Side:アインス
度々悪いな千歳。お前の知って居る事を、改めて教えてもらえないか?……特に『蝕鬼』に関する事をな――お前は、全てを知って
居るんだろう、千歳?
「マッタク、しつこい連中よな、おんしら――もう、用は済んだのではなかったか?」
「その筈だったんだが、そうも行かなくなってね。
単刀直入に聞くが、『蝕鬼』は一体何処から現れた?そして、如何すれば奴等を止める事ができるんだ?」
「『蝕鬼』が最初何処に現れたか……?」
お前なら知ってるんじゃないか千歳?……『蝕鬼』の核を持っていたお前ならな。
何れにしても、件の場所を突き止めなければだがどうしようもない……其の場所を突き止めない限り、イズチカナタを見つけ出す事
は不可能だからね。
だから、お前の知って居る事を、全て聞かせて貰う――きれいサッパリ洗い浚い話して貰おうか!!
「おんし、大凡、正義の味方とは思えんセリフだぞ其れは。」
別に構わんだろう?
私は正義の味方だとしても、どちらかと言うとダーティーなダークヒーロー系なのでな。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務80
『見つからぬ目的地、そして起こる異変』
千歳、一体何処で『蝕鬼』の核を手に入れたのか教えてくれないか?
ホロウの予測が正しければ、其処にイズチカナタが現れる筈なんだ――その場所を突き止め、イズチカナタを倒さねば、この世界は
時の狭間で滅ぶ事になってしまうのでな。
「……残念だが知らぬな。
私は、『蝕鬼』の死骸から核を取り出しただけ――仮に知っていても、教えると思うか?」
「……まぁ、教えてはくれないだろうね……」
刑事ドラマ的にカツ丼奢りと行きたくても、其れで吐くとは思えないし、そもそもカツ丼の材料がないしな。……記憶を読む魔法でも
使えれば便利だったんだが、そんな力はないしな。
さて、如何した物だろうねホロウ?
「……千歳。
貴女は『モノノフ』の仲間だった筈……何が貴女を変えたのですか?」
「おや……おんしになら分かると思ったが?
おんしは千年戦ってきて、痛みを感じなかったのか?」
「…………」
「誰も自分を知らぬ痛み。世界から存在を抹消される痛み。『鬼』と罵られ、人の世で生きて行けぬ痛み……
……尤もそれだけでは、私も此処まではしなかったが……」
……其れは分かる気がするな。
私も目覚めるたびに誰も私を知らず、目覚めたが最後世界を抹消し、『闇の書』と恐れられてきたからな……だが、其れだけでは此
処までの事はしなかったとは、どういう事だ?
「一つ、面白い話をしてやろう。
この身体は色々と便利でな。老いる事がない――お陰で私は、数十年歳も取らず、この世界で生き続けている。」
「……不老不死。そう言う事なのか、君は……」
「……いや、そうではないと思うぞ桜花――不老不死はある意味での呪いだが、逆に言えば永遠に己の望みを叶える為の時間が
あると言える。」
つまり、永遠の中で目的を果たす事も出来るのだから、強硬手段に出る必要はない……恐らくだが、前に言っていた『時間がない』
と言う事に関係してるんじゃないか?
「おんしは本当に鋭いなアインス。
過去、私の他にも鬼門に落ち、半人半鬼の身になった者がいた――陰陽方の長老の一人でな。
もう随分と昔の事だが……私と同じように、時と共に、徐々に『鬼』に体を蝕まれていた――其の者が、最後どうなったと思う?
……砂となって、朽ち果てた。」
「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」
「私の目の前で、音も無く、あっという間に。」
砂に……其れがお前の言っていた『時間がない』と言う事か……
「……いずれ私もそうなる運命だ。
言っただろう?もう私には時間がないと――私はその時に決めた……最後にこの世界に抗って死ぬと。
只では死なぬ。この世界と心中する覚悟で、過去に戻る――そして戦った。私の持てる力の限りで。
だが敗れた。おんしらに、いや、この狂った世界に……
……だからもうよい。静かに待つだけだ、最後の時をな――最後におんしに会えて良かったよ、ホロウ。」
「千歳……」
……結局、知りたい事は分からず仕舞いか――あの様子では、これ以上千歳から話を聞く事は不可能だろうし、果てさて如何した
モノだろうなホロウ?
「アインス……
……ずっと、考えていました。私の戦いが、本当に正しかったのかどうか――聞いて貰えますか、私の真の存在理由を。
私の本当の使命の事を。」
「真の存在理由?本当の使命?――まぁ、聞くだけならタダだから構わないが……」
「私は、魂を喰らう者。
私の体内には、魂を捕らえる機関が埋め込まれています。その機関に、人々の魂を取り込み、力に変えて『鬼』を討つ―其れが私
に課せられた、本当の使命。
例え、相手の命を奪っても、私は其れを成さねばなりませんでした。」
魂を喰らうって、『鬼』と同じようにか?……人を殺すのか……?
