Side:アインス


あふ……もう朝か?
イミハヤヒとの戦闘に始まり、虚海の捕縛にホロウの真実にイズチカナタ……思えば慌ただしかったな昨日は。
頑張った自分へのご褒美に、昨日は何時もよりも飲んだのだったなそう言えば。
桜花も一緒だったが……一緒に飲んでいた所までしか覚えてない。かな~り深酒をしたのは何となく覚えてるが、6本目の酒をラッ
パ飲みした後の記憶が一切ない!

そもそもにしてだ……何で私は服を着ていないんだ?

と言うか、明らかに布団には私以外の膨らみが……(滝汗)



「んん……もう朝か?
 なんだ、もう起きていたのか君は?」

「おうふ、神は死んだ。」

そのふくらみの招待はお前か桜花ーー!しかもマッパか!!
いや、間違いなく酔った勢いで私が連れ込んだんだろうが……若しかしなくても此れは一戦を越えてしまったかな?……桜花の大
事な物を色々と奪ってしまったのは間違いないだろうからね……



「……酔った上での事な上に、私も拒否はしなかったのだろうからアレだが……責任は取って貰うぞアインス?」

「不束者ですが、宜しくお願いします。」

としか言いようがないぞ此れは!!
禊場で悪戯した記憶はあるが、まさか其れ以上の事をしていたとは……取り敢えず、これで桜花は私の嫁だ!異論は認めん!!



「しかし、橘花に何と言うべきだろうな?」

「それは……最大限オブラートに包んでだな。」

下手すればひっくり返ってしまうかもしれないからな――何にしても、今日も今日とてモノノフの本分を果たすとしようか?
イズチカナタの捜索は元より、里に迫りくる『鬼』を見過ごす事は出来んからな!!












討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務78
『凛音と九葉と秋水と……』











と言う訳で、今日は桜花と共にお前の前に現れてみたんだが、如何だ秋水?



「……心臓に悪いので、これっきりにしてくださいアインスさん。
 貴女の常識破りはハンパな物じゃないで、熟練のモノノフでも驚くと思います――まぁ、其れだけの力があるのならば、件のイズチ
 カナタをも葬るのでしょうけれど。」

「無論葬る心算だ……と言うか、それ以上の手は無いからね。」

「まぁ、貴女達なら何とかなるでしょう――お気をつけて、アインスさん、桜花さん。」

「必ず戻って来るさ、私とアインスの前に敵は無いからな。」



そうだな、必ず戻らなければだ……まぁ、実際に私と桜花の前に敵は無いからな――里一番の太刀使いの剣技と、私の六爪流に
睨まれが最後、逃れる術は無いからね。

と言う訳で、おはようございますだ大和!!



「……眠れたか、アインス?
 疲れているだろうが、敵が現れる場所を見つけ出さねばならん――イズチカナタの現れる場所を。」

「あぁ、確かにその場所は見つけねばだ。」

「……本当にそんな『鬼』が来るのか、正直俺にも分からん――だが、其れで北の『鬼』の説明はつく。
 今は信じて戦うしかない――頼りにしているぞ、アインス。」



頼りにされているのなら、其れには応えねばな……期待以上の働きをして見せるから、待っていろ大和。



「頼もしいな。
 それと……先程から九葉の姿が見えん。スマンが、探してきてくれるか?」

「九葉が?」

「これ以上、好き勝手されたのでは堪らんからな……頼んだぞ、アインス。」



了解した。
九葉の事だから、行方不明と言う事は無いだろうが、だとしたら一体何処に行ったのやら……いや、考えるまでもないな?里で人
目に付きにくい場所など一つしかないからな。

答えは簡単、神木の前だ。――此処を訪れるのは、今や里でも私位のモノだしな。

「こんな所で軍師が油を売っていて良いのか?……油を売っているというのは、少し表現が違うかもしれんが。」

「お前か……先の戦いは良く生き残った。お蔭で作戦は成功したぞ……尊い犠牲によってな。」



犠牲……だと?
お前、私を囮にしただけじゃなく、他の誰を作戦の為の捨て駒にしたというのか!?



「部下に娘のふりをさせ人質にならせた。『陰陽方』が阿呆でなければ、今頃は……
 ……此れで私も本当に一人だ。――だが、『蝕鬼』の謎は解く事が出来た。
 更なる血を流してでも流した血に報いる。其れが私に出来る只一つの……」



「……其れが貴方の本心ですか、九葉さん。」



この声は秋水?
いや、秋水だけでなく凛音も一緒に来たのか?……九葉に何か用が有るのか?



「まぁ、そんな所ですよアインスさん。……首尾は如何ですか、凛音さん?」

「……無事、済んだわよ、秋水。」

「ありがとうございます。」

「「……一体何の話だ?」」


……九葉と被ったが、本当に何の話をしてるんだお前達は?
首尾がどうのこうのと言うのを聞くと、お前達二人で何かをしていたのだろうとは予測するが……まさかとは思うが秋水、お前、凛音
に『陰陽方』の人質になってる九葉の部下を救出させたとか言わないよな?



