Side:アインス


残る魂の奪還は、千歳か……此れまでの魂の奪還とは比べ物に成らない任務になるだろうが……其れでも絶対に退く気はない!
此処で退いてしまっては、『鬼』との戦いで散っていったモノノフに顔向けできないし、千歳をこのまま放っておくわけにも行かないか
らね……取り戻すぞ、彼女の魂を!!



「そう来なくっちゃな!!腕が鳴るぜ!!」

「貴殿ならばそう言うと思っていた……が、自分も彼女を助けてやりたい……師匠の友を弟子である自分が助けずに何とするか。
 だから、自分も行こう。我が翼は、隊長と共にだ。」



富嶽、其れに速鳥まで……ふ、頼りにさせて貰うぞ?
出撃メンバーは、私とホロウと富嶽と速鳥で行く!残りの者達は、里の防衛を頼む!イズチカナタの力に引き寄せられた『鬼』共が
里を襲撃する可能性はゼロじゃないからな!



「ウタカタは私多に任せておけアインス。
 君はホロウ達と共に、千歳の魂を取り返してくる事に集中すれば良い。」

「行け、アインス。魂を『鬼』に奪わせるな。」

「桜花、九葉……行ってくる!!」

「おっしゃー、叩きのめしてやるぜ!!」

「役目を果たす、ただそれのみ……」

「いざ、作戦行動を開始します!」



待っていろ千歳、今私達が助けてやるからな!!










討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務85
『魂結び~千年を生きた魂を取り戻せ~』










此処に来るのもかれこれ6回目だが……矢張り何度来ても、慣れる光景では無いな此れは――まるで宇宙空間にぽっかりと浮い
た小惑星の様な場所……まさしく虚無の空間だね。



「ったく、こんな場所に魂を捕らわれてたかと思うと妙な気分だぜ……長居したい場所でもねぇから、ちゃっちゃと『鬼』をぶっ倒して
 嬢ちゃんの魂を取り戻そうぜ!」

「あぁ、そうしよう。」

クエヤマから始まり、ゴズコンゴウ、ダイマエン、ヤトノヌシ、アンクウバッコと手強い『鬼』が続いたが――とは言っても殆ど苦戦はし
てないが――果たして今度はどんな『鬼』が現れるのか?
鳥居の向こうから感じる気配は、指揮官級の『鬼』の変異種すら凌駕する程に強いが――



『ギョアァァァァァァアァァァァァァ!!!』



いたのはお前か、イミハヤヒ!!
しかもこの瘴気の濃さ……なはとが変異したモノよりも格段に強い!!とは言え、負ける心算は無いがな!!
しかし、イミハヤヒとの戦いが此のメンバーとは……なはとと戦った時と同じとは、奇妙な偶然もあるモノだ。――行くぞ!!



『貴女は誰?……ホロウ?じゃあ、ホロウお姉ちゃんて呼んでも良い?
 此処から連れ出してくれるの、じゃあ付いて行くわ。』


「千歳……あの頃を思い出しているのですか?
 待っていてください。貴女の魂、今度こそ連れ帰ります。」



今のは矢張り千歳の過去の記憶か……今のはホロウと出会った時のモノかな?膨大な時を生きて来た千歳には、相当な記憶が
蓄積されているだろうが……矢張り、ホロウと出会った時の思い出は忘れる事は無いみたいだな。



「一応、俺達のご先祖様らしいからな?取り敢えず助けてやるぜ!」

「そうだな。彼女もまた、モノノフを作った一人なのだからね。」

必ず救わねばなるまい――とは言え、一番最後になってしまったせいで、可成りの時間魂が捕らわれていた事になるからあまり時
間は掛けられんな?
如何に半分は『鬼』とは言え、魂が肉体から長時間離れてしまってはどんな弊害が起きるか分からん。最悪の場合は魂と肉体が巧
く結合せずに、寝たきりになんて事があるかも知れないからね。
だから、速攻で終わらせる!!覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


――ドォォォォォン!!!


