Side:アインス


輸送部隊が賊に襲われる可能性が高い場所があるから、手伝って欲しいとダリウスに頼まれてやってきた場所には、確かに賊が獲物
を待ち受けていたが、ハッキリ言って私とダリウスの敵ではなかったな。

ダリウスが策を成功させるまでの間、私が囮として派手に立ち回った訳だが、賊共は其れに面白いように踊らされた挙げ句に、賊の頭
が、ダリウスの奇襲によって無効化されてしまった訳だからな。

「難事を、平然とこなす……見事だなダリウス。」

「まぁ、これも君が派手に立ち回ってくれたお陰だけどねアインス。
 お陰で首尾は上々、賊は蜘蛛の子を散らしたように逃げて行き、輸送部隊は無事だ……作戦成功だね。」



だな。
私が居たとは言え、この状況を何とかしてしまうとは、お前は信頼に値する『鬼』だよ。



「いや……君こそ大したモノだよアインス――君の世界の『鬼』に同情してしまう位にね。」

「だろうな。私の強さは、時に仲間ですらドン引きする位だからな。――何にせよ、お前のおかげで輸送部隊を守る事が出来た。
 感謝するぞ、ダリウス。」

「其れはこっちのセリフだよ。アインスの力が無ければ、きっと俺達は負けていた――良ければ、これからも力を合わせて戦おう。
 『鬼』が相手でもよければ、だけど。」



ふ……モノノフは、『鬼』を討つ鬼――つまり、私もお前と同じ『鬼』と言う事だ。友情を交わすのに、何の支障もないさ。



「確かに……言われてみればそうだね。――ふふ、心強い同族と出会えて嬉しいよ。」



私もそう思う。
この世界を救うため……鬼同士、これからも力を合わせて行こうじゃないか――頼りにしているぞ、金髪蒼眼の鬼よ。









討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務94
『緑の遺跡と錬金術の少女』










それにしても、この世界は色々と大変だな?
泉とやらが力を失ったせいで、土地は荒れて作物が充分に取れなくなり、その結果として民や輸送部隊を襲う山賊なんかが増えてしま
っているのだからね。
この現状を何とかするためにも、環を新たな王にするのが急務だな。



「環様、英雄様、御報告がございます!」

「……何かあったのですか?」

「はい、刹那様の軍が、祠を占拠しようとしているとの事ですので急ぎ報告いたしました――如何いたしましょうか?」



刹那が祠を?……なら、出撃するしかないだろう。
祠を抑えられる訳には行かんからな……速攻で出撃して、刹那軍を退けるのが最善策だな。此のメンバーなら余裕だと思うしね。

異論はあるか?



「アインス殿の考えで良いと思う……と言うか、大雑把な作戦だけど、アインス殿が言うとやれるような気がするから不思議。」

「ま、其れもまた彼女の魅力なんだろうね。」

「アインスだからな。」

「って、其れで納得すんのか桜花!いや、俺も妙に納得しちまったがな?」

「貴女のような者を、真の英雄と言うのかも知れませんねアインス。」



英雄ね?私は何方かと言えば『破壊神』とか『鬼神』の方が合っている気がするけれどね……と言うか英雄と言われるのは少しこそば
ゆい気がするからな。
取り敢えず、件の場所に行くぞ!



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で、やって来たのは緑色の遺跡。
植物が生い茂ってるだけじゃなくで、この石像とか遺跡の壁は翡翠の原石で出来てるのか?……何とも豪勢なモノだな。

さて、先に出撃した環軍の兵士は、刹那軍と既にぶつかっているようだな?……状況は、少しばかり押されているか。
ならば、先ずは味方本陣の安全を確保しなければな――私達の加勢で流れを変える!!



「任せな!俺様の鉛玉、とくと味わいな!!」

「天気は晴朗……だけど、突然の雷には注意した方が良い。」

「良い攻撃。時継殿とダリウス殿の先制攻撃で隙が出来た……このまま一気にあの門番を倒してしまいましょう。」

「だな。」

門番を倒して開門すれば、味方も動きやすくなる上に本陣の安全も確保できるからな。
――と言う訳で、行くぞ門番!HPの貯蔵は充分か?



