Side:アインス


異世界での戦闘と言う事で、環と模擬戦をしたんだが、ハッキリ言ってマッタク持って問題は無かったな――環が使う神器『天鏡』を使
った戦いには苦戦させられたが、其れでも私を越える事は無かったね。

桜花と時継と紅月が組んで来たら分からないが、並の相手じゃ私の敵ではない。

なので、環も殆ど瞬殺してしまった――此れは、要らないトラウマを植え付けてしまったのだろうか?



「英雄様の強さ……この身で実感いたしました。
 私も泉を操れる魔力があると言うのに何も出来ないだなんて。これなら、どんな敵が来ようとも、きっと大丈夫です。」

「……私に瞬殺された直後に、そんな事を言えるのなら安心だな。」

まぁ、模擬戦と言う事だから手加減はしたし、刀は一本も使って居ないから、私の本気はマダマダこんな物ではないがな――で、時継
は何をそんなに驚いた顔をしている?いや、表情分からないけど。



「何を驚いてるだと?
 刀を使わねぇってのは、手加減って事で良いとしても、環の鏡から発射される光線を素手で弾き飛ばすたぁ、テメェ本気で人間か!
 仮に防のタマフリで防御力強化してても出来る事じゃねぇだろ、このスットコドッコイ!」

「スマンな時継、私は少し非常識な存在なんだ。」

「……ゴウエンマを軽々持ち上げて投げ飛ばすのが『少し』か?」

「アインスは、とても強いモノノフなのですね。」

「おいコラ紅月、其れで納得すんじゃねぇ!!」



まぁ、私は色々と普通のモノノフではないと言う事さ。そう言う事で納得してくれ時継。










討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務90
『異世界バトル~立ちはだかる強敵~』










さてと、取り敢えず模擬戦は終わった訳だが……ふむ、この世界に来た時から何やら妙な感覚がしていたが、今の模擬戦でその原因
が分かった。
私の中から『真田幸村』『石田三成』『井伊直虎』のミタマが無くなっている。



「ミタマが消えただと?一体何故だ?」

「てかお前、一人で何体ものミタマを宿してんのか?スゲェなオイ。」

「私は、今世のムスヒの君らしいのでな。」

まぁ、数えるのも面倒なくらいのミタマを宿しているから、今更3つほど無くなった所で大した影響は無いが、なぜ無くなってしまったの
かは調べておかないとな。
取り敢えず、先ずは祠とやらに向かう事にするか。

って、誰か来たな?何やら慌てているようだが……




「環様、大変です!祠がある一帯を、刹那様の軍が占拠しました!我等を祠に近付けまいとしているようです!」

「刹那兄様が……どうして!?」

「その上、刹那様は、既に何人かの英雄様を味方につけておられる模様です。
 環様、私達は如何すれば……」

「分かりました……。すぐに祠へ向かいます。
 刹那兄様は、何をお考えなのでしょうか……?私が王とならなければ、世界は滅んでしまうのに……
 お兄様と話さなければなりません。――英雄様……申し訳ありませんが、共に来ていただけますか?」



と、此処で問題発生か。
刹那とは、確か環の従兄妹だったな?――召喚の儀式の前に姿を眩ませた王族の一人が祠を占拠したと言うのは如何にも穏やかな
事ではないな?
これは、行くしかないだろう――最悪の場合、刹那軍との戦いに発展する可能性も可成り高いしな。



「勿論共に行こう環、案内を頼む!」

「此処が勇者の腕の見せ所ってな。」

「其れでは、早速役目を果たしに行くとしましょう。」

「はい、ありがとうございます、英雄様。」



世界を救う、其れだけでも大層な事だが、如何やら事がすんなり行くと言う訳では無いと言う訳か。――環は話をしなければと言って
いたが、刹那とやらが其れに応じるとは思えんしな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



で、現着。
刹那の意図が分からないと言う事で、環は話し合いを求める手紙を送った訳だが……如何せん、使者の帰りが遅いな?――なぁ環、
刹那と言うのはどんな奴なんだ?



「刹那お兄様は、私の従兄にあたります。父の兄……先々代の王の息子です。
 伯父様が亡くなってから、私達は本当の兄妹のように育ちました。なぜ急にこんな事になってしまったのか……」

「た、環様!大変でございます!
 刹那様に手紙を届けようとしたのですが、近寄らせても頂けず……無理に進もうとした者は、容赦なく攻撃されました!
 刹那様は、こう仰っていました。『正統なる王は自分だ。王位を狙う環を必ず倒す』と……」

「「「「「!!!」」」」」


矢張り話し合いの余地はなかったか……姿を眩ませていた王族が祠を占拠したと言うのを聞いた時点で、恐らくは環の王への即位を
邪魔して来るだろうと思っていたからな。

「話し合いは、する前に断られたか。
 となれば、祠を押さえて泉を蘇らせるには、祠を占拠している刹那軍を退けるしかない――そう言う事になるが、如何する環?」

「泉を蘇らせるのを阻むと言うのならば、お兄様であろうとも、この世界の滅びへ導く敵に違いありません……
 どうか、共に戦って下さいませ。」

「環……君は、王となる事に覚悟を持っているのだな……ならば、私達がその道を切り開こう!」

「滅びゆく世界を救おうとしている者の邪魔立てをすると言うのは、見過ごす事が出来ませんからね。」

「一丁やってやるぜ!絡繰人形の大冒険、ってな!」



そういう訳だ!行くぞ!――って、既に大分敵が迫ってきているな?
時に環、祠を押さえて泉を蘇らせるって、具体的に何を如何すれば良いんだ?



