Side:桜花


もうすぐ噂の森に着くな。
人が消えたり、化け物の声が聞こえたりするのは本当だろうか……まさか『鬼』の住処と言う事はないだろうが……
ん……?霧も出て来たな……。とにかく慎重に行動しよう。



「慎重にね……その意見には同感だが、小生は、森ごと吹き飛ばせば良いのではないかと愚考します!」

「考えるだけにしておいてくれアインス。」

君の実力ならば、やって出来ない事は無いのだろうが、其れは其れで色々と問題しかないからな。――取り敢えず、森を吹き飛ばすの
だけは止めてくれ。



「冗談だ。
 尤も、敵に容赦する心算は無いがな。」

「いや、其れは普通だアインス。」

「アインス殿は味方だと頼もしい――魏に連れて帰りたいくらいだからね。」



まぁ、その気持ちはよく分かるよ元姫。アインスが居れば100人力どころか、100万人力だからな。
何にせよ、迷いの森で発生してる事件、必ず解明してやる――モノノフの名に誓ってな!!









討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務93
『迷いの森~蠱惑の幻術~』










Side:アインス


と言う訳で件の森にやって来た訳だが……成程、これは迷いの森と呼ばれる訳だ――特殊な磁場が発生しているせいでコンパスは役
に立たないし、強い磁場は人の感覚を狂わせるからね。
まぁ、私の場合は迷ってしまっても空を飛ぶ事が出来るので問題ないんだが……取り敢えず行方が分からなくなっていると言う人達を
探さねばだ。



「だ、誰か!助けてくれーーー!!」



今の声は……私達よりも先に、民の捜索に出ていた者か!
急いで助けなければ――って、迷いの森と言う名称から予想はしていたが化け物が住んでいたか!……まぁ、此方の世界に来た時に
戦ったぷにぷにの奴等だから怖くも何ともないが。



「化け物?……見た目は可愛らしいと思うけど……」

「見た目に惑わされるな元姫。コイツ等は意外と侮れない。
 攻撃力は大した事は無いが、柔らかい身体のせいで衝撃を吸収するらしく、意外としぶといからな。」

「そうなの桜花殿?
 でも、アインス殿にはそんな事関係ないと思うけれど………」

「うん、全く関係ない。」

六爪流でも普通に余裕だし、ゼリーボディであっても防御無視してダメージを与える直射砲をブチかませば何とかなるからな?
其れに、桜花の太刀なら重さでゼリーボディを両断出来るし、元姫の短剣――鏢だってゼリーボディには普通に刺さるからな……と言う
訳であっと言う間に掃討完了だ。
大丈夫だったか?



「ありがとうございます。民の捜索中に、自分も迷ってしまいました。
 進んでも進んでも、同じ場所に戻ってしまって……もう、ヘトヘトですよ。」

「其れは大変だったな?
 ならば、此処からは私達も一緒に民を探そう。私達はその為に来たのだから。」

「責任は果たさないとね――所でアインス殿、桜花殿、さっきのとは違う化け物が現れた様だけれど……」



『『『『『『『『『『ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!』』』』』』』』』』



「『鬼』か!だが、先には進まねばならない……押し通るぞアインス、元姫!」

「だな。」

「其れじゃあ、お掃除開始ね。」







――3人で『鬼』を撃滅中。今し方助けたたいまつ兵が、私達の強さに若干引いてるけど気にしない。







で、『鬼』を倒して先に進んで来たんだが……此れは霧が濃くなって来たな?
視界も悪くなって来たし、慎重に進んだ方が良さそうだ――恐らくこの霧は只の霧じゃないから、私が魔法で吹き飛ばした所で、また直
ぐ発生するだろうしね。



「いやはや、流石は英雄様、化け物相手でも圧倒的です。
 しかし、こんなに暗くては危なくて先に進めませんよ。」

「あぁ、マッタクだ。
 思ってた以上にこの森は異質だ――まるで、第三者が幻惑の術を施しているとしか思えん。」

「確かにな……って、これは蒼い花が光っている?」



蒼い花が?……ふむ、確かに桜花の言うように光っているな?
まるで道しるべのように一定間隔で続いている……私達を誘っているのか?――何かの罠と言う気がしなくもないが、先が見えない今
は、この花の光を頼りに進むしかないか。



