Side:アインス
桜花の魂を無事に取り戻す事が出来た……貴様等『鬼』にとっては、大した事では無いのかも知れないが、ウタカタの里にとっては
桜花の奪還は大きいぞ?
桜花が戻って来たと言う事は、ウタカタの破壊神である私と、ウタカタのエースである桜花が揃ったと言う事だからね。
「戻って来たばかりだが、行けるか桜花?」
「勿論だアインス!
私達で取り戻そう、里の皆の魂を!!」
「俺も手伝うぜアインス――里の皆の魂が奪われるなんてのは、流石に看破できないからな!!」
桜花のみならず息吹もか……だが、ウタカタのエースと、ウタカタ一の伊達男が一緒ならば頼もしい事この上ないと言った所だね?
なら、其の力持ってして捕らわれた魂を取り戻そうじゃないか?
簡単な任務ではないかも知れないが、必ずやり遂げなくてはならん!!
「ま、富嶽や初穂が突っかかって来ないってのも寂しいからな……良いぜ、俺の魂、アンタに預けるぜアインス!!」
「私の魂も君に捧げよう――だから、必ず皆を取り戻し、イズチカナタを倒そう!」
「魂を捧げられたら嫌とは言えん……が、嫌と言う気など毛頭ない!!――イズチカナタは、絶対に倒さねばならない『鬼』だから、
現れたその瞬間に倒さねばだからね。」
私の見立てでは、皆の魂が戻った時にイズチカナタは復活すると思ってる――だから、其処を狙って叩く!其れだけだからね!
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務84
『魂結び~仲間の魂を奪還せよ~』
聞こえて来た声から、今回で取り戻せる魂は、那木と富嶽と相馬……まぁ、妥当なところかな?
圧倒的な攻撃力を有してる富嶽と相馬の復帰は頼もしいし、バックスとして超優秀な那木の魂を取り戻せるからね――妥当と言う
よりも、なにか作為的な物を感じてしまうよ。
何でって、この場に現れた『鬼』が最上級クラスの『ヤトノヌシ』だったからね。
イズチカナタは、其の力で奪った魂を時の狭間に解き放ち、其れを餌に私達をおびき寄せていると言うのだろうか――あわよくば、
此処で私達を滅する心算で。
確かに方法としては悪くないかも知れないが、私が居た事が最大の誤算だな?
如何なる策であっても、圧倒的な力の前では何の役にも立たないと知れ!!
「その意見には同感だぜ隊長?
しかも、倒す心算でおびき寄せたってのに、逆に奪った魂を取り戻されちまったなんてのは、笑い話にしかならないぜ。」
「アインスの力の前では、猪口才な策など通じないと言う事を学ぶべきでしょう。」
「其れを学習したら、ウタカタを襲う『鬼』は居なくなってると思うがな。」
「現れた先から滅殺しているから、他の『鬼』は学ぶ暇も無いのかも知れんけどな。」
まぁ、そう言う訳だから……大人しく死に晒せ、ヤトノヌシ!!
喰らえ、一刀流片手平突きの究極奥義……牙突・零式!!牙突は左手で使うべし!!
――ズドォォォォォォォォン!!
「片手平突き一発で腕を吹っ飛ばすとは……流石だなアインス?
ならば私も負けてはいられん……吹き飛べ!!」
「必殺の十字砲火です!」
「そらよ、逝っちまいな!!」
私の部位破壊を皮切りに、桜花が袈裟切り→横薙ぎ→踏み込み斬り→斬心開放のコンボを決め、ホロウは言葉通り擲弾を十字の
形に投げて其れを撃ち抜いてダメージを与え、息吹は魂の最強タマフリである破敵ノ法を喰らわせた後に連塵突を繰り出して一点
集中のダメージを与えるか……良い連携だな。
尤も、これでやられるヤトノヌシではなく、此方を引き寄せるブラックホールのような物を作り出したが……私達を引き寄せると言う
のならば其れを利用するだけだ!
背後に回って、其の力に身を任せれば、超高速で背後からの一撃を喰らわせられるからな……喰らえ、ハイアングル延髄斬り!
