Side:アインス


今日も今日とて、残党狩りと『蝕鬼』の元凶を探し出す任務の真最中。
只今『戦』の侵域にてマガツイクサとの交戦中なんだが――マッタク持って今更な事だが、一つ聞いても良いか桜花?果てしなく
如何でも良い事かもしれないんだが……



「君が何か聞いて来るとは珍しいな?如何したんだアインス?」

「いや、如何してタケイクサとマガツイクサは、タマハミ状態になると、腕を足にして上下反転するんだろうな?最大限遠慮なく言わ
 せて貰うなら、ぶっちゃけキモイ。」

一部ではタマハミ状態のタケイクサやマガツイクサを『タコ』と称する奴も居る様だが、敢えて言うぞ、タコに謝れ。割と本気で!!
お前なんぞは、タコ以下のクズだからな。

だから、今此処で死ね!!



――ガスゥ!!



タマハミになったと言う事は、後がないと言う事の証なので、一気に決着をつける為に、先ずはハイジャンプから、タマハミ状態の
頭(?)にシャイニング・ウィザードをブチかまし、そのまま足で頭をホールドしてフランケンシュタイナーだ!
そしてトドメだ!合わせろ桜花!!



「あぁ!花と散れ、百花斉放!

「深き闇に沈め……消えろ、紫電一閃!!

そしてトドメは、私と桜花、ウタカタのトップ2によるダブル鬼千切りだ――私達の前に敵は無い。特に桜花は、既に並みのモノノフ
を遥かに超える力を持っているからね。
無論桜花だけでなく、ウタカタのモノノフと参番隊、そしてシラヌイのモノノフの力はずば抜けているから、残党狩りは順調に行くだろ
うが、何か嫌な予感がする。

この嫌な予感、外れてくれると良いのだがな……












討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務75
『残党を、斬って砕いて撃滅だ!』











残党狩りに休みは無い!例えブラック企業だって言われても休みなはい!何故なら休んでしまったら、残党がウタカタに攻め込む
機会を作ってしまうからね――だから、私達は里の人達を守る為に戦っているのさ!!



「テメェ、誰に向かって話してんだ?」

「異界をうろつく死者の魂か?」



いや、何でもないぞ富嶽、相馬。其れよりも、今回の相手は前回のマガツイクサよりも格段に強そうだ。――なにせ、コイツは指揮
官級の『鬼』の親衛隊の『鬼』だからな?



「確かに手強そうだが、だからどうした。
 俺達の前に立ち塞がると言うのならば叩きのめすだけだ。」

「はっ、珍しく気が合うじゃねぇか相馬?――この蝙蝠野郎をぶちのめしてやるとしようぜ!!」

「ちゃっちゃと倒して、里に戻るとするか。」



『北』の新型であるアンクウバッコ……『雅』の領域で探し出して討伐しろとの任務だったが、スタート地点の次のエリアで遭遇する
事が出来たのは、ある意味で運が良かったな?
広い領域を歩き回ると言うのは体力を使うし、小型の『鬼』との余分な戦闘もしなくてはならないからな?――だが、逆に言うなら、
此処で私達に出会ってしまったのは不運だったなアンクウバッコよ。
まぁ、相手にとって不足は無いのでな……私の新たな力を見せてやろう!!


――ジャキン!!

――ボウ!!



「刀が光っている?何だ其れは?」

「私が使う刀は無属性と五大属性の計六本だが、刀身に夫々の属性の魔力を纏わせてみたんだ。
 一番分かり易いのは火属性か?刀身が燃えて、文字通りの『炎の刀』と言った所だろう?」

「アンタならではの武器って事かい?如何にも強そうだねそいつは。」



実際に強いぞ息吹。
オヤッさんが鍛えてくれた業物に魔力を纏わせてみたら、物理的切断力が強化されただけでなく、甲羅などに覆われた堅い『鬼』
であっても、魔力の干渉でダメージを与えやすくなるみたいだからな。モノイワで試してみたから間違いない。

だから何を言いたいのかと言うと――指揮官の親衛隊たる『鬼』であっても、大した脅威ではないと言う事さ。



――バシュ、バシュ、バシュ、バシュ、バシュ、バシュ!