「其れしかないみたい。
 でも不思議ね、此の光を頼りに進んで行くと化け物と会わないし、次第に霧が薄くなっている気がする。」

「言われてみれば、確かにそうだな?本気で道しるべだったと言う事か?……だが、だとしたら何故この森で迷うんだ?」

「……一般人にはあの光は感知できないのかも知れんぞ桜花。
 自分で言うのも何だが、私と桜花はモノノフだし、元姫だって歴史に名を残す女傑だから実力は相当な物だ――恐らく、あの花に
 仕掛けをした奴と同等かそれ以上の力のある奴じゃないと、知覚する事が出来ないのかも知れん。」

「……成程、そう言われると納得だな。」



霧も大分晴れて来た。これなら人探しも少しは楽になりそうだ。



「誰か、助けてくれー!!」

「「「!!!」」」



今声が!何処にいる――って、探す必要は無いな。
声が聞こえた方向は大体分かるから、此処は瞬間移動だ!!



――バシュン!



と付いた先では、民がぷにぷにの集団に襲われてる!?――大丈夫かオイ!



「あぁ、如何かお助け下さい!!」

「勿論。その為に私達は来たのだから。」

「取り敢えず貴様等は散れ……ブリーティガードルヒ!

破邪剣征・百花繚乱!



助けてくれと言われて無視する心算は毛頭ない……民を助けずに、何が外界の英雄かだしね。
と言う訳で、私のブラッディダガー広域型『ブリーティガードルヒ』と、元姫の鏢の連続投擲と、桜花の百花繚乱でぷにぷに共を鎧袖一触
してやったわ!何となく、私と桜花と元姫と、此処には居ない紅月で四女傑を名乗っても良い気がして来たなうん。



「ありがとうございます。もう出られないかと思っていました。」

「もう大丈夫だ、安心しろ。――さぁ、森から出よう。」




『『キョアァァァァァァァァァァァァァ!!!』』




で、無事に民を助けて森を抜けようとした所で、出て来たか『鬼』が!
しかも餓鬼の集団ではなくマフウか……たいまつ兵、民を連れて撤退しろ!私と桜花と元姫で殿を務めて化け物共を叩きのめす!!
取り敢えず、我が六爪流の錆となれ!!



――ガキィィィィン!!



んな!私の攻撃を防いだだと!?
いや、其れだけじゃない。桜花の太刀も防ぎ、元姫の鏢が刺さらないとは……コイツ等普通のマフウじゃない?――よくよく見れば胸の
辺りに、存在しない筈の目玉が現れているし……この森の力で強化されたと言う事か。
私の攻撃を防ぐとは、コイツ等は強い……さてと、如何した物か。



――シュイン!



と、突如金髪の青年がマフウ達の前に現れた?
ちらりと見えた横顔からは不思議な仮面が見えたが……何者だ?



「今すぐ、此処から去るんだ。」



何だ、マフウ達の様子がおかしい?……お前が何かしたのか?



「……直ぐには効かないか。美しいお嬢さん、少しだけ君の力を貸して?」



そして振り返ってその顔は、極上のイケメンでした。お前は一体。
して、お前の言う美しいお嬢さんとは一体誰だ?取り敢えずこの場にはその条件に当てはまる者が3人も居るんだが……時継と共に別
行動をしている紅月を入れたら4人だがな。



「勇敢なお嬢さん、少し術を強めてみるから、時間稼ぎを頼めるかい?」

「OK普通に流された。だが、時間稼ぎをしろと言うのなら任せておけ。」

「お、お嬢さんではないが、その任務受けてたとう。」



桜花、少し動揺し過ぎだ。
だが、時間稼ぎとは言っても、倒すなとは言われてないからな……六爪流がダメなら、私の最も得意とする格闘と魔法で戦えば良いだ
けの事だ!!
少しばかり強いからと言って、調子に乗るなよ?喰らえ、淑女のフォークリフト(ジャーマンスープレックス)!!