そして、六刀全部刺し!!――此れも、引き寄せる力を逆利用したトリックプレイだ。ヤトノヌシの背後から刀を投げれば、吸い寄せ
られる力で、刀は勝手にヤトノヌシに突き刺さるからね。
『グギャァァァァァァァァァァ!!』
「叫ぶな、耳障りだ。
恨むなら己を恨むんだな……人の世界を侵食した貴様等が悪い。人の世界に土足で踏み込んできた以上、排除される事は覚悟
しておけ、このクズ野郎!!」
タマハミ状態になる事すら許さん……貴様は此処で散れ!!
貴様の下賤な遊びは終わりだ!もがけ、苦しめ、そして、朽ち果てろぉぉぉぉ!!!
八稚女で全ての部位は破壊した!桜花、トドメだ――って、おい、何だ其れは!?
「魂を込める……花と散れ!」
――ズバァァァァァァァァァン!!
桜花の太刀に闘気が集中し、太刀を振り下ろすと同時にその闘気が解き放たれ、闘気の波となってヤトノヌシを一刀両断とはな。
一体何処でそんな技を覚えたんだ?
「君の戦い方から思い付いたんだ。
君は魔力を使うが、同じ事は闘気を高める事で出来るのではないかと思ってね……太刀に闘気を集中してやってみたら、結果は
ご覧の通りと言う訳さ。」
「思い付きで、これだけのことをやったお前に脱帽だよ……折角だから、今の一撃に名前を付けて必殺技にしては如何だ?」
「ふむ……其れも良いな?
『鬼』を滅する技だから……『破邪剣征・百花繚乱』とかは如何だろう?」
うん、良いんじゃないか?中々にネーミングセンスもあるな桜花。
何にせよ、ヤトノヌシを倒した事で富嶽と那木と相馬の魂を取り戻す事は出来たから、里に帰るとするか。
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さてと、里に戻って来た訳だが、気分は如何だ那木、富嶽、相馬?
「此処は……ウタカタの里でございますか?」
「俺達は……此れまで何処に……?」
魂の牢獄とも言える時の狭間……イズチカナタの『因果崩壊』とやらによって、其処に魂を捕らわれていたらしい。
だが、安心しろ、お前達の魂は再びこの地に結ばれた……私と、オビトの力によってな。
「……テメェが、俺達を助けてくれたのか?」
「私一人の力じゃない、ホロウや、先に帰って来た仲間達の力があってこそだ。――だが、帰りを待っていたぞ。」
「アインス様……那木は、ただいま戻りました……!」
「……舐めた真似をしてくれたモノだ。この借り、必ず返すぞ、イズチカナタ!」
「……風雲急を告げる。事態は切迫しています。
行きましょう、皆さん。イズチカナタを討ち、人の世を守ります!」
「任せろ。『鬼』は一匹残らずぶっ殺す!」
その意気だ、頼りにしているぞ。
だが、これで取り戻すべき魂はあと6人で、モノノフは3人か……ならば速攻で取り戻すまでだ!!
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と言う訳で時の狭間で『鬼』を倒しまくって、無事に全員の魂を取り戻す事が出来たな……九葉の魂の声には少々驚いたけどね。
根っからの悪人ではなく、人の世界を守る為に悪に徹していたと言う事か……マッタク、自ら貧乏くじを引くとは、とんだお人好しだ
な九葉は。
「……アインス、あの狭間で聞いた事、忘れて貰うぞ?――其れが私の生きる道だ。」
「はいはい、分かってるよ。」
「……何の事ですか?」
ふふ、其れは秘密だ秋水。
だがまぁ、これで全員元に戻った訳だが……マッタクふざけた真似をしてくれたモノだなイズチカナタは――此の所業への礼は、百
倍でも足りんぞ?
六爪流で斬って斬って斬りまくって、爆炎を浴びせ、ブレイカーをブチかましても足りん!!
徹底的にぶっ殺して、二度とこの世に現れないようにしなくてはだ!!
「あぁ、その通りだなアインス。
君のおかげで、ウタカタの皆の魂は戻って来たのだからね……今度は此方から攻める番だ。」
「その通りだ桜花。此処からは私達のターン……イズチカナタを見つけ出して叩き伏せる!其れだけだ。」
幸い皆の魂を取り戻す事が出来たから、戦力も充分だしね。
「……いいえ、未だです。まだ、千歳が残っています。」
「「「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」」」
言われてみれば、確かにまだ彼女の魂は取り戻していなかったな――半分『鬼』とは言え、半分は人間なのだから、魂を時の狭間
に捕らわれてしまう訳か……済まないが凛音、千歳を連れて来てくれるか?