「祠で儀式を行い、英雄様方の力を、私の神器『天鏡』を通じて祠に送り込み、其処から地脈を通して泉に力を送り込むのです。
 ですが、儀式を行う前に敵を退けなければ……英雄様、宜しくお願いします。」

「任せておけ……我が六爪流の錆になりたい奴はかかって来い!!」

「私とアインスと紅月で斬り込む、時継は支援を頼めるか?」

「任せな、遠距離攻撃は銃と魂のタマフリの得意技だからな。」

「一気に斬り込みましょう!」



環は戦う事を考えていなかったのか、連れてきた兵は刹那軍と比べれば相当に少なく、恐らく戦力比は1:10と言った所だろうが……
私にとっては10倍程度の戦力差などないに等しいと知れ!
喰らえ……狂獣裂破!


――ババババババババババババ!


からの、夜叉車!繋いで、回転剣舞十八連!!……一瞬六斬の3倍で十八連。うん、完全に人外の技だな此れは。――まぁ、この一
連のコンボで大軍を退ける事が出来たから良いとしよう。
桜花も、破邪剣征・百花繚乱で敵部隊を吹き飛ばし、紅月は紅月で薙刀のリーチを生かした戦い方で敵を叩き伏せ、時継は敵の武器
を正確に撃ち落として撤退させていたしな。



「貴女も別の世界から来たの……?
 でも……其方につくなら、倒さないと。」



っと、此処で青い胴着……いや、胴着と言うには可成り露出度が高い気がするが、兎に角そんなのを纏ったポニーテールの女性が現
れたな?
貴女達もと言う事は、お前も別の世界から来たと言う事か……となると、彼女が刹那の仲間である英雄か。

ふむ、中々に強そうだな?戦闘能力で言えば、ザフィーラに匹敵するかもしれん。
何もなければ、手合わせをしたい所だが……生憎とそんな事をしている暇はないのでな――悪いが一瞬で終わらせる……滅殺!!



――ヌゥゥゥゥン……ガッ!



「え?」

失せろ!


――ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……カキィィィィン!!



                                     




はい、瞬獄殺で滅殺完了!
一応威力は抑えておいたから死んでないがな。……しかし、殺意の波動の極滅奥義をも普通に使う事が出来るとか、本気で何でもア
リだな私は?まぁ、今更だが。



「流石だなアインス、その強さ見事なモノだ。君が仲間である事を誇りに思うよ。」

「そう言って貰えるのは嬉しいよ桜花――っと、何やら化け物が現れたみたいだな?」

「異界から化け物が迷い込んでしまったようです……私が儀式に失敗してしまったばかりに、申し訳ありません。」



不完全な儀式の為に、英雄だけでなく化け物まで呼び寄せてしまったと言う事か?
だが、気にするな環――化け物退治は、モノノフの専売特許だからな!!消え去れ化け物共……合わせろ時継!



「おうよ、行くぜアインス!」

「喰らえ、ダブル連昇!!」



――ドドドドドドドドドドドドド!!



大量の敵を倒す時には、魂のタマフリの連昇が役に立つな。
攻撃範囲が広い上に攻撃回数も多い――魔力を消費する攻撃でもないから燃費の面でも範囲魔法よりも優秀かも知れん。……その
代わりに威力面ではやや劣るけどね。

しかしまぁ、手練れのモノノフが4人集うと相当な物だな?
こう言っては何だが、刹那軍の兵も、化け物の大群もまるで相手にならんぞ?……だから、あっという間に刹那とやらの元に到着だ。



「来たか……。
 環、大人しく王位を譲れ。出来ないと言うのならば、ここで斬る。」

「刹那兄様?お待ちください、私は!」

「簒奪者の言い訳を聞く心算は無い……覚悟しろ環!」



話を聞く気はないか……だが、環はやらせんよ。



「お前は……環が従えた英雄さんか!邪魔をするな!!」

「だが、断る。環に力を貸すと言った手前、お前が環を斬ると言うのならば其れを見過ごす事は出来んからな……さて、如何する環?
 コイツは戦う気満々みたいだが?」

「……仕方ありません……刹那兄様を倒す為、力を貸してください英雄様。」

「了解した!」

と言うか、これで終わりだがな!お別れです!!


――ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!