――ズガン!!



「化け物が頭から地面に突き刺さっている……流石ねアインス殿。」

「アインスにとっては、あれ位朝飯前だな……」

「おやおや、豪快なお嬢さんだ。
 俺はダリウス。この森に棲んでいる――留守の間、怖い思いをさせてすまなかったね。
 今、奴等に暗示をかけて居るんだが……どうやら彼等には俺の暗示が効きにくいらしい――まぁ、多少は効果があるみたいだけど。」

「そう言えば、敵が弱くなっているな……その暗示とやらの効果か。
 時に、君はさっきいきなり現れたな?アインスの瞬間移動にも似たその力、其れで味方を外に送り出せないか?」

「其れは難しいね。
 敵の意思に阻まれているのか、此処では少しの距離しか移動できないんだ。」



取り敢えずマフウは撃滅したが、この森では少しの距離しか移動できないのか……となると、私の瞬間移動でも外に出るのは難しいだ
ろうな。



「さて、お別れだよ……」



っと、此処で術とやらが効いたのか、残った化け物共が退散していく……此れなら安全に森から出られそうだ。



「クソ、何なんだこの森は!化け物共がうじゃうじゃと……」

「お前達は、なぜこんな所に居る?……さては、化け物の仲間か!」



と思ってたら、此処でまさかの武装集団と遭遇!――兵の毛色と装束からして、刹那の軍勢か……マッタク空気を読めよ!
しかも悪い事に、奴等は森に火を放とうとしている……火を放たれたら民を連れて逃げるのは難しい……さて、如何した物か?



「そいつを捕まえてくれ。俺が暗示をかける。」

「暗示を?……分かった、任せておけ。と言う訳で捕まれ!!」

「んな無茶な!!」



森に火を放とうとしたお前が悪い。
さて、希望通り捕まえたぞダリウス……思い切り暗示をかけてやってくれ。



「俺の目を見るんだ……さぁ、元いた場所に火を点けなさい。」

「……はい。」



素直に従うとは、ドレだけ強力な暗示なんだ?
だが、お陰で敵の火計は森を焼くモノではなく、自軍を攻撃するための物になった様だ――まぁ、其れでも森の一部が焼かれてるのに
は変わりないがな。リアル燃え盛る大地だな。



「この程度の損害は許容範囲内だよ。――其れは其れとして敵は大混乱だね。そろそろお引き取り頂くとしよう。」

「その意見には同感だが、如何やらそう簡単には行かないらしい。」




「何故味方を攻撃する?……人間目、小癪な真似を……!」




刹那軍の英雄が現れた様だからね。

コイツ、見た目は人間だが、人では無いな?――私と同様に、人の姿をしながらも、人非ざる存在か……



「貴方が、敵?」

「この森は、この世界の安住の地でね……其れを燃やされては困るからね。」

「確かに其れを燃やされては堪らないな――時に、その仮面は何だ?」

「あぁ……此れは鬼の一族に伝わる仮面でね、俺の力を増幅させてくれるんだ。」

「『鬼』?……君は、一体。」



まぁ、そう構える事でもないさ。
戦国時代の日本人は西洋人を見て『鬼』と称した事も有ったんだ――金髪蒼眼の彼の事を、日本人が『鬼』と称しても不思議はないさ。

だが、先ずはお前を倒させて貰う。



「裁きの時は来た……後はもう、落ちるだけよ。」

「そうか、ならばお前が落ちろ……奈落の底にな!」

スピード×体重×握力=破壊力!喰らえ、オベリスク・ゴッドハンドクラッシャー!!――からの、真・昇龍拳!!


――ドバガァァァァァァァァァァン!!



