Side:リインフォース


まさか、このタイミングでU-Dが現れるとは、流石に予想外だったな?
……或いは、元は闇の書として一体化していた私の事を感じ取って現れたのか――真相は分からないが、U-Dが出現した事で戦局は三つ巴
の状態となった訳か。

私にとっては、キリエ・フローリアンもU-Dも何とかしなくてはならない相手であり、キリエ・フローリアンにとっても私は目的を果たす為には邪魔
な存在であり、U-Dは己の目的物。
そして、U-Dにとっては、私もキリエ・フローリアンも敵対対象でしかない訳だからな。

それ故に、迂闊に動く事は出来ない――下手に動けば、状況を悪化させかねないのだから……



「熱血ーーー!!見つけましたよキリエ!!」

「アミタ!?」




だから、状況を見ようと思っていた所で、赤毛の少女がキリエにダイレクトアタック!……いや、何してるんだお前は?キリエ・フローリアンの事
を止めようとしてるのは分かるんだが、態々頭から突っ込む必要はあったのか?



「其処は勢いの問題です!この度は、頭から突っ込んだ方が手っ取り早いと思い、其れを選択させて頂きました銀髪さん!!」

「あ、そう……」

だが、此れで、戦局は更に複雑化したが――赤毛の少女と、我等との利害は最大公約数的には一致している筈だから、協力は可能だろう。
なんにしても先ずはU-Dを止めねばだ……あれが本気で暴れ出したら、世界は冗談抜きで滅んでしまうだろうからね。













リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE102
『A's portable~U-Dvs祝福の風~』











とは言え、動く事が出来ないのは事実だ……今の状況は、互いに互いを牽制してる状態なのだからな。――しかし、誰かが行動を起こさない
限り、この膠着状態が続くのもまた事実……如何した物か?
あの小さき勇者や、大きな重剣士ならば、ごちゃごちゃ考えずに突撃して何とかしてしまうのだろうな……ふむ、其れも良いかも知れないな?

起動直前に感じた力は10S級だったが、目覚めた直後には2S級にまで出力が低下していたしな?
今はあの時よりも出力が上がっている様だが、異界の力を解放すれば、私の力は5S級のグリムグリードに匹敵する故、力が十全でない状態
のU-Dならば、止める事が出来るかも知れないからね?
……ふむ、そうなると、そっちのピンクの事を抑えて貰っていて良いか赤毛の少女よ?



「お任せ下さい!さぁ、大人しくしてもらいますよキリエ!……って、あれ?キリエ?」

「居ない?……今まで、目の前にいた筈だが……まさか!!」

「しまった、アクセラレイターでU-Dに!!」



そうだ、赤毛とピンクには瞬間移動めいた高速移動魔法があったんだった……忘れていたとは迂闊だったな私も。
アイツ、其の力を使い、私と赤毛のやり取りで生じた一瞬の隙を突いて、U-Dに接近したと言う事か――中々に抜け目がない所は、戦いに於
いて有利に働くかもしれないが、今回に限っては、其れは悪手だ!

如何に十全の状態でないとは言え、今のU-Dは起動直後よりも出力が上がって3S級の力になっている!お前の実力では、むざむざ殺されに
行くような物だぞ!!

「ピンクを止めるぞ赤毛の少女よ!」

「此方からお願いしたいくらいです!私の妹に、U-Dが持っているエグザミアを渡さない様に……!」



エグザミア?……エグザミア……思い出した!夜天の魔導書の無限転生機能と根幹を同じとする、無限連環機構か!
あのピンク、其れを一体何に使う心算だ?あの力は余りにも強大過ぎる……仮に手に入れたとして、使い方を誤れば、その先に待って居るの
は破滅だぞ!?

何を企んでるか知らないが、馬鹿な真似は止めろピンク!其の力は、お前の手に負えるモノではないぞ!!