「へ?お、お前達一体何処から!!」

「答える義理も義務もない!喰らえ、一般人が喰らったら間違いなく頭蓋骨陥没で即死するパンチ!」

「長いなアインス。」

「ですが効果は抜群ですよ桜花。開門するまでもなく、門番が門を突き破って15尺ほど吹き飛んで行きましたから。」

「……そいつ、生きてるか?」

「辛うじてだけど、生きてはいるみたいだよ時継。」



一応手加減はしたからな。
さて、このまま本陣の安全を確保しつつ刹那軍を退けて祠を確保すれば、それでお終い――




「だ、誰か、助けてぇ~~~!!」




……とは行かないみたいだな。
如何やら戦いに巻き込まれた者がいるようだから助けねば!――確か、此方の方から声が聞こえた筈だが……声の主はあの子か?
青いコートに白い布を三角巾のように頭に被って不思議な杖を手にした少女……恐らくだが、彼女もこの世界の住人では無いな。
取り敢えず……子供に何してるんだお前は!取り敢えず、昇龍拳!

続いて横昇龍拳!(普通の右ストレート。)

そして、足昇龍拳、足昇龍拳、足昇龍拳!(細かい足払い連打。)はい、KO!!大丈夫だったか?



「はい、何とか。危ない所をありがとうございました!
 アタシはソフィー。錬金術師です。」

「錬金術師……」

錬金術師と聞くと、どうしても右腕と左足が機械化した主人公を思い浮かべてしまうのはきっと仕方ない事なんだろうね。
なんにせよ無事でよかったよ。
だが、なんで君はこんな所に居たんだソフィー?



「錬金術で作った道具を探してたの。
 この世界に来た時に、ビックリして落としちゃって。」

「成程、其れは確かに探しておかねばだな。」

錬金術は、魔法と並んで人知を越えた力だからな……其れで作った道具ともなれば相当な物なのだろうからね。――なんて事を考え
て戦ってたら、何時の間にか本陣を襲っていた敵の小隊長を倒していたからびっくりだ。
で、これは何だ?何か球体の……



「あ~~!それです、アタシの探していた物!フラムって言って、衝撃を加えるとドカーンって爆発するんです!
 調合が巧く行きすぎちゃったから、若しかしたら何時もより凄いかも……」

「んな!?そんなあぶねぇモン作ってんじゃねぇやい!」

「要は爆弾と言う事か……確かに危険だな。」

「だね、今し方倒した相手も同じ物を持っていた……回収したのは間違い無かったみたいだ。」



ダリウスか……確かに回収したのは間違いじゃなかったな。
だが、刹那軍の兵士がソフィーが作ったフラムを持っていたと言う事は、若しかして残りのフラムも刹那軍の兵士が回収したって言うの
か!?……だとしたら、速攻で回収せねばだ!





「敵に物資を奪われるな!速やかに運び出せ!!」




む……何やら敵部隊に動きが――輸送兵を出したか!
と言う事は、刹那軍が回収したフラムは奴等が持っていると言う事だな……ならば、そのフラム返して貰おうか!!





「おわぁ!?何処から現れた!?」

「空からだ……そして現れたのは私だけではない!」

「背後には要注意だぞ?」

「輸送兵は、特にです。」



輸送兵を、私と桜花と紅月で包囲して一撃撃滅!
で、やっぱり持っていたか……先程回収したのと同じ球体が出て来たからね。



「良かった~~。
 フラムは全部見つかったみたい。――もう落とさないように気をつけないとね。」

「そうしてくれ。……時に環、戦況はどうなっている?」

「其れが……一時は押し返したのですが、刹那兄様の軍の兵器によって、再び劣勢になってしまっています――何とか態勢を立て直さ
 ないと……」



兵器……あのゴウエンマみたいな奴か。――つくづく変な所で縁があるな。……アレを破壊するのは少し骨が折れそうだが、やるしか
あるまいな。



「兵器を……そうだ、アタシのフラムであの兵器を壊せるかも!!」

「其れは本当かい?……なら、任せても良いかなソフィー?」



フラムでか。
確かに其れは良いかも知れないな?――よし、頼むぞソフィー!



「まっかせて!使っちゃうよ!え~~い!!」



――カツン!!



ソフィーが投げたのはメカゴウエンマ(仮称)にぶつかて地面に落ちました……アレは何だ?とげとげの球体……ウニか?



「いや、イガのままの栗じゃないか?」

「成程、栗か。」

「あ……違う!こっちだった!!えーい!!」



――バッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!