『アンギャァァァァァァァァ!?』




この状態の刀ならば、斬撃と同時に、纏わせた魔力を撃ち出す事も出来る上に、撃ち出した魔力は魔力の刃と同義のモノだから、
当然『鬼』を切り裂く事が出来る。
序に言うと、撃ち出された魔力刃は、銃の榴弾や徹甲弾のチャージショット以上の破壊力があるから、会心ヒットした場合は間違い
無く部位破壊されるからその心算でいろ――尤も、今回は手遅れだったみたいだが。

だが、ダウンした時点で貴様の負けだ蝙蝠野郎。

「翼を失ったコウモリは、惨めに地面に這いつくばってろ!!」

六本の刀のうち、四本の刀を腕に残った翼膜に突き刺して地面に縫い付け、更にチェーンバインドで拘束!此れでもう、貴様は絶
対に動く事は出来ん。
此のバインドは、最も腕力のあるゴウエンマですら千切る事は出来ないからな。

まぁ、そう言う訳だから……殺れ、者共



「ハッハッハ、入れ食いだ!!」

「逝っちまいな!そらぁ!!!」

「隙だらけだぜぇ?
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」



相馬はフルチャージの破潰の連続、息吹は破敵ノ法から連昇のコンボでダメージを与え、富嶽は赤熱打撃からの百裂拳で文字通
理のタコ殴り――コウモリを殴っていても、タコ殴りとは此れ如何に。
等と阿呆な事を言っている場合ではないな。

なので私も、アンクウバッコに有効な火属性と地属性の刀の二刀流で攻める!
左右の連続袈裟斬りから、真一文字の挟み斬り、左右の連続袈裟斬りから……

「泣け、叫べ、もがけ苦しめ、何でもいいから兎に角喚け、私達に出会った不幸を嘆きながら、そのまま死ね!!」

右に左に斬って斬って斬りまくる!
順手に持った二刀を、同じ軌道で高速で振りまくる事での滅多斬り!こう言っては何だが、将であっても見切る事は出来ん高速斬
撃を見切る事は出来ん。
まぁ、刀で磔にされ、バインドで動きを完全に封じられた貴様では、見切れていようといまいと関係ないだろうがね。
だから、これで終わりだ!!



――ズバァァァァァァァァ!!!



「深き闇に沈め……人に仇なす『鬼』よ!」



――バガァァァァァァァン!!



トドメは、納刀してからの連続居合だ。
地属性の『秘剣・燕返し』で斬りつけた後に、火属性の『大蛇薙』で斬りつけると同時に火属性の魔力を流し込み、納刀すると同時
に送り込んだ魔力を爆発させてフィニッシュ。
既に息吹の破敵ノ法で内部からのダメージ受けていた貴様には効いただろう?……恨むのならば、己を恨むんだな。

精々地獄で閻魔の裁きを受けろ――『鬼』が如何裁かれるのかは知らないけどね。



「……敵を冷徹に倒して、努めて冷静に刀を納刀するって、本気でアンタは魅力的だなアインス?――惚れちまいそうだぜ?」

「息吹、お前は今まで似たようなセリフを一体何人の女性に対して吐いて来た?」

「両手の指じゃ足りない位か?」



うん、まさかの予想以上だとはな……取り敢えずウタカタに戻ったらお前私刑な?――安心しろ、死ぬ程の激痛を味わうのは確実
だが、せめてもの情けとして男の選手生命は奪わないでおいてやるから。



「ちょ、其れは安心できないんだけどな隊長!?」

「其れはアレだ……己の軽薄さを恨め息吹。」

「身も蓋もねぇ!?」



実際ないからな。
さて、ウタカタに戻るとするか。



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そして、残党狩りをしながら『蝕鬼』の元凶を探し始めて早1週間が経った訳だが、未だに見つからないとはな……