「ちょ!邪魔しないでよ!
 アタシには此れが必要なの。エグザミアがあれば、私達の故郷を、エルトリアを救う事が出来るかも知れない……私達の未来で、博士に希
 望をあげる事が出来るんんだから!!」

「その気持ちは分かりますが、こんな事をした上で未来を繋いで、そんな事を博士が喜ぶと思ってるんですかキリエ!!」

「まして、今回の事は、お前達だけの問題ではなく、この世界を巻き込んでしまっている――お前にも事情があるのだろうが、だからと言って、
 お前の都合でこの世界を危険にさらす訳には行かないんだ。」

出来れば大人しくしてくれないか?
U-Dを何とか出来れば、落ち着いて話も出来るだろうから、此方から出来る最大限の支援をお前達に提案する事だって出来るんだ――その
方が、遥かに建設的だとは思わないか?
其れに、成功率が限りなく低い選択肢を選ぶのは、勇気ではなく無謀だ……違うか?



「一度決めたら、諦めずに最後までやり通す!少なくともアタシは、お姉ちゃんとお父さんにそう教わった!!」

「確かにそう言いましたが、今此処で其れを持ち出しますかキリエ!!」



うん、明らかに持ち出す所を間違っているな。
だが、あくまで退かないと言うのならば仕方ない……お前がU-Dからエグザミアを奪い去るよりも早く、U-Dを倒してしまう以外に手はないな。
元より此れは、闇の書の最後の拭き残し故、その後始末を着けるのは、私の使命だからな。



「敵性確認……排除行動に移ります……白兵戦モード、出力35%……」



――轟!!



む……U-Dの力が上がったな?
出力35%と言う事は、3.5S級と言う所か……此れ位ならば、異界の力を解放すれば圧倒出来る筈――フルパワーで僅か5分しか持続出来
ないが、今のU-Dを止めるのならば造作もない!!!



「ちょっと勝手に!!させないわよ!!」

「おぉっとキリエ、此処から先には進ませませんよ!!」

「――!どきなさいよアミタ!!」

「敢えて言いましょう!だが、断る!!」



……何なんだろう、緊迫した空気の筈なのに、其処となく漂うコメディテイストな雰囲気は……若しかしなくても、赤毛とピンクの会話が、自然
と姉妹漫才になってるのが原因なのか?……間違いなくそうだろうな。

だが、赤毛がピンクを抑えていてくれるのならば、私はU-Dに集中できるから有り難い事だ。――本気で行くぞU-D!!


――豪!!


異界の力を解放!……此処からの私は、ちょっと強いぞU-D!お前の事は、此処で止めて見せる!!








――――――








No Side


異界の力を解放したリインフォースは、魔力を全開放してU-Dに向かって行った。
無論、敵性勢力を認識したU-Dはリインフォースを最大の脅威と認識し、魄翼から無数の魔力弾を撃ち出してリインフォースを撃ち落とさんとす
るが、リインフォースは放たれた魔力弾を、全て身に纏った銀色のオーラで相殺しながら、強引にU-Dへと接近する。


「夜天の守護者たる、祝福の風を舐めるな!」

「!!」


そして魔力を込めたボディブローを喰らわせると、其処から魔力を込めたアッパーカットへと繋ぎ、そのまま肘を落としてエルボーを喰らわせ、コ
ンボのフィニッシュとして、魔力を込めた上段回し蹴りで蹴り飛ばす!!

異界の力を解放し、5S級の力を持ったリインフォースの此の連撃を喰らったら、オーバーAAAの魔導師であっても、戦闘不能は免れないだろ
うが、相手は、出力100%状態ならば10S級の相手であるが故に、そう簡単には行かない。


セイバー!!