「……忘れたかしら。あの子は私達の敵――危うく『中つ国』は滅びる所だった。その敵を助けようと言うのかしら?」
「そうです。私の名に懸けて。」
「……はいそうですか、って言える話じゃないけど……ま、良いわ。取り敢えず連れて来ましょ。」
なんだかんだ言って、凛音も少々緩いと言うか、寛容な所があるな。
普通なら絶対に拒否する所だろうが、なんだかんだ言っても連れて来てくれるのだからね。
で、連れて来られた千歳だが……
「此処は寒いな……誰も居ないのか?誰か、誰か私を知らないか?
私は千歳、モノノフの一人……アッハハハハ。誰も居らぬか……寒いな……凍えてしまいそうだ……」
ものの見事に『因果崩壊』の影響を受けているな。
千歳の経験を考えると、『因果崩壊』による魂の捕縛で見せられる夢は、辛い物が多い筈だ……ならば、尚の事助け出さねばだ!
いましばらく待っていろ、必ず助けてやるからな!!
「……如何しようかしら、大和殿?」
「…………」
「アインス、私に力を貸してください。友を助ける力を!」
「言われるまでもない。千歳を助けるぞ。」
「ありがとう、アインス。」
「…………」
「……私もアインスに賛成。助けよう、大和。」
初穂?何故私に賛同する?
「あの子はもう一人の私。
長い時間を流されて此処にやって来た――だから少しだけ分かる、懐かしい故郷に帰りたい、あの子の気持ち。
私には大和や皆が居た。でもあの子には…………迷子になった子は、お姉さんが導いてあげないと。」
「……私からも、お願いしてよろしいだろうか?
谷底に落ちた際、千歳殿に命を救われた……千歳殿がいなけれは、私は今此処に居ない。
その恩をお返ししたい。どうか、お願いする。」
初穂……其れに暦も。
大和、凛音、決断してくれ――千歳は、助けるべきだろう!モノノフとして!何よりも人として!!
「……んじゃ、サクッと行くとするか。」
「……そうだな。イズチカナタとやらをぶっ殺す前に、人一人助けたとて罰は当たらんだろ。」
「……マッタク、物好きが増えたモノだな。」
「師の頼み、聞き届けるのが弟子の務め。」
「私は何時でも準備万端でございます!」
「……ま、そう言う事だ、ちょっくら助けに行こうぜ?」
皆……あぁ、助けよう!絶対に!!
「……暦を助けてくれた恩は、返さないとね。」
「……呆れたお人好しどもだな。」
「……お前達が決めた事だ、俺がとやかく言う事ではない。行って、連れて帰って来い、アインス。」
お前も大概お人好しだと思うがな九葉。
だが、これで出撃する事が出来る……行くぞホロウ、千歳の魂を奪還する!!奪還して、そしてイズチカナタの事を聞かせて貰う!
「……ありがとう、皆さん。」
「唯一の善行が、あの子を救う訳ね……悪い事ではないわ。」
「……行きましょう。この地の全ての魂を、奪還します!」
あぁ、必ず取り戻そう。
そしてすべての魂を取り戻したその時が、最終決戦のファイナルラウンドの始まりだ……だから、今暫く待っていろイズチカナタよ。
必ず貴様を打ち倒し、1000年の戦いに終止符を打ってやるからな!!
To Be Continued…
おまけ:本日の禊場
千歳を助け出す前に禊をと思って来たんだが……相馬、貴様待っていたな?
「否定はせん、お前が来るかも知れんと思っていたからな。
まぁ、ゆっくりしていけ。少し話でもしようじゃないか。」
「この姿の私を前にしても、其れだけの落ち着きを持っているお前に驚きだよ相馬……若しかして、私は女の魅力に欠けているの
だろうか?」
「ハッハッハ、馬鹿を言うな。
お前は極上クラスの美人だと保証してやる――単純に、俺に耐性があるだけだ。」
つまり耐性が付くほどに女性経験が豊富と言う事か?
英雄色を好むと言うが、其れはあながち間違いでもないと言う事か……まぁ、取り敢えず相馬は色々と凄いみたいだね。
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