「御明察です、アインスさん。
 『陰陽方』に捕らわれていた人質は、先程シラヌイの部隊が救出しました。」

「なん……だと……?」



まさかの大正解だったとはな。
大方、凛音に頼んで、『陰陽方』の拠点の一つを潰したといった所か?――お前も元は『陰陽方』のスパイだというのによくやるもの
だな秋水?

だが解せん。
お前達『北』の生き残りにとって、九葉は忌むべき相手だろう――何故、その部下を助けるのか……



「虚海さんは、『陰陽方』を除名されまして。
 その後始末をしろと指示がありました。――この際、拠点の場所を凛音さんに密告して、一網打尽にして貰うのが早いと思いまし
 て……序に、貴方の身内を助けてもらいました。」

「お前……『陰陽方』の間諜か。
 虚海がこの里に詳しかった原因はお前だな――凛音、『陰陽方』はシラヌイの敵の筈。
 この男を放置しておいていいのか?」

「……此の子は、私に情報を流してくれる。だから、好きにさせているの。」

「……そう言う事か。
 だが、何故だ、なぜあれを助けた。私は北を見捨てた男だぞ!其れを、何故だ!」

「僕は貴方を否定しなければならなかった。
 北を見捨てた貴方を、犠牲を是とするこの世界を――だから、助けた。そうしなければならなかった。
 誰も犠牲にしない、別の答えがある事を示す為に。」



つまり、簡単に理想を諦めてはならないか……此れは、私にとっても些か耳が痛いな。
闇の書の運命は変えられぬと決めつけ、滅びを甘んじて受け入れ、救いと言う理想を諦めていたからな私も……マッタクっ持って、
理想は諦めるべきではないな、九葉?



「だとしても、私がこの程度で、考えを変えると思うか?」

「うん、思わない。」

だが、秋水達、『北』の意思は示されたんじゃないか?



「我々は、決してお前のやり方を認めない。今までも、これからもな。
 肝に銘じておけ、九葉。」

「……ヤレヤレ、やってくれる。一応、感謝はしておこう。
 だが……私は北を見捨てた『鬼』――其れが私の背負った業ならば、未来永劫、背負っていくのみだ。
 ……だからお前はお前の道を行け、秋水。」

「……マッタク、困った方です、貴方は。」



話は平行線か……だが、最後のは秋水への助言と警告だろうな、九葉なりの。
『理想を簡単に諦めてはならないと言うなら、其れを貫き通せ……決して外道の道に足を踏み入れるな。』大体そんな所だろうな。

そのまま何となく秋水と一緒に本部前まで来たんだが……



「アインスさん……先程は失礼しました。九葉さんとの話を邪魔してしまって。」

「いや、構わんよ――寧ろ、九葉の言っていた犠牲が犠牲にならずによかった……誰も犠牲にならずに済むなら、其れが一番良い
 に決まってる。」

「そうですか。
 しかし、ああは言いましたが、果たして僕の理想は実現可能かどうか……過去に戻って、仲間を助ける。
 誰一人犠牲にせず、全てを救う――其れが可能なのか、未だ分かりません。ですが、追い続けてみようと思います。
 簡単に理想を諦めてはならない……貴女が教えてくれた事です。」



私が教えた事、なのか其れは?



「貴女はウタカタに来てから、どんな困難にあっても決して諦めずに立ち向かい、その困難を突破して来ました。
 貴女のこの里での行動が無ければ、僕はその答えに確信を持てなかったでしょう。
 ありがとうございます、アインスさん。全てを救う、英雄の姿を見せてくださって。
 そして……如何か御武運を。貴女には、貴女の戦いが待っています。」



あぁ、分かってる。
私の戦い……迫りくる『鬼』を打ち倒し、件の景色を見つけ出してイズチカナタを永遠に葬る……この身に宿した闇属性の力を持って
してな。



「千年を渡る『鬼』、イズチカナタ……其れを討ち、未来を切り開いてください。
 勝って下さい、アインスさん。この世界の背負った宿命に――汝に、英雄の導きあれ。」

「ふむ、ならばその期待には応えねばな。」

だから、そう言う訳で新たな御役目は出てないか木綿?



「うわぁ!?い、行き成り目の前に現れないで下さいアインスさん!流石に驚きますよ!!」

「だが、普通に正面玄関から私が入って来たら、其れは其れで心配だろう?」

「其れはまぁ確かに、何かあったのかなぁって思いますけど……取り敢えず、新しい任務が出ています。
 イズチカナタの捜索もあるので大変だとは思いますけど、頑張って下さい!」



勿論頑張って来るさ。
新しい任務は結構出ているが……此れは、虱潰しに熟して行くしかないのだろうな――悪いが木綿、いつぞやの絶品の握り飯を沢
山用意しておいてくれ。
落ち着いて食事をとる暇すらなさそうだからね。