「……捜索を始めてから七日、手掛かり一つ見つからんか……このまま行っても、埒が明かんな。」



マッタクだ。
こんな事は言いたくないが、私達が此処までやっても見つからないとは、お前の指示が悪いんじゃないのか九葉?
と言うか、そもそもにして無理があるぞ、あの広大な異界を少数で探すのはな。



「……分かっている。
 其れに、そろそろ時間も惜しい――もっと人数をかけて、広域に探索を掛けるとしよう。
 戦力の配分を見直す。略全ての兵を探索に傾けるぞ。」

「探索の人数を増やすのは良いが、里の守りが手薄になるぞ?」



探索の増員は結構だが、そうなると大和の言う通り、里の守りが手薄になる――里を犠牲にするような作戦ならば、断固拒否させ
て貰うが……



「……心配するな、其れについては考えてある。
 アインス、お前は里の守りに残れ。――他の者は異界で探索を行う。その間、里の守りはお前に任せる。」

「……そう来たか。」

だが、その作戦は悪くない。
自分で言うのも何だが、私は一騎当億とも言えるモノノフだから、私が里に残るのならば、里の守りは盤石だなうん。



「……『百鬼隊』の隊士を何人か残しておく。お前の好きに使え。」

「其れなら安心だが……」



何だ、心配してくれるのか桜花?
私の力は誰よりもお前が知っているだろう?……オオマガドキの『鬼』が相手であっても私は負けんよ。何よりも――

「お前を残して死ぬ気は無いからな桜花?……お前は、私のモノだ、異論は認めん。」

「へ?アインス?……なぁぁぁぁぁぁぁ!?」



いや、妹的な意味合いでだがな?
桜花と将は雰囲気が似ているからついな――時に九葉、凛音達が探索に出ていた筈だ、呼び戻さなくて良いのか?



「……寧ろ好都合だ。あれは、簡単に私の指示に従わんからな。
 其れに……仕込は済んでいる。」



……仕込み、だと?
今度は一体どんな策略を巡らせたのやらだな。



「……と言う訳だ。
 全員、この『命令書』に従って動いて貰う。――地図に細かい指示を書いておいた。其れに従って動け。
 『鬼』の討伐に比べれば楽なものだろう?」

「なるほど……宝の地図と言う訳ですね。」

「ホロウ、其れは違うと思う。」

――此方にとって有益な事が記されているのならば、あながち間違いとも言い切れないがな。……しかし此処に来て九葉から直々
に『命令書』と言うのは少し勘ぐってしまうな。

何か企んでいるのではないかとね。



「……良いか、必ずこの『命令書』の指示通りに動け――勝手な行動は命取りだ。十分注意して貰おう。」



だが、今は九葉の指示に従うのが上策か。
1週間異界を歩き回っても『蝕鬼』の元凶を見つける事は出来なかったのだからね……此処は、九葉に従うしか道はないか。



「アインス様、如何か里をお願いします。」

「すまないな、アインス。」

「……では行け、モノノフ達よ!
 再び百鬼夜行を相手にしたくなければ、一刻も早く雷鳴の風景を探し出せ!」



任せておけ那木、里には指一本触れさせん。
気に病むな桜花、これが私の役目のようだからな。
そして無茶を言うな九葉……と言いたい所だが、人員を増やしたのだから件の景色を見つける事は出来るだろうさ――だが、何故
にこんなに胸騒ぎがするんだ?
若しかして私は、ナハトヴァールの暴走以上の何かを感じている?……だとしたら何とも有り難くない事だが……この胸騒ぎが、杞
憂である事を願いたいよ本気で。