「……その通りです。
『鬼』が人の魂を喰らって力とするなら、此方もそうして戦う――毒を以て毒を制す。
其れが、私の身体に埋め込まれた物の意味――ですが、私はそれを実行できませんでした。
いえ……したくなかったのです――この世界の人々に、生きていて欲しかったから……その結果、千歳は鬼門に落ちました。
ムスヒの君は討たれ、数多の魂がイズチカナタに奪われました……私は、間違っていたのかも知れません。
千年の間……ずっと……人の魂を奪わず、戦い続けて来た事……其れが、私の犯した過ち……
貴女は如何思いますか、アインス?」
「過ちではないさ。
お前は自分の意思で、人の魂を喰らう事を拒絶した……滅びの運命だからと諦め、抗う事をしなかった私とは大違いだよ。
そして、その結果としてお前はウタカタに来る事になったんだ――お前の戦いは、間違いなどではないさ。」
「……貴女は強いですね、アインス。
この力を使わずに、イズチカナタを倒せれば、それでいい――まだ時間は残されています。
イズチカナタが現れる場所を見つけ、因果崩壊が始まる前に討つ……最後の望みをかけ、頑張りましょう。」
あぁ、そうだな。
ならその場所を探す序に、次から次へと現れる『鬼』を滅殺していくとしようじゃないか?――そう言う訳で、付き合って貰うぞ桜花。
「……何故私を指名する?」
「決まってるだろう、私の嫁だからだ!」
「矢張りか!……まぁ、折角指名されたんだ、期待には応えるさ。」
「頼りにしてるぞ桜花。」
さて、其れじゃあ『鬼』退治を再開しようか!
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・・・
――『戦』の侵域
オンジュボウとショウケツジュの同時討伐任務……毒と火炎の地獄との戦いは厄介極まりないだろうが、生憎と私に限ってはそんな
モノは如何と言う事は無い!
『炎上無効』と『毒無効』の恩赦を得てる私には、毒も炎も無力だからね。
そして何よりも、お前達の弱点は分かり切っている……先ずはショウケツジュ、火は水で消せる!!
――ズバァ!!
『アンギャァァァァァァ!?』
「水の魔力を纏った刀でか!……確かに此れは、効果抜群のようだなアインス。」
「火には水、此れは基本だからな。
そして、毒は火によって其の力を失う。」
そう言う訳で喰らえ!炎の剣技の絶対奥義『闘気炎斬剣』!!
――ゴォォォォォォォォォォ!!!
「燃え盛る刀で……いやはや、君は本当に凄いなアインス?」
「ふ、お前が斬心開放で四肢を切り飛ばしてくれて置いたお陰だよ桜花……其れが無かったら、こうも巧くは行かなかったさ。」
加えてこの2体、イズチカナタの影響を受けているのか、此れまで戦った個体よりは幾らか強かったからね。
――否コイツ等だけでなく、最近現れる『鬼』は此れまでよりも手強い奴が多い……イズチカナタの影響だとしたら良くない兆候だ。
一刻も早く、イズチカナタを見つけ出して打ち滅ぼさねばだ。
「あぁ、君の言う通りだなアインス……もう、あまり時間は無いのだろうな。」
「恐らくな……だからこそ『鬼』を討つ。
来る端から倒して行けば、何れは本命に大当たりするだろうからね。」
だからこそ、『鬼』は討つ……其れが未来への扉を開く事になるのは間違い無いからな。
――――――
Side:ホロウ
……もう、時間がありません。因果崩壊が始まれば、全て手遅れです。
……必要なら、魂喰機関を起動しましょう――同じ過ちを繰り返す事だけは、絶対に避けなければなりません。
私は魂を喰らう者……その使命を全うするのが存在理由。
此処で決着をつける必要を認めます――どんな手を使ってでも……
其れが救えなかった人々への…………千歳に対する、私の責任……
――――――
Side:アインス
『戦』の侵域のオンジュボウとショウケツジュの同時討伐に始まり、『古』の侵域ではカゼヌイとアマモの同時討伐……挙げ句の果て
には里周辺に現れた『鬼』の討伐とはな。
流石の私も、些か疲れたのは否定出来んよ。
「今日はお疲れ様でした!
無理は禁物です、ゆっくり休んでください。」
「木綿、お前の優しさが心に染み渡るよ……本当にいい子だなお前は。」
「そう言われると照れちゃいます♪」
……あぁ、もう、可愛いなこの!!
こんな可愛い子に『ゆっくり休んでください』って言われたら、休まないといけないよな――まぁ、実際に連戦に次ぐ連戦で、疲労が
蓄積してるのは間違い無いから、休むのは大切だな。
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・・・
……んん、もう朝か?
隣には桜花が……居ない?――昨日の晩は、確かに連れ込んだ筈なんだが……一体何処に行ったんだ?
いや、それ以前に、窓から入ってくるこの紫の光は何だ?……どうにも、外の様子がおかしいな?……様子を見に行ってみるか。
……って、此れは一体何事だ!?
辺りが異形の光で包まれているだと?……一体何が――まさか、イズチカナタによる因果崩壊が始まったとでもいうのか!?
だとしたら、幾ら何でも笑えないが……先ずは現状確認が先だ――里で何が起きているのかを確かめなくてはな。
To Be Continued… 
おまけ:本日の禊場
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