「うおっと、その姿で来やがったかアインス!テメェがその姿になったんなら、億に一つも負けはねぇな!
 だがな……少しは加減しやがれ!地面に罅入れやがって!砕け散ったら俺達は纏めてお陀仏だろうが!!」

「その時は、私の力で全員空中に浮かせるから大丈夫だろ?」

「そう言う問題じゃねぇ!!」



そうは言われても、この力は些か強過ぎて、私自身も完全にコントロールするのは難しいんだ――力の制御の為に、この紋様やベ
ルトは存在しているからね。
だが、私がこの姿になった以上、勝利は絶対だ!………相馬の真似をしてみたが、結構良いなこのセリフ。
イミハヤヒの弱点属性は水と風……今回は遮那王と小松姫の二刀流で行くか。……水の魔力刀と化した遮那王と、風の魔力刀と化
した小松姫の二刀流に耐えられるか?

否、耐えさせたりはせんがな!!



――ガキィィィィン!!



『ガァ?』


「速過ぎて見えなかったか?
 ならば見せてやろう……此れな~んだ?」

答え、お前の角。ふふ、そのまんまだな。



『グギャァァァァァァァァァァ!?』

「折られた瞬間に気付けよ間抜け。尤も、気付いた事でスタンしたんじゃ意味ないがな!!」

そして此れは好機だ!
富嶽……取り敢えず取り敢えず好きなだけ殴りまくれ!!



「言われるまでもねぇ!!
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!
 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄駄!
 ドラドラドラドラドラドラドラドラドラララララララララララララララァ!!!」



うん、実に見事な百裂拳。
速鳥も秘針でイミハヤヒの防御力を低下させ、ホロウはホロウで霊脈射撃で弱点を撃ち抜きつつ、貫通弾を使う事で複数の部位に
ダメージを与えているから、これで部位破壊だ!
喰らえ、回転剣舞六連!!


――ババババババババ!!


左右二択一瞬六斬を見切る事は出来まい?
更に今の攻撃は断祓を使った状態での攻撃なので部位破壊と同時に鬼祓いは完了している……此れで貴様は丸裸になったと言
う訳だイミハヤヒ。
尤もお前は、タマハミ状態になれば角以外の全ての部位が再生するがな。



『貴方がオビト?随分ちっちゃいのね……其れで戦えるの?
 私?私は動物係だから問題ないの。』


また彼女の記憶か。
お前とホロウは、異能の力を持つ者達を集ってモノノフを作ったのだな……恐らくだが、オビトは死者と語らう力、千歳は動物と心を
通わせる力と言った所か――そう言った力を持つ者が各地から集い、モノノフが生まれたと言う事か。



「その通りですアインス。
 そして私は、天狐と喋る術を千歳から教わったのです。」

「……ならば千歳殿は、自分の大師匠だ。」

「ったく、テメェも物好きだな速鳥。」



だが、其れが逆に頼もしいと言うモノさ。
マガツヒ状態なったイミハヤヒは、攻撃が積極的になって来るが、その攻撃も当たらなければ意味は無いぞ?……力は強いが、攻
撃は尻尾以外ではモーションが大きくて読みやすいからな。



――ガシィ!!



「そうは言っても、空中からの回転体当たりを片手で掴み取ってしまうのは如何なものかと思いますアインス。」

「そうは言われても軌道が見え見えだからな……取り敢えず、死に晒せ!!」

キャッチしたイミハヤヒをそのまま地面にGo to Hell!!
スクリューパイルドライバーで地面に突き刺してやったわ!!――この間も、千歳の記憶は再生されていたがな……まさか、モノノフ
の名付け親が千歳だとは思わなかったよ。



『ぐぅぅぅ……ガァァァァァァァァァァ!!!』



――ギュイィィィィィィン……ドォォォォン!!