吹き飛ばされたU-Dは、空中で何とか姿勢を立て直し、リインフォースに向かって強大な魔力斬撃を放つが……


「温い!!」


リインフォースは、いとも簡単に其れを躱し、更には瞬間移動めいた高速移動でU-Dの背後を取り、両手を組んだアクセルパンチを叩き込み、
U-Dの身体を海中へと落とす。
普通なら、オーバーキルレベルの攻撃であるが、相手は闇の書の闇に匹敵する存在だけに楽観はできない。

だからこそ、リインフォースもダメ押しの一撃を放つ事を選択した。


「咎人達に滅びの光を。星よ集え……全てを撃ち抜く光となれ!貫け閃光!スターライトブレイカー!!


闇の書であった頃に、なのはのリンカーコアを蒐集した事で会得した、最強最大の集束砲撃『スターライトブレイカー』を魔力を全開にした状態
でもって放つ。
星をも砕く力を持った集束砲の破壊力は、流石のU-Dも受けきれる事は出来ず、その圧倒的な質量に押されて海へと落ち、直後に大爆発!

此れで決まったと、誰もがそう思っただろう。

だが――


「……呆れた頑丈さだな?」

「敵性勢力は排除する……何があっても絶対に!!」


U-Dは略無傷の状態で海面から現れる……纏った力は、先程までよりも大きいだろう。
浮上したU-Dは己を圧倒したリインフォース……ではなく、キリエに向かって突進!――敵性勢力が複数存在するのならば、力が弱い順に倒
すのは道理故に、アミタと僅差で劣るキリエに狙いをつけたのは悪くないだろう。

同時に、完全にカウンターを喰らった形のキリエは、U-Dの攻撃に反応する事は出来ない……此のままなら、魄翼の攻撃を受けるだけだが…


「させません!!」


キリエに攻撃が炸裂する刹那、キリエとU-Dの間にアミタが割って入り、魄翼での攻撃を己の左腕で受ける――とは言え、その攻撃を完全に
防ぐ事は出来ずに、腕は魄翼が貫通してしまっている。

そして其れのみならず、その腕からは機械のフレームが現れて、火花を散らしている……如何やらアミタは、普通の人間ではなかった様だ。


「お前……大丈夫なのか!?」

「痛くても、苦しくても……前を向いて生きる!人の心は、そう言う風に出来ているんです!!
 バリアントザッパー、オーバーブラストォォォォォォォォォォ!!!」


左腕が千切れ飛び、腹を貫かれながらも、アミタは最大最強級の魔力砲をU-Dに向かって放つ!――そして、その直後、強烈な魔力爆発が
辺りに鳴り響いた……








――――――








Side:リインフォース


く……此れは、凄まじい威力だな?……其れこそ、闇の書の闇にトドメを刺したトリプルブレイカーに勝るとも劣らないだろうね……尤も、単体
で、此れだけの力を行使した赤毛は、タダでは済まないだろうが……



「………」

「おっと!」

やれやれ、満身創痍どころではないな此れは……如何やら機械の身体であったようだが、若しも生身であったのならば、即死だっただろう。
だが、こんなになってでも妹を助けようとしたその心意気は尊いものだ……妹の方は逃げてしまい、U-Dも転移してしまったがね。

取り敢えずはアースラに戻るか。
彼女が意識を取り戻せば、話を聞く事が出来るかも知れないからね……








――――――








Side:シュテル


……U-Dの攻撃によって霧散した我等ですが、如何やら意識レベルを回復するには至ったようです……此処から如何いたしましょうか王よ?



「どうもこうも、我等はまだ意識が戻ったに過ぎん故に、動く事は出来ん……暫しエネルギーのチャージに務め、最も早く力を蓄えた者が、外に
 出て情報を得ればよかろう……異論はあるまい?」

「其れが一番だと思う……流石だね王様。」

「実にお見事です王。」

元より、それ以外の選択肢などは存在していませんが……今は先ず、行動可能になるだけの魔力を集める事に集中するとしましょう――如何
やら、U-Dも色々と面倒な事になってきているみたいですからね。











 To Be Continued…