Side:アインス


いよいよイヅチカナタとの、因果を喰らう最強最悪の『鬼』との戦いだ――この面子で負ける事は無いと思うが、気合の貯蔵は充分か
モノノフ達よ!!



「派手にブチかますぜ!千年ぶりの大喧嘩だ!」

「さぁ、大一番だ。偶には気合い入れて行かないとな。」

「自分はもう忍びではない。『鬼』を討つ鬼、モノノフなり。」

「千年の間に消えた願い……全部纏めて背負ってやるさ。」

「……行きましょ、人の世の未来ってやつを掴みに。」

「行こう、アインス。君と一緒なら、何処にだって行けるわ!」

「友との誓いを果たす為、何処までも共に参ります。」

「今こそ、決着をつける時です。いざ、全力前進です!」

「行こう、先輩。故郷を失った全ての人の為に。」

「行くぞ、アインス。『鬼』を討ち、生きて戻る!」

「行くぞ、アインス。君に私の命を預ける。」



ふふ、気合は充分のようだな――此れならば勝てる!負ける要素が何処にも見当たらないからね。
そして桜花、お前の命、此のリインフォース・アインスが確かに預かった――だが、その命はお前に返すから、必ず生きてウタカタに
戻ろう!

私からの命令は只一つだ――全員、必ず帰還せよ!



「「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」」



誰一人欠ける事なく、イヅチカナタを討って帰還する――それが、私達の為すべき最重要任務だからな。










討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務87
『最終決戦開始~BattleExplosion~』










では、そう言う事なので行ってくる――必ず勝つと、約束するよ。



「……頼んだぞアインス。必ず勝って戻れ。」

「神垣ノ巫女として、私も力を貸します――今度こそ、大切な物を守る為に。」

「……行け、アインス。私はおんしを最後まで見届けよう。」

「如何か勝って下さい、この世界の背負った宿命に。」



九葉、橘花、千尋、そして秋水……大丈夫だ、これだけの戦力が集っている上に、私の闘気も此れでもかと言う位に膨れ上がってい
るのでね?――因果を喰らう『鬼』が相手でも負ける気がせんよ。
さっさと狩り倒して、イヅチカナタの素材でオヤッさんに新しい刀を作って貰おうと思ってるしね。



「この状況下においてもそんな軽口を叩けるのも、お前の歴戦の経験から来る余裕と言うモノか……?
 イズチカナタも、よもやこれ程の傑者が居るとは思っていまい……『鬼』の戦力予測すら覆す、『鬼』をも越えた存在がお前か……」

「かもな。……どっかで誰かが『いや、お前が『鬼』だ』って言ってるような気がしなくもないのだがね。」

まぁ、あながち間違いでもないだろうけどね。
さてと、何時までもイヅチカナタを待たせておくのも悪いので、行くとするか――最終決戦の地『何地彼方』へ!!



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と言う訳で、毎度お馴染み瞬間移動で『何地彼方』へとやって来た訳なんだが……此れは、時の狭間並みに特殊な場所だな?
暗雲が空に立ち込めて、紫の落雷が起きている様は、九葉が私達に手掛かりとして渡した絵その物だが、実際の景色には絵にはな
かった光景……罅割れ、紫色の光を放つ不気味な岩がそこら中に存在している。
よく見れば、地面にも所々亀裂が入り、同じように紫の光が明滅しているな……如何に究極的に異界化した場所とは言え、『侵域』
以上に、元が人の世界であったのかを疑いたくなるような光景だ。



「因果を喰らう『鬼』によって齎された異界化です。これまでの『領域』や『侵域』とは、同じと思わない方が良いでしょう。」

「だろうね。
 あの紅い鳥居の向こうからは、トコヨノオウの変異種であるトコヨノオオキミですら凌駕する程の凄まじい力を感じるからな……それ
 を、真っ向から叩き潰してやるのもまた一興だがな!」

なので、一気に鳥居を潜って……



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……



む……地面に黒い穴が開いて、其処から何やら出て来たな?
3本の爪の様な物がついた長い何か……腕、とは思えんが、ミズチメの蛇頭のような部分と似たような物だろうか?……或は単純に
触手の類か。



――ドォォォン!!



そして、其れが地面に突き刺さり、穴の中から巨大な何かが現れたな?
黒い身体に銀色の鬣、太く強靭そうな四肢と赤く光る大きな一つの目、そして先に現れた身体よりも長い触手――コイツが、最強に
して最悪の、因果を喰らう『鬼』イヅチカナタか!!


『コォォォォォォォ……ゴアァァァァァァァァァァ!!!』


――バリィィィィィ!!




く……咆哮だけで何と言う風圧だ……火花放電も起こしていたみたいだしな。
だが、その程度で私達が怯むと思うなよ?……そう言う派手な事が出来るのはお前だけじゃないんだ!!覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


――バチィ!!