「はい、喜んで!」

「頼むな。」

さてと、其れでは一仕事頑張りますか!
其れと桜花、お前は絶対に私と一緒な?異論は認めないから。



「まぁ、そうだろうな?」

「頼りにしてるぞ、嫁。」

「その呼び方は止めてくれ……」



ハハ、冗談だ。



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――『戦』の領域


先ずは、『戦』の領域でショウケツジュの討伐だ。
オンジュボウの変異種で、毒の代わりに炎の力を手に入れた『鬼』との事だが……ハッキリ言って、行動パターンはオンジュボウと
殆ど変わらんから、私達の敵ではないな。
まぁ、そもそもにしてミタマスキルであらゆる状態異常が無効になっているから、炎上も毒も関係ないのが私なんだが。
取り敢えず相手は火属性なので、水属性の『落花流水』をメインにした一刀流での攻撃を行い、桜花とのダブル鬼千切りを発動して
両足を破壊し……

「覚悟は良いな?
 貴様の命も此処までだ……泣け!叫べ!そして……楽には死ねんぞ!!此れで砕け散れぇぇ!!」

ダウンした所に、六爪流で滅多斬りにしてから刀を突きさして爆発させ、追撃として六爪流の二連斬から、魔力の柱での攻撃!!
そして、フィニッシュは任せたぞ桜花?



「了解だ。華と散れ!!」



トドメは桜花の斬心開放でな。――火属性の『鬼』ではあったが、貴様じゃ燃えんな。



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――『古』の領域


此処に現れたのはアマモ……カゼヌイの変異種か。
相変わらず猫のような愛らしい見た目だが……なぁ、これ本当に連れて帰っちゃダメか桜花?ちゃんと手懐けて面倒見るから飼っ
てもいいだろ?



「ダメに決まっているだろう!!」

「どうしてもダメか?」

「ダメだ!」



……なら仕方ないな。
喰らえマタタビ爆弾!――と思わせておいての、レモン爆弾!!


――バガァァァァァァァァァン!!


『にぎゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!?』

「……『鬼』が逃げて行った?今のは一体何だアインス?」

「レモン爆弾。火薬と一緒にレモンの果汁をたっぷりと詰めた爆弾だ。
 破裂すると酸っぱいレモン果汁が当たりに飛び散る代物でな……目に入れば当然痛いし、鼻に入っても大ダメージだが、それ以
 上に猫は柑橘系の匂いを嫌うからね?
 如何やら猫型の『鬼』にも効果はあった様だ。」

取り敢えず此れで、暫くは里にアマモやカゼヌイが近づく事は無いだろうね。



「倒さずに撃退するとは……君は本当に予想外の事をしてくれるなアインス?」

「梓の魂と融合してるとは言え、私はマッタク異世界の存在だからな……モノノフの常識など通じんよ桜花。」

「確かにな……では、里に戻るか。」



だな。
其れでは毎度お馴染み、瞬間移動!……この瞬間移動にも、固有の技名を付けてやった方が良いかも知れないな。

「と言う訳でただいまだ。」

「お帰り、アインス。丁度良い所に来たわね。」



凛音か、如何した?
何か問題でも起きたか?



「問題と言えば、問題ね?
 あれから虚海を尋問してるんだけど、何も答えてくれなくて困ってるの。
 ……此のままだと、ちょっと荒っぽい手に出なきゃいけないわ。」

「凛音、乱暴は頂けません。」



って、居たのかホロウ!!全然気づかなかったぞ!?
……私に気配を察知させないとは、恐るべしだなホロウ――まぁ、凛音の言う事は冗談だと思うぞホロウ?
凛音の性格的に、本気ならとっくにやって居るだろうからね。



「ま、その通りよアインス。
 とは言え、これじゃ埒が明かないのも事実――貴女とホロウになら、何か話してくれるも知れないと思ってね。
 聞き出してくれないかしら?……あの子が、本当は何をしようとしたのか。」

「虚海……否、千歳の真の目的を、か。」

「千歳の目的……ですか。」

「……そうよ。
 虚海はもう、貴女の知ってる小娘じゃないわ――私達を死地に追い込んだ、一大計画の首謀者……必ず何か考えがある筈よ。
 其れを聞きだして頂戴。
 後で貴女の自宅に連れて行くわアインス。先に行っててくれるかしら?――頼んだわよ、アインス。」



……了解した。元より拒否する理由もないからね。
千歳が抱える心の闇は私達が思っているよりも深いだろうから、その奥底で何を考えていたのかを予想するのは難しい……となれ
ば、本人から聞くしかないからね。

本当の事を話してくれるとは限らないが……少なくとも、ホロウには嘘は吐かない筈だからな。
果たして、真に千年を生きて来た半人半鬼の存在は、一体何をしようとしていたのやら……少なくとも、平和的な事でないのは間違
いないだろうけどね……










 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場



自宅に戻る前には、まず禊だ。
任務が終わったら禊だ!モノノフは禊!!



「其れについては否定せんが……こうも堂々と入って来られると、反応に困るぞアインス?」

「と言いながら、お前は動揺しないんだな相馬?」

「薄衣一枚とは言え、一応は着衣状態だから其処まで気にする事も無かろう。
 まぁ、これも良い機会だ、少し話でもして行かないか?」

「ふ、其れも良いかも知れんな?」

或いはお前の武勇伝を聞くのもいいかもしれないからな相馬。――何時もよりも、少し長く禊をして行く事にするよ。