「なんと言う力……此処は退かせて貰う……次は必ず、落としてあげるわ。」

「何時でも来い!だが、昇龍拳を破らぬ限りお前に勝利の可能性は無い!」

「騒がしい連中は、漸く帰ってくれたね。君達の協力のおかげだ――さぁ、お嬢さん、帰り道はエスコートしよう。」

「あ、ありがとう……どうにも調子の狂う男だな。」



ハハ、確かにこの手の輩は、お前は苦手かもな桜花。
だが、出口まで案内してくれると言うのは助かるよダリウス。



「其れは如何も――さぁ、お嬢さん、気をつけてお帰り。
 もう二度とこの森は来ない方が良い――また俺の術に、惑わされるかもしれないから。」

「霧やらなにやらはお前の術だったのか……お前は何故、この森に居ついて居るんだ?」

「俺は情報を集めているんだ。
 この世界で何が起きているのか?なぜ、俺は呼ばれたのか……近くの住む人を森に呼んで色々聞こうと思ったんだけど……変に
 噂になってしまったね。
 今度からは気をつけるよ。」



情報を……なら、こんな森に居ないで、私達の仲間にならないか?
幾らでも情報を提供できると思うぞ――少なくともお前が一人で情報収集をするよりはな。
其れに、お前は頼りになる――其の力、是非とも貸して欲しい。



「……仲間か、其れも良いかも知れないね。
 折角異世界に招かれたんだ、元の世界とは違う道を歩んでも許されるかな――其れじゃあお嬢さん、良かったら君の仲間の元へ、俺
 を案内してもらえる?」

「あぁ、分かった。
 頼もしい仲間を得られて嬉しく思う。此れから宜しくな、ダリウス。」

迷いの森の一件を解決する心算で来たが、期せずして外界の英雄を仲間に出来たか――元姫に続いての新たな英雄の加入で、環の
戦力は更に増えたが、まだ安心はできんな。

この世界にドレだけの英雄が呼ばれたのかは分からんが、其れを可能な限り此方の仲間にしなくては、環の思いを成就させるのは難
しいだろうからね。








――――――








Side:???



う~~……行き成り閃光に包まれたと思ったらここ何処?
見渡す限りの大砂漠……って、如何考えても厄介事に巻き込まれたっぽいなぁ?……八神司令に連絡……は無理だよねぇ……ママ
も居ないし、果てさて如何した物かな?



「む……困りごとか?」

「へ?あぁ、行き成り知らない世界に放り出されて困ってます!」

「なんと、君もか……私も気が付いたら、この世界に居たので驚いている。」



私に声を掛けて来たのは、黒髪の長髪を一つに縛って、グリーンの鎧を纏って槍を手にしたお兄さん……付け加えるなら物凄いイケメ
ンさん。其れこそ、ママの旦那さんになって欲しい位。
えっと、貴方は誰ですか?



「此れは名を名乗らぬとは無礼だったな。
 私は趙雲。劉備殿の臣下の一人、趙子龍だ。」

「趙子龍って……えぇ?ええぇ~~~!!若しかしてお兄さんって、あの趙雲!?」

ま、マジですか!?
まさか、異世界と思われる場所に転送されて、其処で三国志の英雄と出会うとは思ってなかったよ……って言うか趙雲さんて、ガチの
イケメンだったんだね、



「私を知っているのか?……何とも光栄だが、君の名は何と言うのだろうか?」

「あ、名乗られたらこっちも名乗らないとですね。」

私はヴィヴィオ。高町ヴィヴィオです。










 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



Side:アインス


さてと、ダリウスが味方になったのは頼もしい。――取り敢えず、汗を掻いたので風呂を浴びに来たんだが先客がいたか元姫。



「アインス殿……こうして一緒になったのも何かの縁、ゆっくりして行きましょう。」

「その意見には賛成だ元姫。」

一杯やる心算で、お盆に酒と猪口を持って来たから一緒に楽しもうじゃないか。――酒は嫌いじゃないだろう?



「そうね、折角だから頂こうかしら?」

「そう来なくてはな。」

紅葉を見ながら、友と温泉に浸かって酒を嗜む……何とも贅沢な事だな。――こんな事が、誰にでも何時でも出来るようにする為にも、
この世界は絶対に救わないとな!