「はぁ!?相手の頭掴んで、竜巻起こして攻撃って、どんな荒技だそりゃあ!!」

「竜巻だけでなく、稲妻も発生しています……あの技は一体……」

「確か、真・八稚女ЯМИДОКОКУ(やみどうこく)だったか?……真面に決まれば、ゴウエンマ級の『鬼』ですら一撃で沈黙する
 攻撃だ。
 流石に威力は抑えてあるだろうが、其れでもアレを喰らったら戦闘不能は確実だろうな。」



うん、間違いなく戦闘不能だよ桜花。
威勢よく出てきた割には呆気なかったな刹那?……まぁ、私が有り得ない程のチート無限のバグキャラと言うのがあるのは否めない
けれどね。



「く……環、俺は諦めない。
 必ずお前を止めて、王位を取り戻す!」

「刹那兄様……」



取り敢えず刹那軍は退けたか――なら、祠の儀式を……



「遅れて到着してすみません!……アレ?実は早く到着し過ぎちゃいました?
 だったら……井伊家家訓!戦って時を稼ぎ、味方の到来を待つべし!!」



と思ったらな~~んか見えるぞ?
赤揃えの鎧を纏った黒目黒髪の姫武将と思われる人物……井伊家って言う事は、若しかしてお前は井伊直虎か!?……まさか、歴
史上の有名人と会う事になるとは思っていなかったよ。
だが、これで私の中のミタマが消えた理由が分かった。

ミタマは私の中から居なくなったんじゃなくて、本来あるべき肉体に戻っただけの事だったんだな――つまり、真田幸村と石田三成もこ
の世界に来ていると言う事になる訳か。



「あの兵達は……志貴兄様の部下!?
 まさか、お兄様まで敵になるなんて!!」



従兄の次は実兄か!!
クソ、刹那も志貴も一体何を考えて居るんだ。



「環、お前達は袋の鼠だ……痛い目を見たくなかったら、大人しくするんだな。」

「兄様!なぜ、私達が戦わねばならないのですか!!」

「敵と話す事は何もない。……投降する気がないのなら、叩き伏せるまで。」

「志貴兄様の、あんなに冷たい声、初めてです……本気で私を倒す心算なのですね。」



如何やらその様だ。
家族と戦うのは辛いだろう、お前は下がって居ろ環――私が志貴を退ける!奴が従えている英雄共々な!!……覇ぁぁぁぁぁぁぁぁ!



――轟!!



「アインス様の髪が銀色に!其れに眼も赤く……!」

「本気と言う訳だなアインス……!」

「あぁ、本気だよ桜花!」

そして此れで終わりだ志貴!
集え紫天の闇よ、全てを喰らい尽くせ……吠えよ巨獣、ジャガーノート!!



――バッガーン!!



……出来るんじゃないかと思って王の奥義をやってみたが、意外と出来るモノだな?……まぁ、紫天と夜天は元は同じなのだから、マ
テリアルズの技を、私が使えない道理はないか。

何にしても、これで部隊は壊滅だが、まだやるか志貴?



「……今は退こう。
 だが……次に会った時は必ず倒す。」

「志貴兄様……」



刹那軍と志貴軍を退けて、無事に儀式を終える事が出来たが……如何にも妙だな?
刹那も志貴も、環を攻撃して来たくせに、その攻撃からは殺気を感じなかった――本気で環を倒そうと考えているのなら、その攻撃に
は無意識に殺気が乗るものだが……一体如何言う事だ?



「ありがとうございます英雄様。
 お陰で儀式は成功しました――この先も、祠に力を注いでいけば、泉を蘇らせ、世界を救う事が出来るでしょう。
 勿論その際は、皆様を必ず元の世界にお帰しいたします。」

「其れは有り難いが、急に家族と戦う事になって、お前は平気なのか?」

「お気遣いありがとうございますアインス様。
 ですが、世界を救うのは、王女としての務めです――たとえ、家族と戦う事になろうとも。」



其れがお前の覚悟か。
ならば私達は何も言わん――その道を突き進め環。
今回は瞬殺できたが、彼等は決して弱くない――寧ろ強者と言ってもいいだろう。……加えて、他の英雄達を味方につけているみた
だから、祠の制圧は思った以上に困難な物なのかも知れん。
其れでも、私達はお前に力を貸すよ環――世界の滅びを黙って見てられるほど、私達はお人好しではないのでね。



「此れも乗りかかった船、最後まで付き合いましょう。」

「こんな時こそ勇者の出番ってな!大船に乗ったつもりでいな!!」

「私達は、君の味方だ環。」

「ありがとうございます、英雄様!
 どうか、頼りにさせてくださいませ。」



あぁ、任せておけ!
世界を救いたいと言うお前の思いは、絶対に無駄にはさせないからな、環!!











 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



戦闘が終わって聖域とやらに戻って来た訳だが……如何やら小夜が、色々と整えていてくれたようだな。
宿舎や酒場、練武場に精錬場と色々準備されていたからね……取り敢えず、戦闘で疲れたので露天風呂で疲れを取る事にするか。


って、先客か?
バスタオルを全身に巻き付けて、タライを被った小人……お前、時継か?



「俺様は鋼鉄の絡繰人形だ。風呂場で女とでくわしたところで惑わされたりは……するか、やっぱり!!」

「???」

何だから良く分からないが、取り敢えず温泉を楽しむか。
ふぅ……何と言うか、疲れがすべて吹き飛んで行く気がするよ――異世界でも、温泉は最高だな♪