――――――








Side:虚海


さて、そろそろ行くか…………私を裏切るなよ、霊山の『鬼』よ。
私の可愛い配下達が、おんしを見張っているぞ。








――――――








Side:秋水


「私に用とは一体何だ秋水?」



……お待ちしていました、九葉さん。――貴方にお願いがあってお呼びしました。



「ほう……?」

「どうか…………今すぐ行動を中止してください。」

「…………何の話だ?」



……貴方が『陰陽方』に協力し、アインスさんを殺そうとしている件です。



「!!」

「安心してください、此処の安全は確保してあります。
 敵の目も耳も、此処には届きません――だから、全てを話してくださいませんか?――モノノフの皆さんを分散させ、如何しようと
 言うのですか?」

「…………残念だが、何の話をしているのか分からんな?
 言いがかりも甚だしい……それ以上言えば『百鬼隊』に捕縛させるぞ。」



そう来ましたか……ですが、切り札を持っているのが自分だけだとは思わない事です。
……人質を取られているのなら、僕が助けましょう。



「!!」

「驚く事も無いでしょう?
 質を取り、人を思い通りに操る――『陰陽方』の常套手段です。」

僕は『北』の生き残り。そして、凛音さんとは親しい間柄です――つまり、シラヌイの部隊を使って、救出作戦を行って貰う事も可能
です。



「…………其処までして、お前に何の益がある?」

「……アインスさんを救えます。」

「アインスを……?
 ハッハッハッハ……なぜ其処まで奴に拘る?何がお前をそうさせる?」



何故ですか……改めて聞かれると、論理的に堪える事が難しいのですが……強いて言うのならば、アインスさんの力と心に魅了さ
れてしまったと言う事なのでしょう。
何よりもアインスさんは僕にとって必要な人ですから――過去に戻って『北』を救うためにも。
過去に向かって『北』を救う――このウタカタに集った兵が、部隊の候補者であり、アインスさんは、その隊長となるべき方。
今死んで貰う訳には行きません。必ず生きて『北』を救って貰います――貴方にとっても悪くない話でしょう九葉さん?
『北』を見捨てた『鬼』と言う汚名を、雪ぐ事が出来ますよ。



「…………ハッハッハッハ……クワッハッハッハ!
 ヤレヤレ、何かと思えば……戯言はもう良い。お前とて、本気で言っている訳ではあるまい?
 私を止めるための方便も、度が過ぎれば只の虚言だぞ。」

「……さぁ、如何でしょう?――僕は、大真面目の心算ですが?」

「……お前も私も狂人だな……『鬼』に魅入られた憐れな人間だ――妄執の中で死ぬか、現実を生きるか、其れはお前の好きにし
 ろ。
 だが、其処まで言うのならば見届けてみろ――お前の言う英雄がどれ程のモノか。
 なに……悪い様にはせん。作戦は必ず成功させる……ではな、秋水。」



言われずとも見届けますよ九葉さん。
ですが、貴女は少々アインスさんを過小評価しているのではありませんか?――もしも此れまでの戦果だけでアインスさんを評価し
ているのならば、其れは大きな間違いです。

何故なら、アインスさんは実力の半分も出していないのですらね――僕が見届けるよりも、貴方が思い知る方が先かもしれません
よ九葉さん。
アインスさんの本当の実力と言うモノをね。












 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場


Side:アインス


ウタカタのメンバーが出払ってしまったので、禊も寂しいと思っていたのだが……お前が居たか木綿。



「よく来ていただけました!ゆっくりして行って下さいね?」

「……天使かお前。」

こう言っては何だが、木綿のスマイルは0円じゃなくて1000円の価値があると断定する!と言うか、この笑顔に癒されない奴は只
の馬鹿だと言っておく!


取り敢えず今回の禊は素晴らしかった!!
そして知っていたけど再確認……木綿はウタカタの共有財産!異論は認めない!!!木綿と付き合いたいのならば、私と大和の
屍を越えてゆけだな!!



「アインスさん?」

「うん、何でもないから気にするな。」

取り敢えず木綿と禊をした――此れは、負ける気がしない!次の『鬼』も滅殺する、其れだけだからな!!