あぁ、只の間違いだったのか。
そして改めて放られたフラムとやらの破壊力は凄まじいな?……見ろ桜花、メカゴウエンマが物の見事に金属片になり果てた――アレ
を喰らったら、私もヤバいかも知れん。



「いや、君なら大丈夫だろうアインス。あの爆発は確かに凄まじいが、君ならきっと無傷で生還する筈だ。」

「否定できないのが悲しいな。」

何にしても、ソフィーのフラムのおかげでメカゴウエンマは吹き飛んで、門も破壊出来た――ならば、後は門の向こうに陣を構えていた
刹那の軍勢を打ち倒すだけだ!



「よーし、攻めちゃうぞ!!」

「ふ、お前もノリノリだなソフィー。」

だが、その乗りは嫌いじゃないから、一気に攻め立てる!!
貴様等に祠は奪わせん……大人しく立ち去れ刹那軍!!



「ほう、女子が果敢に攻めてくるとは感心にゃ。
 第六天魔王、織田のぶニャがが相手をしてくれよう。」



って、現れたのはなんだかとっても偉そうな猫!?って言うか、のぶニャがって本気かその名前は!?……いや、マントを羽織って種
子島片手に二足歩行してる猫と言う時点で普通ではないが、何だか色々と納得がいかないな此れは。

だが、猫が相手だと言うのなら戦わずして勝つ方法がある!
織田のぶニャがとやら、これを見ろ!!



「其れは、何と旨そうな魚よ!」

「実際に旨いぞ?最高に脂の乗った鰯だからな。
 此のまま生で食べても当然旨いが……今回は此れを、魔法を利用した直火で焼く!」

「む……此れは、鰯の脂の焦げる、何と言う良い香り!!」



良い感じに焼き上がったからな。
そしてこの最高に旨い焼き魚を……取ってこーい!!



「にゃにゃ!?あの魚は我の物ぞ!者ども、アレを回収するぞ!!」



と言う訳でのぶニャがは戦場を離脱した……だから、私達の勝ちだ。
相手が猫だからこそ成功した裏技だが、こう言う戦い方もアリだろう?――出来るだけ労を要さずに勝つ方法があるなら、其れを選択
するのが一番だからな。



「見事な作戦ねアインス殿。余計な血を流さずに戦に勝つ……とても大事な事ね。」

「今回は巧く行っただけだよ元姫。
 しかし、ソフィーの錬金術は凄まじいな?あのフラムの威力、思わず身震いしてしまったよ。」

「うん。錬金術って、スッゴク便利なんだけど……使う人次第で、スッゴク恐ろしい物にもなっちゃうんだ。」



アレだけの力を秘めているなら、そうなるだろうな。……闇の書と同じだ。
力は所詮力でしかない――其の力がどんなモノになるかは使う者によって変わって来る。……同じ力でも、使う者によって、其れは救
い、滅び、どちらにもなるからね。



「でも、アタシは、この力で困ってる人を助けたい。
 其れで皆を幸せに出来たらなって。なかなか難しいんだけどね、えへへ……」

「ソフィー様。
 私も、皆を幸せにしたいと考えてはいるのですが、どうしても力が足りません……ソフィー様、お願いです。
 皆を幸せにするそのお力を、私に貸していただけないでしょうか?――滅びゆくこの世界を、如何か……ともに救ってくださいませ。」

「私からもお願いできるかなソフィー?」

「うん、良いよ!
 環ちゃんはとっても優しそうだし、アインスさんはさっきも助けてくれたしね!アタシも、この世界の皆を幸せにする為に頑張るよ!」



あぁ、頼りにしているぞソフィー。此れから、宜しくな!

祠を確保しただけでなく、新たな英雄を仲間にする事が出来たとは、これは可成りの収穫だったな。









 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



と、言う訳で、聖域に戻ってきたら宿舎の風呂は基本だ。此処の温泉は温まるからな。
だが、なぜお前が居るダリウス?



「其れは俺のセリフだねアインス……今は男性の時間だった筈だけど、見なかったのかな?」

「あぁ、見ないで来た。」

「ヤレヤレ、困った人だね君も。だが、時には混浴って言うのも悪くないかな?」

「だな。私は気にしないし。」

「ふふ、君はトコトン変わっているねアインス。」

「私もまた『鬼』だからな。」

ならば今は『鬼』同士で温泉を楽しむとしよう――だがなダリウス、お前も男ならもう少し筋肉を付けた方が良いと思うぞ?流石に少し
細い気がするからな。



「そうかな?少し気をつけてみるよ。」

「まぁ、お前の様な容姿の方が、女子にはモテるのかも知れないけどね。」

まぁ、何にしても温泉は最高だな。