「銀髪紅眼……アインスも最初から本気か。ならば、私も持てる力の全てを最初から出そう!
 イヅチカナタ……お前を討って、私は帰る……皆が待つウタカタの地に!」

「おいでなすったな。誰も死ぬなよ、全員で生きて帰るぜ!」

「イヅチカナタ……随分長生きらしいな?だが、お前は終わりだ、今日ここでな!!」

「行こう、先輩!貴女に拾われた命、今こそお役立てする!」

「滅びの運命を覆す為、今こそ未来に向かって飛ぶ!」

「もう、誰にも悲しい思いはさせない。1000年の鬼ごっこ、私が此処で終わらせるわ!」

「参りましょう、アインス様。この地に生きる全ての命の為に。」

「イヅチなんたらつったか?此処がテメェの墓だ、大人しく入っとけ!」

「賭けようじゃない?私達がこの一戦に勝つ方に!」

「此れがイヅチカナタか……1000年の帳、破って見せる!」

「お久しぶりですイヅチカナタ。最後の戦いは函館でしたか?
 此処であったが1000年目、そろそろ年貢の納め時です。」



フフフ、喜べイヅチカナタ。
現世に顕現した貴様を歓迎する為に、これだけの力を持ったモノノフが集って来たぞ?……さぁ、貴様の歓迎パーティを始めようじゃ
ないか?貴様の参加料は、貴様の命だがな!!



――ジャキィィィン!!



此の六爪流を持って、貴様を切り刻んでやる!!








――――――








No Side


人の世の存続を掛けた、モノノフ達と、最強最悪の『鬼』であるイヅチカナタの戦いが遂に幕を開けたのだが、先に仕掛けたのはモノ
ノフ達――と言うかアインスだった。
『空』のタマフリである『縮地』でイヅチカナタに肉薄すると、先ずは六爪流の連撃でイヅチカナタにダメージを与えて行く。

其れを皮切りに、桜花と大和は太刀の広い間合いを生かして攻撃を行い、暦と初穂と速鳥は空中攻撃を展開し、富嶽と相馬は自慢
のパワー攻撃でのゴリ押しを敢行し、息吹と凛音は槍の特性である『斬る・打つ・突く』を駆使して戦い、那木とホロウはイヅチカナタ
の攻撃有効射程外から射と狙撃を行い、那木は『癒』、ホロウは『献』のタマフリでサポートをして行く。


「如何した、この程度か?私達を倒さねば、お前の目的を果たす事は出来んぞ?」


最初からの猛攻の口火を切ったアインスは、六本の刀を空中に投げると、魔力で其れを操作しながら、自身は拳と蹴りの白兵戦でイ
ヅチカナタに攻撃を続ける。
並の大型の『鬼』ならば、此処で終わりだろうが、其処は因果を喰らう『鬼』だ。

触手を振り回して暦達を遠ざけ、拳を叩きつけて地上部隊を攻撃し、更には触手で身体を持ち上げてからの踏みつけ攻撃を敢行!
何れの攻撃も強力で、特に踏みつけ攻撃は真面に喰らったら即死は免れないだろう。

だが――


「でかい図体で暴れまわるな鬱陶しい。」


その攻撃は、アインスによってアッサリと止められてしまう。其れも、右手一本でだ。
イヅチカナタは、全ての『鬼』の中でも最大級の大きさを誇っており、重さだって最大である筈なのだが、その体重が充分に乗った一
撃を、アインスは片手で止めて見せたのだ。


「ぬぅぅぅぅぅぅん!!……どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


そして、止めただけでなく、足を掴むとジャイアントスウィングでぶん回し、更に上空へ投げ飛ばす!!
如何にモノノフであっても、イヅチカナタ程の質量を投げ飛ばすなどと言う事は不可能だが、最強最悪のロストロギアと称されていた
物の管制人格であったアインスにとってはこの程度の事は朝飯前だ。


更に投げ飛ばしただけでなく、其れを追いかけると、空中で『聖王刀・オリヴィエ』と『欧州筆頭』の二刀流状態となって逆手と順手の
連続攻撃でイヅチカナタを斬り刻み、角と両腕を部位破壊する!


「此れで終わりではないぞ……桜花、相馬、合わせろぉ!!」


そのままアインスはイヅチカナタを地上に向かって蹴り飛ばす!
地上では、アインスに呼ばれた桜花と相馬が、既に追撃の準備を完了している。


「仲間達の痛み、思い知れ!」

「貴様は此処でお終いだ!破邪剣征・百花繚乱!!」


先ずは相馬が限界までチャージした一発を一本足打法で放ってイヅチカナタをホームランし、吹き飛んだイヅチカナタに対して、桜花
が新必殺技である『破邪剣征・百花繚乱』を放って追撃する!
そして、この攻撃でイヅチカナタの部位は全て破壊された事になる。

此れだけの攻撃を喰らったら、普通は終わりだろうが――



――ギュイィィィィィン……ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!



此処で、イヅチカナタがタマハミ状態に移行!
タマハミになると同時に、斬り飛ばした触手も復活し、その触手を足の代わりとして地面に突き刺し、本体は宙に浮いている状態だ。

最強最悪の存在である、因果を喰らう『鬼』のタマハミ状態など想像したくもないが、しかし其れを見てもアインスの顔には笑みが浮
かんでいた。――強い相手を求める、バトルジャンキー的な笑みが。


「タマハミか……そう来なくては面白くない。ならば、私も本気を出そう!!
 ぬぅぅぅぅぅん……でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」


其れを示すように、アインスは更に力を解放し、リミッターである紋様とベルトが身体に浮き上がる。――『闇の書の意思』と言われて
いた頃の最強状態が、今此処に降り立ったのだ。


「アインス、その姿は……!!」

「リミッターが発現するだけの力を解放した……本番は此処からだ。」


刀を手元に戻し、六爪流となったアインスは、3本の剣を搭載した右手をイヅチカナタに向け、そして、そのまま親指を下に向けてサム
ズダウン!!


「来いイヅチカナタ……貴様は此処で滅してやる!必ずな!!」

『ぐごあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』



最終決戦第2ラウンド、ゴングだ。











 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場