っと、此処でタマハミか?全ての四肢が再生され、尻尾も強化されて再生されたようだが……その再生は無駄と知れ!!
此れまでの戦いの中で既に準備は出来ていたんだ……最強最大の必殺技である『鬼千切り・極』の準備はな!――再生したばかり
で悪いが、纏めて闇に散れ!!

鬼千切り……極ぃ!!!


――ドドドドドドドドドド!!!


此れで再び全破壊だが、聞こえてくる千歳の記憶は辛いな。
イズチカナタと戦った事で仲間と離れ離れになって半人半鬼の身となった事で『化け物』として迫害される日々……そして孤独のまま
に過ごした1000年――闇の書としての私の1000年よりも重いかも知れんな。

其れでも、生きていれば懐かしい仲間達に会えるかも知れないと言う希望を持っていたが……其れは叶わぬ事と知って、心が一気
に摩耗してしまったと言う事か。

その中でホロウの存在を知り、会うために此れだけの事をした、か。


千歳、お前の気持ちは分からんでもないが……お前は少しやり方を間違ってしまったな。
ホロウに会う事が出来れば御の字と言う所だったのだろうが……其れで世界が滅んでしまっては本末転倒だろう?――仮に、滅び
の先にリセットボタンが有ったとしてもだ。

そんな未来は間違ってる……だから、其れを現実にはさせない!イズチカナタを討って、今を守る!!

「咎人達に黒き裁きを。星よ暗黒よ集え、全てを消し去る焔となれ!貫け絶光!デアボリックスターライトブレイカー!!



――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!



私の最強技と、小さき勇者の最強技の複合技は、ヤッパリ最強³だな!――タマハミ状態のイミハヤヒを一撃で葬る事が出来るとは
思わなかったからね。



『此処は一体……私は……』

「千歳、戻ってきてください。」

『おんしはホロウ?其れにアインスも……』



如何やら気が付いたようだな千歳?
さぁ一緒にウタカタに帰ろう?……何時までもこんな所に居るべきじゃない――お前は『鬼』ではなく、人間なのだからね。



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と言う訳で、イミハヤヒをぶっ倒して千歳の魂を取り戻してきました!そして腹が減ったので頂きます!!



「報告が簡単なのは兎も角として、帰還早々、木綿が作っておいた握り飯に手を伸ばすとはな……まぁ、其れだけ力を使ったと言う
 事なのだろうから、好きなだけ食え。
 だが、食い過ぎて腹を壊すなよ。」

「大丈夫だ大和、私の胃腸は金剛石よりも頑丈だからね。」

さて、魂を取り戻した千歳はどうなったのか……



「私は……一体……?」

「意識が戻りましたか、千歳――イズチカナタの因果崩壊によって、貴女の魂は狭間に囚われていたのです。」

「狭間……アインス……私を……助けたのか……?」

「そうだ。」

「馬鹿な……何故だ……!
 私は、おんしを殺そうとしたのだぞ!身体ばかりか、心まで『鬼』となり果てた!
 其れなのに、おんしは私を救うと言うのか!何故だ!アインス!!」



何故って、恩を返しただけだ。
あの洞窟で、お前と会って居なければ、お前が薬を調合してくれなかったら、私も暦も死んでいた筈だからな……助けてくれてあり
がとう。其れだけだ。



「クックックック……アッハハハハハハハ!……とんだお人好しだな、おんしは。
 ……モノノフ……『鬼』を討つ鬼……そして、正義の味方……困った人が居たら、助けてあげる事…………おんしら、確かイズチカ
 ナタの居場所を探していたな?
 ……教えてやろう。イズチカナタを見つける方法を。」

「「「「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」」」」」


あるのか、そんな方法が!!



