其れって、若しかして今日のランチ?



「当たりだ。アインハルトの分も作ってある。
 午後はスパーリングって事だったから、腹持ちが良くて、更にエネルギーに変わり易くスタミナの付くメニューにしてみたぜ。」

「その心遣いに感謝ですパパ!!」

おにぎりに、ニンニク醤油で味付けしたスタミナ唐揚げに、ポテトサラダに、なのはママ特製のシュークリームまで!!此れは、見てるだけ
で元気が出て来るランチだよ!!!

此れは、午後のトレーニングも頑張らないとだねアインハルトさん!!



「はい、精進しましょう。」

「全力全壊ですね♪」

数奇な運命から始まった私の人生だけど、今はこの日々を大切にしたいよ……このViVidな日々を!!








――――――








Side:トーマ


え~~……只今俺とリリィとアイシスは、特務六課の司令室に呼び出されてます――理由は簡単、模擬戦でやり過ぎて施設を壊しちゃった
から……机に肘ついてる八神指令と、腕を後ろに組んで立ってる郁島教官がマジ怖いぜ……



「確認するけど、今回の損害は、トーマとリリィが夢で見た戦法を実際に試した結果起きてしまった物だったと……そう言う事やな?」

「「「はい!!!」」」

「向上心があるのは良い事ですけど……損害を出すのは頂けませんね?」



すんません!!俺もリリィもあそこまでの威力があるとは思わなかったんです!!――少しでも、役に立てればと思っての事で、悪気はな
かったんですマジで!!



「まぁ、そう言う事ならしゃーないけど……そんだけ元気が有り余ってるなら、午後は私と模擬戦しよか?――空さんも加えてなぁ?」

「あぁ、其れは良いですねはやてちゃん♪」



はぁぁ!?八神指令と郁島教官と模擬戦て……ボッコボッコにされること確定じゃんよ?
スゥちゃん助けて……は、くれねぇよな。自業自得だし……しょうがねぇ、覚悟を決めるか……後悔先に立たずって言葉の意味を知ったぜ。

因み模擬戦は、予想通りボッコボコにされました!!








――――――








Side:アミタ


アレから大分時が経ちました。
私達が王様達とエルトリアに戻って来てから1年後に博士は亡くなりました……でも、最後の最後に、エルトリアの復興の兆しとも言える緑
の大地を見せてあげられたのは良かったのかも知れません。

ユーリの中に眠るエグザミアの力のおかげで、この星は少しずつですが、しかし確実に其の力を取り戻しつつある――今生きている人達が
この星の完全復興を見届ける事は無いでしょうが、100年以上の時が必要であっても、エルトリアは必ず生き返ります。

そして、それは私達が見届けます。
私達ギアーズと、王様達マテリアルには、無限の時が残ってるんですから。



「ねぇ、アミタ……私はパパに、少しでも孝行出来たのかな?」

「愚問ですねキリエ?出来たに決まっているでしょう!」

あの緑の丘を見た時のお父さんの顔が其れを物語っています――キリエ、貴女は良くやりました。
貴女の目的は、紆余曲折を経て叶えられたんです……だから今度は、叶えられた願いを護りながら、現実の物としなくてはですからね?

見えていますか?聞こえていますか、お父さん――貴女が作った2人の娘は、こうしてその役目を果たしています。
そして私達だけではなく、頼りになる仲間もいます……だから見守っていてください。私達は、此のエルトリアを必ず元に戻して見せます!

きっとそれが、ギアーズとして誕生した私達の為すべき事でしょうから……!








――――――








Side:志緒


桜色のゲートを通って戻ってきた先は……スタートしたのと同じ神山温泉か――サイフォンの時計もこっちの時間軸に合わせられたみてぇ
だが、日付は2015年の8月22日――海鳴に渡った日のままって訳か。
時間もほとんど進んでねぇし……如何やら、向こうでは1年近く過ごしたが、こっちでは1分にも満たない時しか進んでなかったって事か。

こりゃあ、次になのはと再会する時は、俺となのはの経過時間軸が大きくずれてる可能性があるって事か……一応気に止めとくとするぜ。


なんにせよ無事に戻って来る事が出来て良かったぜ。
魔界世界渡航をする羽目になるとは思ってなかった、其れだけに貴重な体験だった――マッタク持って、最高の夏休みだったぜ!!











 To Be Continued…