「……神垣ノ巫女の千里眼を使うがよい。」

「私の……千里眼を……?」

「おんしは『鬼』の身体の一部から、思念を読み取る事が出来るのだろう?
 私の半身は、言わばイズチカナタの一部……この身体に触れ。居場所を探ればよい。」

「イズチカナタの一部……?其れが本当なら……確かに可能です……宜しいのですか、千歳さん。」

「……私もかつてはモノノフの一人だった。悪の怪人となるまでは――正義の味方は、世界を救うものだろう?」



千歳………ククククク……ハッハッハッハ、ハ~ッハッハッハッハハ!!まさか、お前がそんな事を言うとは思ってなかったぞ?
如何やらお前の魂を取り戻したのは、其れのみならず、お前の本来の魂の力を取り戻すに行ったようだな!!



「行け、モノノフ達よ。其れがおんしらの使命ならば――私は其れを見届けよう、砂となって朽ち果てる時まで……」

「そうと決まれば、後は任せて良いな、橘花?」

「はい!全身全霊を懸けて、必ず敵を見つけます。」

「っしゃあ!やっと親玉と戦えるぜ!!」

「漸く来たな。ウタカタ一の伊達男の見せ場が!」

「寝言は寝て言え。今じゃ俺が一番良い男だ。」

「馬鹿言うな。どう見ても俺の方が格好いいだろう?」

「う~ん、どっちもどっちって感じかしら?」



……手厳しいな初穂。
だけど、私的には相馬の勝ちかな?……だって緑川ボイスだしね。



「フ……違いない。」

「ウタカタ一と言えば、かつては大和様が……」

「説明禁止!」

「いや待て。私は先輩こそがこの里一立派な……」

「やれやれ……少しは静かに出来んのかお前達は。」

「ふ……其れは無理な相談だな。」

「あら、良いじゃない?賑やかなのは大好きよ――此処まで来たら運否天賦。取り敢えず楽しみましょ。」



ふふ、言ってくれるじゃないか……ならば行くか、凛音!



「勿論よ、アインス。」

「ふ……アインス、俺達を率いてくれるな?」

「大和……言われるまでもない、任せておけ。」

「其れで良い……この里に来た時からは考えられんほどに、強くなったなアインス――決戦は、明日黎明!
 其れまでに、各自準備を整えておけ!……イズチカナタを討ち、1000年の帳を破る!」



あぁ、言われずともその心算だ大和!
イズチカナタ……時を超え因果を喰らう、最強最悪の『鬼』……世界を滅ぼす力を持った破壊神を滅ぼす事が出来ると言うのならば
やってみるが良い!!
破壊を越えた祝福の風が、貴様を滅してやる……欠片すら残さずに、徹底的な!!









 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場



千歳を助け出したので、穢れを落とす為に禊に来ましたが……いたのはお前か凛音。



「あらアインス、良い所に来たわね?此処なら誰も見てないから、ちょっとやらない?ほら、サイコロを振りなさいって♪」

「お前、禊場で賭博とか本気か!?」

「本気よ~~、此処なら滅多な事じゃ見つからないしね?」

「見つかるとか見つからないとか以前の問題だと思うんだが、其処は如何よ?」

「アインス、悪い事も見つからなければなんて事ないのよ?」



お前、見も蓋も無いな其れは!?……こんな奴がお頭で大丈夫かシラヌイの里は?……まぁ、これまで滅びずにやって来たのだか
ら大丈夫なのだろうがね。

因みに勝負はピンゾロの丁に欠けた私が大勝利!……悪いな凛音、こう見えて私は賭け事にはめっちゃ強いんだよ。



「まさか負けるとはね……此の鬱憤は富嶽辺りを丸裸にする事で晴らそうかしら?」

「いや、其れだけは止めてくれ。マッチョの全裸など、一部の腐った女子以外には需要が無いからな。」

「あらそう?残念ね。」



……冗談じゃなくて本気かオイ!!……凛音は、若しかしたら『鬼』以上に警戒しなければならない奴なのかも知れないな……